第7話回顧 1
ここでやっと角銅博之さん演出回。02を終えて間もなく合流され、ここで角銅さんと組めたのは幸運だった。
シリーズ構成役となると、フリーに書ける回は限られる。重要なイヴェント回、フェーズを次に進める回などは担当せざるを得ない。
この7話はその意味でも私にとっては重要だった。毎回敵デジモンを倒してカタルシスというパターンは、デーヴァ編ではどうしたってやらねばならない。だからこの段階で、バトルの無い、身近な場所での《冒険》を描きたいと思って模索したエピソードだった。
ギルモンが危ない! ぼくの町の冒険
脚本:小中千昭 演出:角銅博之 作画監督:浅沼昭弘 美術:飯島由樹子
西新宿に不穏な影が近づいている。
座標は定まっていないが、ヒュプノスでも探知されているようだ。
黒い影となるも――、すぐに霧消。
まだキュウビモンから戻っていない。レナモンの姿に戻れるまで、我慢――。
このサブタイトル・バックの絵柄は最初期に露出した版権画。
ギルモン・ホームに朝寄っていくタカト。
ギルモンは《夢》を見たのだという。夢って楽しいのかなぁ?と素朴に訊くギルモン。
楽しい時だってあるよ、と言ってギルモンを見て驚くタカト。
ギルモンの下半身がぼやけている。
この入出ゲートから離れると、元に戻る。ここは一体……。
旧サイトにあるロケハン写真。2001年の時点で工事中だった治水トンネルのゲートが西側にあった。トンネルが完成した後、この道は塞がれて木々が植えられ、全く面影がなくなっている。
学校でジェンリャに相談するタカト。
しかしジェンリャは、テリアモンといつまでも一緒にいられるとは思えないでいる。デジタル・ワールドの存在であるデジモンが、リアル・ワールドにいるのは異常な事なのだ、と改めて冷徹に事実を突きつける。
モーマンタイなテリアモン、あっちのことこっちのことって区別しなくてもいいじゃない――。これは「lain」でも似た台詞を書いた。単にネットと現実という事柄に限定しなければ、虚構と現実――、そういった事にまで敷衍出来る。つまりこの頃の私につきまとっていた命題の一つだった。
だってぼくはギルモンのテイマーだよ。ずっと一緒にいられる筈、というタカトに、ジェンリャは――そうかな……、と突き放す様なもの言い。これはタカトに酷い事を言いたかった訳ではない。彼自身のジレンマなのだ。
タカトはいたたまれず駆け去って行く。
中央公園近くの高架下。上は一般道。山木がただならぬ用件で至急戻って欲しいと連絡を受ける。
山木、公園の方を振り返る。あそこには必ず秘密があると見ている。
ギルモンと別れる時が来るかもしれない、と思うだけで落ち込むタカト。それを樹莉が見て――
わん。元気出してというサインだが――
タカトは笑顔になれない。
ちょっと都合良く授業場面で説明してしまうが――、実際に当時行われていた工事を説明している。
西口周辺は渋谷の様に坂下に位置する。大雨で冠水する時があったのだろう。増水時に一時的に水を溜める施設は、都内各所に設けられている。この図から見ると、公園というよりは十二社(じゅうにそう)通りの下が掘られており、その起点が公園となっている。今気づいたが、これは「第二」トンネルなのだから第一もあったのか。
ギルモンはクルモンと遊んでいた。タカトはクルモンが普段一人で寂しくないのかと訊く。
クルモンは前と違って、全然寂しくなんかないもん、という割には余裕が無い。クルモンもこの世界で一定時間を過ごしており、対人関係については人間に近い感性を抱き始めているのかもしれない。ただ――、
タカトについても、デジモンと人を全く同じ様に考えて然るべきというのは、これもまた未熟な考えでもある。
そしてヒュプノスでは――、監査委員が抜き打ちの監査に訪れていた。
ヒュプノス構築の予算をどうやって捻出したのかは私にも不明だが(アメリカならブラック・バジェットだと言えるのだが)、全くの自由を山木は得ていない様だ。当然ではあるが。
