第21話回顧 1
遂に、浦沢ファンとしての私が見たかった《浦沢さんのテイマーズ》。
演出は角銅さん。御自身の話は後ほど採録する。2018年2月にニコニコで配信された時に一連をTweetしていて、これをベースにしようと思っていたけど、全然言及出来ない事の方が遥かに多いので、書き改める事にした。
画像に被さってるコメントはニコのスクリーンショット。同時視聴会にはもってこいなエピソードなのだが、改めてじっくり見直すと、相変わらず大笑い出来る一方で、この後の展開を止めるどころか、しっかり要素の上積みもされていて(ヒュプノス絡みは当然除く)、脱線回などではなくこれもまさに、テイマーズの21話目にあるべきエピソードなのだ。
作画監督は信実節子さん。美術はテイマーズでは初の徳重賢さんの一人背景。
「樹莉のテーマ」というBGMは、シリーズではここだけの使用ではないか。70年代クロスオーバーとイージーリスニングの中間的な明るい曲。この場面の為だけに作られたのだ、と今となっては思える。(というか他で使える機会がなかったという)
向かう先はまつだベーカリー。
タカトの父が大きな声で「いらっしゃいませ」
樹莉は常連客。パンをトレーに載せていく。
「はい」「毎度」と言った後、左右見回して――
ま・つ・だ・く・ん・は?
で・か・け・て・る
これは外国語版吹き替えるのに苦労しただろうなぁ。日本語の発音を正確に口パクしているのだから。
レジを打っている。
タカトの劇中呼称、シナリオでは樹莉は《松田君》だったのだが、14話で貝澤さんがコンテで《タカト君》と樹莉に呼ばせた為、以降些かの混乱が生じた。今話では《松田君》。父親だから、という解釈もあるが、基本としてはこれが正解。
加藤さん、という呼称が作り手の意図以上に浸透してしまった(まあタカトがそう連呼するのだから当然なのだが)のも混乱の一因。
店を出てくる樹莉に呼び掛ける声。
「加藤ー」
これが私の小学生時代の東京の普通であった。女子も苗字で呼び捨て。今は知らない。
タカト、いなかっただろ?
うん……。
ケンタが、俺たちいるところ知ってるんだというと――
樹莉の両腕を掴んで「行こう」と連れて行かれ――、え? これは一体?
公園の方へ向かう三人。その向こうに聳える――
樹莉のパートナー!? 私のレオモン様
脚本:浦沢義雄 演出:角銅博之 作画監督:信実節子 美術:徳重賢
ヒュプノスのシーンがここと、エピローグに入るのだが、記憶にはないのだけれど恐らく私が「すみません、これを差し込みで入れてください」と書いたと思われる。次回以降の展開上、どうしても入れておかねばならなかった。水を差した様で申し訳ない。
深層地下のR&Dセンターに、缶詰にされている旧・ワイルド・バンチ。
黙々とプログラムを作っているドルフィンらに、山木がスピーチをしている。
あなた方の時代には、ネットワークを物理的に支配出来る力など――
――想像も出来なかったでしょう。私はそれを成し遂げようとしている――。
――早くデジタルモンスターの自律コア・プログラム・データを提出してください。
ジャンユーが異議を唱える。
SHIBUMIの研究はそう簡単なものではない。私たちにはもう少し時間が掛かる。
デジモンをリアライズしている事は、あなたたちの子どもを危険な目に遭わせています。
――あなたたちの子どもの為にも、SHIBUMIの研究を早く解析してください。
そう言い捨てて出て行く山木。
苦渋の顔でキーボードに向かうジャンユー。
山木も焦っているのだ。シャッガイ計画の失敗は何とかカバー出来たが、インダラモン以上のデジモンがリアライズした時には、完全に主導権を奪われる。
――という深刻な話はここまで。
ギルモン・ホームの方へやってくる三人。
パンが潰れちゃう、と樹莉。
こっち、と階段を上がるのかと思いきや
木立の中で身を屈める三人。何すんの!?と声を上げる樹莉。
しー。
見上げると――、ギルモン・ホームなのだが、何か様子が……。
何やら重苦しいムードの三人。
デジモンに、《神》……?
ジェンのカンフーの先生、そんな事言ってんの……?
趙先生の事。功夫の日本発音は《カンフー》《クンフー》、どちらも使われた。
趙先生は、あくまでデーヴァの一般論を教えてくれただけだ。デジモンの神がいる、というのはジェンリャの考え。
デーヴァが、神っていう事?
そうじゃなくって! と少し強く言ってしまうジェンリャ。
デーヴァが神に仕える存在なのだが、タカトには説明が難しい。
ギルモンがタカトに助け船なのか、ジェンに「タカト、叱らない」
するとテリアモンも「ジェンはやさしい」と反論。
「難し過ぎる」とまとめてしまうレナモン。なんだか浦沢さんがデーヴァ設定を敢えてこう処理したのかなとも思える。
うーん、と考え込んでしまう一同。
真剣にそれを観察しているヒロカズと――
ケンタ。この密かな集まりに樹莉を加えたのには、勿論意味がある。前回、成り行きでデジモンとテイマーの生身の戦い最前線にいたのだから。テイマー志望者という共通項があるのだが……、
今の樹莉は今ひとつ、場違い感。
タカトたち、真剣、とヒロカズが言うと、ケンタはいいよなぁと嘆息。
何が?と樹莉が訊く。
デジモンの事考えて、ああいう顔になるの……。
俺も、テイマーになりたい。
加藤は? と訊かれ樹莉、はっと振り向いて――
何故か言葉を濁し始める。
私は……、カード集めた事もないし……。
俺、もしデジモンテイマーになれるんなら……、オメガモンだな!
