Digimon Tamers 2021 Blog

デジモンテイマーズ放映20周年記念ブログ

有澤孝紀さんの音楽 1 デジモン以前

 

2017年に、新規オーディオ・ドラマを書く事になって最初に縋ったのが、主題曲、挿入曲、キャラクターソングの数々だった。そしてサントラCDを繰り返し聴き直す事で、当時の空気感というのを再び取り戻す事が出来た。

これは「ウルトラマンティガ」の小説を書く時も同じだった。音楽というのはやはり偉大なメディアであり、心理的なタイム・トラベル・マシンでもある。

Tweetで回顧していた時、音楽を担当された有澤孝紀さんについて書き始めたら、かなりの分量になった。デジモン以前と、デジモン4作についてだから相当な分量。という事で、少しずつこれから分散して本ブログに転載しておく。

元のTweetが基本長文の分割なので、これはまとめる。

 

 


 

有澤孝紀さんは2005年に54歳であまりに若くして逝去された。私はそれを2017年まで知らず、衝撃を受けた。

最初から映像作品の音楽作曲を志され、洗足学園で学ばれたという。

私は愛情を込めてサウンド・トラック楽曲を劇伴と呼ぶ事をお許し願いたい(作曲家によってはこの用語を嫌う)。

 

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最初期に東映作品で携われたのが「ビックリマン」(貝澤さんがSDで、劇場版は角銅さん演出)というと、その後にデジモンを担われるのも自然な流れだった様だ。

「きんぎょ注意報」で佐藤順一SDと組んだ後、何よりも一般の人に広く聴かれる劇伴を書かれた。

言うまでもなくそれは「セーラームーン」シリーズである。私は熱心な視聴者ではなかったが、時折見ては「垢抜けたお洒落な劇伴だなぁ」と思っていた。やはり特徴的だった、セーラームーンスキャットで歌う混声コーラスの導入は、70年代のハリウッド王道なサントラ・テイストで好きだった。

 

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コーラスについては、御自身がコーラス・グループを結成された過去があり、奥様も多くのCMソングを歌われたシンガーだったところから自然な成り行きだったのかもしれない。セーラームーン劇伴についてはネットのファンによる研究がなされていた様だが、今はニコニコ大百科にその片鱗が記されているのみ。(Geocitiesなど多くのウェブサイトが消えてしまっている)

キャラクターによってコードの構成音を変えていくという興味深い試みをされていた様なのだが、事実かどうかは今の私には判らない。

 

dic.nicovideo.jp

 

セーラームーン時代の音源を聴いてみると、シーズン毎にサウンドの特徴はそれぞれあるものの、基本的には重いクラシカルな曲調は避けられ、バトルシーンも爽やかな曲調が多い。イージーリスニング的、というと軽視している様に聞こえるかもしれないがそうではない。
かつてはパーシー・フェイス・オーケストラやカラベリときらめくストリングスといったポップス・オーケストラが映画音楽をゴージャスなアレンジをしたレコードは好んで聴かれた時代があったのだ。有澤さんの劇伴にはその感触も感じられる。

シーズン毎、1,2曲はジャズのアプローチもあって、ジャコ・パストリアスの "Teen Town" がモチーフになっていたり、他にもWeather Report的サウンドが散見出来る。これはデジモンでもそうだが、木管楽器がソロを吹く曲が多く(人声に近いからかもしれない)、それ故かもしれない。

この有澤さんのジャズ志向がデジモンに入ると強まるというのが、個人的には面白いと思っている。渡辺宙明さんをはじめジャズ系アレンジをされる劇伴作家の方はそもそもジャズ畑出身な場合が殆どだと思うのだが、有澤さんはそうではなさそうだからだ。

 

www.youtube.com

 

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ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー」の音楽は、小坂明子さんが担当された。

 

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