第20話回顧 2
デジモンには公式に身長設定というものがない。液晶ゲームから始まり、多様な玩具を展開する上で、物理的な制約を設けるのは無理があるからだろう。
アニメの場合は、登場人物との対比表というものが目安になるが、グラウモンの大きさは話数によって結構違う印象だ。
それにしても今話のインダラモンは前回の倍近くは大きくなっている。だがスリムな体型であり、首都高速道路に乗ってもすぐさま崩壊とはならない。対決が横一方向という制約にする事で、今話のバトルは他に例のないものになったと思う。
ダムダム・アッパーで跳躍し、喉元目掛けてガトリング・アームを撃ち込むガルゴモン。
続いてキュウビモンも――
弧炎龍。
グラウモンのエキゾースト・フレイムでの波状攻撃。
かなりのインパクトはあったが――
無傷で噴煙から出てくるインダラモン。
厳しい戦いとなる事を覚悟する。
クルモンは弱っており、完全体進化は当面望めない。となれば、手札の切り方で攻めるしかない。
普段見せない目を狙うガルゴモン。これには苛立ったインダラモン――
腕を振り上げて――
ガルゴモンを叩き落とした。橋桁がノーマルの状態とひしゃげた状態の二枚を激しいブレ処理で、切り替えるという、もうこれは特撮。
グロッキーなガルゴモンに――
トドメをさしてロードすべく――
背中から宝貝が浮上。
ガルゴモン、撃とうにも、弾倉は空。
宝貝はやっかいな武器だ。
キュウビモンとグラウモンが救援に走るが――
やられちゃうぞとヒロカズ。ジェンリャはここで、深く息を吐く。もう慌てて無駄なカードは切らない。
充填プラグインQ。初出。
ガルゴモン跳躍し、宝貝にダムダム・アッパー!
これは効果あったか――
初めてその目を曝すインダラモン。
タカトは強化プラグインWで支援。
強化エキゾースト・フレイム!
留姫は高速プラグインHで――
高速回転の弧炎龍。だが――
宝貝がアドームクハを放ってしまう――
ネット管理局の地下施設の一角がパーティションで仕切られている。そこに姿を見せる山木とジャンユー。
中には中年のアメリカ人男性。
ジャンユーを見て、「タオ」と声を掛けてくる。
ドルフィン! 昔と変わったなぁお前。
本当はドルフィンは、あまり年齢差はないものの、教授であり、ジャンユーは研究生という立場だった。
と、席を次々と立つ人々。タオは変わらないね。いや髪の毛が白くなった。ほんとほんと――。以降呼ばれるのは、当時のニックネーム。
カーリー。
バベル。
デイジー。
シリーズ終了後に書いた「デジモンテイマーズ1984」は、彼女を主人公として描いた。私がロール・モデルにしていたのは、最初のMacintosh System開発でアンディ・ハーツフェルドらと共に参加し、アイコンなどをデザインしたSusan Kareだった。
デイジーは、この昔デジモンを作っていた「ワイルド・バンチ」を今、日本に集めた理由を山木に問う。
ワイルド・バンチとはサム・ペキンパーの映画「ワイルドバンチ」(1969)から。ダーティなグループを主軸に描いたニューシネマ西部劇。野性の人工知性を作るプロジェクトだったので、ワイルドという言葉から引用された、という設定をまさきさんが作った。
ジャンユーは一人いない事に気づき、SHIBUMIは、と訊ねる。
国内にはいる様だが所在がまだ掴めていないと答える山木。
やはり、SHIBUMIが……。
SHIBUMIは言っていた。やがてデジモンはこの世界に現れて、人間に取って代わる――。
かなり過激な意見だが、SHIBUMIがそういう人物ではない事はシリーズ後半で明らかになる。ただ、この時点ではユナ・ボマー的な存在に描かれていた。
デジタルモンスターのリアライゼーションは有り得ないと、我々(SHIBUMI以外)は思っていた。
山木は、ワイルド・バンチのプロジェクトそのものが現在の状況を引き起こしたとは思わないという。では一体どんな力が――、とジャンユーは自問。
デジモンの、『神』とやらがいるらしい……。
このホワイトボードに描かれているのは、ワイルドバンチがリアライゼーションのメカニズムを解析しようという試み。私が最終話近くで書く、「蟻地獄作戦」はこの図から連想したと思う。
はぁはぁと息をするガルゴモン。
健闘は讃えてやろう、とインダラモンに言われ、ガルゴモンは言い返す。
何言ってんだえらそうに! しかしするとまたも宝貝が――
凄まじい衝撃波。
爆風がタカトたちの方にまで吹く。
パートナー・デジモンが私にもいれば……。
これは次回への壮大な前振り。
デジモンは本来、ネットワークのアプリケーション・レイヤーにしか生きられない存在。それがこの世界に現れ進化するには、何かの力があった筈というジャンユー。
それが『神』の事なのか。
大股で早い速度で歩くインダラモン。
TOW(対戦車ロケット)が――
インダラモンを直撃!
