第27話回顧 1
今話から3クール目に突入。ベルゼブモンが初登場するのだが、それは殆ど終わり部分で、顔見せ程度。サブタイトルの後半はちょっと言い過ぎている。
《神》の声によって導かれつつもデジタル・ワールド内を彷徨っていたインプモンに、どういう運命が待っていたのかが主題。
そしてタカトたちが遭遇するツチダルモンの集落を繰り返し襲う呪われたバイクがパラレルに描かれる。
脚本の前川さんと演出の芝田さんは、インプモン/ベルゼブモン絡みを多く担当。作画は八島さん一人作画。今回だけ、美術は同時期に「も〜っと! おジャ魔女どれみ」(プロデューサーは同じ)の美術デザインを担当されている行信三さんが担当された(経緯は知らない)。
前話リプライズの後、直結して始まるのは、留姫たちの凧が遥か向こうの物理レイヤー荒野の地平から浮上した場面。しかしそこから急速にキャメラは後退していく。
ここまでワンカットで描かれるという度肝を抜く開巻。
おーい!とタカトが留姫たちを探している。
恐らく――とレオモン
あの光の柱に飛ばされて別の世界に行ったのだろう。
別の世界? じゃあぼくたちもあの光に触れれば留姫たちのところに――
いや、必ずしも同じ場所に飛ばされるとは限らん。止めておいた方が賢明だ。
参ったな。クルモンも探さなきゃいけないっていうのに――
ま、どうにかなるんじゃない? モーマンタイ
テリアモンみたいな人物が中にいると、本当に有り難い。
? どうした樹莉。
うん、ちょっと疲れちゃった。
ずっと歩きっぱなしだったからね。どっかで休もうか、とタカト。
ねえジェン、見てあそこ――
インプモン進化! 魔王ベルゼブモンの戦慄
脚本:前川 淳 演出:芝田浩樹 作画監督:八島善孝 美術:行 信三
トーチカの様な人工物が群居している。
徐に大声で、誰かいませんかーーーーー?と叫ぶ樹莉。
大胆だなー、加藤さん ……。
! これは――
タイヤの跡だ――。
耳をピンと立てるギルモン。ん?
走るバイクのホイール。
この音って――
急にバイクが姿を見せる。
ドリフトターンして――
こちらに向かって加速。
ああっ!
奔るバイク――、
威嚇する様にウィリー。
こっちに来る!
避けろ! わあああ!
バイクは無人に見える。通過してもまたターンして――
再度突進。
明らかにぼくたちを狙っているよ!
どうして!?誰も乗っていないのに!
バラバラに逃げるんだ!
バイクはタカトとギルモンを追う。
タカト、こっちに来る!
うえええええ!
必死に走るタカトとギルモン。
トーチカの一つが前に――
と、扉が開いてくまの子どもの様な――
うわあああ!?
もうバイクが来る、と二人別れる。
バイク、そのまま子どもの方に向かって――
すんでのところでレオモンに救われる子ども。
しかし心配して顔を見せた、父親らしき――
バイクに衝突され反対側の壁をぶち破られる。
憐れにも量子崩壊。バイクの上に、二つの赤い目をした小さな――
バイクは獲物を得たからか、走り去って行く。
何だったの?あれ――
と、あちこちのトーチカから顔を見せる住民たち。
!?
同一種らしい。
背後からも――
どんどん姿を現してくる。
何か出てきたよ、変なのがいっぱい……。
囲まれる一行。
ぼくたち何もしてないよ、と慌てるタカト――、思い出してD-Arkでスキャン。
ツチダルモン、ミュータント型デジモン、成熟期
長老らしき者が前に出てきて代表して礼の挨拶。
ユキダルモンというポピュラーなデジモンがいるが、その亜種とされるのがツチダルモン。ここでの描写はイォーク的だが、イォークは結構戦闘的な種族だった。
長老のトーチカ。
仲間を助けてくれた御礼だと、食べ物を提供してくれるのだが、土塊にしか見えず、タカトらは逡巡。
しかし樹莉は、いただきまーすとかぶりつく。
いける!
か、加藤さんて……、
靄がかかった石畳を歩くインプモン。
デジタル・ワールドに来ても、身体に受けたダメージはそのまま残っており歩くのも辛い。
はぁ、はぁ、と息をする。何だよここは――。誰もいねーのかよ……。
真っ白で何も見えねぇ。
しかも寒い。
切れて悲痛な大声を上げる。すると――
大きな黒い影が。
だ、誰かいるのか?
くそっと前に向かう。
姿を現す戌のデーヴァ、チャツラモン。
インプモンは何か言われるのを待っているが――
冷たい目で見つめるばかり。
ただの置物か……。
お前は強くなりたいのか? といきなり太い声を出すチャツラモン。
驚き尻餅をつく。
最初は怯えていたが――
てめ、デジモンだったのか……? 脅かすんじゃねー!
強くならんと欲する者が強く進化が出来る。それがデジモン本来の姿、本来の在り方。
何訳の判んねー事言ってんだよ!
