第13話回顧 1
私はシリーズ中で意図的にリミッターを外す時がある。視聴者の子どもにとって判り難いだろう大人の関係、裏の意図といった表現や、ロジカルな説明をするパートなどは、敢えて大人向けの話法に切り替える。
これは私が影響を強く受けた、初期ウルトラシリーズがまさにそうした話法であり、子どもの時にはなんとなく判る事だったものが、成長して見た時に「そうだったのか」という再発見を出来たし、直感的にも子どもながら、そうした表現が作品に特別感を抱かせてくれたからだ。
1クール目は、日常に現れる非日常であるデジモン達と、テイマー達の結束に至るまでを描くのが主題であった。
タイトル通り、「デジモンテイマーズ」として主人公達が動き出す2クール目以降をローンチさせるべく、13話と14話は事実上の前後編として、じっくりと取り組めた。
演出は映画「ディアボロモンの逆襲」を仕上げた後、今話からローテーションに入られる今村隆寛さん。作画監督は、02から総作画監督を務められている信実(のぶざね)節子さんが今話からローテーションに入られる。
デジモン捕獲指令! 災いの予感
脚本:小中千昭 演出:今村隆寛 作画監督:信実節子 美術:清水哲弘
夜も更けているが――
カード・スラッシュ! メタルガルルモン
タカトのD-Arkからギルモンにデータが伝わるという初めての表現。
ギルモン、メタルガルルモンのコキュートス・ブレスで相手を倒した。
闘争の目になっているギルモン。
安堵して息を吐くタカト。
勝利だギルモン! あいつをロードするんだ。もっともっと強くなって進化するんだ!
時折入るクローズアップ以外ずっとローキーの画面が続くという、テレビアニメでは普通有り得ない演出。
突如凄まじい音と眩しい光が。
混乱しているタカト。
光は二機のヘリからの投光だった。地上のチームに無線で伝える声。
どうする?タカト――、戦う? タカトは怖くなって逃げたくなっている。その時――
オレハココデイキル―― まだ息の根が止まっていなかったダークリザモンの声。
起き上がり、ギルモンに向かってくるダークリザモン。オレヲ進化サセロ――
発煙弾が投入される。
凄まじい煙が視界を遮る。
ハッ!
ダークリザモンがタカトの前に!
煙の向こうから一小隊規模の銃撃音。
見えにくいが左の方からワイヤーがダークリザモンの身体に撃ち込まれている。
巨体が引き倒された。
何が起こっているのか判らないタカト。
男の声。デジモンテイマー、そう言うんだったな。
タカトらを付け狙っていた男――山木。
いつまでも危ない遊びをしていてはいけないという山木。
遊び、じゃないと反論するタカト。こっちの世界にいては危ないデジモンを――
では君のパートナーは何なんだと山木。必死にギルモンは違うと訴えるタカト。
山木の部下たちがダークリザモンを場内から引き出していく。
どうするの――?
本当はそっちの赤い奴を連れていってもいいんだ。
愕然となるタカト。
ただの怖がりじゃないかと嗤って、山木は去って行く。
ヘリが退いていく。
静まる場内――。
ロケーション場所は淀橋青果市場。大久保駅近くに実在する場所。
深夜も深夜――。
ギルモンをホームに連れ戻したタカト。じゃあお休みと言うと、ギルモンが問い掛けてくる。タカトはギルモンにもっともっと強くなって欲しいんだよね?
そうだけど……。
ギルモン、もっともっと進化するよ。これからギルモン、どんな風に変わるのかな。
ギルモンは無邪気に、より強くなりたいと思っている。そしてタカトもそれを望んでいるのだと。
しかしタカトは、ギルモンが最初にグラウモンに進化した時の恐ろしさを思い出す。変わるなんて嫌だ、と言ってしまう。
ギルモンには理解出来ない――。
歩道橋を駆けて行くタカト――。
その向こうに聳えている都庁。
都庁舎にある――
ヒュプノスがワイルド・ワンを検知。
ああ? と声を上げるオペレータ2。山木の指示がないのだ。山木は雑魚は放っておいていいと無関心。
しかし異常は続く。
トレーサーがワイルドワンを追わず――
ルート(ヒュプノス)の周囲をぐるぐる回ってて――
どういう事なの?
出た。不審デジモン。神出鬼没。
クルモンは物珍しさが楽しいらしい。色んな声が聞こえてクル――。確かにここは、ネット/デジタル・ワールドを監視するシステムである。そしてワイルド・ワン=デジモンの検出に特化しているのだからクルモンが来てもおかしくはない。
初めてゴーグルを外すオペレータ2。
クルモン、照れている。
かーわーいーーー。
という事で鳳麗花に続いてオペレータ2にもキャラクターが与えられ、小野寺恵となった。実は前川淳さんが命名し、その回からシナリオではそう表記されていたのだが、クレジットとしては今話からとなった。
山木はエレベータで地下深くの――
ネット管理局R&Dセンターへ。
山木はここで何をしようとしているのか――?
