Digimon Tamers 2021 Blog

デジモンテイマーズ放映20周年記念ブログ

テイマーズのキャラクター・ソング

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デジモン以前の東映動画/アニメーションの音楽出版と言えば概ね日本コロムビアだったが、デジモンは当時存在したNECインターチャネルとの提携となり、日本の無数にあるアニメ番組でも類を見ないだろう程の関連楽曲がCDリリースされた。現在はドリー・ミュージックのFeel Meeレーベルで、新作に至るまで一括して管理されている。

主題歌が和田光司さん、エンディングがAiMさんというのがフロンティアまで一貫されて、多くの斬新な歌声が挿入歌(進化曲)で披露され、更には出演者自身が歌うキャラクター・ソングが作られた。全てにはとても言及出来ないが、特に印象的だったものをTweetから抜粋しておこう。

 

 

声優の方々も様々で、歌手として活動されている人もいれば、歌がそれほど得意ではない人もいる。キャラそのもので歌う人もいれば、少しシフト・チェンジして本気で歌う人もいる。総体としてアンサンブルになっているとも言えよう。
これらの楽曲の歌詞を事前チェックする機会は設けられなかったが、ほぼ全てが的外れな事にはなっていない事には感銘を受けた。ただ、シリーズ前半辺りまでのキャラクターの在り様で書かれており後半とはマッチしなくなる場合がまま起こった。
テイマーズに限らずだが、私はシリーズ物のキャラクターは物語を通じて変化し、人と人との関係性も変化していく事こそドラマなのだと考えている。「キャラ」という初期の設定を維持するのではなく、生きた人間として描く上で必要だからだ。

無論この変化にはそうなるプロセスが必要なのであるが、変化は必ずしも「成長」である必要はない。だが年若い主人公ならば必然的にそういう事となる。逆にこうしたキャラクター自身、キャラクター同士の関係が変化しないものを私はドラマと認めない。

山木の歌「Black X'mas~山木のテーマ(最初に聴いた時に腰が抜けた。Gino Vannelliの名曲『Brother to Brother』を規範としたプログレAORだったのだ。2021年現在、YouTubeでは世界的に90年代J-City Popが盛り上がっているが、当時の楽曲の多くは70年代後半のAORを規範として作られていた訳で……)はその典型とも言える。しかしこれは決してクレームではないし不満な訳でもなく「前半の山木の歌」と私は納得している。後に詳しく触れる「3 Primary Colors」も、3人の問題意識は物語初期のものであるし。
メイン3体のデジモンの歌「いっしょがいいね」も、ギルモンがジェンを「リー」と呼んでいたり。まあ劇中呼称をややこしくした(親友となっていくプロセスを描く上で必要だった)のは私なのだから、ここは寧ろ私が謝るべきなのだろう。

テイマーズの劇場映画についても触れておくべきかもしれない。夏映画「冒険者たちの戦い」は、小林靖子さんとも挨拶したし、内容は把握していたのでシリーズ終盤で結びつける事が出来たと思っている。

しかし「暴走デジモン特急」については、私の立場からするとアナザー・ストーリーだと言わざるを得ない。ただ映画そのものは私も楽しく観たし、上野ケンさんの作監は魅力的だった(なんでシリーズやってくんなかったの……)。

「暴走」劇中で留姫が歌った「夕陽の約束」が実に良かったのは言うまでもない(用い方も含めて)。AiMさんヴァージョンと曲想も変わっていて、単なるヴァージョン違いというより、最早別曲だと思う。これは折笠富美子さんの存在がそうさせたのだろう。

以前のデジモン映画もそうだったが、プロデューサーが同じであっても現場は異なる訳で、どうしてもシリーズと幾分かの齟齬は生じる。その程度は作品にもよるが。これについては仕方ないものだと受けとめていた。

 

膨大なキャラソン(キャラクターのソロ、デュオやトリオ、キャラほぼ全員など多岐に渡る)全てに触れるのも読む人の迷惑なので、重要な曲、個人的に印象的だった曲について触れよう。

