「ダゴモンの呼び声」について
さてやっといよいよデジモンアドベンチャー02 13話「ダゴモンの呼び声」(演出:角銅博之 作画監督:海老沢幸男 美術:清水哲弘)に言及出来る――のだけど、そもそもの話は既に角銅さんがTwitterでも書かれている。重複するが一応簡単に。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
無印製作途中、登場デジモンを吟味している時なのか、角銅さんがダゴモンというデジモンを目敏く発見し、渡辺けんじさんに「これってアレですか?」と訊くと「そうです」という答え。角銅さんは自動的に私を召喚する。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
ダゴンというクトゥルー神話中でも著名な古代神がモチーフなのだが、ダゴンに限らずラヴクラフトは、自分が創作した古代邪神と既存のペイガン(異教)の神々を混ぜており、ダゴンは後者。さてでは何故「自動的に召喚」だったのか。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
私はキャリアの初期は専ら実写のホラーを書いていた。まあそれは基本今もそうなのだけれど。ホラーについては本を著わしているのでそちらを読んで戴くとして(ステマ)「恐怖の作法 -ホラー映画の技術-」(河出書房新社)https://t.co/kNi90XOMz2 pic.twitter.com/wMFEpD5YPq
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
ラヴクラフトの小説ではメジャーな「インスマスの影」というものを日本に翻案したドラマをTBSで放送するという椿事があって、それを書いたのが私だった。若狭新一さんにメイクアップをお願いしたら、応援で原口智生さんも緑山スタジオに来たという。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
最近思い出した事なのだけど、TBSのDに「インスマスやりましょうよ」と持ちかけたのは、若狭さんに見せて貰ったディック・スミス(特殊メイクのパイオニア/若狭さんの師匠)がデザインしたインスマス面(没映画用)を見ていたからだった。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
いける! 日本でも成立する!とそこで勝算を(勝手に)得ていた。色々繋がってるんだなぁ、改めて。「ギミアぶれいく」枠で放送されたのが「インスマス(蔭州升)を覆う影」(1992)である。演出:那須田淳 主演:佐野史郎 真行寺君枝 河合美智子 pic.twitter.com/2lLgQzMQiD
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勿論、佐野史郎さんが筋金入りの幻想文学愛好者で、「出る」と言ってくれたから成立したのだけれど。劇中で石橋蓮司さんが手にしているネクロノミコンは、佐野さん手製の私家本である。 pic.twitter.com/V0xwvB6Kgo
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
※2021/4/14追記
VHSビデオが出たきりだったが、2021年4月14日から、動画配信サイトbaraviでの配信が始まった。ここまで高画質な「インスマス」は実に新鮮だったが、映像の佐野さんが若い様に、私もまだ若く、いわゆる若書きな面が目についてしまう。しかしこの時日本でこうした作品を創れた事は良い経験だった。
この頃はパソコン通信もやっておらず、特に視聴者のリアクションがあったという覚えもないが、ずっと後になって朝松健さんや東雅夫さんらから褒められ、ああ良かった、判って貰えてと思った。後にビデオでもリリースされているがDVDはない。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
佐野さんとは「次は『クトゥルーの呼び声』やりましょうね」と話していたのだが実現していない。ともあれラヴクラフト原作と銘打って映像化した作品としては本邦初。原作には微塵もない女性の視点など入れての脚色だが、コアはブレずにはっきり残している。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
で、私はアニメなどでもラヴクラフト要素をチラチラ入れる事になるのだが、それには単に私が好きとかいう事ではないある切実な事情があったのだけれど、これについては正月にユリイカの原稿を書くので、どうしても気になる人は刊行までお待ち下さい。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
――という経緯を角銅さんも知っていて、ダゴモン登場回を書かせようとしていたのだけれど、タイミング的に02にズレ込んだ(やっと戻った……。大変お待たせしました)。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
で、今はもう建て替わってしまった旧大泉スタジオで関Pとも初めて対面したのだった。 pic.twitter.com/sLDDRRV0jX
私をポイント・リリーフ的に起用しようという監督には概ね、通常とは変わった味を求められる訳で、殊更に通常回を無視しようなどと思っていた訳では無い。むしろこれからどういう展開をするので、どういう情報を提示しておくべきかを考える。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
すると、本来消化しておくべき情報が整理されていなかったりして、もの凄く情報を詰め込んだ話数になってしまう事がままある(エウレカとか……)。ただ02はまだ本当に初期だったし1クール目の終わりだったので、割と自由に書けた気がする。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
なのでなんでみんなあの回を異端視するのか、私自身は正直ピンと来ないのだ。キャラクターの気持ちなどはきちんと前話までと繋げて書いた(筈だ)し、デジタル・ワールドに不可解な領域があっても何ら不思議ではない筈……。というのが個人の感想です。 pic.twitter.com/sVA1sYrRxk
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月25日
面白いのは、海外ファンも日本国内のリアルタイム視聴者と、感じ方は同じであったらしく、このエピソードはやはり異物感を抱かれていた。
もし無印で起用されていたら、当然ながらドラマは全く異なるものになっただろう。今回の脚本は無印の最後までと「02」の12話までの流れを受けて、今後どういう方向へストーリーが向け得るかの一つの可能性を提示したのだった。
そして、この一話のみの参加は、後に関弘美プロデューサーが3シリーズ目の構成を振る、一種のオーディションであったとも言える。