第21話回顧 2
Act.2 樹莉とレオモン、運命の出会い(?)
クンビラモンから必死に逃げる
樹莉と――
クルモン。
ちゅーっ!
辿り着いたのは――、中央公園名物、《ナイアガラの滝》。
走り疲れてしまった。しかし――
滝の上からクンビラモンが――
池に飛び込む。身も蓋も無い悲鳴を上げる樹莉。
樹莉たちに、迫ろうとした時――
緊迫が高まると――
強い水圧で押し上げられる。
マスが小さいデーヴァなので、いとも簡単に――
?
落とされた。
噴水ショーの時間らしい。これほど高く上げる程、実際に噴水があったのだろうか?
本エピソードが昼間でなくてはいけない理由。虹が渡る。
あっ!
ボレロ風の勇ましい曲と共に、虹の頂点から――姿を現す――
カッコいい――
デジモン!
ん?(ここはどこだ?と思っているのか)と目を開けるレオモン。
これ、シナリオにはどう書かれていたのだろう……? ともあれ最高の初登場場面。
わあ、と乙女化する樹莉。すぐさまポケットから――
カードを出して確認。やっぱりレオモンだわ!
あの方こそ!
多分、アドベンチャーのアニメーション・キャラクターデザインのままだと思う。無印~02~テイマーズ~フロンティアと、中鶴勝祥さんのデザインは変遷していて、大まかには極端に大小をデフォルメしていたこのレオモンはアドベンチャー的。樹莉たちテイマーズのキャラクターはもう少しだけリアル寄り。(個人的見解)
私のパートナー。(断言)
ここでCM
目をキラキラさせてうっとりと見つめる樹莉。クルモンは「??」
リアライズしたばかりで、まだ感覚が判ってないレオモン。
観察していたマクラモン――
やはり、クンビラモンもマクラモンに誘導されている様に見える。
なんだお前ーっ、とクンビラモンがレオモンに文句。
自分より強い者と戦い、より強い者のデータをロードする――。それが私の道だ。
と、まるで時代劇の様にカッコよく言ってのけるレオモン(勿論、平田広明さん・演)
わーあ!
スカしやがって、気にくわねぇ野郎だ!と、デーヴァとしてはチンピラ過ぎるセリフで宝杵(パオツウ)を突き出し、跳躍!
身構えるレオモン。
レオモンに向かっていくクンビラモン。
心配して見ている樹莉とクルモン。
ちゅうううううう!!!
力むレオモン、左手が腰後ろに回り――
獅子王丸を抜き――
打ち合う! となれば力勝負。
かっ飛ばされるクンビラモン。
レオモンさまぁ!
憐れ、遥か遠くまで飛ばされていく。
噴水が終わり、地上に降り立つレオモン。
カッコよすぎ~と駆け寄っていく。
レオモンさま~ぁ。
レオモンさま?
あなたは私のパートナー
これ、相当ヤバい台詞だな……。
パートナー?
テイマー?
この日が来るのを、お待ちしておりました。
この子、大丈夫か?
ちょっと、変かも、クル
クルモンはだまってて!
という次のカットが――
レオモンさまぁ♡
そういう目で私を見るな。
こういう目で~
さらば!
レオモンさまぁ!
走るレオモン。
真っ直ぐ走っていたが、野生の勘で――
さっと脇に隠れ――
必死に追う樹莉。
なんだかんだクルモンも走る。
木の陰に隠れてやり過ごす――
レオモンだったが――
クルモンが見つける。いたークル!
超高速で走ってくる樹莉(怖い)。
茂みの中へ――。ここはギルモン・ホームへの階段。
レオモン、ギルモンの家を見て――
中に入ってやり過ごす。
クルモンがまた見つけたと叫ぼうとすると――
身を乗り出して――
クルモンを抱え込んで中に隠れるワンカット。
静かに……。
もぐもぐもぐ
そこに返ってくるタカトとギルモン。クルモン!
クルモン、喜んでレオモンの腕から抜けだし、ギールモーンと飛んで
ギルモンに抱かれる。
タカトはびっくり。レオモンだ……。
D-Arkで確認するまでもないのだが、獣王型成熟期。
クルモンをいじめるな!というタカトに、いじめてなどいないと反論。
僕たちが、承知しないぞ!
D-Arkを武器の様に前に出すのは斬新。
僕たち?
ぼくと――
ギルモン、と言われても、ギルモンは油断しきっている。
ギルモン、構えろー!
と言われギルモン、あっさりクルモンを放る。
ぶぎゅ! 一応やるポーズ。
私は、戦いたくないが……。
紹介します!
という声に振り向くタカトたち。
私のパートナーの、レオモンさまです。
パートナー、って……、
私もデジモンテイマーになれたらしいの。
本当ですか? レオモンさま。
ちょっと待て。
待ちます。
さっきから聞いていれば、パートナーとかテイマーとか、訳の判らぬ事ばかり言って――
第一私の事をレオモン様と呼ぶのはよせ。
「ちょっと待て」「待ちます」の「待ちます」は、タイミング的にあまりにクリティカルなポイントで、アフレコ時の津村さんのアドリブなのではないか?と思ったのだが、角銅さんも明確に覚えておられなかった。口パクはちゃんとついているが、アフレコで変更があったところはスポッティングと言って、後で調整は可能なのだ。
真相は判らない……。今度訊いてみようかなぁ。チャンスがあれば……。
じゃあ改めて、レオモン。加藤さんがテイマーになったって本当?
だから私はぁ、テイマーが何の事だか――
私が教えてあげる!
レオモン(ハート)
そ、その目はやめろ!
私ぃ、やっぱりレオモン様とお呼びしたい!
勝手にしろ! 勝手にさせていただきまーす!
すごいアングルのワンカット。
どうする?とタカトがギルモンに訊く。
ギルモンが「ジェンに相談する」と正鵠を射る答え。
浦沢脚本の魅力の一つが、人間と非人間キャラクターが全く分け隔てなく描かれるところで、無印からデジモンアニメに参加されていたのは、実は意外ではなく、むしろギャグアニメよりも浦沢さんの特色が出し易いフォーマットだったのかもしれない。
第21話回顧 1
遂に、浦沢ファンとしての私が見たかった《浦沢さんのテイマーズ》。
演出は角銅さん。御自身の話は後ほど採録する。2018年2月にニコニコで配信された時に一連をTweetしていて、これをベースにしようと思っていたけど、全然言及出来ない事の方が遥かに多いので、書き改める事にした。
画像に被さってるコメントはニコのスクリーンショット。同時視聴会にはもってこいなエピソードなのだが、改めてじっくり見直すと、相変わらず大笑い出来る一方で、この後の展開を止めるどころか、しっかり要素の上積みもされていて(ヒュプノス絡みは当然除く)、脱線回などではなくこれもまさに、テイマーズの21話目にあるべきエピソードなのだ。
作画監督は信実節子さん。美術はテイマーズでは初の徳重賢さんの一人背景。
「樹莉のテーマ」というBGMは、シリーズではここだけの使用ではないか。70年代クロスオーバーとイージーリスニングの中間的な明るい曲。この場面の為だけに作られたのだ、と今となっては思える。(というか他で使える機会がなかったという)
向かう先はまつだベーカリー。
タカトの父が大きな声で「いらっしゃいませ」
樹莉は常連客。パンをトレーに載せていく。
「はい」「毎度」と言った後、左右見回して――
ま・つ・だ・く・ん・は?
