第33話回顧 3
B-Part前半は、一人の幼女と一体のデジモンだけで展開されるという、テイマーズではかつて有り得ないシチュエーション。タカトらのインサートは少し入るが。
今話で描かれるシウチョンは理想化された子どもではなく、適度に我が儘だし適度に功利的。しかし根本は優しい子どもなのだと誰しにも認識されるだろう。
そして、そうしたシウチョンが何故必要だったのか。何故デジノームはアンティラモンをデーヴァの座から降ろし、シウチョンのパートナーに選んだのか――。
橋ではない。浮き石が並んでいる。
わー……。
8mくらいはあるだろうか。
大きなウサギ……。
……。
笑い出す。
すごいすごーい! こんな大きなウサギ、
初めて見た!
こんにちは!
……。
こんにちはー!聞こえてるー?
頷く。
私の言うこと判るんだ! えらいね!
遂にアンティラモンが声を発する。
汝、ここより先に進めず。速やかに帰るべし。
帰るって、どうやって?
困惑するアンティラモン。
それに私、なんでここに来たの?
ずっと上向いて話すの疲れちゃう。
座って。
少し身を屈める。
んもーーーっと!
しゃがむアンティラモン。
ね、ここどこ?
ここは四聖獣の領域なり、と答えるアンティラモン。
ウサギさんのお名前は?
我はアンティラモン。四聖獣を守護する者。
ウサギさんも、モンなんだ(デジモンなんだ)。
はて?と首を傾げるアンティラモン。
ふふ、テリアモンとおんなじー。私はシウチョン。
バタッとその場に突っ伏すシウチョン。
テリアモンの真似ー、と言う。
ねーねー一緒にテリアモン探して。
はっ。
我、南の門を守る務めあり。
探してよー。
我……、南の門……
いやーだーテリアモンに会いたいー とジタバタするシウチョン。
……。
……。
行く?
くらっ
神の領域の滝――
シウチョンを頭に乗せるアンティラモン。
にしてもこのヴィジュアルは誰が考えたのか。アニメならではの魅力。
身を起こす。
高いたかーい。
するとデジノームが――
やっほー!
喜んでいるデジノーム。
汝、我が頭上より降りるべし。
や。
アンティラモン、反り返って――
一気に前へ。振り落とされるシウチョンを――
手で抱き留める。
動かないシウチョン。
心配になってくる。
……。
そーっと指で触ろうと――
おもしろーい!
今のおもしろーい。もう一回やって?
首を横に振る。
ケチ。
なぜかそう言われると、何となくやらなきゃいけない雰囲気に。
デジノームがまた来て――
しゅっぱーつ!
歩き出すアンティラモン。
左右に身体を振りながら歩くアンティラモン。
シウチョンもデジノームも御機嫌。
歌い出すシウチョン。
方向を変えたよ、この船、とタカト。
何でだろう?
判んないけど、乗ってる人間の意思を汲むんじゃないかなぁ、とジェン。
じゃあ、シウチョンに会いたいと思えば、シウチョンのところに行けるよね。
それは……。
ホントにこの近くにいるの?とタカトが訊く。
いるよ、絶対。早く行ってあげなきゃ。
シウチョン、きっと、泣きべそかいてる……。
が、まだ笑いこけているシウチョンだった。
気持ちいいなー。
またデジノームは去った。
テリアモンなる者、どこにも見当たらず。
ね、走って?
戻るなり。
だめえええええ
早くー
アンティラモン、疾走の構え――
急激に走り出す。
必死に耳にしがみついているシウチョン。
はやーい!
驀進。
縦横に――
これだけ走れば諦めると思っているのか。
坂を下りきったところでシウチョンが――
すとーっぷ!
急制動。
耳から飛び出しそうになるが――
必死に堪えた。
姿勢が戻る。
おう……。
アンティラモン、速いねー。
今度は跳んで?
……。
身を屈め――
跳躍!
02のBGM、以前触れた有澤さんのジャズ・センスの曲が流れる。
着地するや跳躍。
大喜びのシウチョン。
凄まじい跳躍力。
すごいすごーい! もっと!もっと!
ジャーンプ!
最後の跳躍。
着地。
アンティラモンの呼吸が荒い。
疲れたのー?
お休み、するー?
突っ伏しているアンティラモン。
もう行こうよ。
のどかわいた。
足を左右上げる度にヒョイヒョイという効果音。
お腹もすいた。
するとアンティラモンが、大きなお腹を鳴らす音。
ん?
あ、
アンティラモンも?
こくりと頷く。
私が食べるもの、探してきてあげる。
ここで待っててー。
掛けていくシウチョン。
ゆっくりと立ち上がるアンティラモン。
しばらく立っていたが――、
そーっと元いた所まで戻り始める。