第34話回顧 4
もう本篇の残りは4分。しかしまだ展開は止まらない。
グラウモンはまだ死の意味や重さもそう深く知ってはいない。しかし、それまで生きていた存在が消えてしまうという現実に直面し、狼狽える。
あの優しかったレオモンが……。そこで沸き上がる「本能」という「運命」。
Fight or Fright――、闘うか恐れるか。グラウモンは闘争の本能を現す。
身を震わすばかりに激情的な怒りを表すタカト。
なんて酷い事を――
歯を剥いて食い縛る。
何て、何て最低なんだ!
お前なんか――
お前なんか!
タカトの背後から眩い光。もうD-Arkもカードも介在せず、グラウモンはメガログラウモンに進化を果たす。
メガログラウモンがその巨体を通過してもタカトは構わない。
ああああああああ!!!
呼応して咆哮するメガログラウモン。
二人が同時に雄叫びを上げる。
樹莉はまだその場を動けない。
何なのこれ!? 何が起きてるの?
ヒロカズ、見かねて安全なところまで退かせようと樹莉に
加藤! こんなとこ突っ立ってんじゃねー! と腕を引っ張る。
触らないで!
誰も私に触らないで!!
加藤……。
やっと完全体かよ。成りばかりデカくしてどうする。
俺は究極にまで進化してんだ! お前なんか所詮犬死にするだけだ!
こいつを! 絶対に! 倒す!
憎悪の感情が重なっている。しかし――
またも雄叫びを上げ――、
メガログラウモン、背部バーニアを噴射。
巨体を浮かび上がらせて――
ジェットの勢いでベルゼブモンに突っ込んでいく!
へへっ――
巨大な爪が直撃する寸前に飛翔するベルゼブモン。
サイボーグ野郎!
ベレンヘーナを回収。
消えちまえ!
ダブル・インパクトの銃弾はメガログラウモンの装甲を突破出来ない。
バーニアの出力を上げて虚空にいるベルゼブモンに向かう。
メガログラウモンの鉄顎は、凶暴なメガログラウモンを抑制するという設定なのだが、ここでは武器として使用。ベルゼブモンを喰い千切らんばかりに噛みつく。
そうだ! 行け! やっちまえ!!! 形相が変わっているタカト。
樹莉、やめて、と懇願。
これでフィニッシュかと思いきや――
眼球のすぐ脇をダークネス・クロウが突き立てられてしまう。
だが、タカトはメガログラウモンの痛覚を共有していない。
負けちゃだめだメガログラウモン!
くそう!もっと強く進化! 進化するんだ!
進化ぁあああああああ!!!
タカトの叫びが微かに聞こえる――
クルモン、自分の頭部のマークが反応しているの気づき抑えようとするも――
くっるーーーーー!
ちっぽけな身体のクルモンから生み出される進化の輝き、そのエネルギーの大きさ――
進化の深淵より四聖獣の領域に届き――
四つの方角に光が届く。
朱雀門に向かう光。
その輝きが、メガログラウモンへと届く。
降り立つベルゼブモン、事態の変異に驚いている。
何!?
メガログラウモンの胸のハザード・マークが明滅を始めた。
このマークはギルモン時代から持っているもの。
何が起きるんだ!?
ぐあああああああ!!!
異変はメガログラウモンの身体にだけ起こっているのではない。
ネットワーク最深部レイヤーにデータが異常集中しています!
麗花が報告。
全周天モニタにハザード・マークが浮かび始める。
最大級の危機――、デジタル・ハザードか!?
この規模は過去最大! リアル・ワールドに影響が及ぶものと思われます――。
震えながら報告する恵。
西新宿――。突如立ち上る赤い光の柱――。
ジャンユーが窓からそれを見ている。それが立ち上る事を知ったのだ。
どうしたんだ……? 何が起こってるんだ……?
ジャンユーのラップトップモニタがハザード・マークに埋められていく。
くそう! ジェンリャ! 子ども達! みんな無事でいてくれ!!
私は――(今は)無力だ……。
メガログラウモンを取り巻いていく、炎の様な煙。
それが燃え上がる。メガログラウモンは咆哮し続けている。
進化だ! 究極体に進化するんだああああああ!!!
炎の中で、姿が変わっていく。
進化……、
現れる、おぞましい異形の――
メギドラモン。
もう言語が通じる存在ですらなくなっている。
ギルモンの究極体がこんな恐ろしいものだったとは――
翼で浮かんでいる。身体を上下させて相手を威嚇。
ぼくが――
ぼくが望んだから、
こんな姿になったの――?
タカトは悔いている。
後退るベルゼブモン。
蛇の下半身がにじり寄る。
爪を前に出して身構える。
世にも恐ろしい声を上げて吠え掛かるメギドラモン。
これもワンカット。
やめてええええええええ!!!