で・か・け・て・る
これは外国語版吹き替えるのに苦労しただろうなぁ。日本語の発音を正確に口パクしているのだから。
レジを打っている。
タカトの劇中呼称、シナリオでは樹莉は《松田君》だったのだが、14話で貝澤さんがコンテで《タカト君》と樹莉に呼ばせた為、以降些かの混乱が生じた。今話では《松田君》。父親だから、という解釈もあるが、基本としてはこれが正解。
加藤さん、という呼称が作り手の意図以上に浸透してしまった(まあタカトがそう連呼するのだから当然なのだが)のも混乱の一因。
店を出てくる樹莉に呼び掛ける声。
「加藤ー」
これが私の小学生時代の東京の普通であった。女子も苗字で呼び捨て。今は知らない。
タカト、いなかっただろ?
うん……。
ケンタが、俺たちいるところ知ってるんだというと――
樹莉の両腕を掴んで「行こう」と連れて行かれ――、え? これは一体?
公園の方へ向かう三人。その向こうに聳える――
樹莉のパートナー!? 私のレオモン様
脚本:浦沢義雄 演出:角銅博之 作画監督:信実節子 美術:徳重賢
ヒュプノスのシーンがここと、エピローグに入るのだが、記憶にはないのだけれど恐らく私が「すみません、これを差し込みで入れてください」と書いたと思われる。次回以降の展開上、どうしても入れておかねばならなかった。水を差した様で申し訳ない。
深層地下のR&Dセンターに、缶詰にされている旧・ワイルド・バンチ。
黙々とプログラムを作っているドルフィンらに、山木がスピーチをしている。
あなた方の時代には、ネットワークを物理的に支配出来る力など――
――想像も出来なかったでしょう。私はそれを成し遂げようとしている――。
――早くデジタルモンスターの自律コア・プログラム・データを提出してください。
ジャンユーが異議を唱える。
SHIBUMIの研究はそう簡単なものではない。私たちにはもう少し時間が掛かる。
デジモンをリアライズしている事は、あなたたちの子どもを危険な目に遭わせています。
――あなたたちの子どもの為にも、SHIBUMIの研究を早く解析してください。
そう言い捨てて出て行く山木。
苦渋の顔でキーボードに向かうジャンユー。
山木も焦っているのだ。シャッガイ計画の失敗は何とかカバー出来たが、インダラモン以上のデジモンがリアライズした時には、完全に主導権を奪われる。
――という深刻な話はここまで。
ギルモン・ホームの方へやってくる三人。
パンが潰れちゃう、と樹莉。
こっち、と階段を上がるのかと思いきや
木立の中で身を屈める三人。何すんの!?と声を上げる樹莉。
しー。
見上げると――、ギルモン・ホームなのだが、何か様子が……。
何やら重苦しいムードの三人。
デジモンに、《神》……?
ジェンのカンフーの先生、そんな事言ってんの……?
趙先生の事。功夫の日本発音は《カンフー》《クンフー》、どちらも使われた。
趙先生は、あくまでデーヴァの一般論を教えてくれただけだ。デジモンの神がいる、というのはジェンリャの考え。
デーヴァが、神っていう事?
そうじゃなくって! と少し強く言ってしまうジェンリャ。
デーヴァが神に仕える存在なのだが、タカトには説明が難しい。
ギルモンがタカトに助け船なのか、ジェンに「タカト、叱らない」
するとテリアモンも「ジェンはやさしい」と反論。
「難し過ぎる」とまとめてしまうレナモン。なんだか浦沢さんがデーヴァ設定を敢えてこう処理したのかなとも思える。
うーん、と考え込んでしまう一同。
真剣にそれを観察しているヒロカズと――
ケンタ。この密かな集まりに樹莉を加えたのには、勿論意味がある。前回、成り行きでデジモンとテイマーの生身の戦い最前線にいたのだから。テイマー志望者という共通項があるのだが……、
今の樹莉は今ひとつ、場違い感。
タカトたち、真剣、とヒロカズが言うと、ケンタはいいよなぁと嘆息。
何が?と樹莉が訊く。
デジモンの事考えて、ああいう顔になるの……。
俺も、テイマーになりたい。
加藤は? と訊かれ樹莉、はっと振り向いて――
何故か言葉を濁し始める。
私は……、カード集めた事もないし……。
俺、もしデジモンテイマーになれるんなら……、オメガモンだな!
極めて順当なチョイス。
じゃあ俺、インペリアルドラモン! とケンタも充分子どもの選択としては真っ当。
後のパートナーらを考えると……。いやそれは先の話だ。
で、加藤は? とまた振るケンタ。え、だから私は……、
カードも集めた事ないしぃ……。と言ってるそばから――
バラバラバラバラと落ちるカード
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2018年2月9日
「……」
私には絶対書けない。もう土下座するしかない。 pic.twitter.com/RJo4FVoTmv
まるで手品の如く流れ出していくデジモン・カード……。
狼狽する樹莉。だが……、
………………。
そそくさとカードを拾い始める樹莉。
タカトたち、何話してるんだろう、と切り替えるヒロカズ。
ふと見上げて驚きの声を上げる。
あ……。
ギルモン・ホームにはもう誰も――
そこにはいない。
また悪いデジモンが現れ、戦いに……? きっとそうだ! 探そう!
と盛り上がってヒロカズとケンタは走って行く。 しかし樹莉は――
帰ろ。
私は浦沢さんのファンなのだが、自分から浦沢さんの様な脚本が書けると全く思っていなかったので、分析的な見方を全くしておらず、ほんの断片的な、模倣的な台詞を書いただけだった。
しかしこの、樹莉のカードの下りを見ると一つ、はっきり言える事がある。映像作品の笑いというものは、何も漫才の様に「突っ込む」必要はないのだ。むしろそのまま放置した方が笑えてくるのだ。何でもかんでもボケとツッコミという型にはめてはいけない。
樹莉が遊歩道に降りてくると――
不審デジモンが。
クルモン!
クルモン、匂いを嗅いで――良い匂いがするでクルー!
