第23話回顧 2
タオモンはライターにとって極めて有り難いキャラクターだった。陰陽師的な要素にインド哲学的要素が原デザインから引き出せる。梵筆閃以外にも、梵字を用いた切り札を後から考えつける。
前エントリから音楽も繋がっていて分けるのもどうかと思ったが、幾ら何でもブログとして長すぎると感じて一旦切った。
運命の煌めきのカードで――
ラピッドモン、タオモンは脱出成功。
ラジャス――
インド哲学用語としては様々に解釈されるが、ここでは「風」の要素として用いたと思う。
粘性の闇を風の様に斬り裂き――
ヴィカラーラモンの口腔内までの空間が出来た。
ラピッドモン!
背中のランチャー、両腕からのラピッド・ファイアー!
精密誘導弾の様に全弾が吸い込まれる。
ヴィカラーラモンの口腔内で爆発!
二次爆発。身を仰けらせて煩悶するヴィカラーラモン。
ここまでのダメージを与えられた! 喜ぶラピッドモン。
やりーっ! いける! 倒せるよジェン!――
あれ……? 力が抜けてくよ――?
静まっているヴィカラーラモンの背から繋がっていた光粒子が途切れる。
それを起こしている――
都庁のシャッガイ。
オン! タオモン、陰陽の結界を張り、ラピッドモンを呼ぶ。
シャッガイの牽引から一時的に逃れられるが――
唖然と見上げるジェンリャ。
何が始まってるんだ……?
シャッガイの制御領域、物理レイヤーに達しました。
哄笑する山木。私はあんたたちとは違う。
力の使い方を知ってる。
ジャンユー、もうここにいる必要は無いと立ち去る。
もうあんたらに出来る事なんてないさ!
警備員が走ってくる。勝手な行動は禁じられてます!
ジャンユーのワンカットのアクション。
無闇に相手を痛めつけない、護身術的な実戦武術。趙先生仕込みと思われる。
駆け出すジャンユー。
ジェンリャァァァァァァァ!
呆然と立ち尽くすタカトの身体を揺するジェンリャ。
タカト君――、タカト!! しっかりしろ!と檄を飛ばすジェンリャ。
ギルモン……、ぼく、判らないよ……。
何がよ!と留姫。
何でデジモンは進化すると大きくなって、武器とか強くなって、どんどん友だちじゃなくなっちゃう……。それが進化なの……?
これは私がデジモンというものを原理的に掘り込んで考えた時(企画初期)に私自身が抱いた疑問でもあった。吉沢さんは少し台詞を変えて、「友だちなのか違うのか」にフォーカスを絞る。
友だちだよ! 強い語気の留姫の声。
どんなに強くて大きくなったって、タオモンはレナモンの時と同じ、私の友だち!
大きく強くなっていくには、きっと理由があるんだよ、とジェンリャ。
理由……?
シャッガイがネットワークの物理レイヤーを制圧しだした。即ち、リアル・ワールド側もその影響に入り、デジタル生命を牽引して粉砕しようとしている。
空から次々と光の柱が降りてくる。
ヴィカラーラモンの巨体までもが歪んで牽引されている。
マグマ塊ごとメガログラウモンまで――
タオモンの結界陣が徐々に削られている。
不穏な空―― 樹莉たちが避難している花園神社。
樹莉に抱かれたクルモンが怯えきっている。
クルモン、知らないクル……。そんな事覚えてないでクル……。
どうしたの?クルモン――
誰と喋ってんの?
耳を塞いで泣いているクルモン――
ヴィカラーラモンがリアル・ワールドはおろか、デジタル・ワールドからも抹消されようとしている。
ラピッドモンが呼ぶ。ジェーーーン!
ぼくたちのデジモンも消されてしまう! どうして――
すまない、という声。
ジャンユーが。
お父、さん……。
ヒュプノスの全周天モニタ、グリーンバックに。
山木は望ましい結果が近いと(監査委員に)報告。
御期待に添えられて満足ですと報告を終える瞬間、山木のサングラスに機械語が映り込む。
全周天モニタを埋め尽くす機械語。 なんだこれは!?
ネットの深いレイヤーから送り込まれているものです――!
解読します――。
しかし、そのメッセージはこの後、マクラモンによって言語化される。
怯える樹莉――
まくらくん――、
ジャンピング・クローズ・アップ。「キャリー」でブライアン・デ・パルマが極めて効果的に使った技法。
おまえ――!
