第23話回顧 4
《大人の時間》は終わりだ。ここからは子どもたちとデジモンの力を見せつける。
留姫は早くからジェンリャの事をジェンと呼んでいた。テリアモンの呼び方を聞いていたからだ。タカトが頑なに「李くん」と呼んでいたのは、物事の把握段階を踏んでいただけだ。既にジェンリャは親友と言える間柄。あとはきっかけだった。
14話でもそうだったが、タカトは受動的に変わっているのではない。自ら変わろうとしているのだ。
ジェンも言ってたよね、どんなに進化したってデジモンは友だちだ、って。
うん、と頷くジェン。
友だちは、友だちを助けるもの、だよね?
――そうだ。みんなを助けるために、ぼくたちはここにいる。
僅かに険しい顔になって――
メガログラウモンが潰されている方へと駆け寄るタカト。
「デジモンテイマーズのテーマ」、流れ出す。
気合いを込めて――
わああああああああああああ!!!!
閉じていたメガログラウモンの目、開く。
ぅうううあああああああああああああああっっっ!!!
何度も気合いの声を上げるタカト。
タカト……?
タカトの叫び、長く、長く、強く――
マグマ塊が斬り裂かれ――
メガログラウモンが息を吹き返した。しかしまだメガログラウモンとタカトというコンビネーションでなければ成せない事がある。
更に前に進んで、一層強く叫ぶタカト。
メガログラウモン、再度ヴィカラーラモンに向かっていく。
バーニア噴射。
ヴィカラーラモン、またもマグマ塊を吐くが――
タカト、まるでメガログラウモンのダブル・エッジの様に腕を振るう。
メガログラウモンにとって、最早マグマ塊も敵ではない。
ヴィカラーラモンの牙を掴み――
押し始めるメガログラウモン。
タカト、見えない壁を――
気合いで押し出す。
ジェンと留姫も気迫の声を上げる。
タカトの声、タカトの気持ち、タカトの力、感じた!
そう、テイマーと心が通じるからこそ――
これまでと逆方向へと毛並みの流れが変わる。
押し込んでいくメガログラウモン。
渾身の唸りで表現されるメガログラウモンの決意。
こうして見ると、口蓋カバー以外はギルモンそのものの顔だと判る。
遂にひっくり返すまで押し込むが、苦し紛れに四発のマグマ塊を吐くヴィカラーラモン。すると――
速さを名に持つラピッドモン、全てのマグマ塊を――
ラピッド・ファイアーで迎撃。
インターセプト成功。
今よタオモン!
頷き――
《きゃ》の梵字を描く。
梵字が空を覆う黒い領域へと飛び――
撃破!
まだ僅かに亀裂が見えるのみとなる。
タカト、最大限のパワーで叫ぶ。
遂に、メガログラウモンが数十倍もの重さを持つ怪獣デジモンをひっくり返した!
煩悶するヴィカラーラモン。
アトミック・ブラスター!
二つの単語を野沢さんがコールするのは初めて。
いつもならオーバーキル・レヴェルだが――
ヴィカラーラモンには相応しいパワー。量子崩壊のみならず――
物理的破壊も伴う。
空の異状、徐々に引いていく。
都庁の光も弱くなってやがては消える。
まさにヒーローだった。
しかし――、戦いの爪痕。
これが……、本当のデジタル・モンスター……。そう漏らすジャンユー。
はぁはぁと肩で息をしていたタカトに、タカトくーんという樹莉の声。
笑顔で振り向く。
駆け寄ってきた樹莉の手からクルモンを奪っていく影。
クルモンが!
えっ!?
これ、我らがより高みに進化する為のもの。収まるべきところに再び戻す。
何言ってんのよ!
クルモンはものじゃない! 返せ! 友だちを返せ!
しかしマクラモン、垂直に飛翔
クルモオオオオオンン!!!
くりゅ~~~
ビルの屋上を走ってきたレオモンが――
跳躍!
レオモン!
我々はそれぞれ、ひとりひとり生きているものなのだ!
狼狽するマクラモン――
必死にレオモンの腕をはたき――
反転。
デジタル・ワールドとの境域に、突如黒く大きな鳥のシルエット――
その鳥の影から放たれる光。
あれは!?
