Digimon Tamers 2021 Blog

デジモンテイマーズ放映20周年記念ブログ

Digimon Tamers 2018 「Days -情報と非日常-」


デジモンテイマーズ2018」については、Twitterでも記したので読んでいる人は多いと思うが、整理して時系列で書き直してみる。

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2018年春、デジモンテイマーズBlu-ray Boxがハピネットから発売された。アドベンチャー、02に続いて無事に発売が決まった。


初期デジモンアニメは、デジタルに製作は移行していたが東映アニメは早かった)、まだフォーマットは640x480というSD画質だった。フィルム撮影されたセル・アニメだと、HDでのリマスターがとても有効で、「serial experiments lain」は35mmで撮影されていたので高画質化が可能だった(が、アナログ時代のセフティ画角が狭く、カット毎にとても大変な修正を上田Pが少数スタッフとで行った)
端境期のSD画質デジタル・アニメは、HDコンバートというプロセスを経る。今はソフトウェアの機能が上がっているのか、不満のないクォリティになっていた。

4クール作品としての価格は抑えられてはいたのだが、しかしそれなりの定価にはなる。そこで初期デジモン4作は、新規録音のCDドラマを特典としている。

 

私に関プロデューサーから、十年以上ぶりに連絡が来たのは2017年初夏。秋に録音するという。登場人物はテイマーズの場合、メイン3人+デジモン3体くらい、という話だったのだが、野沢雅子さんは出られると聞いて、そこはやはり嬉しかった。
多田葵さんもご出産時期に重なっていたのだが、何とか録音は調整――ではなく、運が良かった。
レナモンを演じられた今井由香さんが声優を引退されていた。テイマーズは「その後」は無かったのだが、他の作品では別の方に引き継ぎがされており、安直に今回だけお願いなどは出来ないと知って、これはショックだった。
今井さんが不在という事は、レナモンが不在になってしまう。


2003年の「メッセージ・イン・ザ・パケット」がしんみりとした作風で、それが私にとってテイマーズの最後になっているというのは本意でなく、もう不在感をドラマで主題にはしたくなかった。とは言え、留姫にとっては依然重要なのだけれど。

話が来た頃、私はカナザワ映画祭トークショウ(朝松健さんとの)があって、金沢行きの新幹線の中で、延々とテイマーズの主題歌、挿入歌、キャラソンサウンドトラックを聞いた。
「SLASH!!」を久しぶりに聴くと、十年以上も経過しているのに未だに心に滾るものを感じた。挿入歌は、進化ソングがこの後「EVO」「One Vision」が登場するが、1クール目は「SLASH!!」が決めの歌になっていた。スラッシュ・バンクはシリーズ終盤まで使っている。

恐らく、CDドラマは、久しぶりの旧交を温める的な、緩いものが想定されていたと思う。
だが私は、「SLASH!!」を使いたいと思った。という事はバトル場面がある。
映像のないオーディオドラマで、どこまで出来るのか。そしてどうすれば成立するのかを考えていくのだが、テイマーズは2001年に放送をした、2001年の話だったという大原則にたち戻る。
2018年に聴かれるなら、時制も2018年でなければならない。これがテイマーズだ。


しかし勿論大きな問題がある。
タカト役の津村まことさんは幅広い声を出されるが、とは言え青年は無理をさせてしまうし、何より視聴者が親しんだタカトではなくなってしまう。
一方、ジェンの山口眞弓さんは、最初の頃はリアルな変声期の少年、という風に聞こえていたが、シリーズの後半で重い責任を背負うジェンを聞いていると、大人になってもこういう声でも全然おかしくないと思っていた。
留姫役の折笠冨美子さんは勿論大人の留姫に問題はない――。

いつしかもう、私は2018年のテイマーズ以外に考えられなくなっていた。2004年とかの時制で作った方が楽なのは当然だ。しかし、今、視聴者にとっても昔の話を聞かせられても、懐かしさしか感じられないだろう。

中学生になったタカトが、理屈は置いておいてタイム・スリップして、2018年のジェン、留姫と出会い、そしてギルモン、テリアモンと再会する――。
それを成立させるには、山木が不可欠だった。樹莉も必要だった。
幸いにしてこの交渉は通って、プロットを考えた。それが2018「Days」となる。


最初にプロットを、関プロデューサー、ハピネットの担当プロデューサーに読んで貰うと、「力作のプロットを……、ありが……う~ん」みたいなメールが来て、まあ戸惑われていた。
アニメという映像がないのに、この情報量を音だけで表現出来るのかも未知数だった。
今回のCDドラマは、シナリオ作りと音響効果の指定の演出は貝澤さんが担当(スキャニング・カード・スラッシュというコールは貝澤案)、レコーディングのディレクションと仕上げは角銅博之さんという2人のディレクターが分担され、私はどちらも懇意なのでとてもやり易かった。

