第43話回顧 1
2018年に本シリーズのBlu-rayボックスが発売されたが、その宣伝の意味で第1話のHDリマスター版がUHF局で2017年に放送され、少し間を空けてファン投票によって選ばれた回が2018年1月に放送された。それがこの43話だった。
インプモン~ベルゼブモンのエピソードとしては最も昂揚感のある回だが、これで終わる訳ではない。この回が人気なのは、ブラスト・モードに進化するカタルシスがあるからなのは間違いないが、前半の子どもたちの非日常的な日常風景――、パン作りなどの楽しい場面もあったからだと思う。
脚本は勿論前川さんが担当。演出は終盤の軸となった梅澤さん。
リアルな芝居、可愛い系、実在兵器バトル、デジモン・バトルと今話に込められた要素はとてもノーマルなフォーマットのアニメではない。原画は作画監督の浅沼さん含めて9人。美術は清水さんという43話。
つながる心 復活のベルゼブモン
脚本:前川 淳 演出:梅澤淳稔 作画監督:浅沼昭弘 美術:清水哲弘
今話はかなりイレギュラーな導入部。前話リプライズの終わり近くから、前話とは違う繋ぎになる。
治水トンネルの通路から出てくる一行――。
戦闘音が遠く聞こえる。
ここから新作。
レナモン先頭に公園へ走り込んでくる一行。
見上げて愕然。
あれが、デ・リーパー……。とジェン。
前話は短SAM(地対空ミサイル)が撃たれていたが、高射砲曳光弾も撃たれている。
突如、木々の中に目。
何~?
無数に増えていく、目。
それはADR-02 Searcherの群れ。
鳥の様な、無表情な顔が近づく。
怯える一同。
デジモン?
首を傾げる。リングはCD盤の様だ。
違うよジェン。
うん、体がわぎわぎしゅうしゅう、しないからデジモンじゃない。
本当?ギルモン。
恐らくこれも、デ・リーパー――。
な、何よ気持ち悪い、と留姫。
探査プローブなので、攻撃はしてこない。
何してるんだ?
ギルモンが爪先を近づけ――
タカトが引き下げる。
ダメだよ! もしデ・リーパーだったら、触っただけでデータが消えちゃうかもしれない。
翼の「目」が明るく光り始める。
ここはひとまず――
逃げよう!
ギルモン、まだ残っている。
まだ残っている。
ほらー! とタカトが引きずっていく。
バイバイ、とギルモンが挨拶。
顔を向ける。
旧ルパン三世的なカッコ良いカット。
追って来てはいない様だ。
でも、どこかに隠れた方がいいと思う!
あーっ!
いいところがあるー!
このカット尻から音楽。
翌朝の淀橋小学校。タカトたちは結局、9月から登校出来ていない。
目を覚ます。
タカトの言った「いいところ」とは、淀橋小学校の校舎だった。恐らく学級避難で誰もいないと踏んだのだ。
放送は2002年1月27日。季節は冬だが、デ・リーパーが侵食している近くは夏の様に暑い。教室で寝泊まりするという、普通の小学生にはない体験。
カーテンを開ける。窓辺で眠っていたギルモンの尻尾が揺れる。
もう朝?
異様な光景は変わらず。
夢じゃないんだ……。
だったら良かったんだけどね、とジェンの声。
おはよう、と机から降りる留姫とレナモン。
おはよ~とテリアモン。
タカトぉ、ギルモンお腹空いた。
なんだよギルモン、起きるなり――
タカトのお腹がぐ~~と鳴る。
あ……。
笑い合う子どもたち。
タカトのお腹が鳴った~!とギルモン。
再集結したテイマーたちだが、どこかに彼らの待避場所が要るよね、と前川さんと相談して、教室のシーンが入っている。この後のパン作りエピソードは前川さんのアイディアによる挿話。
鍵を開ける。
タカトの家。
さ、みんな入って、とタカト。
入って入って、とギルモンが我が家の様に……。
強力粉、ドライ・イースト(菌)、お砂糖――。
バターに卵! やったー! 全部揃ってる!
出来そう? とジェン、やや不安げ。
水もオッケー。
ガスも大丈夫!
日本は震災が多い。こうした状況では普通元栓を締めて両親は出た筈であるが、ここは大目に見て欲しい。
うん! みんなでパン焼いて食べられるよ!
津村さんの弾んだ声は、浅沼さん担当回の顔が最もマッチしている感を抱く。
やったー! ギルモンパン作る~!
私、朝はご飯と味噌汁の方が――
留姫! とレナモンが肘で戒める。ここでも姉の様。
ふ~ん、ちょっと面白そうだな、とテリアモン。
まず何から始めればいいんだい?
まず最初はねー!
やはりパン種を作って、一定の時間ねかせる筈なのだが――、いやもうリアリティは……。
山手通り沿いに停まっているヒュプノスのモバイルラボ。前話では臨時本部だった。麗花と恵が山木を待っている。
西新宿に隣接した初台エリアに建つ高層ビル――。名前は出していないが東京オペラシティがモデル。
引っ越し作業をしているジャンユー、ヒュプノス技術員ら。
見晴らしの良い展望レストランを借りて本部を設営。
静かだ……、と山木。
デ・リーパーは拡大せず、うねうねとたゆたっている。
何故積極的に活動しない……?
ここは安全なんでしょうね、と後ろからデイジー。
そいつは判らない。ただあいつは、新宿中央公園を避けている様に感じるんだ、とジャンユー。
なぜだか判らないけどね……。
いずれにしても、情報が少なすぎる……。私はこれから都市防衛対策本部に行って、状況を聞いて来ます。李さんたちはここで。
判った、とジャンユー。
ちょっと短いが、最初のエントリはここまでにする。ヒュプノス+ワイルド・バンチの第二ベースとなる東京オペラシティの展望室の事を説明しておこう。
タワー最上部に小ホールがある。そこで1999年に、文化庁メディア芸術祭アニメ部門の一本に「serial experiments lain」が選出され(推薦して下さったのは、つい先般亡くなられたモンキー・パンチ先生だった)、その授賞式がここで行われた。その後にちょっとしたパーティがあって、それがここだった。普段はレストラン。写真はシナリオ・ハンティング時の画像なので今は雰囲気が違うかもしれない。
都庁周辺がデ・リーパーに侵されたとして、それを観察する格好の立地としてここが浮かんだ。
Google Earthで見た、オペラシティなめの都庁。