いたたまれず悲鳴を上げる樹莉。
もう声も出ないタカト。手にしたD-Arkが――
テイマーズに於ける究極体進化の形を、パートナーとデジモンが二心同体として共に戦わせたい――、という構想は最初期から持っていた。それを実現する為にあれこれと背後では動いて荒牧伸志さんを引き込んだ(最初に相談したかった事案がこれ)。
実のところ、プロデューサー(東映アニメ、フジテレビ、読売広告社)からも、企画社(WIZ/バンダイ)からも反対などされなかった。でも今度は、物語を編む上で自分が困難になっていく。そこまでになる必要があるのだろうかと。
しかし究極体のデザインを見ると、タカトとは別存在としての物語はどうしても考えられなかった。かと言って安易に、ロボットに搭乗するといったニュアンスになっては絶対にならない。タカトであり、進化したギルモンという二者が内部にあるという表現をしなければならない。そうした真なる究極進化が如何に困難であるかという、イニシエーションを経る必要があるのだと、結論を出して提示したのが34話だった。
インプモンという存在を如何に物語で活かすかというところから、この34話、そして次の35話で一つのクライマックスにすべく、34話はタカトもグラウモンも、地獄の様な経験をしてしまう事になる。
だが、このプロセスを経たからこその、カタルシスがある。
そう自分に言い聞かせ、心を鬼にして書いたシナリオだった。こんなものを書くエネルギーは、もう今の私にはない。
だけどもう沢山だ、と思った。
津村さんには本当に過酷な芝居を要求してしまった。私たちが大好きで描いていた、イノセントなタカトではない、タカトだった。
従って、次回はその最初のタカトを取り戻すのだ。
「運命」についてなど、今話から張った伏線などについては回収時に記そう。
以下は本エントリ記述時点での戯れ言(テイマーズの事から離れるので読まれなくても良い)。
2020年の米大統領選の頃、YouTubeやGmailを含めたGoogleのサーヴィスが一時不能になった。公的な発表は無かったと思う。昨年の早い時期から、私はGoogleに依存するのをなるべく避ける様になったのだが、それでも困る事態ではあった。
これを記している今、アメリカはサイバーアタックがパイプラインや精肉工場へ仕掛けられている。
こういう事が起きる、と既に警告的なものを発表していたのが世界経済フォーラムだ。
2019年10月に、「近い将来に起きるコロナ型感染症パンデミック」の公開予行演習《イベント201》を、製薬会社をスポンサーにして開催したのは、ジョンズ・ホプキンス大学(今のパンデミックの公的データ元になっている)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(離婚後の名称はどうなるのか)、それと世界経済フォーラムであった。このイヴェント201の動画は分割されたものが幾つか動画サイトに上がっている。如何に情報を統制するかという事も話し合われている。
世界経済フォーラムの主宰者クラウス・シュワブは、一年前の2020年6月、世界は二度と元には戻らない。グレート・リセットが必要だと宣言した。いや、グレート・リセットするのに、パンデミックが好都合だとまで言った。すぐさま英王室やカナダ首相が賛同した。
私が知る限り、この主張に賛成する人など見た事がない。
Google、Facebook、Twitterといったメディアが、メイン・ストリーム・メディアの報じるものと異なる観点、意見、情報といったものをシャットダウンし始めて、世界は情報統制下に入った。が――、思う様に事態が進まないのを苛立ったのか、クラウス・シュワブは、次に世界を脅かすものは「サイバー・パンデミック」である、と宣った。
2020年7月に開催された、サイバー・ポリゴンというイヴェントが今年も予定されている。
今度こそ、世界の価値観だとかもろともリセットさせたいのかもしれない。
にしても、「デジタル・ハザード」に比べたら、何とも安っぽいプランではある。(現実の被害に遭われている方々には陳謝する)
陰謀的な事は全く記していない。ただ事実を挙げただけである。
#34 Credits
グラウモン:野沢雅子
松田啓人:津村まこと
テリアモン:多田 葵
李 健良:山口眞弓
キュウビモン:今井由香
牧野留姫:折笠冨美子
レオモン:平田広明
加藤樹莉:浅田葉子
ガードロモン:梁田清之
塩田博和:玉木有紀子
北川健太:青山桐子
ロップモン:多田 葵
李 小春/鳳 麗花:永野 愛
李 鎮宇:金子由之
山木満雄:千葉進歩
小野寺恵:宮下冨三子
クルモン:金田朋子
ベルゼブモン:高橋広樹
チャツラモン:石井康嗣
ナレーション:野沢雅子
スーツェーモン:森山周一郎
原画:八島善孝
動画:馬渡久史 富田美穂子
背景:徳重 賢
デジタル彩色:戸塚友子 鳥本佐智子 井浦祥子 藤田 潮
デジタル合成:三晃プロダクション
広川二三男 則友邦仁 松平高吉 石川晴彦 花見早苗
演出助手:地岡公俊
製作進行:山下紀彦