第29話回顧 2
後半はガラリと舞台もナラティヴも変わる。果たして迷えるクルモンは――?
朝になった。
荒野を今だとぼとぼと歩くクルモン。
疲れたクル、と倒れる直前から、バイクの音が近づいて来る。
クルモンのすぐ脇に止まるベヒーモス。
ベルゼブモンがクルモンを認識している。
ん~? 誰ですか~?クル
クルモンはこれがインプモンの進化した姿とは判らない。
《神》が己を進化させた究極的な目的は、クルモン=進化の輝きの奪取である事は、ベルゼブモンも勘づいているだろう。しかし命令は、ギルモンたちを倒す事だ。
かつては面白半分、本気半分で新宿サザンテラスで追い回したクルモン。やろうと思えば今すぐにでも――。
そうだ。クルモン訊きたい事があるクル。タカトとギルモン知ってるクル?
この「デジモンテイマーズ旗」は、クルモンも、そしてインプモンも見覚えがあるものなのだ。
しかしベルゼブモンは黙って凝視するだけ。今は――今はその時ではないと考えたのか――。
スロットルを吹かして――
砂塵を舞上げ
走り去って行く。
クルモンまた一人になっちゃったクルーっ!!!
また耳が小さくなってしょぼーん。
トボトボトボ……。
階段?
ここを下りて行くんだ、とリョウ。
え?登るんじゃ?
小世界からリアル・ワールド球は小さく見える。だから上方へ上がろうというのが直感的なルート。
なんか、納得いかないという樹莉。
行ってみれば判るよ!
リョウは10ヶ月もいるので、この程度の不条理には耐性がある。
下っていく一行。
この階段の構造は、「メトロポリス」(1926)的かもしれない。「メトロポリス」は表現主義派ではなく、孤高の表現、孤高のSF映画で他と比較出来るものはない。
クルモン、初のダスト・パケットとの遭遇。
何? 何?と気分が上がる。と、賑やかなオケが流れ出す。
ダスト・パケットもただ回転浮遊しているのではなく、音楽的に振動している。
クルモンはくるくると転がる。
「くるっっくるクルモン」の歌が始まる。
ウッドモンたちが、どこのデジモンだろうと見ている。
全く異例な事に、ただのBGMではなくミュージカルとして演出されている。
緩めにリップシンクして歌っているクルモン。
楽しく歌うクルモン、ブリッジに入ると――
デジノームたちが寄って来る。クルモンが楽しいと、デジノームも楽しくなるのだろう。
バックダンサーの様に舞い飛ぶデジノーム。
あ、また不用意なマークを地面に描いている……。5話を参照の事。
額のマークが光ると――
地面の印も光り始める。これの理屈は明確に我々も言語化していないのだが、小さなクルモンのパワーを表現するには、ライターとしても一定の大きさ、広さといった尺度が比喩的に必要だったのかもしれない。
くりゅ?
《進化の輝き》の発露。と――
近くにいただけのウッドモンたち――
ジュレイモンに進化していく。
くりゅ?ぴろぴろ? (ちょっと何言っているのか判らない)
目敏く進化の輝きを発見するマクラモン。
かの方角に――、急げ!(いやマジラモンは部下じゃないから)
無事に荒野に降りてくる一行。
ホントだ着いたよ。変な階段……。
あれ!?
マクラモンよ! と樹莉。
クルモンがいるかもしれない!と走り出すタカト。
ここは痛恨のチェックミスだった……。マジラモンに乗ったマクラモンを目撃するのは、タカトパーティはこれが初めてなのだ。いやはや面目ない。
デジノームの一体、向こうから飛来する存在に気づく。
輝きの向こうに、小さく見えるマジラモン――
デジノームは一斉に待避してしまう。
進化の輝きを持つ者は何処に――
転がってきたクルモン――
きゅうううううううう――
憐れクルモンは小世界へと転落――。
まるでクルモンが幽霊の城から脱出するかの様なサブタイトルは、事実上虚偽記載だった……。
おっ!?
タカトのパーティ。
強い敵だと認識したサイバードラモン、もう戦う気でいる。
サイバードラモン!とリョウが制止するも走り出す。
強い敵を見ると、俺の声も耳に入らなくなるんだ――。仕方が無い!
あいつに向かってく気!? 無謀だ……。
イレイズ――
クロウ!
マジラモンの頭部を撃つ!
愚かなる者の仕業なるや千年の蓄積も塵にする――、マジラモン、彼の者を滅殺!
と言って自分は逃げ出す。
伸び上がるマジラモン――
黒雲の中に入り――
宝矢(パオスー)を降らせる。
サイバードラモン、次々と被弾。
蹲り動けなくなる。
向かってくるマジラモン。
サイバードラモンが危ない! と走り出すレオモン。
タカト!
ジェーン! (これは21話から流用カット)
二人もデジタル・ワールドでは初のスラッシュ。
ガルゴモン! グラウモン!
レオモン――
獣王拳!
珍しく横位置の描写。ちゃんと獅子の頭部だと判る。
それなりのインパクトは与えたが――
ダムダムアッパー!
グラウモンのプラズマブレードをブーメラン投げするのは、これが初めてか。
しかしどの攻撃にも怯まないマジラモン。
攻撃が効いてない!