食べる?とお裾分け。
なーななーななーな、と完全に意味が判らないオノマトペを発しながらジャンプして喜ぶクルモン。
をじっと見ている――
ぱく、もぐもぐもぐもぐ。ぱく、もぐもぐもぐもぐ。
見ている樹莉。
もぐもぐもぐ。
私もたーべよ――
くーるるん。
もう一つでクル!
袋ごとあげてしまう樹莉。
クルモンが喜んでるのが嬉しい。
もぐもぐもぐもぐ。
もぐもぐ……。
もしかして、私たち……
私とクルモン、気が合って――
気が合うクル!
でしょー!?
立ち上がる樹莉。
クルモン、私のパートナーかもしれない!
ぱとな?
私がクルモンのテイマーって事!
く~る~とひっくり返る。
絶妙な表情でムッとなる樹莉。
なぜひっくり返るの? なんかふゆかい~。
浦沢セリフ大会始まる。
クルモン、慌てて起きる。
私がテイマーじゃいやなの?
クルモンは嫌じゃないと首を振るけれど……。
パンをあげたからそう言うんじゃないけど、
デジモンがパートナーにそういう態度するの、良くないと思うの。
これはお説教じゃないのよ?
そこへ「チュー!」という謎の声。
見回す。
マンホールの蓋が――
……。
デジタル・フィールドが――、あんまり威力ない範疇でマンホール蓋を押し上げた。
焦っているクルモン。
飛び出す影。
うあー!
クンビラモン、といきなり自己紹介してくれる礼儀正しいデーヴァ。(私の他作品でもお世話になった宮田幸季さん・演)
こわーいと抱きつく。
ちゅー! と威嚇する。
もしかして――、あなたが私のパートナー? (え?)
我らが神に仕えるデーヴァが、なにゆえお前のような愚かな人間と組まねばならん。
あ~良かった。私もあなたの様な不気味なデジモンのテイマーにはなりたくないわ。
はっ……、では……、
優秀なテイマーである私を襲いに!?
……。
クルモン助けて!
ちゅーん!
くりゅー、っと樹莉の後ろに隠れるクルモン。
何するの!? わーーーーっ
脱兎の如く走り去って行く樹莉。
クルモンも後に続く。
そしてクンビラモンも。
一連をずっと観察していた――
マクラモン。
Act.1ここまで。
2021年本エントリ公開時に知った事実。
今更付け加えるまでもないとは思うけど、タイトル明けファーストカット、手前から奥へ歩きのローアングルはテイマーズOPタイトル明けのタカトと同じ歩きでした。 https://t.co/pJ3mS9cgWH
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年5月12日
ええええっ……。今知りました……(汗
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2021年5月12日
樹莉もテイマーですよ、というつもりだったんですよ。音楽で印象が違いすぎたんでしょうね。
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年5月12日
あああ、確かに歌い出しの歩き方が……。20年も知らなかったなんて……。
これ以降の本編は浦沢脚本を映像化するのに手一杯なので、脚本にないことをやれる余地がここしかなかったのではと思いました。
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年5月12日
浦沢義雄さんと『デジモン』。
話題的に21話の前に読んで貰う方がいいと思い、まとめ直した。
90年代中頃、日本のミュージカル映画に関する本に寄稿を求められ(もう書名も思い出せず)、まずは植木等の「日本一/無責任」シリーズを讃え、それから「うたう!大竜宮城」も外せないぞという、まあオタ丸出しの文を書いた。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
ずっと後になって、デジモンシリーズ・プロデューサーの一人、読売広告社の木村京太郎氏(亡くなられた)が凄くその事を喜ばれていたと聞いた(東映不思議コメディーシリーズも担当されていた)。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
東映不思議コメディーシリーズは、「ちゅうかなぱいぱい」から「シュシュトリアン」までは概ね観ており、とにかくファンであった。到底私には書けまいシュールなコメディを〈一人で〉執筆された浦沢義雄さんをともかく畏敬していた
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
もちろん「ペットントン」以来、時々観ていた。毎週観ていたのが上記シリーズ。
デジモンシリーズには浦沢さんがレギュラーでローテーションに入られており、テイマーズでも執筆をお願いするのだが、とてつもないジレンマが私にはあった。ファンとしては、シリーズの流れをぶった切ってでも浦沢さんらしいエピソードを観たい。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
しかしシリーズ構成役としては、そのエピソードの後のフォローを考えると、大きな逸脱はやはり困る。しかしここは敬意を表して制限などなく書いて戴く事にした。浦沢さんは未だにペラ(200字原稿用紙)に達筆な字で書かれていた(読むのが大変だった……)。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
浦沢さんの書かれた9,16話は、シリーズが語らねばならない事を取り込まれたホンを書かれており、ペーソス溢れる情景描写は流石だった。しかし構成役としては安堵した反面、申し訳ない気持ちも抱いていた。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
今のアニメファンには共感されない考え方だろうが、テレビシリーズは、脚本家やコンテ/演出、作画監督それぞれの個性で多少凸凹する方が私は好きなのだ。本来は私自身が異質なものを書く体質だからでもある(02の13話がああいう事になった件はまたいずれ)。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
「ダゴモンの呼び声」については本ブログの
で既に記した。
そんな思いを抱いていた中、浦沢義雄さんが上げられてきたのが21話「樹莉のパートナー!? 私のレオモン様」(演出:角銅博之 作画監督:信実節子 美術:徳重賢)だった。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
「来た……」
ジュリをテイマーにする事は決めていたものの、パートナーは決まっておらず、無印で人気の高かったレオモンはどうかという事で決まったと思う。その出会いの回が浦沢さんになったのだが、この回のジュリのテンションはまぎれもなく浦沢節だった。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
こういう事があると「崩壊」とか「キャラがブレる」という人が多いが、いつも同じ事しか言わない、必ず同じ行動パターンなんて人間はいないのだ。角銅さんが演出してくれたので作品的には何ら心配はしていなかった。ジュリはそういう面もある少女だったのだ。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
浦沢さんはデジタル・ワールド編でも2話担当されリミッターが外れた。ジジモン・ババモン、ガードロモン、何れも浦沢節ならではのキャラクター造形だった。――と、ここまで書いて判った事がある。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
テイマーズ以前、私は子どもに「失敬だな君は」みたいな小生意気な台詞を言わせる事がしばしばあった。これは浦沢さんからの影響、というより率直に言って浦沢さんの模倣だった。尊敬する大先輩と仕事が出来て光栄に今尚思っている。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月17日
これは既に本ブログで記している。しかし2回も使っていたなんて、全く記憶になかった。
第20話回顧 2
デジモンには公式に身長設定というものがない。液晶ゲームから始まり、多様な玩具を展開する上で、物理的な制約を設けるのは無理があるからだろう。
アニメの場合は、登場人物との対比表というものが目安になるが、グラウモンの大きさは話数によって結構違う印象だ。
それにしても今話のインダラモンは前回の倍近くは大きくなっている。だがスリムな体型であり、首都高速道路に乗ってもすぐさま崩壊とはならない。対決が横一方向という制約にする事で、今話のバトルは他に例のないものになったと思う。
ダムダム・アッパーで跳躍し、喉元目掛けてガトリング・アームを撃ち込むガルゴモン。
続いてキュウビモンも――
弧炎龍。
グラウモンのエキゾースト・フレイムでの波状攻撃。
かなりのインパクトはあったが――
無傷で噴煙から出てくるインダラモン。
厳しい戦いとなる事を覚悟する。
クルモンは弱っており、完全体進化は当面望めない。となれば、手札の切り方で攻めるしかない。
普段見せない目を狙うガルゴモン。これには苛立ったインダラモン――
腕を振り上げて――
ガルゴモンを叩き落とした。橋桁がノーマルの状態とひしゃげた状態の二枚を激しいブレ処理で、切り替えるという、もうこれは特撮。
グロッキーなガルゴモンに――
トドメをさしてロードすべく――
背中から宝貝が浮上。
ガルゴモン、撃とうにも、弾倉は空。
宝貝はやっかいな武器だ。
キュウビモンとグラウモンが救援に走るが――
やられちゃうぞとヒロカズ。ジェンリャはここで、深く息を吐く。もう慌てて無駄なカードは切らない。
充填プラグインQ。初出。
ガルゴモン跳躍し、宝貝にダムダム・アッパー!
