Digimon Tamers 2021 Blog

デジモンテイマーズ放映20周年記念ブログ

第33話回顧 1

 

テイマーズは、当初のテイマーとパートナーを三人に絞り、徐々にテイマーを増やしていくプランで作っていたが、ではどこまでテイマーが劇中で増えるのかについては、明確には決めていなかった。タカトが淡い憧憬を寄せている(恋愛などという段階にはほど遠い)樹莉、遊び友だちのヒロカズとケンタ、くらいかなぁとは内心思っていた。リョウの話は早くから出ていたし。

前作の「デジモンアドベンチャー02」のラストで、未来の子どもたちは皆、それぞれにパートナー・デジモンがいる様な壮大なヴィジョンが提示され、感銘を受けた(テイマーズの企画立ち上げ時には知らなかった)

後年、「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(2007)という、ポスト・ハリー・ポッターのファンタシー映画が公開され、そのテレビ版「ダーク・マテリアルズ」が近年配信されているが、1995年にイギリスで出版された原作は、現実とパラレルの世界で、子どもたちはダイモンという喋る動物の精霊をパートナーにしているという設定だった。

アドベンチャーのパートナーと、ダイモンとは色々と違う点があるが、パートナー自身の精神性と密接に関わりがある、外部化した自分、という側面性が近しいと思う。

テイマーズは、携帯液晶ゲームから発生したデジモンという仮想の存在に、どこまで思い入れによる実在化を描けるか、に私はフォーカスした。だからパートナーとは乖離も起こるし、相克もある。シリーズ初期、タカト以外のテイマーはそれぞれな関わり方をデジモンとしていた。

デジモンが現実世界に現れるのは、本来起こってはならない事だった、というのがストーリーの後半では大きな意味を持つことになる。だから、テイマーはシリーズ中ではあまり多く出せないだろうと内心考えていた。

ところが放送が始まって、オープニングを見た私は喫驚した。非常に多くの子どもたちがテイマーになるかの様に描写されていたからだ。

何より私が驚いたのが、小春までもがD-Arkを掲げていた事だ。

オープニングは23話までとそれ以降で色々と細かく変わっているが、初期はこうだった。

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色が落とされているが、樹莉、ヒロカズ、シウチョンまでは確認出来る。

私がこの事を貝澤さんに問うと、「いや、シリーズが終わった後の場面かもしれないし」という答えだった。しかし――、私はそういうシリーズの「その後」は全く考えてはいなかったのだ(最終回がどうなるかは当然、漠然とした形ではあるが想定してあった)

だが、私が企画時から強調していた事の一つに、デジモンテイマーは、なりたいと強く願った子どもがなれる。選ばれた子どもなのではない――というコンセプトが、貝澤さんにこうしたイマジネーションを生んだ要因なのかもしれないと納得した。

ともあれ実際のストーリーの中で、シウチョンはテイマーになるまでを描く必要があるのだと、この時に決めた。

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後半のオープニングではっきり色がついた。タカトの後方にいた少年はケンタに描き替えられている。

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しかしシウチョンをどうやってテイマーにすればいいのか……。シウチョンはテリアモンが大好きなのに……。待てよ、テリアモンには双子の様なデジモンがいたではないか。テリアモンが生まれたのは02の映画「デジモンハリケーン」。

この脚本を書かれた吉田玲子さんは、無印ではローテーションに入られていた。その後、映画版の担当に移行してシリーズからは離れていた。テイマーズのデジタル・ワールド編で、一本吉田さんに書いて貰いたい、とは関プロデューサーは早くから表明していた。と言うことで長い前書きになってしまったが、33話はこうして誕生した。

クルモン主役の5話以来、可愛いキャラクターを描くと印象的だった伊藤智子さんが作画監督。演出はベテランの今沢哲男さんが今回からローテーションに入られる。今沢さんは「ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー」で一年間一緒に作って戴いた演出家の一人だった。美術は渡辺佳人さん。

 

テリアモンはどこ! 小春(シウチョン)デジタルワールドへ

脚本:吉田玲子 演出:今沢哲男 作画監督:伊藤智子 美術:渡辺佳人

 

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前話からの続きで、アーク(船)がまだウォーター・スペースを進んでいる。

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有機的な宇宙表現。宇宙空間というよりも水中的だ。

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この船、勝手に進んでる、というタカト。

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少しずつ、浮上している様な気がするんだけど、とジェン。

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どこへ向かってるんだろう……。

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水野っていう人が、この上は『四聖獣の領域』って言ってたけど……。そこかなぁ?

