第12話回顧 2
パートナーとは《友だち》。ではその友だちとはどういう存在であるのか。戦う事が宿命づけられているパートナーと、どう関係を築けばいいのか。まだ心が揺れているのが留姫とレナモンの関係。
古いビルの上に立つ――
レナモン。観察しているのは――
ぴょんぴょんと移動していく――
インプモン。
ぬいぐるみを取り合っている幼い姉弟。
真剣な目。想起する――
かつてのパートナーであったのが、アイと
マコ(まこと)。インプモンはこの二人のパートナーだったらしい。
インプモンに、喧嘩の相手をやっつけろと双方から言われて混乱。
全く何も抗弁出来ないインプモン――
腕を双方に引っ張られて――
痛み――。肉体と精神の。
限界を迎える。
ついにぬいぐるみが――
無残な姿に。
自分の過去をフラッシュバックさせて震える。と――
背後からの視線に気づく。
レナモン。
アイ(寺田はるひさん・演)とマコ(松本美和さん・演)というインプモンの元のパートナー(テイマーではなかった)の設定は全て元希さんの創案。名前の由来は、まあやっぱり「愛と誠」だろうなぁ。
どうしてこの幼い姉弟がインプモンと出会ったのかなど、作品内では語られていない部分は視聴者の想像に委ねられた。
ぬいぐるみを取り合うというのは現実だとして、インプモンの腕が本当に引っ張られたのかについては疑問に思っている。ただ、喧嘩の果てに、やっつけてと言われたのは事実だろう。それだけでインプモンは人間のパートナーというものを憎悪する様になる。
夕暮れの西新宿。
スタスタと歩くインプモン。
それを追うレナモンの脚。四脚獣の前脚的だが、少し色っぽいとも言える。
なんでついてくるんだよと叫ぶインプモン。
訊きたい事があるとレナモン。
人間のパートナーなんかがいるデジモンを馬鹿にするインプモン。
この一連の原画が凄いのだけれど、背景となっている消費者金融の巨大看板も時代を感じさせる。シリーズ放送後、盛り場の看板やCMは抑えられる様になった。
なんでパートナーがいないのかと訊かれて動転するインプモン。
そんなものに意味はないと言い切るインプモン。
パートナーなくしてどうやって進化するのだ。
進化なんかしなくたって強くなってやると精一杯意地を張る。
レナモン、目を細めて、そういう事かと納得。
邪魔をした、とレナモンはインプモンから関心を失って去って行く。
インプモンとレナモンの関係は、前の元希さんの回で結びつけられたが、更に印象深く描写される。後にこれが効いてくる。
山木はまだ、不審児童の家庭環境を探っていた。まつだベーカリーの前まで……。
敵となるデジモンを待つレナモン――
パートナーとは一体何なのかと自問。
聖子に買い物を頼まれる留姫だが、いやだと固辞。
はっきりとした拒絶までの反抗は、留姫は初めてに近いのだろう。
案ずる聖子。
自室に入ってくる留姫。顔を切った大胆な構図。
ごみ箱に投げ込まれるD-Ark。
机に突っ伏す。こういった心境、誰にでも経験があるのでは。
声を掛けてくれる人はいる。
だが、留姫は心を閉ざしている。
判ってくれなくていい、というのは聖子に対してだけではなく、彼女自身の今現在までの生き方だった。
何か言ってくれないと、伝わらないものは伝わらないと諭す聖子。
それは本当にそう。空気を読むというのも大事なコミュニケーション能力だが、ちゃんと言葉に出さなければそうしたコミュニケーションすらも通じなくなり、コミュニケーションが完全に閉ざされる。人間は一人では生きていけないのだと聖子。
それが判っていない留気ではない。が――
レナモン――
独りで強くなる……。
高い木立の中にデジタル・フィールド。
これは新宿御苑辺りだろうか。ロングのティルト・ダウン・ショットを繋いだ。
力が漲る。
ごみ箱のD-Arkが光りを点している。
気づくが――
耳を塞ぐ留姫。
敵を探すレナモン。声はすれど――
迫る気配。
猛禽の攻撃。
すんでで逃れるレナモン。
じゃあバイバイ、と陽が暮れるまで遊んでいた樹莉。
腐抜けているタカト。ギルモンはシールのせいかくしゃみ。
戻ってくるジェンリャ。黒い服の男を見失った――、と。
一体何者なのか――? 自分達の名前まで知られているのに――
ギルモンの目が変わった。飛びだしていく。
デジモンだっ、とジェンリャから飛び降りて駆け出すテリアモン。だが、遅い……。
不審デジモン、ごみ箱のD-Arkが気になる。
リアルな光反射。
留姫、一度は手にとるも――
やはり耳を塞ぐ。
ギルモンを先頭にデジタル・フィールドに入ると、レナモンと戦っている――
ハーピモン。女性らしい姿と声だが、デジモンにジェンダーはない。
ウィンドシーカーという必殺技で――
レナモンの支援をしようと接近してきた二体が危うくなる。
レナモンは自身の俊敏な攻撃でハーピモンを攻める。
と――、走ってくる留姫が――。これはいいショット。
来たんだね!
