Digimon Tamers 2021 Blog

デジモンテイマーズ放映20周年記念ブログ

有澤孝紀さんの音楽 2 デジモンアドベンチャー/02

 

 

 

初期デジモン・アニメ、テレビ4作と映画の選曲は一貫して西村耕祐さんが担当された。私はお会いした事がない。音楽のつけ方というのは映像作品に於いては極めて重要だなと、私が関わったシリーズ物の映像作品では考えていた。各話の演出家の意見、録音監督の意見などが入る場合もあるだろうが、デフォルトの用い方にはやはり特徴が出てくる。

本ブログはテイマーズが主題なので、そこからの視点にはなるが、音楽ファンとして有澤さんが作られた音楽は2021年現在聴き直してもリッチに感じられる。
ただ、作られた曲が全て普く使われてきたかというと、テイマーズに限って言えば、特に初期メインキャラクターに宛てて作られた「テーマ」はあまり活用されなかった。
「タカトのテーマ」は殆ど覚えがない。「リーのテーマ」は数回。留姫のテーマは割と使われた方だろう。「ジュリのテーマ」は「レオモン様」があったから陽の目を見た。

テイマーズ用に書かれた曲だけではなく、初期デジモン・シリーズは前作までの音楽もライブラリ的に用いられ、映画用のリッチなオケのサウンドも聞かれる。しかし世界観を変えたテイマーズで、アドベンチャーの音楽が流れるのは、ずっと枠で見てきた視聴者にはやや違和感が持たれたのかもしれない。
私は《メタ・アドベンチャー》的なので大歓迎だったのだが。
それよりも、テイマーズで流れたアドベンチャー曲は、それはもうそのトラック以外にはないだろうと思えるはまり方をしていた訳で、そうした采配が西村さんの仕事だった。

 

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さて、《無印》こと「デジモンアドベンチャー」のサウンド・トラック盤「歌と音楽集」を聴き直した印象から。
基本的にメイン・キャラクターのテーマが作られるのは共通しているが、特に無印はその楽曲自体を推していこうという意図が英語サブタイトルがついているところに見出せる。
レギュラーが多いアンサンブル作劇であるアドベンチャーでは、このキャラクターならこのメロという様な結びつきが出来て、視聴者の助けとなった筈だ。セーラームーンの時からだが、エレキギターディストーションサウンドがリードをとる楽曲が多くなる。
当然ながら主題歌「Butter-fly」というハードなロック・サウンドのオープニングを劇伴でもリファレンスしているのだろう。

サントラ盤を2枚出すとなれば直裁な話になるが、編成もセッション回もノーマルよりも豪華になる。大編成オケでは重厚な楽曲、セーラー以来のソフィスティケイテッドな曲、小編成バンド曲と、実に多彩な曲が並ぶことになる。
私が無印楽曲で印象的なのは、状況の逼迫したシリアスなトラックの重みだった。デジモンというかつてテレビアニメで描かれた事が無い、新しいキャラクターをドラマの上で、しっかりと重厚に描くのだという意図が読める。

 

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Ver.2には、Ver.1にはなかった「ヒカリのテーマ」が収められ、ボーナス的に'99春の東映アニメフェア映画の「ボレロ」も収録されている。有澤さんがエディットしたという事らしい。

ロック系楽曲で言うと、「21世紀のスキッツォイド・マン」(King Crimson)やELPっぽい変拍子プログレが入っていて、個人的に昂揚する。この頃のアニメの音楽はかくも豊かだったのかとも思う。

 

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ヴァンデモンのテーマ曲がバロック調室内楽なのは、セーラーでも近いアプローチはあったもののこちらの方が本気モード。正統怪奇映画調として角銅SDの指定があったんでしょうか。

 

 

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3年後のストーリー「デジモンアドベンチャー02」は、無印楽曲が活かせるばかりでなく多大なヴァリエーションが加わる。アバンのバート・バカラック的な60年代サウンドは、圧倒的なセンスで有澤サウンドを極めて強く象徴している。有澤さんのアバンはどれも好きだ。
「タケルのテーマ」辺りから、ジャズ・センスが光り始める。私が最も親近感を抱く70年代末のジャズ・ロック~クロスオーヴァーサウンド。有澤さんはデイヴ・グルーシンにシンパシィを感じられていたのだろうか。グルーシンも後年は映画音楽作家となった。
「 さあ、デジタルワールドへ行こう!」で完全に4ビートのビッグバンド・ジャズが聴かれるが、アクション系の曲にもジャズ・コードが頻繁に用いられていく。この傾向はテイマーズでも続いて、「暴走デジモン特急」サントラは完全にジャズアルバムだ。

 

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テイマーズのVer.2は概ねVer.1の実質的にはリミックス盤なのだが、02のVer.2は同じ楽曲でもアレンジが完全に違った新録なので豪華だ。前出の「タケルのテーマ」「行こう」も渋いアレンジになっている。