第30話回顧 3
Act.3にて、一度タカトたちは全員が集まる。しかしデジタル・ワールドにはまだまだ、解き明かさねばならない謎、クルモンやそれを狙う《神》、そしてリアル・ワールドとの相関についても判らなければならない。しかし、少しホッと出来る一瞬がある。そういう状況が大事なんだと今話は思わせてくれる。
ヒュプノスでは、シャッガイのテストが始まろうとしていた。
必死に抗議する監査委員。危険だというのが判らないんですか!?
しかし、許可は得ている。余計な口出しはしないで戴きたいと嘯く。
憮然とする監査委員――
お前はいつまでくすぶってるつもりなんだ――
クルモンの匂いだ。
判ったよとタカト。
そうじゃないよ。こっちに来るの。キュウビモンの匂いもする!
ほら来た!
荒野の彼方から――
猛然と走ってくるキュウビモン。
あれはぼくたちの旗!
晴れやかな顔の留姫と、クルモン! 躍動的なカット。
ジャンプするクルモン。
クルモンを抱き留めるタカト。この為にデジタル・ワールドへ来たのだ。
デジモンテイマーズ旗は、用途は別だったが、見事に再会を促進させてくれて、その役割を終えた。
心配したよ、留姫とジェン。
御免。
しばし休む一行。
よっぽど疲れたのね……。
眠っているクルモン。
クルモンも見つかった事だし、さっさとリアル・ワールドに帰ろうよ。
そうだね。みんな心配してるだろうし。あ、でもどうやって帰ったらいいんだろう……。
ジェン、何してるの?
だめだ。つながらない。山木さんと連絡がとれれば、何か判ると思ったんだけど……。
だったら、リョウさんに訊いてみたらいいんじゃないか?
ふん、あんな奴。
留姫はもう完全に吹っ切っている。
姿を現す――
見つけたぜ。
跳躍し――
ベヒーモスごと――
タカトらの前に停まる。
何者!?
身構えている一同が車体に映る。
嗤っている。
この間のバイクデジモン(デジモンとは言い難いのだが)。なんかすっげーヤな感じ、とテリアモン。
ぐっ、とベルゼブモンをガン見するテリアモン。
めずらしい、テリアモン・アイのPOV。
データが表示されない――。て事はお前――
デーヴァなのか!?
さあどうだかなぁ?
キュウビモンは何かを感じている。
ベルゼブモンの左腕に巻かれた赤いバンダナ。
まさか!?
インプモン――
赤いバンダナ――
お前は――
インプモン!
驚きの声を上げる一同。
インプモンだ? そんな奴ぁもういねえ。
今の俺は、ベルゼブモンだ!
遂に進化したのか。
ベルゼブモン、究極体魔王型デジモン、必殺技はダブル・インパクト――
銃を抜き、こいつの事よ、とキュウビモンの鼻面に向ける。
微動だにしないキュウビモン。
俺はお前らを――
殺す!
シャッガイの起動テストが命じられる。
インプモン、すごく怖くなっちゃった――。ギルモンは今は驚くだけ。
インプモンて、前に会ったあいつだろ?
ヒロカズらは大江戸線の時ぐらいしか会っていない。
あの小憎らしかったけど、ちょっと可愛かったあのデジモンが……。
クルモンも怖がっている。
インプモンが何よ!
カード・スラッシュ!
マトリックス・エヴォリューション!
タオモン――
留姫のカード・スラッシュ、タオモン進化は、ベルゼブモンがもし攻撃するなら、みんなを守る為であったが、これが実に正しい判断であった事がこの後判る。
シャッガイ、起動します。
コマンドライン入力。
スクリーンに浮かぶ、シャッガイのモニタ。
荒れ始めるリアル・ワールド球。
そして砂塵。
マンションの窓辺で驚愕の声を上げるジャンユー。
あれは……。
ジャンユーはシャッガイが再び起動された事が信じられない。
しかし都庁の上空には――
シウチョン、テリアモンの代理として貰ったウサギのぬいぐるみを抱き締めている。テリアモンぽく角をつけている。
オン!
タオモンの結界シールドが稲妻を退ける。
ベルゼブモンは、今ではないと思ったのか銃を仕舞い――
ベヒーモスで急な崖を――
また今度だ!と捨て台詞。
一気に登り切ってしまう。
よし、テスト終了だ。
シャッガイが停止出来ません!
