第30話回顧 1
テイマーズのデジタル・ワールドが凝縮されている30話。「冒険はつらいよ」がテイマーズのアプローチ。
これまで描写されてきた、デジタル・ワールドの要素が映像として詰め込まれ、パーティが組み替わる。
ベルゼブモンが主人公たちと初対面するのだから、前川さんが脚本。梅澤さんの本気な演出。夏映画「デジモンテイマーズ 冒険者たちの戦い」で作画監督をされた山室直儀さんがシリーズで初の作監。以降ローテーションに入られる。美術は徳重さんの一人美術。
27話で1話だけ行信三さんが美術を担当されたが、同映画の美術も行さんだった。
デジタルワールドから緊急連絡 クルモンが…
脚本:前川 淳 演出:梅澤淳稔 作画監督:山室直儀 美術:徳重賢
暗所で仮眠していたタカト――
あ、と起きる。
小声でギルモンを起こす。
ごはん? ギルモンお腹すいた。
今日はギルモンご飯抜きだよ。
ぎるっ!?
ジェン、交代の時間だよ。さ、寝て。
交代でワッチをしていた。
ありがとう。そうさせて貰うよ。
あれ?
ふあ~ねむ~
おやすみ~
それにしても……、
留姫ったら、どこ行っちゃったんだろう……。
リアル・ワールド球が小さく見える、森の中。クレーン・ダウン~横移動。
蛍の様な灯りが――
レナモンと留姫が仮眠している。その周りを飛んでいる――
デジノームたち。
流石に五月蠅く感じているのか、レナモン目を――
開く。
ふと傍らを見る。
留姫は目を瞑っている。このところ、レナモンは留姫が何を考えているのか判らず当惑している。
再び眠る事にしたレナモン。
デジノームは、二人が離ればなれになっている事が「楽しくない」のかもしれない。
デジノームのいつも笑っている様な声は、毎回女性の声優陣(で声が低くない人)がいわゆる「ガヤ」の様に別途に録音していた。
谷間を猛然と煙を上げて走ってくる――
ベヒーモス。それを駆る――
ベルゼブモン。
俺は望み通り力を――
強靱な肉体を――
漲るパワーを手に入れた――。
だーが、それがどれほどのものなのか――
戦ってみなくちゃ判らねえ!
誰でもいい!
俺と戦ええええ!
走り去る。
意図的なのか、今話は1コマ作画が実に多い。エフェクト・アニメーションが多いが、ダイナミックなキャラクター・アニメーションも惜しみなく描かれている。劇場作品的。昔の私はゴールドライタンの「標的マンナッカー」などを見ては喜んでいた。今話はそれに近い感覚を覚える。
ここでやっとサブタイトル。
今話は子どもたちのグループショット。みんなにそれぞれ見せ場がある。
ねえ、ジェン、留姫の事なんだけど。
うん。
ぼくたちがあちこち探すより、 旗のところで待ってた方がいいと思うんだ。
思案するジェン。消極策に感じられるが――、そうかもしれないねぇと同意。
クルモンも早く見つけたいけど、今は留姫とレナモンと合流する事が先だ。よし、旗のところに戻ろう。
モーマンターイ
ここでBGM「人々」が流れ始めたのが、個人的には嬉しかった。現実世界編の、《いつもの日常》を彩る音楽なのだ。それが、デジタル・ワールドで初めて流れる。ここもタカトたちにとっては、「日常」の世界になってきたのだ。
――でもはっきり言って、俺留姫苦手かも。とケンタ。
そうそう、パートナー・デジモンがいない俺らを馬鹿にしてる感じだもんなー。
そっかな。私好きだよ、留姫ちゃん。
パートナーデジモンのいらっしゃる加藤様には判らないんですよー。
レオモンが、落ち込む事はない、と声を掛ける。
いずれお前達にも、パートナーが現れる筈だ。
うえ、やっぱり!? レオモンもそう思う? 上がる二人。
実は俺さ、エンジェモンがいいなとか思ってたんだ――とヒロカズが言うと、ケンタ、ないない、と否定。ヒロカズにエンジェモンなんて絶対ない。ヒロカズにはスカモンとかが……(スカモンに失礼な)。
なんだとこら。そこまで言う事ないだろがー。
ね、レオモン。
ホントにあの二人にパートナーが現れるの?