これは効果あったか――
初めてその目を曝すインダラモン。
タカトは強化プラグインWで支援。
強化エキゾースト・フレイム!
留姫は高速プラグインHで――
高速回転の弧炎龍。だが――
宝貝がアドームクハを放ってしまう――
ネット管理局の地下施設の一角がパーティションで仕切られている。そこに姿を見せる山木とジャンユー。
中には中年のアメリカ人男性。
ジャンユーを見て、「タオ」と声を掛けてくる。
ドルフィン! 昔と変わったなぁお前。
本当はドルフィンは、あまり年齢差はないものの、教授であり、ジャンユーは研究生という立場だった。
と、席を次々と立つ人々。タオは変わらないね。いや髪の毛が白くなった。ほんとほんと――。以降呼ばれるのは、当時のニックネーム。
カーリー。
バベル。
デイジー。
シリーズ終了後に書いた「デジモンテイマーズ1984」は、彼女を主人公として描いた。私がロール・モデルにしていたのは、最初のMacintosh System開発でアンディ・ハーツフェルドらと共に参加し、アイコンなどをデザインしたSusan Kareだった。
デイジーは、この昔デジモンを作っていた「ワイルド・バンチ」を今、日本に集めた理由を山木に問う。
ワイルド・バンチとはサム・ペキンパーの映画「ワイルドバンチ」(1969)から。ダーティなグループを主軸に描いたニューシネマ西部劇。野性の人工知性を作るプロジェクトだったので、ワイルドという言葉から引用された、という設定をまさきさんが作った。
ジャンユーは一人いない事に気づき、SHIBUMIは、と訊ねる。
国内にはいる様だが所在がまだ掴めていないと答える山木。
やはり、SHIBUMIが……。
SHIBUMIは言っていた。やがてデジモンはこの世界に現れて、人間に取って代わる――。
かなり過激な意見だが、SHIBUMIがそういう人物ではない事はシリーズ後半で明らかになる。ただ、この時点ではユナ・ボマー的な存在に描かれていた。
デジタルモンスターのリアライゼーションは有り得ないと、我々(SHIBUMI以外)は思っていた。
山木は、ワイルド・バンチのプロジェクトそのものが現在の状況を引き起こしたとは思わないという。では一体どんな力が――、とジャンユーは自問。
デジモンの、『神』とやらがいるらしい……。
このホワイトボードに描かれているのは、ワイルドバンチがリアライゼーションのメカニズムを解析しようという試み。私が最終話近くで書く、「蟻地獄作戦」はこの図から連想したと思う。
はぁはぁと息をするガルゴモン。
健闘は讃えてやろう、とインダラモンに言われ、ガルゴモンは言い返す。
何言ってんだえらそうに! しかしするとまたも宝貝が――
凄まじい衝撃波。
爆風がタカトたちの方にまで吹く。
パートナー・デジモンが私にもいれば……。
これは次回への壮大な前振り。
デジモンは本来、ネットワークのアプリケーション・レイヤーにしか生きられない存在。それがこの世界に現れ進化するには、何かの力があった筈というジャンユー。
それが『神』の事なのか。
大股で早い速度で歩くインダラモン。
TOW(対戦車ロケット)が――
インダラモンを直撃!
足が止まった。
航空自衛隊のAH-1Sがロケット・ランチャーからTOWを連射。
そこそこの威力はあったが――
なんかAH-1Wスーパー・コブラっぽい描き方なんだよなぁ。日本には導入されていない機種なんだけど。
タカトがチャンスだグラウモン、と反攻を指示しかけるが、留姫に自衛隊のヘリに禍が及ぶと止める。ジェンリャも任せた方がいいかもと。
マクラモンがインダラモンを凝視。すると――
インダラモン、ターゲットをヘリに変える。これはマクラモンの指示らしい。
宝貝がヘリに向く。
タカトが危険を察知。
グラウモンに以心伝心。エキゾースト・フレイム!
激しくブレる宝貝。
何とか離脱に成功するヘリ。
あ、電線が上に乗ってる……。
そしてインダラモンは、Nシステムによって――
ワッチされている。
山木はワイルド・バンチを、現実世界に現れるデジモンを消去する手段を求める為に召集したのだった。
現実世界のデジモンに見入るワイルド・バンチ。と、バベルが声を上げる。
子どもがいるぞ!
ヒロカズとケンタだ。
ジャンユー、驚愕。まさか……。
死闘は続く。
負けるもんかーっ!
この世に生を受けたのは、貴様如きに敗れる為ではない!
タカトと一緒にいたいだけなのに、どうして邪魔すんだー!
三者三様の心の叫びが生々しい。
はかなき夢よ! インダラモン、衝撃波を吐く。
凄まじいエネルギー。
激烈な圧力で吹き飛ばされる三体。
共感度が高まっていたタカト、自身も14話の様に吹き飛ぶ。ヒロカズ、支える。
大丈夫と樹莉は訊くが、タカトは平然とうんと答え、再び前へ。
何が起こっているのか判らない。デジモンとテイマーの共感度が高まる時に何が起こるのかを。
ジェンリャも留姫も、これが最初の体験なのだ。
強烈な前脚の払いで――
蹴散らかされる三体。
その痛みを、テイマーも共有してしまう。
これはマイナス面を描きたいのではない。
宙を舞うタカトのカード。
しまった……。
ヒロカズ、カードの支援だったら手伝えると駆け寄っていく。
冷徹に観察しているマクラモン。
容赦なく宝貝の攻撃。
更に橋桁が崩れる。
ケンタのカード支援も受けるが――、ここからのカード・スラッシュが、いつものスラッシュ・バンクではなかった。
ガルゴモーン!!