個人の通信を含むネットワーク全体の監視――、エドワード・スノーデンがNSAの監視システムを暴露したのは2013年であるが、それ以前からエシュロンという傍受システムの存在は知られていたし、FBIのカーニヴォー(捕食者)というプログラムの存在も暴露されていた。テイマーズ放送の直後には、ウィリアム・ビニーというNSA上級アナリストがトレイルブレイザーというNSAの市民監視プログラムの違法性を訴えている。
2021年現在、Googleの端末やOS、アプリを使うだけで、人は行動管理されているのだと言えなくも無い(iOSも同じく)。
この様な装置が2001年に日本国内で存在していたら、国会の解散程度ではすまないかもしれないし、何事もなかったかの様に知らぬフリをしていたかもしれない。恐らくは後者だろう。
各国も同様のシステムを運用しているのだと力説する山木。
一時期、私のTwitterのアイコン、これにしていたなぁ。
前場面から管理官の台詞が零されている。ワイルドワンがこのリアル・ワールドに実体化するなど、あってはならない事なのだ――と。しかし、それが起こっている。堂々と靖国通りを歩いている。
やはり、え? と見る通行人もいる。
タカトはギルモンに進化したいかと訊ねる。ギルモンは進化するという事もまだ知らない。ギルモンはどこに行くの?と怪訝。
この制服は神楽坂女学院初等部、の一年生くらいか。ギルモンが遊ばれている。何故ここに来たのかと言えば――
これで判る方もアレだけれど……。
シナリオでは留姫の家に近づく前に、タカトが何て話を切り出そうか練習するという台詞があったのだけれど、角銅さんはギルモン鼻で一挙に動的な場面に転換した。
素早い背景動画は角銅さんによる3D。
確かに、この方がロジカルな展開だった。レナモンが待ち受けていた。
更に、戦う勇気もない腰抜けテイマーが何の用? と留姫。
ギルモンを町ん中連れて歩くの、やめてくんない? 恥ずかしいという留姫。
タカトは反論。にらみ合う二者。
タカト、戦うの?と訊くギルモン。
違うよと狼狽えるタカトを見て、ちょっと笑う留姫。
自己紹介をするタカトだが、私に何の用? 私に恋しちゃったとか? 告白しにきた?と素で訊かれてうなだれるタカト。
このシーンは好きで、何回も見返したなぁ……。
タカトが夢の中で留姫を見た話から切り出すという悪手。
いい加減にしてよ。そうとう不気味な事言ってんの判んない? それは本当にそう。
タカトは本来聞きたかった話を切り出そうとした時――、聖子が呼び掛ける声。
瞬間的にレナモンが庭の真ん中にぼーっとしているギルモンをとっつかまえて――
死角まで引っ張っていく。
デジモンの存在はテイマー以外に知られてはならない――事になっている。
訪ねてくる様な友達も留姫にはいなかった様だ。
タカトは、もしレナモンがまたデータに戻ってしまったらどうする? と留姫に訊く。
留姫は平然とデジモンはデータだよ、と答えるが――、ふとレナモンの方に目を向ける。
無言のレナモン。視線の送りで、色々な示唆が得られる。
いつも修羅場で出くわすばっかりだったので、一度ちゃんと話してみたかったタカト。今のところジェンリャ以外のテイマーは留姫だけなのだから。
じゃあまたと挨拶して帰りかけるタカトを呼び止める留姫。
今度「ちゃん」づけして呼んだら、蹴り飛ばす! と言って、さっさと中へ戻る留姫。
憤慨するタカト。
過去のワイルドワンとは規模も質も異なる何かが出現。ギガビット・トレーサーのヴァーチャル・モニタが像を描き出す。何やら蠢いている、“ゾーン”。
なんだこれは……。山木ですら遭遇した事の無い事象――。
ここでA-Partが終わるが、もう少し進めておく。
ギルモンと別れる前、結構タカトの心情をストレートに語っているのだが、これは映像で見て貰った方が良いので割愛。
あしたはどんな遊びをしようかなと言いながら、ホームに戻っていくギルモンだが……、
愕然となるタカト。
ギルモンの姿が、下半身からぼやけていき始める。
ギルモン!と抱き締めて、ギルモンがデータ化するのを止めようとするタカトだが――
ギルモンは次第に意識が遠のいている。
違うところへ――
ギルモンの微かな声 タ――カ――ト――