第1話回顧 2
1話ミッド・ポイント。私が一番描きたかった場面。
雨がポツポツと降り出してから、本降りになるまでの過程が丁寧に描写されていた。
渡辺佳人さんの美術はほぼ劇場映画クラス。
そしてタカトは夢の世界へ――
D-Arkが大事で手放せない。
D-Arkの内部では――、鋭い目つきのギルモンが既に――
無人の街中、突如光の柱が立ち上がり、環状の光が周囲に広がっていく。これはCGではなくエフェクト・アニメーション。
ベッドで眠っている筈のタカトが、その現場上空に浮かんでいる。
眼下に一人立つ少女――留姫。
アップの目を見開いた顔はこの場面では迂回されている。
サングラスを外すと――
この立ち姿――。だがその背後にはレナモンが待機している。
今現れた光は、リアライズしたばかりのランクスモン。レナモンを見つけるや、強烈なパワーで襲いかかる。しかし留姫は冷静だ。
夢の中にしては、あまりにリアルな感触。
鼻孔が描かれる。この一連のシークェンス、中鶴さんが結構のカットを描かれているんじゃないかと想像していたが、確認した事がない。
力で圧されて動けないでいるレナモン。留姫はカードを選ぶ。「高速プラグインB!」
カード・スラッシュ! しかしここではまだ曲は流れない。
タカトは察する。「デジモン、テイマー」
カードの支援を受けたレナモン、ニヤリと微笑むや――
素早くランクスモンから抜け出し高く飛翔――
この時――、
虚空に浮かんでいるタカトと、一瞬目を合わせる。レナモンはタカトを認識している。
しかし構わず、「狐葉楔!(こようせつ)」という技でランクスモンを撃破。
朝――、目覚めるタカト。果たしてさっき見ていたのは夢だったのか?
さて今のシークェンスの流れ、留姫はタカトを認識していないが、レナモンは認識している。タカトは留姫にこの後リアルに会うのだが、レナモンは寡黙なので、目撃された事を語らない。
このタカトの明晰夢は、やはり体外離脱体験 Out of Body Experienceだったと解釈出来るだろう。シリーズではもっと奇妙な出来事がエスカレートしていくので、この一話の体験が何を意味するのかもあまり問われた事がなかった。
私は「こういう体験」を、多分してみたかったのだと思う。
後年、中村隆太郎監督と最後に組めた「神霊狩 –GHOST HOUND-」は、士郎正宗氏のラフな原案を元に組み立てた物語だったが、地方の少年たちが体外離脱する、というのは原案にあるものだった。第一話で、主人公・太郎が山々の連なる九州の夜空を、夢の中で飛ぶ。その時、神社の小径で小学生の少女・都(みやこ)が太郎を見上げている――。これが二人の出会いで、この場合は両者ともに認識している。「神霊狩」ではこの冒頭のシーンだけではなく、シリーズ中幾度もこうしたシチュエーションがキャラクターを換えて描いた。
正直なところ、この事に気づいたのは2021年にテイマーズを見返した時で、「神霊狩」で反復するなど全く自分では意識していなかった。原案にあるのだから、と最大限までこの描写をした自分の心理など全く不明なのだけれど、多分強烈に、私は少年時代も、テイマーズを書いた頃までも、そうした願望を抱いていたのだろうとしか思えない。
さて一方、冒頭で西新宿に飛び出してしまったクルモンは、街中で途方にくれている。ここが何処なのかも判らない。
クルモンという可愛らしいデジモンがレギュラーにいる。そしてパートナーはいない。デジモンの進化に関与している――というのがWIZ/バンダイからの企画時の提示だった。女子向けな商品展開を意図されていたのだろうと思っていた。
可愛い系なら既にテリアモンがいるし、どう描き分けたらいいのかなぁと悩んでいたが、貝澤さんが以前シリーズ・ディレクターを務めた「まもって守護月天!」で、強烈な個性の若い声優さんがいて彼女にピッタリだ、と推したのが金田朋子さんだった。
テイマーズに限らず、声優さんの演技で脚本のダイアローグや芝居が変わっていくのが私の好むスタイルだった。クルモンについては、金田さんの個性に助けられたのだった。奇妙な「~でぇすか?」「~~だ~クル」といった口調は貝澤さんの指示。
私はアニメ、というよりはテレビまんがだった時代の、語尾にやたら何か変な言葉をつけるダイアローグを好まなかったのだが、クルモンについては何ら抵抗がなかった。
※また、浦沢義雄さんの脚本回に登場するデジモンはまさにこのタイプが多かったのだが、浦沢回についてはTwitterでかなり書いたので、いずれ採録する。
翌朝、登校前の怪獣公園(だったと記憶)で、昨晩の話をするとからかわれるタカト。
このケンタ(青山桐子さん)とヒロカズ(玉木有紀子さん)のリアル小学生男子っぷりには初回から感銘を受けた。
いずれはテイマーが増えていく想定はしていたが、ヒロカズやケンタ、ばかりか樹莉までもオープニングでD-Arkを掲げる演出を貝澤さんがしたので、もう間違いなく彼らもテイマーとなるのだが、そうそうすんなりとはいかない。
「やーいおねしょ~」とからかわれて抗議するタカトが、実に愛らしい。
さて、一話のAct.3は完全に貝澤ワールドとなる。