猛烈に撃つガルゴモン。
キュウビモーーン!!!
弧炎龍!
グラウモーーーーーン!!!
これは間接描写。コマを抜いても判る衝撃波によるカメラのブレ。
口パクは「カード・スラッシュ」のところを、ほぼ無理矢理、パートナーの名前を呼ばせるという力業の演出。全然合ってないけれど、ここではこれが一番ピッタリくる。特に留姫の叫びには心を奮わされる。
俺のカードなくなったよ!
まだ平然なインダラモン。
進化出来れば……。
進化と聞いてハッとなるヒロカズ。
タカト、これ使え、とヒロカズ手描きのブルーカード。
三人とも、はなから馬鹿にしてはいないものの懐疑的。
ケンタに無理だよと言われるが、ヒロカズは主張する。そもそもギルモンはどうやって生まれたんだ。タカトが描いたメモ帳カードじゃないか!
気合いだ、気合い! とヒロカズはカードを渡して腕を握る。
タカト、クルモンを見る。
クルモン――、
タカトはクルモンに願っているのだろう。
クルモンもそれに応える。一度深く頷いて――、くるくる~と言いながら額を光らせた。
判った!
タカトのカード・スラッシュ、ヒロカズ手製版。
全てきちんとヒロカズ・カードにマッピングされている。
マトリックス・エボリューション!
スラッシュ・バンクの直後、一秒に満たない(20f/secくらいか)マクラモンが険しい目で見つめる顔。
グラウモン進化! 今回はグラウモン自身のコール。
メガログラウモン! 最強に張った野沢さんのコール。
最高に《気合い》を入れるタカト! それにオーヴァーラップして――
雄叫びを上げるメガログラウモン。
そう、テイマーとデジモンの共感は、こういう時の為のものだった。
メガログラウモンの体重が増大した為、橋桁は更なる損壊。すいません首都高。
進化を目の当たりにし、猛るインダラモン。
ダブル・エッジ!! タカトのコール。
凶悪な刃がついた両腕を前に差し出し――
宝貝が降下してくるも構わず――
背部バーニアを全開。
両腕がプラズマ化。
唸り声は獣だが、その目はギルモンだ。自分の心で動いている。
宝貝が前を阻むも――
あっさりとダブル・エッジで粉砕。
そのままインダラモンに激突するや――、
速度を落とさずそのまま押していく!
気合いだ。インダラモンは怯んでいる。
アトミック・ブラスター!! タカトの雄叫び。
二対の発射部が周囲から電荷を吸収し――
更なるメガログラウモンの雄叫び。
アトミック・ブラスターが――
ものすごい溜め。
発射。インダラモンは悶絶し――
すごい距離まで押されていく。この間ずっと絶叫。
ついには量子破壊。
やっぱりオーバー・キル。
やっと終息。
自衛隊ヘリに観察されていた。
勝利の咆哮! by野沢さん無加工。
タカトは雄叫びするどころか、ふは~、っとへたりこんでしまう。
盛り上がっているのはヒロカズだけ。
やったぁ、俺のブルーカード!
音楽は消えてひぐらしの声のみとなって――
次回は浦沢脚本回なので、行けるところまで行こうと、前川さんとまさきさんのリレーで、インプモンを軸に、かなりの情報を詰められた。
それにしてもやっぱり絵なのに迫力を今尚感じられるのは凄い。この回もデジタル合成の時間や工夫は相当だったろう。
#20 Credits
タカトの父:金光宣明
ジャンユー(タオ):金子由之
インダラモン:堀内賢雄
謎の少年(マクラモン):堀川りょう
ドルフィン:菊池正美
カーリー: 松岡洋子
バベル: 乃村健次
デイジー:百々麻子
黒服の男:佐藤晴男
原画:八島善孝
動画:馬渡 久 富田美穂子
背景:スタジオロフト 井上徹雄 安倍とし子 劉 基連
デジタル彩色:井浦祥子 大旛 忍 足立和也 田中唯巳郎
デジタル合成:三晃プロダクション 広川二三男 則友邦仁 山口博睦 清水正道
演出助手:門 由利子
製作進行:坂本憲生知
第20話回顧 1
次回予告でネタバレされまくる問題が、当時は悩ましかった。次回予告はアシスタント・プロデューサーの仕事で、視聴率を上げる為に、よりアトラクティヴな惹句をという理由は理解していたのだけれど。
インプモンがどうなってしまったか、過去最強のデーヴァにいかにして立ち向かうのかというメイン・プロットに、もう一群の人物グループが登場する重要回をまさきさんが脚本に書いた。演出は13話以来の今村隆寛さん。作画は八島さんの独り作画。
切り札はコレだ! 友情のブルーカード
脚本:まさきひろ 演出:今村隆寛 作画監督:八島善孝 美術:清水哲弘
前話リプライズから、ラストの部分は新作。お前を倒してロードしてやる!
ちっぽなインプモンが――
渾身のジャンプ!
ダメージを受けており、援護出来ないグラウモンら。
インダラモンの鼻先を――
殴りまくり
蹴りまくる。八島作画の躍動感。
歯牙にも掛けない。
鼻息で落とされる。
勝負しろよ! 懇願に近いインプモンの叫び。
望み通りなのか――、インダラモンの振り上げた前脚が――
遥か遠くにまで蹴り飛ばされた。
愕然とするテイマーズ。
宝貝がトドメを差そうと開口部を向ける。
神に仕えし我にロードされる事、感謝せよ――。そうインプモンに言ったのだが、ふと向こうを見る。
都庁のシャッガイ・システムが強力なエネルギーを放出している。
インダラモンの姿が、不確かに。
インダラモンにも、テイマー達にも意外。
ジッポーライターの向こうに見えるのは――、かつてダークリザモンを溶かし込んだ、人工タンパク質を溶解するタンク。そこから光が立ち上っている。
インダラモンが身体を保てなくなりつつある。
出力を報告する技術員。
満足そうな山木。しかし――
耐久電流値を越えてサージ。
パワー供給が断たれて、水が四散。
口惜しげ。
インダラモンは異常を感じて、一旦物理レイヤーまで退去していく。
行っちゃった……。
ワイルド・ワン、消滅。物理レイヤーから更に下層へと潜った。
報告を受ける山木。
不完全ながら機能したか。これでいける。
後は出力。早く認可を降ろせ! とライターを閉じる。
中央公園地下治水トンネル内で、傷ついた身体を休めているデジモンたち。
誰か来る。
留姫とジェンリャ。インプモンを探していたが、見つからなかったという。
今村さん演出の特徴の一つは、キャメラを引く時は極端にまで引いての長いカット。
夜も更け、後は明日にと――
普段ならジェンリャより早く出社している筈の父が、ゆっくりしていた。
他の「会社」に急に出向になったという。どうもジャンユーにとっては歓迎しない、急なオファーだった様だ。ジェンリャが「行ってきます」と出て行くと――
子どもの仕事は、遊びだな、と呟くジャンユー。
ヒロカズとケンタが、タカトの父親に「ギルモンパン」を作って売り出して欲しいと請願している。
こーんな奴……。
とかいうやりとりを後ろで聞いたタカト――、
勝手口から靴を履きながら飛び出してくるという、凄いワンカット。
うああああああああ
さっぱり話が見えてない。
わーわーわーとタカトは攪乱し――
二人を引っつかんで行ってきます!
