第49話回顧 3
タカトのモノローグ。「デジタル・ワールドのテーマ」的な曲が流れ始める。ここでは、過度に悲劇性を強調せず、非日常感というものを音楽面で支える意図だろう。
デ・リーパー・ゾーン、赤黒い泡は――
直径12㎞にまで拡大した……。
こんな事になるなんて、一年前のぼくには夢にだって思わなかった……。
ディゾルブして――
茨城県つくば学園都市の、先端通信科学研究所。似た様な施設はあるだろうが、これは架空のもの。ワイルド・バンチとヒュプノスは、デ・リーパー消滅作戦の本拠をここに移した。タカトたちも一旦、ここに集められ、聴取と説明を受けている。
いつも通りの毎日が――
これからもずっと続くと思ってた……。
ギルモンと出会った時――
そうじゃないと判って――
びっくりする事がいっぱい起こって――
樹莉の父、肇は、山木から今後の見通しを聞いたところ。勿論山木は、樹莉の救出を全く諦めていないし、肇を元気づける言葉をかけた筈だ。しかし……。
タカトの家族は、逗子の親戚の家へと疎開する事になる。
ギルモンと友だちになったり――
他の友だちがテイマーになったり――
楽しい事だっていっぱいあったけど……、
こんな事が――
起こるなんて……。
東京を去って行く松田家のバン。
音楽はここまで。
潮騒の音。
逗子の日本家屋。私はもっと現代的な家だと思っていたので、びっくりしたのだけれど、確かに映像的にもこの方が良かった。
冬の風の音を聞いている、タカトとギルモン。こうして二人だけでゆっくりするのはいつ以来だろう。
ギルモン、起き上がる。
タカト!
どうしたの? ギルモン。
ええっ!?
よっ! タカト、元気だったか?
カイ! 久しぶり! いつ来たの?
]
今来た! とバッグをタカトに投げる。
やっぱり寒いなーこっちは。
でも海は同じ海だ……。
うん……。
シナリオでは42話と同じくニューグランドだったが変更された。
館内ティールームにいる秦/牧野家の家族。
注視されているのは勿論――
レナモン、小声で
留姫。
何?
私はやはり、この様な席には……、
今更何言うの。さっきいいって言ったじゃん。
目をパチパチさせるレナモンに――
レナモンって女の人でしょ。とルミ子が訊く。
デジモンには本来、性別はありませんが……。
でも、絶対あなたは女の子。
だから私たちの家族。
留姫ちゃん、と聖子が声を掛ける。
今は家族の事と、一緒にいられるこの時間の事だけ、考えていて。
お願い。
と言われ、頷く留姫。
だが、テーブルの下で持っていたD-Arkを握りしめる。
カイ、どうしてこっち来たの?
従兄弟がこっちですんげー頑張ってるのに――
黙って沖縄で見ていられんさー、普通。
うん、と頷くタカト。
タカト
なに?
お前たちが――
このでっかい世界を救おうってのがさ、なんかよ……。
ぼくはただ、ギルモンやテイマーの仲間と一緒に、助けたいだけ。
大切なもの、大切な場所、大切な……、友だち……。
ウムヤーグワーなんか?
えっ、何? それ。
初恋の人。
えっっっ!? 恋、っていうかそんなぼく――
そっか、そうなんだ。なら判るさ。
ちょっと待って――、
――そう、ぼく、好きだった……。
だから助けたい!
じゅーり、クルモンよく判らないクル。でもじゅりが自分をいじめるみたいな事考えちゃうと――
もっとひどい事になっちゃうクル。
もの凄く本質をクルモンは捉えている。
なんで私なんかに……。
クルモン、じゅり好きクル。
じゅり、もっと笑って欲しいクル!
元気いっぱいになって欲しいクル!!
なんで私なんかに……。
膨大な情報がやりとりされている。
マザーが佇立する東京。
アメリカ、ロスアラモス研究所から衛星通信です、と麗花。
ジョニー、そっちはどうだ。
合衆国のデ・リーパーも拡大速度を上げている。衛星回線もそろそろ危なくなってきた。
そう……、とデイジー。
君たちにデータを送った。1週間前に私が指示して撃ち込んだクラスター・ジャマー弾には、ラジオ・ビーム観測装置もつけてあった。
ほおう?
殆どが消去されたらしいが、まだ僅かに、幾つか建物の隙間に入り込んで生きている。
それが送ってきたデータで奇妙な事があった。
奇妙って? とドルフィン。
渋谷――。信号機に引っかかっているジャマー弾。
それが落ちて――
コンクリートを穿って直立。
展開し、データ収集を開始。
クラスター・ジャマー弾が計測したデータによると――
デ・リーパー・ゾーンの内部を走る情報のやりとりは……、
当ててやろう。光より速い。そうだね?
光よりも速い……。
さすがというべきだな、ワイルド・バンチ。
あの巨大な量子の泡の急速進化は、それしか考えられないからねぇ。
樹莉という女の子の思考ロジックと言葉を吸収してまで、何が進化よ!
あれは巨大な量子コンピュータの様な構造だと想定していた。
これでいけそうだな。と腰を上げるバベル。
私たちは既に、その予測に基づいて――
対策を考えたわ。 カーリーがその原図を表示させる。
デ・リーパーを元の原始的なプログラムに退化させる事を考えているの。
オペレーション・ドゥードゥルバグ、蟻地獄作戦だ。
やはり君たちに任せるのが一番の様だ。頼む。
とジョニーの通信は終わる。
さあて予測が当たった。
ぐるぐる渦巻き出てくるぞ。
水野さん――。あの、まだ思いつきませんか?
焦るな焦るな。果報は寝て待て――って、寝てたらしょうがないよな。ははは。
ジェンはSHIBUMIに、ゾーンの中でも活動出来る方策を考えて欲しいとお願いしていた。だがまだらしい。
SHIBUMIのキャラクター性は32話(まさき脚本)で決定づけられていた。テイマーズ独自な、デジタル・ワールドとリアル・ワールドの中間にいる人物像というものが創り出せたと思う。グラニのリアライズではSHIBUMIなりに興奮していたが、基本的にはこうしたマイペースな人物像だった。
今話でカイという劇場版「デジモンテイマーズ 冒険者たちの戦い」(脚本:小林靖子 監督:今沢哲男)のキャラクター、タカトの沖縄にいる従兄弟・浦添 海を登場させたのは、映画もシリーズと同じタイムラインにあるのだと、映画を見に行ってくれた視聴者に伝えたかった事もあるのだが、タカトの素直な気持ちというものを、家族やいつも一緒にいる人々ではなく、ずばりと引き出せる様な誰かが欲しい、と考えて思いついた事だった。映画の主人公は美波という少女だったが、カイは従兄弟という設定なので、多少無理があっても出せるだろうといきなりシナリオで書いたら、関プロデューサーも承諾してくれて、サエキトモさんを呼んでくれた。
私もサエキさんも沖縄出身ではない。私は「ウルトラマンティガ」のシンジョウ隊員のダイアローグを書くときに、沖縄言葉を調べてあったので、台詞は書けたのだけれど、それを「らしく」言葉として発してくれるサエキさんの努力で、沖縄の人が聞けばやや不自然さもあったかもしれないが、かなりリアルなイントネーションの芝居をして貰えたと思う。
ただ、沖縄ではテイマーズは放送されていなかったという。