極めて順当なチョイス。
じゃあ俺、インペリアルドラモン! とケンタも充分子どもの選択としては真っ当。
後のパートナーらを考えると……。いやそれは先の話だ。
で、加藤は? とまた振るケンタ。え、だから私は……、
カードも集めた事ないしぃ……。と言ってるそばから――
バラバラバラバラと落ちるカード
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2018年2月9日
「……」
私には絶対書けない。もう土下座するしかない。 pic.twitter.com/RJo4FVoTmv
まるで手品の如く流れ出していくデジモン・カード……。
狼狽する樹莉。だが……、
………………。
そそくさとカードを拾い始める樹莉。
タカトたち、何話してるんだろう、と切り替えるヒロカズ。
ふと見上げて驚きの声を上げる。
あ……。
ギルモン・ホームにはもう誰も――
そこにはいない。
また悪いデジモンが現れ、戦いに……? きっとそうだ! 探そう!
と盛り上がってヒロカズとケンタは走って行く。 しかし樹莉は――
帰ろ。
私は浦沢さんのファンなのだが、自分から浦沢さんの様な脚本が書けると全く思っていなかったので、分析的な見方を全くしておらず、ほんの断片的な、模倣的な台詞を書いただけだった。
しかしこの、樹莉のカードの下りを見ると一つ、はっきり言える事がある。映像作品の笑いというものは、何も漫才の様に「突っ込む」必要はないのだ。むしろそのまま放置した方が笑えてくるのだ。何でもかんでもボケとツッコミという型にはめてはいけない。
樹莉が遊歩道に降りてくると――
不審デジモンが。
クルモン!
クルモン、匂いを嗅いで――良い匂いがするでクルー!
食べる?とお裾分け。
なーななーななーな、と完全に意味が判らないオノマトペを発しながらジャンプして喜ぶクルモン。
をじっと見ている――
ぱく、もぐもぐもぐもぐ。ぱく、もぐもぐもぐもぐ。
見ている樹莉。
もぐもぐもぐ。
私もたーべよ――
くーるるん。
もう一つでクル!
袋ごとあげてしまう樹莉。
クルモンが喜んでるのが嬉しい。
もぐもぐもぐもぐ。
もぐもぐ……。
もしかして、私たち……
私とクルモン、気が合って――
気が合うクル!
でしょー!?
立ち上がる樹莉。
クルモン、私のパートナーかもしれない!
ぱとな?
私がクルモンのテイマーって事!
く~る~とひっくり返る。
絶妙な表情でムッとなる樹莉。
なぜひっくり返るの? なんかふゆかい~。
浦沢セリフ大会始まる。
クルモン、慌てて起きる。
私がテイマーじゃいやなの?
クルモンは嫌じゃないと首を振るけれど……。
パンをあげたからそう言うんじゃないけど、
デジモンがパートナーにそういう態度するの、良くないと思うの。
これはお説教じゃないのよ?
そこへ「チュー!」という謎の声。
見回す。
マンホールの蓋が――
……。
デジタル・フィールドが――、あんまり威力ない範疇でマンホール蓋を押し上げた。
焦っているクルモン。
飛び出す影。
うあー!
クンビラモン、といきなり自己紹介してくれる礼儀正しいデーヴァ。(私の他作品でもお世話になった宮田幸季さん・演)
こわーいと抱きつく。
ちゅー! と威嚇する。
もしかして――、あなたが私のパートナー? (え?)
我らが神に仕えるデーヴァが、なにゆえお前のような愚かな人間と組まねばならん。
あ~良かった。私もあなたの様な不気味なデジモンのテイマーにはなりたくないわ。
はっ……、では……、
優秀なテイマーである私を襲いに!?
……。
クルモン助けて!
ちゅーん!
くりゅー、っと樹莉の後ろに隠れるクルモン。
何するの!? わーーーーっ
脱兎の如く走り去って行く樹莉。
クルモンも後に続く。
そしてクンビラモンも。
一連をずっと観察していた――
マクラモン。
Act.1ここまで。
2021年本エントリ公開時に知った事実。
今更付け加えるまでもないとは思うけど、タイトル明けファーストカット、手前から奥へ歩きのローアングルはテイマーズOPタイトル明けのタカトと同じ歩きでした。 https://t.co/pJ3mS9cgWH
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年5月12日
ええええっ……。今知りました……(汗
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2021年5月12日
樹莉もテイマーですよ、というつもりだったんですよ。音楽で印象が違いすぎたんでしょうね。
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年5月12日
あああ、確かに歌い出しの歩き方が……。20年も知らなかったなんて……。
これ以降の本編は浦沢脚本を映像化するのに手一杯なので、脚本にないことをやれる余地がここしかなかったのではと思いました。
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年5月12日