俺たちも戦いたいんだよ、という話をしながら公園を歩く子どもたち。タカト、ヒロカズ、ケンタ、……あれ?
ヒロカズ、自作のカードをタカトに見せる。
えっ
ブルーカードだよ。
タカトにD-Arkを貸してくれとヒロカズ。
デザインは聞いた通りだろ?
正直、違うんだけど……。
やっぱダメかぁ……、と落ち込もうとした時!
いきなり背後から手が伸びて――
謎の少年がずっと後をついていたのだ。
ダメ!とD-Arkを守るタカト。
くぅうううううううっ!
跳躍して――
駆け去っていく。
そして都庁の一室――。
無人のセミナールームで、ジャンユーは長い時間待たされている様だ。
かなりの怪我をしている筈のインプモンを探しているジェンリャと留姫。留姫は強くなりたいなら、パートナーを探せばいいのにと呟く。
君も心配なんだね、と言われて留姫は少し憤慨。
確かに留姫自身も心配はしているが、寧ろ留姫は、レナモンがインプモンの事を気に掛けていたから、それに共鳴しているのだ。
放送された2001年の年頭、中央省庁再編が行われた。先端科学は科学技術庁の範疇だったのだが、文部省と合併し文部科学省となった。
経産省なども統合された訳だが、果たしてこの再編は正しかったのか?と今は思う。
山木は勿論東京都職員ではなく、国家機関に属している。テイマーズでは文科省傘下という事に。しかし実際は独立参与的な立場だろう。
尚、2021年の現実のサイバーセキュリティ管理は内閣直属機関となっている。どこまでやっているのか疑問だが。
ジャンユーを脅した黒服の男はやはり山木の部下。劇中では明言しないが、公安調査庁OBの探偵だ。
認可が次官から降りたらしい。SHIBUMIはしかし、まだ発見出来ていないという。
やっと回復したギルモン。心配してくれてありがとう。
どういたしまして。
しかし――
クルモンはまだグロッキーだ。前回三体同時進化をさせたから、というよりは、インプモンのあまりに凄惨な仕打ちを見て疲弊しきっているのだと思う。
ごちそうさま、と弁当を平らげるが――
待たされるばかり。
立ち上がるジャンユー。
ギルモン・ホームで待っていた樹莉たち。
ギルモンらが帰ってきた。
ジェーン!と飛びつくと、ジェンリャ、ひっくり返る。
インプモンはと聞くと、留姫は無言で首を振る。
西参道首都高高架――。不穏な音が響く。
レナモン、デジモン出現を察知。
オペラシティ(初台)の方向にデジタル・フィールド。
湯飲みを指で、ピーンと弾くジャンユー。
誰かいないのか? と呼び掛けると――
技術者達が慌ただしく走って行く。
驚くが――
このまま待っていられないと決意。
昨日と同じ個体のワイルド・ワン検知。
リアライゼーション開始、というオペレータの声が構内に響く。そのヒュプノス・センターに入る――
ジャンユー。なんだここは……。
都庁の中ですがここは日本国の機関です。
あんたたちはここで何をしてるんだ!?
ネット内では無秩序な活動をする疑似生命、我々はワイルド・ワンと呼んでいます。それが現実世界にリアライゼーションする時、霧のような粒子が現れます。
新宿ジャンクションに立ちこめていく霧。
エレベータで地下深い階層へ――
この霧(デジタル・フィールド)は地球を覆うある帯域の電磁波が、ワイルド・ワンの情報に従って――
空気中の元素を急速に凝縮し量子変換させた疑似タンパク質なのです――。
車載テレビだろうか? まだカーナビはなかったと思うが……。
その疑似タンパク質が固定化し、デジモンはこの世界で、自らの肉体を――
獲得するのです。
画面は山木の説明に従って描かれていた。
車を踏み潰すインダラモン。踏み下ろしから――
運転手が逃げ出し、車ごと踏み潰されるまでワンカット。
エフェクト・アニメーションのリアルさも八島さんの真骨頂。
最下層に到着。
こんなものがあったのか……。
ここでA-Part終わりだが続ける。
動かなくなった車で埋まる首都高。車の搭乗者が皆逃げ出している。その向こう――
そこに到着するタカトたち。
インダラモン……。
ギルモンらの到着を待っていた。
超進化プラグインS トリプル・カードスラッシュ!
すぐさま成熟期に進化した三体、インダラモンの侵攻を阻止するべく走る。
成り行きで戦闘を間近に見るのは初めてのヒロカズ、ケンタは興奮。
しかし樹莉は心配そう。クルモンはまた疲弊した。
走る三体。手前の車のブックセルで垣間見えるだけという描写。これも今村さんらしい演出。
待避エリア――そこに、誰かが――
謎の少年。
代々木三丁目路地のラーメン屋台。その扉が少し開く。
また現れたんだ。しかし、今のインプモンには――
見上げるしかなかった――。
第19話回顧 3
インプモンの真実の瞬間が近づく。
避難する人々。
人々とは逆の方に走る留姫。
腰のD-Arkが明滅している。
地下鉄を降りたテリアモンが気づく。デジモンだ!
ギルモンも唸っている。
デーヴァ……。
これは青梅街道かなぁ? すみません特定出来ず。
インダラモンの前に立つインプモン。そしてレナモンと留姫。
丁度いいや!
見てろキツネ! しかしレナモンは無茶だ、と前に出ようとすると――
来るな!と火を放つインプモン。狙う気が無かったので、火はかすめもせず通過。
自分でも酷い事をしたと判っている。この表情で少し黙する。そして――
真剣な声で、頼む。と言う。
じっと見つめるだけのレナモン。俺の戦いなんだ!と絞り出す様に叫ぶインプモン。
別に二人がかりでも構わないぞ、とインダラモンが口を出す。
いくぜ!と叫び――指先を額に念を込め――
サモーン!