テリアモンがレナモンに、留姫がきたよーと教える。
一瞥するレナモン。しかし支援は求めていない。
……。
猛烈にハーピモンを痛めつけて地面に落とす。
だが、トドメは差さずロードしない。
なぜ……?
敵を倒してロードし、一層強くなる――
だが、何の為に――
このレナモンの根源的な問いかけが、タオモンの先の究極進化体となった時、攻撃脳力よりも、護る力を強調して欲しいとWIZ側へ要望する事になる。
油断しきったレナモンに、死んだフリのハーピモン――
気づいた時には遅く
ウィンドシーカー!
直撃を食らい
地面に叩きつけられるレナモン。
!
実に猛禽類らしい執拗な攻撃。
レナモンは必死に逃れようと足掻く。
支援しようにも、D-Arkは持って来ていなかった。
どうしょう、と逡巡して見回し、目に入ったのは木の枝だけ。留姫はそれを手にして渾身の力でハーピモンの背後から――
攻撃! だがそれで倒れる様なデジモンではない。
留姫が次のターゲットに――
くるるー
キュウビモンへと進化し――
留姫の前に立ちはだかる。
鬼火玉で――
ハーピモンをデータに破砕。
しかし――、ロードしないキュウビモン。どうして、と訊く留姫に――
キュウビモンは、だって私には留姫がいるからと答える。
私が?
留姫は私を助けてくれたと言うと、しょうがないよ、パートナーだからと留姫。
しょうがない。放っておけない。そういう互いの関係性だと落ち着く。
ジェンリャはおおよそ判っているものの、他の三人はきょとーん。素直じゃないって事だと言うと、やっと判る。
笑い声と共に、西新宿へ帰っていく一同を――
まるでライターで封じる様に――カチン、と閉じる。
ただのデータが生き物の様にこの世界で振る舞っている――。そんな事はあってはならず、最初からなかった事にする――。
危険な遊びは終わりだ、と嗤う山木――。
関係修復の一エピソード、ではなく、この回もシリーズ全体を通す主題の一つだ。
自分自身が何の為に存在するのか。それをテイマーズの登場人物たちは多かれ少なかれ、自分に問わねばならない時を迎える。
前回のジェンリャは、当面は納得しつつも、それで全てが判った訳ではない。
タカトの覚悟はこの後だ。
#12 Credits
原画:竹田欣弘 深本泰永 諏訪可奈恵 山口泰弘 芹田明雄
動画:山口幸俊 下平夕子
背景:鈴木慶太 佐々木友子 花松友吾
デジタル彩色:及川眞由美 小久保真希 戸塚夕子 鳥本佐智子
色指定:板坂泰江
デジタル合成:三晃プロダクション 広川二三男 則友邦仁 山口博睦 清水正道
編集:片桐公一 演出助手:まつもとただお 製作進行:山下紀彦