レオモン、無数の針に刺されてしまう。
苦悶しながら転落――
レオモーン!と叫び、駆け寄ろうとする樹莉の前に――
光が現れて、ゆっくりと凝集――
D-Arkの形になっていく。樹莉にもデジヴァイスが――
ジャンユーは、アーク……と、漏らす。21話エピローグで既に見せているが、ワイルド・バンチが構想していた、子どもの為のネットワーク・インターフェイス・デヴァイスがアークなのだ。そして今、デジモンとパートナーとなる子どもがそれを持っている。
樹莉はレオモンを助けたいと、アークをかざす。すると光が――
レオモンに刺さっていた針を消した。
高らかに哄笑しながら、クルモンを抱えたままデジタル・ワールドへ帰って行くマクラモン。
そして亀裂は閉じていく。
町が、めちゃくちゃになっちゃった――と留姫。
どうしよう……。クルモンはタカトが言う通り、進化の鍵を握るデジモン。でも、もう……。
行くんだ。
えっ?
タカト……。
ぼくたちが助けに行くんだ! でズームバック
デジタル・ワールドへ!
強い風が吹き付ける。
そしてインしてくる「風 KAZE」のイントロ。
黙っているが、二人とも気持ちは同じだ。
空からヘリが大挙で来るのを察知。
救急車両のサイレンが無数に聞こえ始める。
それぞれの方法でその場から姿を消す完全体三体。
徐々に「風 KAZE」の音量がMAXになっていく。
無事脱出は出来たが、山木には失望しか今はない――、という表情でも無さそうだ。しかし敗北した事に間違いはない。
山木の胸にヒュプノスのピンズが描かれるのは多分初めて。
以降「Taka aChance!」のコーラス部がフルで。
止め絵ではなく、髪や袖が風で揺れている。
ここはテイマー優先なレイアウト。本当はヒロカズ、ケンタもテイマーとなってから行かせる初期構想だった。まあフルに2クールあってもそれは難しかっただろう。
レオモンが加わった、パートナー・デジモンたち。
最後はアニメーションで走るタカト。
エンディングの音量が少し下げられ、野沢さんのナレーション。
エンディングがフルに戻って終了、文字だけが暫く残る。
シナリオには「デジモンテイマーズ 第一部 完」と記してある。
日常に現れる非日常としての現実世界編、後になって悔いを残さない様にと、盛り上げられる要素は可能な限り入れ込んだ。更に大人のドラマがあって、敵の正体までは見えずともその形が見え、声が聞こえるまで進む。
なりたい自分になる――。それをタカトに託して描いた。泣き虫と言われても仕方なかった序盤から、ここまで変わる事が出来た。
30分アニメとして要素が多過ぎた事は認めなければならない。3話に続いて吉沢さんには大変御苦労をおかけして申し訳なかった。
以前Twitterでも書いたけれど、アニメで描く怪獣映画として私は「空飛ぶゆうれい船」(1969) を頭に描いていた。野沢雅子さんが主人公少年を演じられている。テレビシリーズで映画的な事をやるのは本来慎むべきなのかもしれないが、どうしてもリミッターが外れてしまう。しかし見応えのあるスペクタクルを見る事が出来た。
尚、同映画の怪獣的ロボットによる都市破壊シーンは短いパートに過ぎない。
「風 KAZE」の歌詞は、実はヴァースの部分から印象的で、本当だったらもっと曲を立てても良かったのにと今は思うが、いずれにせよ20年前の作品だ。
こうして色々悔やんだりしてしまうのも、デジモンテイマーズが私の中で、全く完結してないからなのだと思う。だからと言って何も出来ないのだが、せめて20周年で何かしておこうというのが、本ブログの開設動機なのだ。
#23 Credits
レオモン:平田広明
マクラモン:堀川りょう
ヴィカラーラモン:木村雅史
松田剛弘:金光宣明
松田美枝:松谷彼哉
李 鎮宇:金子由之
山木満雄:千葉進歩
鳳 麗花:永野愛
小野寺恵:宮下冨美子
警備員:小栗雄介 小嶋一成
技術者:中山りえ子
神の声:森山周一郎
原画:長崎重信 永木龍博 吉田直実 藪本陽輔 深本泰永
動画:篠原悦子 吉川真奈美
背景:斎藤信二 大谷正信 和田道江 松本健治
デジタル彩色:村本織子 星川麻美 鈴木陽子 木村規子
デジタル合成:三晃プロダクション 広川二三男 則友邦仁 峰岸智子 大西弘悟
演出助手:まつもとただお
製作進行:山下紀彦