第31話回顧 1
緩いエピソードかと思いきや、後半のアクション、成熟期トリオ+1のバトルは迫力がある。と言うことで今話も3分割 4分割。
テイマーズも30話を越したところで、浦沢さんは最後の担当脚本となってしまった。もう一話くらいあって良かった筈なのだが……。
浦沢さんという存在を意識してはいなくとも、「巨泉×前武ゲバゲバ90分」とか「カリキュラマシーン」などのナンセンス・ギャグには子どもの時分に親しみ、その構成に関わられていたのだと後になって知ってみると、私は自分の認識よりも随分「浦沢節」に親しみ、ギャグは苦手なれども後輩脚本家となったのだと思う。
今話は、タイトル通り、ヒロカズがガードロモンとパートナーになる話、というオーダで、タカトとジェン、テリアモンがいない、という状況です――程度の縛りだったと思う。
21話「私のレオモン様」の後、樹莉の家庭が紹介され、小料理屋の娘というシチュエーションに、浦沢さんは何かインスピレーションを得たのかもしれない。大酒食らいという設定のオロチモンが敵役に選ばれる。
演出は吉沢さん。作監は浅沼さん。美術は23話で吉沢さんと組まれた須和田さんが担当され、テイマーズでは二話のみとなる。放送は2001年11月4日。
ガードロモンとの友情! 僕も戦うテイマーヒロカズ
脚本:浦沢義雄 演出:吉沢孝男 作画監督:浅沼昭弘 美術:須和田真
いつもはサブタイトル・バックはキャラ表の絵をパースをつけて動かすだけなのだけれど、この歯を剥いたヒロカズの絵柄は描き下ろしな気がする。更に炎のエフェクトまでつけられた豪華版。当然コールもヒロカズ。
まずはクルモンがどういう状況にあるかを明示。
どこかの領域を、頑丈なる鉄の檻が浮遊。
巨大な滝から伸びる路なのか。人間の文明とは掛け離れた、異星人の構築物に見える。
路の先には――光。《神》がいるところなのか。
しょぼーん……。もうデジノームも助け出せない。
この「神の領域」は、違っていたら恐縮だけれど、貝澤さんと渡辺さんがヴィジュアル化されたものだと思う。私は抽象的な概念図を提示しただけだった。
今話の須和田さんの美術は、テイマーズでは珍しく透明水彩を基調とした素朴なテイストに仕上げられている。
さて今話もBGM「人々」から始まる。タカトらとはぐれた一行――。
クルモン、大丈夫かな、と樹莉。
クルモンが彼らにとって大事な存在なら、恐らく大丈夫――とレオモン。そう自信ありげな発言ではない。
留姫ちゃんもそう思う?
足を止める留姫。
樹莉。
なあに?
「ちゃん」はやめて。
ちゃん?
留姫ちゃんの、ちゃん。
あ……。
固まる男子。
幼稚園の園児じゃないんだから。小学生なんだから。
ごめんなさい、と謝る樹莉。
それも小学生の5年生、高学年なんだから。
留姫、謝ってるんだからもういいじゃないか、ととりなすレナモン。
……。
許してあげる。樹莉ちゃん。
もう……。ぷふっ。
男子もにっこり。
レナモンもにっこり。
浦沢さんの脚本はホントにこういう感じに書いてあった気がする。
我々は樹莉の「留姫ちゃん」呼びに慣れていたというか、麻痺していたのかもしれない。浦沢さんから逆に修正されたという。
まだ物理レイヤーの荒野。今これを描くならUnreal Engineだとオープン・ワールドも作れそうだ。
タカトどこ行っちゃったんだろ……。
ギルモン! タカトの代わりに俺がテイマーになってやろうか。
ギルモンのテイマーはタカトだけ。
遠慮すんなよぅ!
遠慮するーっと逃げ出すギルモン。追いかけるケンタ。今話のケンタの態度が痛い結果を得るのだが……。
ヒロカズ、見咎めてケンタを止めようとすると――
地面に埋まっていく!
レナモンたちも――
何が――
結局全員が――
別の世界へ――
落ちていく。
樹莉はスカートを抑えている。
前話とはまた違った森の水辺。
木々の枝を折りながら落ちてくる――
ボキバキと少し痛そう。
いち早く降り立つレナモン、
勿論留姫をエスコート。
腰から落ちてしまうヒロカズ。
レオモンは樹莉を抱いて降りた。
いててて
わあ!
わーーーーーーーーーーっ!
ぐしゃ。
タカトたちと余計離れちゃったみたい、とケンタ。
ギルモン、見上げる。
タカトーーーー!
この野沢さんの叫びは本当に心がこもっていて、胸に響く。
タカトらは――
まだ光の柱に囚われていた。
うあー、どこ行くんだろー!?
離れちゃ駄目だーっ!
モーマンターイ
ここは一体……。
ギルモンが水が呑めるのか匂いを嗅いでいる。
やはり水に見える、データ。
と、向こうから野太い声がする。
オロチモーン!
誰?
行こう! すぐさま走り出す留姫。
走る――。
葦を割ってみると――
オロチモン! 出て来ーい!
巨大な石を池に投げ込む。
高い水柱が上がる。
判り易い、枝を踏む音。
ん? と振り向く。
これこそ、敵か味方か。
なんだお前たち?
レナモン!
留姫の前に跳び、臨戦態勢。
レオモン!
獅子王丸の柄を握る。
ギルモン!とケンタがテイマー気取りで叫ぶ。
俺テイマーじゃないから強くは言えないけど……。
ギルモン、みんなを守る!
やはり……、オロチモンの手先!
違う。とレナモン。レオモンがオロチモンとは誰だと訊く。
この世界を支配する強いデジモン――。
お前は?
自分で言うのも恥ずかしいが――、正義のアンドロモン!
シャキーン。
アンドロモン、データ種サイボーグ型完全体――。
背後の水が盛り上がっていく。
ああ!?
身構える。
姿を現す、(八岐の)オロチモン。
逃げる子どもたち。
三体は応戦の構え。
にじり寄るオロチモン――
ガトリング――
ミサイル!
発射!
しかし威力不足で、当たってもそのまま池に落下。
愕然。
アンドロモン、右に左に――
痛めつけられ――
投げ飛ばされる。
樹莉がデータを読む。オロチモン、完全体、必殺技はアメノムラクモ――。
怖いと感じている樹莉――
その樹莉を、じっと睨めるオロチモン。
子どもたちの中でも、樹莉だけに関心を抱いている。
迫ってくる。
声も出ない。
レオモンが駆けつけて前に立つ。
ふふふ、と嗤い声。
獅子王丸の刃を光らせる。
下がっていくオロチモン。
ちょっとビオランテっぽい動き方。
呆然。
沈んでいくオロチモン。
オロチモン、強い、と呟くケンタ。
そんな事より! と駆けていくヒロカズ。
ダメージを受けて気を失っているアンドロン。
怪我してる、とヒロカズ。手当しないとと訴える樹莉。しかしどこで――
あっ! 煙!
木々の向こうから立ち上る煙。