第49話回顧 2
国連軍と称しているが、これは当然米空軍のオペレーション。既にファイブ・アイズ各国の施設もデ・リーパーの侵撃を受けており、その震源地は最初に現れた西新宿だとも周知されていた。国連安保理が急遽開催される(日本は戦後ずっと常任理事国には加盟出来ていない)と、アメリカ主導でこのオペレーションの実施が決まる。
誰しもステルス機で爆撃というと、小型核兵器でも用いられるのかと連想するだろうが――
B-2 Spirit、腹部ディスペンサーを解放し――
無数の小型爆弾と見えるものをゾーンに投下。
降下しながら――
クラスター弾、形状を変える。
泡の中に潜り込んでいく。
ややしてそここから光が。
B-2はフライバイ。
ターンして帰還していくB-2。
ゾーンの大部分にまで行き渡っている。
なるほど、あれはジャマーだ。バベルの声。
ジャマー?
攪乱させている。強烈な電磁波を放出させたんだ。
安堵して、うん、と頷くドルフィン。
と、衛星通信が入る。
攻撃は成功したか? という声。
騎兵隊気取りかね? ジョニー。
ドルフィンには旧知の人物。
テンガロンハットを被った初老のアメリカ人。
破壊ではない。麻痺させるのが目的だ、ドルフィン。と親しそうに言うジョニー。
なんだ、ベッケンスタイン教授じゃないか。とSHIBUMI。
元気かい? SHIBUMIは切迫した状況でも飄々としている。
挨拶するジョニー。
ジョニー・ベッケンスタイン教授は国連防衛軍科学顧問としてこのオペレーションを指揮した。本来はドルフィンと同じく先端的なネットワーク・テクノロジの研究者。今は、仮想世界が現実世界に及ぼす物理的な被害の防衛手段を研究していた。クラスター・ジャマーは元々は小型核を用いないEMP兵器(電磁パルス攻撃/敵のコンピュータ危機、ネットワークをシャットダウンさせる)として既に作られていた。
ジャマーの効果なのか、静まっているゾーン。
意識を取り戻すインプモン。
ちくしょう……。
しゃべらないで、インプモン。――とサクヤモンが諭す。
デュークモンが警戒しながら接近。
か、加藤さーーーーん!!
タカトが叫んだのは、カーネル・スフィアの中の――
もう――
やだぁぁぁっ!!
壁を叩く樹莉。
出して! ここから出して!!
ADRの声が聞こえ始める。
人間――、愚かしい生き物――。
やめてよ! 私の声で話さないで!!
振り向くと――
樹莉の声、樹莉の身体を原形にして形作られたエージェント ADR-01 B。
加藤樹莉の思考ロジックにより、哀れみを感じる。
嫌だ! こんなのもう――
嫌ぁぁぁぁぁっ!!
スフィア床面より無数のケーブルが伸び出してくる。ベルゼブモン、デュークモンを苦しめたケーブル。
やーめーて! とクルモンが飛びつく。
必死にケーブルを解こうとするが――
ケーブルにはたかれてしまう。
もっと叫ぶがいい。もっと悲しむがいい。それがデ・リーパーの力を強める。
必死に抗う樹莉――
床にねじ伏せられるが――
嫌ぁあああああっっ!!
樹莉の激しい情動が情報となってケーブルを活性化させ――
ADRを呪縛していく。
樹莉はおののく。
自分の激しい情動がどういう作用をもたらすのかを見て――。
カーネル・スフィア、ゲート・キーパーが光ると――
ジャマーの光が――
消えて、赤い光の柱が立ち始める。
凄まじい活性化を始めるデ・リーパー。
山木は、ジャマーがデ・リーパーを不活性に出来たと安堵している。
しかし――
何これ!? という恵の声。
デ・リーパー内温度、急速上昇! 拡大速度、240%!
なんだと!? どういう事だ!?
光の柱が消えると、激しい振動を引き越す。(キャプチャは加工画像)
ゾーン全体が揺れていたが――
振動が収まる。
クルモンが必死にケーブルを解こうとしている。
クルモンだって! クルモンだって!
非力な(と言っても石で体育用具室の鍵を壊すくらいの力は持っていたが)クルモンが頑張っている。
しかし、ケーブルに弾かれてしまう。
やだよ……、やだよこんなの……。
こんなのもう嫌だよ――。
樹莉が恐怖感を募らせると、ケーブルが増えていく。
じゅーり!とクルモンが駆け寄ろうとするが――
転んでしまう。
自分を呪縛するものから必死に逃れようとする樹莉。
しかし、自分の力だけでは到底抗えないと悟る。
悲痛に叫ぶ樹莉――。
その激情が、ケーブルを発熱させていく。
叫び声は、タカトに聞こえた――。
加藤さああああああんん!!
哄笑するADR。これはシナリオにはない描写。ADR-01は最終話まで「デ・リーパーのアクティヴなシンボル」として敵役になるので、ここで強調しておくのは意味があるのだけれど、ちょっとキャラクター的に過ぎる気が当時はしていた。
ゾーンの泡を突き破って、ケーブルが林立していく。光景を更に変えていく。
都庁の残った部位が、徐々にケーブルによって――
せり上がっていく。
なっ、何!?
都庁が更に遥かにせり上がり、泡に包まれていくのを呆然と見るジェン。
都庁最頂部が異形の姿へ――
デ・リーパーの最も進化した部分であったカーネル・スフィアを顔の中心に配置された、単眼の女神像の姿。
劇中では呼ばれないが、マザー・デ・リーパーが成立。
まるで女神像……。とサクヤモンが漏らす。
何という大きさ! とデュークモンも。
こっ、怖くなんかないぞ!
しかし女神像は数百mの高さ。
その周囲の泡が猛烈に吹き上がる。
ゾーンがその高さを上げようとしている。
後退するサクヤモン。
何という力!
泡が上昇していく。手前には高く吹き上がるデ・リーパー泡の柱。
何があったって、ぼくは絶対に加藤さんを助けるんだ! 行くぞ!デュークモン!
タカト待て! とデュークモンが諫める。
どうしたのさ……?
究極体であっても、あの泡の中に入ってしまうと力を失う! 忘れたのか!?
柱は自壊。
だって――、だって――
口惜しがるタカト。
三究極体、ゾーンから離脱せざるを得ない。
高さを増したゾーンが、マザーを覆おうとしている。
くそぉおおおおおおっっ!!!
遂に樹莉はゾーンに呑まれてしまった――。
最終ステージがここで出来上がった。ゾーンは東京都心部を覆い、これまではただ泡やブロブといった不定型な形状をしていたデ・リーパーは、ケーブルという物理的な形状をとる事で、アクティヴに活動が出来る様になる。
9/11直後に、いかにフィクションの中で人類存続の危機的な状況を描くか。その命題に対する私たちの回答がこの地獄絵図であった。
ケーブルはファンの間では触手と認識されているが、そうした要素も勿論なくはない。おぞましいものという意味では変わらない。
だが、樹莉を苛むケーブルには強い意味があった。様々な外的原因によってがんじがらめになって、自らの力だけでは身動きが出来ない――という困難さの象徴だった。樹莉にとってそれが、「運命」なのだった。
ここでCM。もう危機的な状況でクリフハンガー状態で1週間も視聴者を焦らせるという段階ではない、と思った。
B-Partでは、トーンを変える。テイマーズらしさ、非日常下の子どもたちを軸に、ワイルド・バンチの反撃が控えめに開始されるのを描く。