そうでも言わないと、あの二人があまりに救われないと思ってな……。
妙にしみじみと語る。
ぁ……。(長い間)
ぷっ
パートナー、出来るといいね、と小声で言う樹莉。
そして一行は旗ポイントに。
実は最初にこの荒野に落ちて、写真撮影をした地形と、それ以降に描かれてきた旗ポイントには共通点がなかった。これは構成役として私のミスであった。前川さんが、特徴的なメサがそそり立つ場所と改めて設定し直した。
あー! 旗がなくなってるー、とタカト。
ここで間違いないの?と樹莉。
三本の岩山の前だから、ここで間違いないよとジェン。
じゃあ、誰かが旗持ってっちゃったのか、とケンタ。
地面を嗅いでる内に、旗を立てた孔を見つけるギルモン。
クルモンの匂いだ!
えっ、本当?
うん! 絶対そう。
テリアモンがクルモンの声色を真似て
じゃ、旗を持ってった犯人はクルモンだったクル~
ダストパケットが上手から下手へ転がる間、無言でテリアモンを見つめる一同。音楽も止まる。
普通ならいたたまれないだろうが、テリアモンはそこはタフらしい。
レオモンが意見。もしそうなら、 少なくともクルモンはデーヴァたちから逃げ出したという事だ。
タカトは、それだけじゃないよ。ぼくたちの旗を持っていったって事は――
クルモンもぼくたちを探してるんだ!
光が見えてきた。
明治通り戦闘の報道――
テレビを消す。この表現もCRT(ブラウン菅)+アナログ放送というレトロ表現に。
麗花の声。もうすぐ朝ご飯出来るから、テーブル片しといて。
やる気なし。
都庁――
ヒュプノスが再建されている。
山木の直接の上司だった監査委員が、更に上位の官吏(クレジットは検察官となっているが、ネット管理局の上部機関代表、もしくは防衛関係か)に具申している。
前任の知識を持った者でなければこの施設は稼働出来ない。そういう事で承認を得ていた筈ですが。
その承認を出した人間が今の椅子に座っていられるのは時間の問題でしょう。
忌まわしい事故を出したこの施設も、 使いようによっては国の為に役に立つ。だから検査するんです。
あなたも判ってて聞いてるんでしょう。
と、向こうから技術員の声。ヒュプノス、再起動します。
よし!
コマンドライン入力。
起動する――
機器の灯がつき始める。
シャッガイ導入時以来、技術員が増員されている。
23話で山木は、形状だけのピンズを襟につけていた。このロゴが設定された理由は私は知らない。貝澤さんが必要だと考えたのかもしれない。ロゴの後ろでサークルの2Dアニメーションが動いており、メインタイトルバック、D-Arkの表示と同じ意匠だからだ。
ヒュプノスが稼働しただけで、デジタル・ワールドには影響が現れる。リアル・ワールド球に電光が走る。
突風が一行に吹き付ける。
舞い上がる砂。
飛ばされそうになった樹莉をレオモンが抱く。
何が起こったんだ!?
あぅ! 光の柱が!
このタカトのカットは、暫く前によくミームとして見掛けた。なんでゴーグルをつけないのか、というネタ。しかし本篇を見れば、突発的に起こった砂嵐なのだと判るのだが。
迫ってくる光の柱。
あれに触れたらまたどこかに飛ばされちゃうよ!
逃げるんだ!
逃げるってどこにだよ!?
みんなーっ! というギルモンの声。
洞窟から、こっちこっちと呼んでいる。
最大級の光の柱が――
去って行く。
危なかった、と安堵するジェン。
ギルモンやったね! ありがとう。
ふふっ
この場面もそうだが、色指定が実にきめ細かい。背景と完全に馴染んでいる。
レオモンが言う。この嵐が吹き荒れる様になってから、 この世界はおかしくなったんだ。
この台詞が意味するのは、デジモンのリアライズ現象なども、リアル・ワールド側からの干渉があったからだという因果関係。
テリアモンが、あれ?タカトぉ、リュックのポケット、光ってるよ?
ん?
あれ?
スイッチが入ってる!
ひょっとしたら――!
ワイヤレス・インカムに小さな着信音。
ん――。
モデム通信音だ。
山木、PCでモデム受信の設定。
テーブル片しといてって言ったじゃない、と言いながら入ってくる麗花。
何やってんの?
メールが受信されました
驚愕する山木。まさか本当に――
誰から? と麗花に問われ、もしや――
タカトヨリ
良かったわね、みんな元気だって。
ここから優しい音楽が流れ始める。
で、あなたは? と山木に問う麗花。
動かねばならない、と思っている。そして思いを馳せる。子ども達がいるところ――
デジタル・ワールド――
平静が戻った。
どうやら収まったみたいだね。
タカトくん、どうしたの?
うん……、風が収まったら、また消えちゃったんだ……。
メール、ちゃんと届いたかな……?