足が止まった。
航空自衛隊のAH-1Sがロケット・ランチャーからTOWを連射。
そこそこの威力はあったが――
なんかAH-1Wスーパー・コブラっぽい描き方なんだよなぁ。日本には導入されていない機種なんだけど。
タカトがチャンスだグラウモン、と反攻を指示しかけるが、留姫に自衛隊のヘリに禍が及ぶと止める。ジェンリャも任せた方がいいかもと。
マクラモンがインダラモンを凝視。すると――
インダラモン、ターゲットをヘリに変える。これはマクラモンの指示らしい。
宝貝がヘリに向く。
タカトが危険を察知。
グラウモンに以心伝心。エキゾースト・フレイム!
激しくブレる宝貝。
何とか離脱に成功するヘリ。
あ、電線が上に乗ってる……。
そしてインダラモンは、Nシステムによって――
ワッチされている。
山木はワイルド・バンチを、現実世界に現れるデジモンを消去する手段を求める為に召集したのだった。
現実世界のデジモンに見入るワイルド・バンチ。と、バベルが声を上げる。
子どもがいるぞ!
ヒロカズとケンタだ。
ジャンユー、驚愕。まさか……。
死闘は続く。
負けるもんかーっ!
この世に生を受けたのは、貴様如きに敗れる為ではない!
タカトと一緒にいたいだけなのに、どうして邪魔すんだー!
三者三様の心の叫びが生々しい。
はかなき夢よ! インダラモン、衝撃波を吐く。
凄まじいエネルギー。
激烈な圧力で吹き飛ばされる三体。
共感度が高まっていたタカト、自身も14話の様に吹き飛ぶ。ヒロカズ、支える。
大丈夫と樹莉は訊くが、タカトは平然とうんと答え、再び前へ。
何が起こっているのか判らない。デジモンとテイマーの共感度が高まる時に何が起こるのかを。
ジェンリャも留姫も、これが最初の体験なのだ。
強烈な前脚の払いで――
蹴散らかされる三体。
その痛みを、テイマーも共有してしまう。
これはマイナス面を描きたいのではない。
宙を舞うタカトのカード。
しまった……。
ヒロカズ、カードの支援だったら手伝えると駆け寄っていく。
冷徹に観察しているマクラモン。
容赦なく宝貝の攻撃。
更に橋桁が崩れる。
ケンタのカード支援も受けるが――、ここからのカード・スラッシュが、いつものスラッシュ・バンクではなかった。
ガルゴモーン!!
猛烈に撃つガルゴモン。
キュウビモーーン!!!
弧炎龍!
グラウモーーーーーン!!!