とタカト。

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わー、すごいや。

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ジェンがテリアモンの耳を弄びながら、とにかく行くしかないと言う。

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テリアモン、ジェンから逃れ、

もー、失敬だなー。シウチョンみたいな事しないで!

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あは、ごめん。

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ぴきっ

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シウチョン、どうしてるかなぁ……?

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アークは再び別のルートに入って方向を変えた。

 

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高層マンションの窓――

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ぼうっと窓外を見ているシウチョン。

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いきなり腕を上げ、ひょこひょこと動かして――

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ばた、っと突っ伏す。

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徐々にずり落ちて――

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ここで安定。

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掃除機をかけている――

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麻由美、シウチョン、何やってるの?と声をかける。

テリアモンの真似、と答えるシウチョン。

そんな事してないで起きなさい。

起こしてー。

自分で起きなさい。

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だって私今、テリアモンだもん。お母さん起こして。

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お母さん今忙しいの。 お外にでも遊びに行ってきたら?

電話が呼んでいる。

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あ、はいはい、と行ってしまう母。

だっていないんだもん。テリアモンもお兄ちゃんも……。

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トイレから出てきたジャンユー、シウチョンの奇態に目を留め――

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シウチョン、どうしたー?

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テリアモン。

ん?

今ね、私テリアモン。

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ふ、と息を漏らしてそのまま去ろうとすると――

お父さん今新聞トイレの中で読んでたでしょ。

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バサッと新聞を落とす。

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お母さんに怒られちゃうよ?

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あそーんで?

 

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新宿中央公園の上を飛行船が浮遊している。

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放送日は11月18日。落ち葉が水面を漂う。

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ロングのシウチョンのアニメーションは本当に楽しい。

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ジャンユーの背後から――

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山木――。

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くじらの遊具の上で遊ぶ。

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すいません、お休みの日に――。山木が呼びだした様だ。

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歓声を上げて遊ぶシウチョン。

そのバックでシリアスな会話。
どうしても伺いたい事があったもんですから――。

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都庁舎に陽光が反射している。

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SHIBUMIはワイルド・バンチの中でも、異端の存在だった様ですね。

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私たちはこれまでにない、自らを進化させる人工知性を作ろうとしていた……。

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みんな若く野心に満ちていた……。だが何も神の領域を侵そうとしていた訳じゃない。

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しかし、彼だけは違う考えを持っていた……。

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これはムクドリかな?

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鳥が飛んでいくのを見送るシウチョン。

ジャンユーの回想は続く。

真の生命体と人工的な生命体――

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どこに違いがあるんだと……。 

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お父さん、あっちで遊んでるね。

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あ、ああ、気をつけてな。 はーい!

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彼にとっては同じ命だった……。

そうなんでしょうか、と山木は疑問を呈する。

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黙考……。

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彼が正しかったのかもしれない。そうでないのかもしれない。

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飛行船。

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わあ!

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息子が持っていたカードには、SHIBUMIが持ち込んだコードが書き込まれていた……。

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恐らく彼は……、

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滑り台を上っていくシウチョン。その上空から《ゾーン》が降りてきている。

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李さんあれは!

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シウチョン!

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インプモンがデジタル・ワールドに墜ちていく場面、テイマーたちが狭い穴を抜けて最初に遭遇したデジタル・ワールドの表現が使われている。

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怪訝そうなシウチョン。

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うん?

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あ、

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上空を通過していくアーク。

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ここはリアル・ワールドとデジタル・ワールドが重なっているのだ。

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あっ!

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テリアモンが見える。

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懐かしくて泣きそうなシウチョン。

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しかしテリアモンは気づかない。

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そのまま飛び去って行くアーク。

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テリア、

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モーーーン!

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去って行くアーク。

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シウチョン!と駆け上がろうとするジャンユー。

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しかしそこは滑り台。足を滑らせて背後から来ていた山木と共に転落。

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シウチョンは今、デジタル・ワールドに行きたいと強く希求している。そして――、デジタル・ワールドの《ある存在》もまた、シウチョンを今、求めている。

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ああ!

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シウチョン、デジタル・ワールドへ――

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飛行船が去ると共に《ゾーン》も――

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消失してしまう。

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自分を責めるジャンユー。

私のせいなのか!? 私があんな研究をしていたから……!

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見たでしょう。まるでデジタル・ワールドに誘い込まれた様だった。

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何か行かねばならない理由があるんです、と山木が肩に手を置くが、ジャンユーはそれを振り払う。

あの子はまだ!

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幼いからこそ、必要とされているんでしょう――。