第37話回顧 2
成長期から完全体への一挙進化。「SLASH!!」はインスト版。
カード・スラッシュ「マトリックス・エヴォリューション」
タカトはニュー・ヴァージョンに差し替え。
嘲笑うスーツェーモン。
ラピッドモンの背部ミサイル・ランチャーが消失しかかっている。
異変に気づくジェン。
行くぞ!
我らが真に戦うべきはお前らではない!
凄まじい炎に焼かれる。
三体ともダメージ。
地に打ちつけられる。
ラピッドモーン!
こいつはちょっと、ヤバいかもな、と呟く。
たった一撃で……。
何て奴なんだ――。
強き者のみが生き延び、我らは繁栄してきた。最早人間の力など必要ない! だが――
炎を吐くスーツェーモン。
タオモン、留姫らを守る為に結界を張る。
お前たち人間の作りし禍に、今我らの世界は崩れ始めている。
タオモン、結界を維持するのに苦悶の声を上げる。
このままじゃみんなやられちゃう!
タオモン! 私たちも究極体に進化しよう!
すまない留姫! 今防御するだけで精一杯なのだ。
――ぼくとギルモンがもう一度デュークモンに……。とD-Arkを見つめるタカト――
でも――
じっとノイズを見つめ続ける樹莉。
様子がおかしいとケンタはヒロカズを呼ぶ。
シウチョンを見守っていたヒロカズ。
朱雀門の方を見つめ座っているシウチョン。
ガードロモン、ジェンの妹をしっかり見ててくれ。
了解したヒロカズ。しっかり見ている。
レオモン……。
再度攻撃を仕掛けるメガログラウモンとラピッドモン。
アトミック・ブラスター!
ラピッド・ファイア!
憐れな者どもよ、我の炎に焼かれるが良い!
うわああああっ!!
メガログラウモン、タオモンの結界を破ってしまう。
そこへ追い打ちを掛けるスーツェーモン。
メガログラウモン、咄嗟に子どもたちを庇うべく――
必死に堪えるメガログラウモン。
メガログラウモン!
炎の中から飛び出してくるラピッドモン。
ホーミング・ミサイル! しかし不発。
ランチャーが分解消失してしまう。
何だよ!? 肝心な時に!
愚かな――
火を吐かれ壁に叩きつけられる。
ラピッドモン!!
アーマーの各部位が不安定に。
進化の力を奪われし我はあまりにも無力なり――。
ロップモンよ――
デーヴァも今はお前だけとなった。
今再び我の許に戻るが良い。さすれば今までの事は不問としよう。
我には、他に帰るべきところあり!
愚かな……。
我の帰りを待つ者がいる――。
ならばお前も、死ぬが良い!
ロップモンに炎を浴びせるスーツェーモン!
思わず身を竦ませるロップモン――
炎が――
はっ、と顔を上げるシウチョン。
ロップモン? 呼ばれた様な気がしたのだ。と、ポーチの中で異常が。
D-Arkを開くと――
ロップモン!
シウチョン、ロップモンの許へ行こうとするも――
ダメだ! とジェン兄の顔が浮かぶ。
しかし、やっぱり――
決意して駆け出す。
シウチョンを目で追うガードロモン。
シウチョン、南大門のゲート上にまで登っていく。
見つめるガードロモン。
ついにゲート上の頂上へ。
心の中で――ロップモン、死んじゃ嫌だ!
はっきりと言葉にする。
死んじゃイヤだよ!
と、D-Arkが光を帯び――
シウチョンを浮き上がらせる。
そして――、強力な力でシウチョンを――
浮かび上がらせたまま――
朱雀門へと飛び去って行く。
見送るガードロモン。
おいガードロモン、ジェンの妹の声がした、けど……。ジェンの妹は?
飛んでった。
飛んでったぁ? 何だよそれ、しっかり見てろつっただろう!?
しっかり、見ていた。
そうじゃなくてー!!
ロップモンはメガログラウモンに守られていた。
必死に業火に耐えているメガログラウモン。
無制限に炎を浴びせ続けるスーツェーモン。
ラピッド・ファイヤー!
しかし業火で消失。
んん?と見る。
悪いけどさ、ここでやられる訳にはいかないんだよね……。
しかしラピッドモンはもう、その形態を維持するのも困難な状態。
タオモンが叫ぶ。ラピッドモン、もうよせ! これ以上無理をすると、完全にデータが破壊してしまうぞ!