過去最大の炎を生み出し――
フレイム!とインダラモンへ渾身の投擲。
炎は向かっていくが――
空しくも散る。
相手にならんと言われ愕然。
振り上げられる前脚。
衝撃――
これは堪らない。しかし――
すぐに立ち上がりインプモンは罵る。俺はお前らみたいに徒党を組んで、自分達が一番みたいに思ってるゲス野郎共にはヘドが出るんだよ!
啖呵をを切ってインダラモンに向かうも――
容赦なく打ちのめされる。
クルモン――
そしてタカトらも到着。テリアモン、進化だ!とジェンリャ。しかし、待ってというレナモンの声。
これはインプモンの戦い。私たちが手を出してはいけない。
当然タカトたちは納得出来ない。それはデジモンの価値観なのだ。
またも蹴倒されるが――
何が、我らが神だよ馬鹿野郎。トイレの紙でも拝んでろっての!と頑張って笑おうとしている。
しかしインダラモンは、自分の神を侮蔑された事に激高。
更に容赦なくインプモンを叩きのめす。
見てられない――。
これで生きているのが不思議だ。
いいの!? これで――
――。
レナモンはこういう芝居が多い。アニメだと素は嫌われるのだが、レナモンという存在を表現するには、この黙する演技も重要だった。
何とか起き上がろうとしているインプモン。俺は――、俺は強くなるんだ――
すぐさま背後から――
滅多打ち。
ねえジェン、どうするの?とテリアモン。このままじゃあいつ、ロードされちゃうよ。
やっぱりあいつら……、デーヴァは悪い奴だ!
ここでジェンリャは一旦、デーヴァを悪と規定。視聴者の子どもも同意するだろう。しかし、事はそう単純ではない。
頑張れインプモンと声を上げるタカト。
応援なんかすんじゃねーこのおたんこなす!
最後の一撃。やべえ……と呟くインプモン。
インプモン、形を固定出来ず量子化破壊されそうになっている。
なんとか保っているが、危うい。
留姫はレナモンに強く、しかしかつての様な詰るのではなく訊く。
ホントにいいの!?
レナモンだってすぐ様駆けつけたいのを、必死に我慢しているのだ。
雑魚のくせに意外に頑張ったな。さらばだ、と片脚を振り上げる。
ギルモンもう我慢出来ない! と駆け出すギルモン。
必死に駆けつけようとしているが、到底間に合わない距離。
速さならば、レナモンに敵う者はない。
そこまでだ、とインプモンに告げてインダラモンに向かうレナモン。
余計な事しやがって……。
同じ事だ、とレナモンもあえなく痛打される。
レナモン! 進化だ留姫!
タカト、無意識にクルモンを振り向く。
自覚なきクルモンだが――
進化の力が――
頷いてタカト、ギルモン! 進化だ!
うん! タカト!
テリアモン! そうこなくっちゃ、と肘を上げたジェンリャの腕からジャンピング。
レナモン―― 留姫――
トリプル・カード・スラッシュ、初。
それから成熟期進化バンク3連続。
そうか、グラウモン進化バンクは、ギルモンの口の中から始まるのか……。やけに超広角アングルだな、と20年思っていたが、スロー再生して初めて知る。新鮮だわ……。
束になっても同じ事だ。インダラモンの宝貝が浮上。
インダラモンの前へ。前脚が接続され、まるでロボットの最終兵器の様に。
ズタボロのインプモン、まだ諦めていない。
貝の内側が光る。
三体の一斉攻撃はこれが初めて。
三色のパワーが――
全て宝貝の中に収束してしまう。
愕然。
進化しなきゃ、強くなれねぇってのかよ……。
我々は神に選ばれしデジモン。貴様ら如き堕落したデジモンに倒される私ではない!
あ、また《私》使ってる……。
呆然としている三体。そして――
何とかまた立ち上がるインプモン。
宝貝を吹くインダラモン。すると――
さっきの三色のパワーが逆に吹きだし――
大爆発。
吹き飛ばされる三体。
カード支援どころではない。
俺はおめーをロードして――、進化してやる!!!
んん? と少し驚くインダラモン。
ぐああああああああああああああああ!
インプモン渾身の突撃。
背景が変わってのストップモーション。
もう最高のクリフハンガー・エンディング。文句言わせないレヴェル。
テイマーズの少年マンガ性が光っているエピソード。
高橋広樹さんは長身な方だが、インプモンを演じる時は意識してなのか無意識なのか、少し背中を丸めて、なるべく小さな身体から喋っている様に演技されていたのがとても印象に残っている。
勿論、ベルゼブモンの時には胸を張った立ち姿だった。
一年間、アフレコに毎週立ち会いをしていても、私の視覚的記憶は暗いスタジオの中の、声優の方々の後ろ姿だけだった。あとはひたすら台本に目を落として、モニタから聞こえる台詞をチェックしていた。
#19 Credits
インダラモン:堀内賢雄
謎の少年(マクラモン):堀川りょう
趙先生:北村弘一
コギャル:塩味 薫 植岡由紀子 村岡雪枝
少女の父親:小栗雄介
アイ:寺田はるひ
マコ:松本美和
原画:朝倉温子 大河内忍 大谷房代 池田志乃 下村こずえ 西田浩二
動画:佐藤元昭 高田洋子
背景:鈴木慶太 佐々木友子 花松裕吾
デジタル彩色:村本織子 星川麻美 鳥本佐智子 藤阪清美
デジタル合成:三晃プロダクション 広川二三男 則友邦仁 峰岸智子 大西弘悟
演助進行:徳本善信
第19話回顧 2
ライター陣には、自由にプロットを書いてとは言っていたものの、展開上「こういうのを入れといてください」という用件が、徐々に多くなってくる。その話数では解明されない様なものも多く、自由の範囲は狭めてしまうのだけれど、ストーリーとしてグッとくるところ、映像としてグッとくるところというのは必ずや生まれる。いやそうではない。各話のライター、演出、作画のスタッフが「途中の一話」ではない、特別な一話にするのだ。
ライターカチカチおじさん、とネットでは書かれた山木。
私は長年Zippoを使っていたのだが、2020年についに加熱式へ移行した。私が愛用する喫茶店ルノアール全店が紙巻きを禁止したからだという。そんな話はさておき、山木のライターのカットはバンク。しかしキャラクター性を表現する良い小道具になったと思う。
シャッガイ・ホールから流れてきたというデータを表示させている。
マシン語……。ブルーカードの解析時に、こうした表現でいいのか実は迷った。ワイルド・バンチが1984年までにデジモンという人工生命を生み出した環境は、縦型モニタから判る人には判る、XeroxのAltoという、世界初のGUIを備えたコンピュータで、
プログラムは当然アセンブリ言語で書かれたのだろうが、マシン語そのものである0と1の羅列の方が、子ども向けのアニメとしては「デジタル」なものとして伝え易いのかもしれない、と異議を申し立てなかった。ジャンユーなら、この数字の羅列でもSHIBUMIのシグネチュア的な何かを見出せる、かも、と。
しかし山木は機械語を素で読んでしまう。いや流れからすれば、これよりくどい描写はもう出来なかった。
画面には映っていないが、何らかのインタープリターが噛んでいるものと諒解されたい。
我らは、デーヴァ……。
椅子を蹴り倒す山木。
麗花、恵も、普通ではない山木のすさみ具合に驚いている。
ふざけやがって! 挑戦状のつもりかよ!――まあいいさ。老人どもが使っていた人工言語しか使えない紛い物のの知性に、今の人間がどれだけ進化しているか、はっきり見せてやる!