一番問題とされたのは、30分(オーダーは22分くらいだったと思うのだが、アニメのシナリオから10年離れていて勘所を失っていた私は、丸々30分のドラマを書いてしまった。アニメだと1.5話分はある)で物語は終わらず、クリフハンガーで「続く」となっている点だった。

特にシリーズ序盤は、テイマーズはそういう作劇をしていたので、続きがなくても成立すると私は思っていたが、とは言え、という価値観も判る。
しかし、こぢんまりとまとめるのではなく、テンションを目一杯に張って、勢いのあるテイマーズを再度描いてみたかった。いや、聴いてみたかった。
結局私は「視聴者の為に」と言いながらも、自分が面白いと思うものしか考えられないのだ。

ハピネット担当Pが「ワクワク感が戻って来たと思う」という意見を言ってくれて、このプランが承認され安堵した。担当者もリアルタイム世代だった。


用語の説明などはライナーノーツで補綴するという事で、最新のSF概念やテイマーズの時代から何世代も経た現時制での用語などを用いたが、冒頭のナレーションは堅苦しい用語が多く、シリーズでナレーションを務められた野沢さんにお願いするには忍びない。最終話で独白をしていた17年後(シリーズ終了時からは16年後だが)の山木に振り替えた。

「メッセージ~」では描けなかった、デジタル・ワールドにいるギルモン、テリアモンの芝居を書けるだけで、私は多幸感で一杯だった。
なるべく当時の様な空気感で、しかしシリーズにはなかった様なシチュエーションでの2人の場面を観たかった。いや、聴きたかった。


テイマーズでは、恋愛的な関係性は極力行かない方向へと当時は舵取りしていた。キャラクターの誰と誰がカップルとなる、という想像を、特に女性ファンはデジモンに限らず重視しながら、自分なりの愉しみ方をしていた。それは自由にして貰って構わないのだけれど、作り手側としては、視聴者の思惑と掛け離れてネガティヴな印象を持たれるのは避けたいと、これは初期の構成から明瞭にしていた。
なので、第1話から最終話まで貫いているのは、タカトの樹莉に対する仄かな憧れみたいな感情で、特に第二部終盤から第三部への強烈な動機付けとなっている。しかし、実のところ樹莉がタカトをどう見ていたのかは――、私にも断言が出来ない。それでいいと思った。

当時、放映直後とかの私のインタヴュウで、「テイマーズは、タカトのラヴストーリーだった」という言い方をした時があったが、それは上記の様な裏事情があっての事であり、これは些か言い過ぎたと思っている。

なので2018でもそのラインは堅持し、だが特別な進展はまだしていない、という状況から始まるのだが――、2018年には……、と、やや踏み込んでいる。2003年と2018年の樹莉が登場する。これは浅田葉子さんが見事に演じ分けられた。

16年後のジェンや留姫がどうなっているのか、は、想像するのが楽しかったが、これもシリーズの延長から大きく離れない様に留意した。

ドラマは、「これからどうなる!?」というところで終わり、AiMさんの「Days -愛情と日常-」が流れる。それが終わるや「The Biggest Dreamer」のインストゥルメンタル・ヴァージョンが流れ、タカトが勢いよく次回予告をして、「君も、テイマーを目指せ!」。これがないとテイマーズ感が失われる。更にダメ押しの様に、オンエア時についていた提供バックまでつけた。「Days」のインスト版の短いクリップ。

Blu-rayでシリーズを見る前か後か、ともあれ買った人に一番喜んで貰えるものを目指した。

2021年に本ブログを書く為、リアルタイム以来本気で見返して、色々「そうだったのか」という発見があったけれど、一番大きいのは、映画「冒険者たちの戦い」で作られた劇伴が後半はメインとも言える選曲をされていた事だった。その音源はCDにしかなかったので、2018「Days」の音楽はシリーズ前半の音楽から選曲をした。

 

シナリオに貝澤さんが音響効果の指定を割り付けたものを、既にここで公開している。

用語の説明、録音の時の様子などについては、ライナーノーツというものを記している。

録音の様子は、「アニメアニメ」が熱心に取材をしてくれて、キャストの方々のコメントも含め、この記事で紹介されている。

animeanime.jp

 

そして来たる8月1日に、デジフェスが開催され、朗読劇「デジモンテイマーズ2021」が上演される。

デジフェスの模様は有料配信がされるが、後に映像メディアとしては発売されないのだそうで(諸々な権利関係がある事情)、この朗読劇は本当に一夜の夢だ。

設定的な事をやっている余裕などないので、はっきりと今回の朗読劇は2018「Days」の続きという事にして、2018の「その後」を描くのだけれど、テイマーズの正史としては残らない。

デジフェス公式アカウントが、2018「Days」の内容を周知させたいとシナリオをサイトに上げたのは、こういう事情があった。来場者、配信聴取者皆がCDドラマを聴いている筈がないので、ざっくりとした内容だけでも知っておいて欲しいという心遣いであった。

 

今回は高橋広樹さんと金田朋子さんも出演して貰える。インプモン、クルモンは本当に20年振りなので、私個人的にも楽しみである。

 

 

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