第33話回顧 4
デジタル・ワールドでは、その環境に慣れさえすれば食物は摂らなくても良い筈なのだが、アンティラモンが腹を鳴らせたのは、まだ環境に慣れていないシウチョンに共感したからだろう。
最後に登場するデーヴァ、アンティラモンはロップモンの進化先。02映画は基本的に呼称は幼生期のチョコモンで通され、暗黒進化したウェンディモンが大暴れをした後にケルビモンへと進化の過程で登場したくらいだった。
ロップモンとテリアモンは二体合わせてロッテリアとのコラボで作られた、というネットの俗説は否定されている。
神の領域の近くで蟄居させられているマクラモン。進化の輝きを持つ者=クルモンをリアル・ワールドで捕縛する事には成功したものの、デジノームによって手放すという不手際をしてしまい、《神》の怒りを買っている。
「まくらくん」時の様に無表情だが――
おっ!?
シウチョンが歩いてくる。
彼(あれ)に見えるのは人間の子どもではないか。
進化の輝きを持つ者は逃したが――
あの子どもを神に差し出せば――
跳躍。
あ、お猿さん。
コケる。が――
我と共に来い。
いや!とシウチョン、マクラモンの顔にキック。猿のバーカ!
いやだーーーーーっ!
シウチョンの声――
アンティラモンの耳に届く。
テリアモンも聞く。
アークが今、向かっているのだが――
急速にマクラモンへ迫るアンティラモン。
これで我が神の覚えもめでたく――
上空をアンティラモンが飛翔。
その娘、放せ。
そうはいかん、と言うマクラモンだが、本気で暴れるシウチョンに手こずっている。
この娘は我が戴いて行く。
無表情に見つめるアンティラモン。
貴様は南の門を守護しておれば良い。
シウチョンが噛みついた。
逃げ出すシウチョン。
待て!
そこにアークが到着!
ランディング・ギアなどない。
胴体着陸。
中のタカトたちは激しく揺さぶられる。
破砕していくアーク。
これ凄いな。手描き2Dの船体が3Dフラクタルで壊れていくというトリッキーなデジタル合成。
凄い勢いで分解されていくアークに――
シウチョンも呆然。
呆然としていたシウチョンに執拗に襲いかかるマクラモン。
くあ!
跳躍したマクラモン。これは捕縛されるコース。しかし――
アンティラモンの巨大な腕に払われる。
ぐわっ!
タカトたちは何とか生還。いたたたた。ここどこだ?
あ! シウチョン!
マクラモンが怒っている。
貴様同胞を攻撃するとは何事ぞ!?
テリアモンが大声で呼ぶ。シウチョーーーーーン!
テリアモーーーン!
マクラモンが前へと舞い降り――
またもアンティラモンに阻止される。
邪魔をする――なっ! と宝玉を投擲!
眉間にぶち当たり、アンティラモン、激痛に倒れる。
シウチョン、思わず駆け寄る。アンティラモン、大丈夫?
アンティラモン――デーヴァの目に映るシウチョン。
アンティラモン、痛くないよ……。泣き出すシウチョン。
アンティラモン、
シウチョンを払って危険から逃れさせる。
宝玉が再び襲った。
アンティラモン、高く飛翔。
マクラモン、もう相手を完全に倒す勢いで宝玉を燃やす。
このカットから――
ここまでワンカットのアニメーション。無表情なアンティラモンが怒りに顔を歪めている。
ていや!
一旦は簡単にかわす。
その先も見切っていた。
Uターンして戻ってくる宝玉。
アンティラモン、腕を斧状に変形、硬化させる宝斧(パオフー)。
宝斧を振り下ろす。
迫る宝玉――
片側で弾き返し――
その余剰までも片側で叩き斬る。
藻屑と消えるマクラモンの秘技。
睥睨するアンティラモン。
貴様の事、裏切り者として報告しておく!
捨て台詞を吐いてマクラモン、逃走。
宝斧から元の腕に戻す。
あのデジモンのデータが出ない、とジェンが焦れている。
十二支の中で残ってるのは、ウサギ――。
じゃ、もしかしてあいつもデーヴァ!?
アンティラモン、強いね!
シウチョン離れろ! そいつは危ない!