何!?
システムがコマンドを受け付けません!
シャッガイが暴走しています。このままでは……。
何とかしろ!早く止めろ!止めてくれえええ!――
と、向こうのシャッターが開き始める。
二人の人影。
やっと現れたか……。
ここからはプロの仕事だ。
素人は、お引き取り願おう。
苦渋――。
この事は、報告しておくからな、と捨て台詞を言い去って行く。
荒れ狂う物理レイヤーの荒野。
タオモン、向こう側に影が現れるのを認知。
姿を現す、チャツラモン。
愚かな人間どもよ。
何奴と誰何。タオモン・アイ。
留姫、D-Arkで確認。
チャツラモン、完全体聖獣型デジモン――
デーヴァ!?
チャツラモン、口から気を吐く。
タオモンの結界シールドが破壊されていく。
それに嵐の稲妻が重なって結界は消失、吹き飛ぶ一同。
レオモン、ヒロカズ+ケンタ、そして樹莉を確保するが――、クルモンが虚空へ
くるー
すかさずチャツラモンがクルモンを奪った!
クルモンを返せ!!!
タオモン、再び結界シールドを張るが――
これ1カットで描写。
しかしタカト、ジェンとテリアモンが結界から外れてしまった。
これも1カット!
タカトもジェンとテリアモンも、光の柱で跳ばされてしまう――
root権限より上位の権限を山木は確保していた様だ。
第二、第四レゾネーター、シャットダウン!
麗花、シャットダウンします!と呼応。
シャッガイ、緊急停止!
シャッガイ、停止します。
暗くなっていくモニタ。
やっと停止するシャッガイ。
山木!(よくやってくれた)
深く息を吐く山木。
山木はよもやシャッガイを勝手に再起動されるとは思っていなかったが、万が一の安全策はとっていた。
都庁上空が――
収まっていく。
そしてデジタル・ワールドも――
結界シールドが着地。解かれる。
呆然としている一同。
心細いギルモン――
タカトォ!
シノプシスとして30話を「どういうエピソードだったか」と簡単にサマライズする事は難しい。幾つもの事象が並行し、この回で集約するものもあれば、新たな混沌が引き起こされる。
殺伐とした場面が多かった中で、今話の《森》はまさにオアシスだった。そしてどの場面に於いても、最大限にリアル・ワールド球が背景に配置され、特に今話は望遠レンズ効果を多用され、大きく誇張して強調されていた。
交通整理的なエピソードは本来なら私が担うべきだったが、私は第三部の構築と、デジタル・ワールド編での大詰め(ベルゼブモンの結着)を具体的にする事に専念していた。前川さんはチーム・プレイヤーとして徹してくれた一方、ベルゼブモンのキャラクター性をダイアローグで決定づけている。
クルモンは、元々の設定はそうだとして、我々ライターにとってはある意味で、意思のあるマクガフィン、丹下左膳で言うこけ猿の壺で、主人公側と敵側との争奪戦になるのだが、自分もはっきり自我があり、好悪があって自らも行動力がある。勿論、進化の輝きを持つが故の事態も良きにつけ悪しきにつけ引き起こす。
だから面白い展開が作れている、と当時は考えていた。ただ、「今回はこうなった」と各話完結的な話を求める視聴者には焦れったい展開が続いていると感じられたかもしれない。
山木は、タカトたちをリアル・ワールドに帰す為の推進者としての役割を担って復帰した。だから山木は24話以降はヒーローサイドになるのだけれど、根本的にはやはり問題のあるポジションだ。先端的な科学によって、人々を制御しようというテクノクラートの原形的な人物である。2021年現在、テクノクラートの暴走は既に始まっている。
#30 Credits
李 鎮宇:金子由之
ベルゼブモン:高橋広樹
チャツラモン:石井康嗣
鳳 麗花:永野 愛
技術者:小嶋一成
検察官:飯島 肇
監査委員:佐藤晴男
原画:山室直儀 諏訪可奈恵 田辺由憲 野沢 隆 深本泰永
動画:篠原悦子 吉川真奈美
背景:徳重賢
デジタル彩色:村田邦子 鏡沼孝子 藤田 潮 徳永ゆき子
デジタル合成:三晃プロダクション
広川二三男 則友邦仁 松平高吉 石川晴彦 花見早苗
演出助手:まつもとただお
製作進行:山下紀彦