くっ、と笑って俯くまくらくん。
混乱する樹莉。
我らと我らが住む世界を作った人間よ。
我らの創造者とは言え、進化した我々にとって最早《神》ではない。
何――言ってるの……?
我等は我等の世界を守る。当然の事だ。
しかして人間は我等の世界への干渉を深め、我等の世界を脅かす!
ヒュプノスでもその声は響いている。
我等はより高みに進化する権利を有す。
我等の進化を阻むものがいれば、それは排除しなければらない。
見上げている眼鏡の女性が、前回シャッガイ・コントロールをしていた技術員だったのかもしれない。
なんだと!?
そして暗渠トンネル――、インプモンに近づいて来る光が、ただの光源ではない事が判ってくる。
赤い格子グリルと明滅しランダムに浮かぶ、デジタルなサイン――
なんだってんだよ……!? お前誰なんだよ!
突如威厳のある声が響く。
強くなりたいか。我々は皆進化すべき存在。力が欲しいのだな……?
インプモンは逡巡。《神》なんて……。
アフレコに行くと、森山周一郎さんが来られていて喫驚した。多くの外画・ドラマで子ども時代から聞いてきたお声だ。惜しくも2021年2月に逝去された。
このデジタル・ワールドがリアル・ワールドに現れた時、どういう見え方をするのか、私がなかなか想像出来なかったので、荒牧伸志さんに作成して貰ったのが、この《ゾーン》のイメージボード。これを元に、撮影効果で工夫されて描かれている。
荒牧さんには、究極体進化の際、テイマーの子どもとで融合的に一つの身体となって戦う、という私の原理主義的な拘りを、「こういう表現をすれば描けますよ」というプレゼンテーションをする為に、甘えて何枚かのイメエジボードを描いて貰っていた。
その後、デジタル・ワールドの基本と、究極体マトリックス・エヴォリューションをした時、子ども達がどういう状態になるのかをシミュレートした図を描いて貰って、確信を得られた。これは該当回時に記すが、それ以降も何かにつけて甘えてしまう。何より大きかったのがデジタル・ワールドの元型的なイメエジ・ボードだった。
更にその後、最終展開のデ・リーパーによる地上侵攻がプラン変更を余儀なくされた時(後述)、頼ったのも荒牧伸志さんだった。
結局荒牧さんは、既に美術デザイナー系の予算枠では支払いするのが困難であったのだが、関プロデューサーの計らいで、究極体進化のバンク演出(各話予算とは別枠だった)を担当して貰えた、これで企画初期からの私の想像力を補強して貰えただけの対価はは出せるという事に。
後に関プロデューサーは取り次ぐ事で東映アニメのCG映画「キャプテンハーロック」に荒牧さんを監督に起用する。
クククと笑いながら、首をだらんだらんと左右に振って近づいて来るまくらくん。
怯える樹莉のドリー・バック(と自主映画界隈では呼んでいた)技法。キャメラを移動車に乗せ、写っている人物のサイズは変えずに、ズームアウトしながらトラック・インする事で、背景の空間が凝縮していったり、逆にすれば背景が遠のく感覚。アルフレッド・ヒチコックが「めまい」で用いて、多くの作品が引用したが、有名にしたのはスピルバーグの「JAWS」だ。吉沢さんと映画の話ってした事なかったなぁ……。
首を180度回して――
お前だーーー!
きゃあああああ! しかしその狙いは――
緊張感MAXでCMへ。
今もそうかもしれないが、アニメのシナリオはCM位置を指定して書くのが常識となっていた。私は、それは演出家マターだ思っており、基本的には書かなかった。
レゴっぽい造形のデジモンのアイキャッチは、シリーズ終盤で演出デビュウする演出助手、地岡公俊氏による。明るいビッグバンド・ジャズ風のコミカルなアイキャッチは、子どもをホッとさせただろう。
今の新宿追分をGoogle Earthで見てみる。歩道橋がない。Y時に別れたすぐ右側(南側)に花園神社がある。
キャプチャー付きの解説が"映画の教科書"になっています。
— まさきひろ(廣真希/広真紀) (@qeIQKOVicj9PIS9) 2021年5月16日
次回、BOX出る時は、ぜひ演出家さんと副音声コメンタリーで!
ドリーバック(Dolly Zoom)の解説画像https://t.co/048166aA56