?
?
アンティラモンのすぐ脇から、もう光の球が現れている。
必死に駆け寄る三人。
光の球を受け取るシウチョン。
何が起こったか悟る
シウチョンのD-Ark。
嘘だろう……?
シウチョンがテイマー?? しかもデーヴァの……。
何?これ……。
神の領域から険しい光の柱が高速で飛んでくる。
それは――
アンティラモンの身体を激しく苛む。
成長期に退化させられた。
誰より驚くテリアモン。うああああああ!
テリアモンにそっくりになったアンティラモンだったデジモン。
我、任を解かれた。
ロップモン、データ種成長期、獣型デジモン、必殺技はブレージング・アイス(これテリアモンの必殺技と同じではある)テリアモンのはブレージング・ファイアだった。
対面する二体。
真似っこし合う。
同じ耳、顔も似てる。
でも角の数が負けてる……。
んん?
この辺りから流れ出しているのが、キャラクター・ソング「小春とテリアモンのおっかけっこデュエット」のオケ。これは名曲ですよ。多田さんと永野さんのハモりは絶品。
テリアモンそっくり、可愛い!
抱き締められるロップモン。
うあああ……、と過去の我が身を思う。
仲良くしようねロップモン、と持ち上げようとしたもんだからバランスを崩し――
おとととと
一回転して
潰れる。
わーーん、とここで初めて大泣きするシウチョン。
汗
リアル・ワールド球がこんなに小さく見える風景は初めて。ゆっくりとしたフェード・アウトで極めて正統的な終わり方。
改めて見ると、吉田玲子さんは自分に何が期待されているかは重々承知の上で、本作を受けられた。そして期待以上のシナリオを書かれたのだからプロとしてこれは凄い事だと思う。ワンポイント・リリーフの難しさは、私もよく知っている。
テリアモンとロップモンは、前者は犬のテリア、後者はロップイヤーうさぎと実は別種。だが双子の様に似るという事もある――という解釈。02映画では、チョコモン時代を能登麻美子さんが演じたが、テイマーズでは多田葵さんがどちらも演じる――という事に誰も疑問を抱かなかった。アンティラモンは変えても――とも今は思うけれど、デジモン・アニメは進化前後でも同じ声優の方が演じるのが慣例なので、まあ有り得ない選択ではあった。だからデーヴァにしてはあまりに無警戒なアンティラモンも、シウチョンとの出会いは運命的だったのだと思える。
というか、テリアモン大好きなシウチョンが新たにテイマーとなるとして、他のデジモンで成立し得たかと思うと、もうこれ全部最初から決まっていたんじゃないのか、という気がしてくるのだが、私の記憶ではやはり、オープニングの絵柄で考えを変えたのだ。貝澤さんはもしかして知っていたのかもしれない。けど当時の事を聞いても、貝澤さんは結構忘れているという。
今話の事象自体は極めてロジカルで、前話で魔法の様な出来事――、D-Arkが出現したり、ブルーカードが出現するといった現象はデジノームの、非言語的なコミュニケーションだったと説明されている。前半、シウチョンの到着を喜ぶデジノームの場面が、ちょっと多すぎるのではと思わないでもないのだが、ロジカルな解釈をしながら見る視聴者は、リアルタイムではあまり多くなかったのだろう。今沢さんは表現が気に入られたのか、盛んにデジノームを登場させてくれた。
デジノームは《神》の敵なのか、と言われれば、そういうポジションではないと言うしかない。
#33 Credits
李 鎮宇:金子由之
李<柳瀬>麻由美:安達まり
ロップモン/アンティラモン:多田 葵
李 小春:永野 愛
ナレーション:野沢雅子
※多田さんが二役で別にクレジットされている。野沢さん以外では初。
バクモン、キウイモンのクレジットがない。塩味さんだと思うが……。
原画:大河内忍 大谷房江 池田志乃 西田浩二
動画:高田洋子 佐藤元昭
背景:鈴木慶太 佐々木友子 山田美奈子
デジタル彩色:山内正子 佐藤道代 露木奈美 木村紘子
デジタル合成:三晃プロダクション
広川二三男 則友邦仁 吉野和宏 中山照美 横井道子
演助進行:徳木善信