奥にある、巨大なタンク――
捕われたダークリザモン、このタンクに封じ込められていた。
見えなくなったクルモンを探している恵。
麗花は《喋るぬいぐるみ》だと思っている。
恵は、納得出来ず。勝手に歩いて入ってくるものなのか。
タンクにはデジタル・フィールドを構成する物質が溶かし込まれているらしい。デジタルの存在が現実世界にマテリアライゼーションする時に発生する。
ダークリザモンには未だ意識があり、声を発している。「オレヲハナセ、オレハコノ世界デイキル――」
後にサイバードラモンとしてレギュラーに加わる事になる世田壱恵さんが演じた。
山木はワイルドワンの出自について、既に調べはある程度ついている様だ。デジモンは人工物。老人達が夢見た人工知性のなれの果てだと罵る。
古代生物の化石が壁面に浮かぶ。
シナリオでは、ダークリザモンはガラス型の檻でフィールドごと封じられているという描写をしていたが、今村さんが巨大水槽へと変更された。これで都庁の地下構造は地上部に匹敵するかという規模の深度となる。壁面の化石も今村さんのアレンジ。後に私はこれをリファレンスする事になるが、それは遠い先の話数。
技術者が解析データを山木に伝える。
デジモンを構成している疑似タンパク質は、分子結合が危ういものらしい。肉体を現実世界で維持する事も困難なのだ。
まがものとはそういうものだ――、と山木、技術者に操作を指示。
一挙にフェーダーが下げられる。
異状を察知したダークリザモン――
タンク内でもがくが――
量子化ノイズが増大している。ダークリザモンは、このタンク内でチャミング(撒き餌)に分解されようとしている。
断末魔を上げるダークリザモン
ワレラガ神ヨ、コノ世界ヲ塗リ変エテクレェェェ
神……?
人間の事だろう? と嘯く技術者。
確かに祖先の創造主は人間だったかもしれない。しかし今の彼らが崇めているのは違う《神》なのだ。
完全に分解される。
今のデータが記録してあるなら、こんな野良犬は駆除してくれと言う山木。必要なのはチャミングを構成するデータだけだった。
ワイルド・ワン――野性の人工知性――
全て駆除してやる!
翌朝――、校門前で抜き打ちの所持物チェックに立っている浅沼教諭。しかし全くやる気がないらしい。
タカトが挨拶すると、学校に変な物持って来てないわよね。面倒掛けさせないでと言わんばかり。
タカトはD-Arkを首から下げ、シャツの下に入れている。
先生はどうして、先生になろうと思ったんですか、とタカトは訊く。
浅沼先生は、安定してる仕事だしいいかと思ったけれど、失敗だったかな、と漏らしてしまう浅沼教諭に、タカトは自分もそう思う、と言ってしまう。
虚を突かれる浅沼奈美教諭(26)。
すいません、と行ってしまうタカト。決して悪気があった訳ではなかった。
内心激しく動揺している浅沼教諭。そこに――
晴れやかに挨拶する森教諭。
ちょうど良かった。変わってくれます?と行ってしまう。
残された森教諭のトーンがだだ下がっていく芝居が可笑しい。
教室でも空気が変になっていた。
ぎこちない朝の挨拶。
心配して見ている樹莉
武者小路実篤が晩年、色紙によく書した文句と水彩画を、チョークでリアルに再現している浅沼教諭。
真剣な顔で小学生相手に、明治末~大正期の自由主義文学運動、白樺派を講じている。浅沼教諭は国文学専攻だったのかもしれない。彼女はタカトの素朴な問いに、自分を見つめ直さざるをえなくなった様だ。
タカトはギルモン、グラウモンの進化形を描いていたが、怖そうになっていくばかりに嫌気が差して、鉛筆でぐしゃぐしゃに塗りつぶしてしまう。
そこに、何席分ものリレーで手紙が渡される。
え?
樹莉かららしい。他の女子はクスクス笑っている。
描かれていたのは、《かわいい》と樹莉が言っていたギルモン。
タカト、笑みを漏らす。そう、ギルモンは友だちだ。
タカトは少し救われた気分。樹莉は「ワン」と――
ジェンリャが学校へ行っている間、テリアモンはネットに繋がっている端末を操作。
岩倉玲音ほどではないものの、ジェンリャの部屋も小学生にしてはかなりのもの。
みんな元気かな~と、デジモンのデータベースにアクセスするも――、
見た事のないデジモンが一杯――、
その時! ドアが開かれる。
テリアモンは瞬間的に硬直――
ゆっくりと落ちる、死んだフリ作戦。
シウチョンが遊び相手を探しに来たのだ。
ジェン兄ちゃんがこんなとこに置きっぱなしにしてるからいけないんだよね~
テリアモンちゃんはこれから赤ちゃんになるんでちゅよ~
と抱えて出て行くシウチョン。
しかしネット端末は続々と新たなデジモンのシルエットを表示させている――。