じっと見下ろす目。
ギルモンが子どものツチダルモンと遊んでいる。
樹莉はハンモックで眠っている。
タカトらはご馳走になった上休ませて貰い、長老に感謝している。
いいんですか? ぼくたちにこんな事して――とジェン。
どういう事かな?
後でデーヴァの奴らにひどい目に遭わされたりしない?ってこと。
デーヴァ、その様なものについては判らないが心配無用じゃ。
ここはデータの吹きだまり。忘れられた村じゃ。誰もこの村の事を気に掛ける者はおらん。
では、さっきの鉄の獣は何だ?とレオモン。
あれはバイク。しかし誰も乗っていなかった……。
あれについてはわしらもよく判らんのじゃ。突然現れ、村中暴れ回って走り去る。
じゃあめちゃめちゃに壊れてた家もあのバイクが?
そうじゃ。鉄の獣が村に現れたら、必ず誰かが犠牲になるんじゃ。きっと乗り手を探して彷徨っているんだという者もおるが――、この村にそんな者がいる筈がない。
そんなぁ! 誰かが犠牲だなんて!
ばちーんとやっつけちゃえばいいじゃん!
テリアモン!とジェンが叱責。
それで、お前たちはここでやられているだけなのか?
他の村に移ればいいんじゃない?
だから、ガツーンと――
テリアモン!
むえむむ
変顔。
棄てられた情報の中で、わしらはここで生まれた。わしらにはここしかない。
でもただやられるのをじっと待ってるなんておかしいよ!
タカトの肩を叩くジェン。
タカト、ちょっと。
何?
ねぇタカト。この村にはこの村のやり方というのがあるんだ。だからぼくたち余所者があんまり干渉しない方がいいと思う。
ジェン――
それにぼくたちには留姫たちやクルモンを探す目的があるんだ。加藤さんが目を覚ましたら、すぐこの村を出よう。
しかしタカトは納得がいっていない。
子どもたちとギルモンの笑い声。
ギルモン、弄ばれている。
あの子たちも犠牲になるかもしれない。そんなの良い訳ないよ!
タカト――
強い意志の顔。
さて、これは重い問題だ。2001年に作られ、世界中でも観て貰えたアニメだが、決して現実世界の状況をここでカリカチュアしているなどと考えた視聴者はいまい。
しかし今尚、こうした観点で考えねばならない問題はある。そしてそれに拙速な回答が得られるものではない。
どの道このエピソードでは、行くだろうと想像される方向へと話は進むのだ。2021年の現実とは関係がない。
ぼくも、タカトに、ちょっと賛成、かな……?
控えめにテリアモンもタカトに賛成票を投じる。
ジェンは、趙先生から学んだ事が頭にあるのだ。事の善悪には二面性があるのだと。この思想はタカトには共有されていない。タカトは自分が感じる義憤で行動しようとしている。
しかしジェンも、デーヴァが手段も犠牲も考慮せずに攻撃してくる《悪いデジモン》なのだとは、納得していた。だが、デジタル・ワールドの辺境で、他種と闘争せず、ひっそりと暮らすデジモンがいるとは想像していなかったのだ。
さて、凄い枯れ木の森が描かれている。
トボトボトボ、と歩くクルモン。
ん~ん? だあれもいないクル……。
地面にはサイケデリックな模様が。この場面の美術は、私が《小世界》として思い描いていた、現実には有り得ない光景というものを具現化してくれている。
見上げるとリアル・ワールド球。
ん~、こういうの――
寂しい、っていうクル?
デーヴァ編に入ってからのクルモンは、積極的にレオモンを応援したり、自分が疲れていても三体完全体進化を助けたりし、樹莉にずっと抱かれていた事もあって、既に感情が発達していた。ただ、それを自分で意識はきちんとされていなかった。
てめえもデーヴァなのか!?
デーヴァは神に仕えるしもべ。神に従えば、己が望む力、己が望む姿が与えられる。
へっ。誰がてめーらの味方になるかっての。
そんなに人間が恋しいのか。
えっ!?
調子ぶっこいてんじゃねー!
ふっと笑いを一息漏らしたチャツラモン――、少し前のめりになって――
両眼から眩い光を浴びせる。
うあああああああああ!
必死に両腕で目を覆うが――
光が去ると――
ここは、俺がいた――
家……。
期待していた存在がそこに――
仲良さそうに遊んでいる――
アイ、マコちゃん、と声を上げるインプモン。すると――
ここでCMだがこの場面は続ける。
こちらに振り向き立ち上がる二人。
嬉しい。しかし――何て言い訳したらと逡巡する。
二人笑顔になって――
おーっす!
駆け寄ってくる二人。
んははは!とインプモンも駆け寄る。
インプモンを透過して――
!?
え――。
犬を連れて来た父親。
またも取り合いをする二人。
愕然。
チャツラモンの声が響く。
人の世界にお前の居場所などない。
元の神殿らしき場所に戻っている。ここから――
このカットまで周り込みワンカット。
デジモンは人に帰依してはならない。デジモンはデジモンに帰依するのだ。
手をつくインプモン――。