勿論山木は傲慢な事を言っている。
そーれ!と缶を蹴る樹莉。
「鬼」になったギルモンがわーいと言いながら缶を追う。本当に楽しんでいる。
カード・バトルは年齢相応な遊びだと考えていたが、運動して遊び、となるとやはり幼めな遊びになってしまうものだ。
四方に散っていく。流れ出す音楽はアドベンチャーのもの。
私は脳内でこういう音楽が似合うのに、と思っていた。
見知らぬ子が……、
誰だっけ?
向こうから、ギルモンが樹莉みーっけと近づいて来る声。
うーわケンタみーーーっけ!(野沢さん……!)
変わった奴だな……。
無言でこちらを――
……。
ギルモン、誰だっけ? と訊く。
すっくと立ち上がり――
身を乗り出すみんな。すると――ものっっそい溜めて――
んマっ!
びっくりして腰を抜かす。
それを見て大笑い
したかと思ったらいきなり逃げてしまう。
謎の少年=まくらくんの初登場シーンはかくも印象的になった。
デーヴァの申(さる)マクラモンは、当然ながら人間に近い姿をしている。人間に近い姿というのは、デジモンの価値観からすると避けようとすると解釈していたのだが、敢えてマクラモンがいる理由を考えると、デジモンが人間を装うのに好都合だという事に思いつく。
しかし、いきなり新キャラとして出すのもどうかと会議で悩んでいたら、貝澤さんが、「ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー」の《のんすけ》というキャラクターの事を念頭に、毎回、なんかいる、みたいな見せ方は? と提案された。
のんすけというのは、原作の絵本に出てくるのだが、文章にはない。装画を描かれた荒木愼司さんが、各話の隅っこにいつも顔を覗かせている少年を描かれていて、密かにのんすけという名前までついていた。アニメでもこの《のんすけ》は幾度か登場し、特に演出のローテーションに入られていたベテランの今沢哲男さん(テイマーズではあの33話から参加)が気に入って、よく登場させていた。
マクラモンのままでは流石に子どもに紛れるのに無理があり、中鶴勝祥さんが妖怪じみているけど、デフォルメ・ラインはタカトたちとまず矛盾しないギリギリのラインでキャラクターとして作り出したのが、まくらくんだった。
これもしかし、見返してみると現代都市伝説っぽいシチュエーションだなとも思う。怪奇の要素は間違いなくテイマーズは濃厚だが、ホラーをやろうという意識は全くなかった。しかしやっぱり出来てみると、拭えないホラー感がある。
さて以降はインプモンに戻る。
ヤケになったのかインプモン――
車の天井を凹ませまくり。
うまそうじゃん!
俺に寄越せ、と幼児のソフトクリームを
当然泣かれる。
抗議する父親に――
ご愁傷……。
ヤケのヤンパチ。
阿鼻叫喚となる。
美しい夕暮れ、マジック・タイム。帰って行くヒロカズとケンタ。
ねえタカト君、今日ちょっと元気なくなかった?
何か考え事してたみたい。
えっっ
そそそうかな……。そんな事なかったと思うけど……。
そう……。
違うならいいけど。
じゃあね、また遊ぼうね、ギルモンちゃん。
さよなら! ばいばーい
一度振り返って手を振る樹莉。
嘆息するタカト。デーヴァか……。
これからどんどん強い敵が現れて、ギルモンもどんどん進化していくのかな……。
タカトは、今日みたいに子どもらしく遊べる時はもうそうないのだと悟っているかの様だ。
ふと、足元に気づく。
楽しいこと、もうおわったんでーすか?
クルモン、あのさ、
前から気になっていたんだけど、クルモンて進化の時、必ずいるよね。
くる? そぅです、ねぇ……。
ギルモンたちの進化にクルモン、関係してるのかな。もしかして、クルモンがいないと進化出来ない、なんてさぁ。
しょんぼりするクルモン。判らないのだ。いや、自覚は既にあった筈だ。タオモン進化の時のクルモンを振り返れば。しかしクルモンは無意識に、自分が《重要な意味》を持っているという概念から逃げようという心理が働いている。
クルモンはタカトに背を向けるしかない。
いきなりニューナンブ。
警邏警察官に拳銃を向けられるのは普通ではない。カージャック犯の容疑で包囲されている。
インプモンの狙い通りに注目を集められた。お前らに――
このインプモン様が捕まえられるっていうのかよ!?
俺の強さを――、思い知らせてや
るー!
しかしナイト・オブ・ファイアはPCには当たらず素早く何者かの影が排除――
突風。
黒い影はインプモンの身体を引っつかんで――
消える。
首都高4号線新宿ジャンクション。次回の主要舞台。その重なる橋桁の下――
離せこのタコ!
何故そんなに強さに拘る、とレナモン。
うるせー!そんなに偉そうに訊くんじゃねー!
パートナーがいないと進化出来ないへなちょこのお前らと一緒にされてたまるかよ。(発音的に「かえ」との中間の微妙な不良ニュアンス)
パートナーがいなくてもお前は進化出来るのかと問うレナモン。
レナモンは、前話の留姫との結論をインプモンにも聞かせる。
パートナーという言葉に過剰に反応するインプモン。やっとレナモン、察する。
お前にも――
パートナーがいたのか……?
グーでレナモンを殴るインプモン。
俺だって、進化してーよ! 強くなりてーんだよ!
この拳を地面にぶつける動作が、極めてリアルに描かれ、また効果音もトントンと乾いた音で、インプモンの情感が恐ろしく伝わる。
この場面があるからこそ、Act.3でのバトルでの行動に意味が出てくる。
レナモン、目を向こうへやる。
無言で注視――
デジタル・フィールド。インダラモンが再度出現しようとしている。