やはり怪獣は炎を吐いてなんぼ。
凄まじいエネルギーを必死に三体、避ける。
ジュレイモンも必死に逃げる。
大地を焦がす炎。
強すぎる……。
哄笑。愚かなる者よ去(い)ね。(去れの古語)
迫ってくるマジラモン。
あまりの巨大さに身を竦ませる子どもたち。
降り立つ。
圧倒的な巨大さ。しかし――
「EVO」が、リョウのカットだけ抜かれる音演出。
三体がやられていく中――
リョウがカード・スラッシュの構え。
なんだ!? あのカードは――
カード・スラッシュ!!
キング・デヴァイス!
リョウにはスラッシュ・バンクは作られなかった。この回だけだという当初設定だからだという気がするし、いや、そろそろスラッシュのカットもドラマに合わせての作画があってもいいという気も――。
リョウがスラッシュしたのは、いわゆるキラカードというレアカード(だと思う)。
打ちのめされていた(表情がないので判り難いのだけど)サイバードラモンが息を吹き返し――
巨大化していく。
「デビルマンレディー」では《ギガ・イフェクト》と呼称していた。漫画版「デビルマン」から東映動画版「デビルマン」に変身させるという荒技。シナリオでは理屈などつけられなかった。
サイバードラモンが……
もう体重差では勝つほどに大きいサイバードラモン、マジラモンを背部から掴み――
圧倒的な力で――
逆さにねじ曲げ――
愕然と見ていたマクラモン――
我、去る(猿)。
マジラモンの最期。力で倒しきるというのはテイマーズでは初めて見た気がする。
量子崩壊するが、データはロードされず。
咆哮するも、サイバードラモンはすぐに――
元のサイズに縮小していく。
怖い、と呟く樹莉。
勝った、と呟くヒロカズ。凄すぎ、とケンタ。
普通あれだけ巨大化したら、筋力が追いつかないのに――とジェン。
あの、カードは……。
デヴァイス・カード。言わば、ワイルド・カードみたいなものなんだ。真に強いテイマーだけが使いこなせる。
困惑。
サイバードラモンが唸りを上げて走りだす。
待て!
D-Arkの液晶部から光。
これが光の鞭になった。
どうしちゃったの?
新たな敵を探したがってる。
自分の本能が満足されるまで戦い続ける――。サイバードラモンとはそういうデジモンなんだ。
こうなるともう止められない。 ここで別れよう。君たちはクルモンを探して、現実世界を救ってくれ。本当はぼくも手伝いたいけど――。
無理そうだ。
あ、それから、留姫に会えたら、よろしく言っといて!
え……、はい!
リョウ、サイバードラモンの背に飛び乗って去って行く――。
サイバードラモンは宿敵を見つけるまで戦い続ける――。宿敵が見つからなければ、永遠に戦い続けるだろう――。
永遠に……。
この終わり方を見ると、リョウの登場はここまでで、2話のみのゲストとしても成立している。というか、構成当初はそういう意図だったかもしれない。
しかし、これも後出し設定だったのだが、ウィズの北川原さんからジャスティモンというキャラクターをどうしても出したいという要望があって、それはリョウとサイバードラモンの究極進化だった。獰猛なサイバードラモンと、ライン的には近い感触はあるものの、石ノ森キャラ性を感じさせるジャスティモンとは意外性に富んでいて面白いと思い、リョウは最終話まで残る事になった、のかもしれない。
最初にギルモンの件でこちらが押し通した分、企画側からの要望は可能な範疇で全て入れ込む腹は据わっていた。ジャスティモンは、放送後しばらくしてD-Realで立体化はされた。しかしアニメ・シリーズには出演していないと思う。X抗体設定はあるらしい。
クルモンのミュージカル・シークェンスは、音楽出版サイドから要望があったのか角銅さんに訊ねたのだけれど、角銅さんも覚えておられなかった。
この「くるっくるっクルモン」という曲は、製作と同時進行で製作されたキャラクター・ソングの一曲ではなく、番組開始時から放送された玩具のCMソングのロング・ヴァージョンだと思う(思い違いでなければ)。
作詞 - 山本英実 / 作曲・編曲 - 嶋田陽一
という作家陣も、キャラソンの作詞作曲チームではない。この曲は、夏映画「デジモンテイマーズ 冒険者たちの戦い」の挿入歌「トモダチの海」(Sammy)シングルのC/W曲としてリリースされた。
クルモンがどういうキャラクターなのか、まだ金田朋子さんは判らない内に歌っていた曲だと思う。全然違和感はないのだが。ロング・ヴァージョンが新規に録音されたのかもしれない。
で、その玩具というのが、「てのりクルモン」だったか、「ポケットクルモン」だったかは思い出せず。2001年の玩具事情など、Webでざっと検索しても判らなかった。
#29 Credits
松田美枝:松谷彼哉
マクラモン:堀川りょう
マジラモン:小嶋一成
ウッドモン:杉野博臣
サイバードラモン/ドッグモン:世田壱恵
秋山 遼:金丸淳一
原画:出口としお
動画:小林美穂子 岸 裕弥
背景:鈴木慶太 佐々木友子
デジタル彩色:前橋清美 関口好子 足立和也 田中唯巳郎
デジタル合成:三晃プロダクション
広川二三男 則友邦仁 吉野和宏 中山照美 福井道子
演出助手:地岡公俊
製作進行:寺崎光喜
「ポケットクルモン」
— わたぬき (@April01st) 2021年5月30日
当時のCM覚えてます!デジモンはPocketStation使ったゲームが多かった気が、自分も持ってました🎮
このクレジットだと「ポケットクルモンのうた」になってますね👇https://t.co/dkBlKgPVDB