第45話回顧 3
Act.3は新たなフェイズに入る。デ・リーパー・ゾーンの内部がどうなっているのか。そしてそこで出会う者――。
そして集まり始めている、テイマーとデジモンたち――。
シウチョン? シウチョンどこーっ!? 嘉玲(ジャアリン)が妹の姿が見えず、焦っている。
まだディスプレイに光が残っているD-Arkを握って立っているシウチョン。
シウチョン……。(安堵)
シウチョン、探したよー。あれ? ロップモンはどこ?
黙って指を――
歩いて行くアンティラモン。シウチョンがD-Arkによって進化を果たしたのだ。まだシウチョンは超進化プラグインSカードを持っていないのだが、シウチョンのD-Arkには特別な配慮があった、という事にして欲しい。
それにしてもこのカットは見る度に心が躍る。私が子どもの頃、こうした夢想をずっとしていた。もし家の近所に怪獣が現れたら……、と。
ロップモンなの!?
ロップモンじゃないの。あれはね、アンティラモン、ていうんだよ。
うわああああああああっ!!!
ゾーンの巨大泡の中に――
遂に中へ。
目を見開くや、眼前に広がる――
陸自のキャメラ越しではなく、直接的に初めて描写されるゾーン内部。無数の小さな光が飛び交っている。高速で内部通信しているという意味合い。
こんなになってるなんて……。
タカト!
どうしたの? デュークモン。
究極体の姿、保てない!
ど、どうしよう――。
あ!
中央公園の取りこまれていない部分がった。
あそこだ! あそこに降りよう!
デュークモン、光に。
助かったね、タカト。
うん……。でもどうしてここだけ大丈夫なんだろう……? 木があるから?
有機生物の解析が出来ていなかったからなだけ。――という樹莉の声。
後ろを見るタカト。
木陰から姿を現す――
加藤さん!
どうしてこんなところに?
駆け寄るタカト。
次の黙っている樹莉からディゾルブで――
向こう側で何かあったのか? とインプモン。
いつの間にかこの二人、バディ的になっている。
ん~
ぴと。
おい、何見てんだよ、さっきからよ!
クルモン、あそこ行ってみたいクル!
あ? どこだって?
中央公園の向こう側――
このAct.3になって、ディゾルブ(オーバーラップ)の切り替えが頻出する。勿論これには演出的な意図がある。
ぼく、とっても心配してたんだ。
だって加藤さん――
加藤樹莉という人間個体は、興味深いサンプルだった。
――無機的に言葉を発する。
いいっ!?
ネットワークに入り込んだ異物、人間。その行動アルゴリズムは、デ・リーパーと似ていた。
何言ってんのさ! やめてよ加藤さん!
加藤樹莉の思考ロジックは――
ただ破滅的な方向に向かっていた。
脚の「線」が増えていく。
加藤さん! と肩を揺するタカトだが――
人間はそれを、「悲しみ」と呼んでいる様だが――
タカト! これジュリじゃない!
何言ってんだよギルモン! こんなに温かいのに――加藤さんだよ!
加藤さん! と必死に呼び掛けるタカト。ディゾルブで――
何があんだよ、あそこに!?
わかんないでクル。でも……、
くりゅ、っと耳を拡げて飛んでいこうとするのを――
わあああっ!っとインプモンが押さえつける。
何するんですか!?
ばっか野郎! お前みてーに力もねー奴が、あんなとこ行ってどうすんだよ!
このアホが。(コツンと叩く)
でも行きたいんです……。(真剣)
そ、そんなに……? インプモンの問いに頷くクルモンが都庁最頂部がディゾルブ。
デ・リーパーは、加藤樹莉をサンプリングして――
ネットワーク世界と、
それを生み出した人間という自律行動体を解析し――
人間の言葉を得た。
もう眼球内部も――
加藤さん!――
うっ――
赤黒く蠢き続ける靄。
四聖獣はその威容と力を表現する為にエフェクトをまとっていたが、ここではもっと細く濃い色のオーラで表現されている。撮影(デジタル合成)担当の方が、コンテを見た時に「怪しいのを作らなきゃ」と思われたという。以降、この方のスタッフルームでは邪悪系オーラを「加藤さんオーラ」と呼ばれていたそうで、密かに嬉しかったり。
今話最大の見せ場であるADR-01 Juri-Type1 のトランスフォーメーション。
決してグロテスクではなく異様さを感じさせる為に考え抜かれたデザインと演出。
これもデ・リーパーなんだ!