これは間接描写。コマを抜いても判る衝撃波によるカメラのブレ。
口パクは「カード・スラッシュ」のところを、ほぼ無理矢理、パートナーの名前を呼ばせるという力業の演出。全然合ってないけれど、ここではこれが一番ピッタリくる。特に留姫の叫びには心を奮わされる。
俺のカードなくなったよ!
まだ平然なインダラモン。
進化出来れば……。
進化と聞いてハッとなるヒロカズ。
タカト、これ使え、とヒロカズ手描きのブルーカード。
三人とも、はなから馬鹿にしてはいないものの懐疑的。
ケンタに無理だよと言われるが、ヒロカズは主張する。そもそもギルモンはどうやって生まれたんだ。タカトが描いたメモ帳カードじゃないか!
気合いだ、気合い! とヒロカズはカードを渡して腕を握る。
タカト、クルモンを見る。
クルモン――、
タカトはクルモンに願っているのだろう。
クルモンもそれに応える。一度深く頷いて――、くるくる~と言いながら額を光らせた。
判った!
タカトのカード・スラッシュ、ヒロカズ手製版。
全てきちんとヒロカズ・カードにマッピングされている。
マトリックス・エボリューション!
スラッシュ・バンクの直後、一秒に満たない(20f/secくらいか)マクラモンが険しい目で見つめる顔。
グラウモン進化! 今回はグラウモン自身のコール。
メガログラウモン! 最強に張った野沢さんのコール。
最高に《気合い》を入れるタカト! それにオーヴァーラップして――
雄叫びを上げるメガログラウモン。
そう、テイマーとデジモンの共感は、こういう時の為のものだった。
メガログラウモンの体重が増大した為、橋桁は更なる損壊。すいません首都高。
進化を目の当たりにし、猛るインダラモン。
ダブル・エッジ!! タカトのコール。
凶悪な刃がついた両腕を前に差し出し――
宝貝が降下してくるも構わず――
背部バーニアを全開。
両腕がプラズマ化。
唸り声は獣だが、その目はギルモンだ。自分の心で動いている。
宝貝が前を阻むも――
あっさりとダブル・エッジで粉砕。
そのままインダラモンに激突するや――、
速度を落とさずそのまま押していく!
気合いだ。インダラモンは怯んでいる。
アトミック・ブラスター!! タカトの雄叫び。
二対の発射部が周囲から電荷を吸収し――
更なるメガログラウモンの雄叫び。
アトミック・ブラスターが――
ものすごい溜め。
発射。インダラモンは悶絶し――
すごい距離まで押されていく。この間ずっと絶叫。
ついには量子破壊。
やっぱりオーバー・キル。
やっと終息。
自衛隊ヘリに観察されていた。
勝利の咆哮! by野沢さん無加工。
タカトは雄叫びするどころか、ふは~、っとへたりこんでしまう。
盛り上がっているのはヒロカズだけ。
やったぁ、俺のブルーカード!
音楽は消えてひぐらしの声のみとなって――
次回は浦沢脚本回なので、行けるところまで行こうと、前川さんとまさきさんのリレーで、インプモンを軸に、かなりの情報を詰められた。
それにしてもやっぱり絵なのに迫力を今尚感じられるのは凄い。この回もデジタル合成の時間や工夫は相当だったろう。
#20 Credits
タカトの父:金光宣明
ジャンユー(タオ):金子由之
インダラモン:堀内賢雄
謎の少年(マクラモン):堀川りょう
ドルフィン:菊池正美
カーリー: 松岡洋子
バベル: 乃村健次
デイジー:百々麻子
黒服の男:佐藤晴男
原画:八島善孝
動画:馬渡 久 富田美穂子
背景:スタジオロフト 井上徹雄 安倍とし子 劉 基連
デジタル彩色:井浦祥子 大旛 忍 足立和也 田中唯巳郎
デジタル合成:三晃プロダクション 広川二三男 則友邦仁 山口博睦 清水正道
演出助手:門 由利子
製作進行:坂本憲生知