シウチョンが――、みんなの帰りを待ってるんだ!
ラピッドモン……。
あの時(前話)のダメージが、こんなに酷かったなんて――
それなのにぼくは――、シウチョンの事で頭がいっぱいで……、
そんな事に気づかずテリアモンを戦わせていたんだ……。
パートナーの、このぼくが……。
渾身の力で壁から脱し――
どああああああっっっ!!!
かつてない気迫の声を上げて向かっていく。
まだ刃向かうか!? 容赦なく炎を浴びせる――
苦悶の声を上げ、テリアモンに戻ってしまい――
落下してくる。
地に打ちつけられたテリアモンに駆け寄るジェン。
テリアモン――。
ごめんね、ジェン――。
さすがに、まいっちゃった……。
ごめんよテリアモン……。ぼくが、ぼくが……、
力なく笑ってテリアモン――
そうやって、ぼくが、ぼくがって何でも自分で背負い込んじゃうの、ジェンの悪い癖だよ。
テリアモン……。
後ろを見て御覧よ。
!?
ぼくたちは一人じゃない。仲間がいるんだ。
と――、シウチョンがD-Arkに導かれて飛んできた。
ロップモン!? テリアモン!?
着地する。
シウチョン……。
汝、なぜ来たか?
ロップモンが呼んだんでしょ?
我が?――そうかもしれぬ……。
やれやれ、結局来ちゃったんだね。じゃあやっぱり、
ここでやられる訳にはいかないな。
テリアモン――
ぼくの帰るところはジェンのうちだ。そうだよね!? ジェン。
ああ、みんなで帰ろう。
ロップモンも一緒にね。
我も……?
うん!
うん、と頷く留姫。
そうだよ! みんなで帰ろう!
だから今は、あいつを倒すしかない!
ぼくたちの手で、クルモンを救い出すんだ!
今話のテリアモンは02映画「デジモンハリケーン」で初登場した時の、健気なテリアモンが甦っている。これがテリアモンの本質なのだろう。
この場面がエモーショナルなのは、台詞、演技が見事だからだが、音楽の力も大きい。「冒険者たちの戦い」の「プログラム起動」。
この直後から、テリアモンとジェンの究極体進化に続く。
タカトがのたうち回った挙げ句にギルモンを取り戻し、恐る恐るながらもギルモンの後押しでデュークモンへと進化出来た。それに続くジェンと留姫は、「そういう進化の仕方もある」と認知しているだけでも有利ではある。形状形態理論的な捉え方だが。
しかしこの「真なる究極進化」を為すには、ポジティヴな面だけではなく、パートナーのネガティヴな面も受け容れた上での相互理解が必要なのだ。だからこうした苦しみを経ないと到達出来ない。
私はシリーズが終わった後、究極体進化の事を「マトリックス・エヴォリューション」と呼ぶのだと思ってきたが、今回まともに見返すと、完全体進化の時から既にこの言葉は使っている。完全体への進化だって決して簡単なものではなかったが、究極進化にはもっと重い試練と意味がある。だが妥当な名前が見出せない。
この混乱が何故生じたのか、20年後の今ではさっぱり思い当たらない始末。半年前の私なら、究極体進化=マトリックス・エヴォリューションだと躊躇なく言っていた。
何が違うって、デュークモンへの進化も今回の進化も、クルモンが介在していない。これが大きな違いである。D-Ark、デジヴァイスのパワー。デジノームが介在しているものの、そのパワーの根源、ルーツを顧みればワイルド・バンチが構想していた、デジモンとよりアクティヴに遊べて、かつネットワークの情報に無限にアクセスも可能なインターフェイス構想があった。つまり、父親たちの夢でもあったのだ。
作劇的には、いつもクルモンの奇跡を頼りに進化させてきたのだから、最終的には経験を積んだ自分たちのポテンシャルで進化させたかった、というのが大きい。
英語版ではBiomergeと呼ばれていた様だ。バイオとデジタルがマージ(統合)されるという意味合いの言葉は、確かに言い得ている様に見えるが、私は賛同しない。デジタル・ワールドの中で子どもたちはデータ化(デジタイズ/メタファライズ)されているのだから、デジモンとのデータ・マージは、困難ではあっても無理な事柄ではない。だから第三部はなかなか究極進化出来ないという事になるのだが。
ここで統合されているのはやはり、個々の精神性であって、しかもそれぞれの自我が残っている。だからバイオマージという言葉では足らないのだ。