脚が伸びて、全身も大人体型に近づく。
そして、背部が展開。
そ、そんな事……。
デ・リーパーは、デジモンのデータをロードし、人間が「エージェント」と呼ぶ肉体を得た。
ここから樹莉の声ではなく、フィルターでくぐもらせた声に。
加藤さん……(じゃない)。
それじゃあ本物の加藤さんは!?
人間とデジモン、それぞれに告げよう。
デ・リーパーは、人間が存在に足らないものだと、結論づけた。
あまりにも弱く、あまりにも不整合な存在だ。
人間は。
タカトの方に歩き出すADR-01。通り過ぎる度に木々が枯れていく。これはデジタルで表現された。
枯れ葉が舞う中――
加藤さんがどこにいるか、教えろ!!
立ち止まり――
アルカイックな笑みを浮かべる。
タカト! ここにいちゃダメだ!
ギルモンがタカトをリードしている。
ぼくは絶対に加藤さんを助けるんだ!
意味を成さない。全てデ・リーパーに消される。
向こうへ歩いて行く。
そんなこと、絶対にさせない!!
ジェン! 早くデュークモン助けなきゃ!
判ってる! だけど……。
背後から何かが来るのに気づく。
振り向くセントガルゴモン。
降下してくる――
おおーい!
はっ!
ヒロカズ!
この留姫の嬉しそうな顔。26話(ジジモンババモン)からこの変化。
着地したガードロモン。
応援に来たぜい!
俺が連れてきたんだろーが!
ん?
ジェット音と共に高速の飛行機雲。ヘヴィなギターのリフが始まる。
何!?
タイムズスクエアビルの屋上に着地する。
誰……?
イントロから歌へは行かず、エンディングに直結して45話は終わる。
この曲は「ベストテイマーズ5」というキャラソンCD「秋山遼&サイバードラモン」のデュエット曲「Fighting Soul」。ツイン・ギターのアメリカン・ロック。世田壱恵さんと金丸淳一さんのハモりがカッコ良いので是非聴いて欲しい。
あくまでサイバードラモンをイメエジして作られたCDで、リョウ、サイバードラモンのソロとこの曲なのだが、ジャスティモンにはこれ以外にないというジングルになった。
ADR-01 Juri Typeは勿論中鶴勝祥さんのデザイン。シナリオを書く前にこれを見せて貰えて本当に助けられた。
ニセ加藤さんのオーラはコンテ読んだ瞬間に怪しいの作らなきゃとはりきって作ったり。
— TEN (@nori_kuni) 2017年1月6日
以降ここのスタッフルームでは敵方の邪悪系オーラは加藤さんオーラという指定になりました。 pic.twitter.com/aw65och1zR
イレギュラーな表現、テイマーズではこれまで無かった表現を多く描写した45話。吉沢さんと私はやはり23話、ヴィカラーラモン後半で組めた事が良い記憶として残っている。だがやはり、この回と言えばデ・リーパー樹莉である。
吉沢さんもテイマーズは今話まで。ありがとうございました。
後年、プロデューサーになられた吉沢さんに誘われて「エアギア」を書いた。東映アニメーション本社が神楽坂にあった最後の時期だった。
#45 Credits
ギルモン~デュークモン:野沢雅子
松田啓人~デュークモン:津村まこと
テリアモン~セントガルゴモン:多田 葵
李 健良~セントガルゴモン:山口眞弓
レナモン~サクヤモン/アリス・マッコイ:今井由香
牧野留姫~サクヤモン:折笠冨美子
ガードロモン:梁田清之
塩田博和:玉木有紀子
マリンエンジェモン:岩村 愛
北川健太:青山桐子
ロップモン~アンティラモン:多田 葵
李 小春:永野 愛
博和の母:中山えり子
李 嘉玲:吉倉まり
李 鎮宇:金子由之
山木満雄:千葉進歩
小野寺恵/土岐アナウンサー:宮下冨三子
デイジー:百々麻子
ドルフィン:菊池正美
クルモン:金田朋子
インプモン:高橋広樹
デ・リーパー(樹莉型):浅田葉子 (初の止め前)
ナレーション:野沢雅子
原画:出口としお 野沢 隆
動画:柳田幸平 下平夕子
背景:スタジオロフト 井上徹雄 阿部とし子 劉 基連
デジタル彩色:松山久美子 井田昌代 松森より子 坂入希代美
デジタル合成:三晃プロダクション
広川二三男 則友邦仁 吉野和宏 中山照美 福井道子
演出助手:地岡公俊
製作進行:山下紀彦