Tweet時はCDは当然廃盤でダウンロード販売もない曲があったが、今は概ねAmazonでMP3が購入出来る様だ。「ベストテイマーズ(1)松田啓人&ギルモン」のみ、iTunes Storeへのリンク。

 
まずはやはりタカトの「Across the tears」(涙を越えて)。もうタカト本人が歌っているとしか思えない津村まことさんの歌唱。伸びやかな歌声で子どもが歌っている感が楽しい。24話でBGMとしても使用されている。 

いきなり横道に逸れてしまうが、タカトについて書かれる場合「泣き虫」とか「弱虫」という表現をしばしば目にしてきた。私も貝澤さん、角銅さんも全くそんな意図で彼を描いておらず些か心外に思っている。(本人が自分をそう韜晦している台詞はあったが)
※このTweetは自分の記憶に頼って書いたが、すぐ後でニコニコ動画一挙配信で久々に見返し、2話から早くも涙を見せ、特に1クール目は涙顔が多い事を確認した。

松田啓人は「普通の小学生」。ニュートラルな主人公と想定していた。これには通常の少年向けアニメ主人公の熱血系キャラクターに対するアンチテーゼという意図はない。ジュヴナイルの主人公は若干ナイーヴさが必要だったからである。
様々な人と出会い関係を深める事で成長していくには、まずは他者の気持ちを推し量る感受性が必要なのだから。ただ、同年齢の子どもよりは若干幼さがあったのも事実。ケンタやヒロカズがリアルな小学5年生だったので、対比として強調されたところもある。
確かに、タカトが涙を流す時は少なからずあった。しかし普通の小学生が急激な状況の変化があってとてつもない心的抑圧を受けた時に、どんな情動となるのかを考えれば決して不自然なリアクションではない筈だ。
タカトはテレビアニメの主人公としてはちょっと異質だったかもしれない。津村まことさんはその微妙なニュアンスを自身の感性で完全に肉体化してくれてきた。16年経ってもそれは変わらず嬉しかった。少しだけ大人びたタカトの声を、CDドラマでは聴く事が出来る。
「Across the tears」は「泣き虫の歌」ではなく、タカトのポジティヴなキャラクターがよく表現された歌になっている。作曲者の太田美知彦さんはセルフカヴァー・アルバムにて全く異なるアレンジで歌っていて、実に良い曲だと再認識出来た。
 

 李健良の歌「未来」は大人びたJ-Rock楽曲。ジェンというキャラクターもまた、なかなか表層的に掴み難く、「こういうタイプ」と安寧に諒解されない。特に序盤はミステリアスだったが、熱い心も抱いている訳で、この歌はマッチしていた。山口眞弓さんは前シリーズまではデジモン(ガブモン)を二年演じられて、今回は男子役。関Pの慧眼には改めて感服する。

 牧野留姫は序盤、ひたすら冷徹なファイターと描写されるので、歌も劇伴の「留姫のテーマ」もアグレッシヴな曲調。しかし本質的には少女らしさもあるのに従い、「夕陽の約束」牧野留姫バージョン)や劇伴でも「留姫のテーマ2」という補完的な楽曲が後に作られる。

 既に触れているが、個人的な代表曲を挙げてもやはり「夕陽の約束」になってしまう。折笠冨美子さんのキーでは作られていないメロなので(エンディングのAiMさんによる歌唱が本来の版)キツい箇所もあるのだけれど、そこすらも愛しく聴こえる。「シングルベストパレード」にフル版が収録されている。

「ギルモン・マーチ」の野沢雅子さんは流石と唸らされる。リアル子ども合唱団と絡みながら、あくまでギルモンの声で極めて安定したピッチで歌うところと、フレーズによってはメロから逸脱するところのメリハリが楽しく、キャラソンの鑑と崇める。ギルモンのイノセンス、情の深さなど、シナリオから大きくギルモンというキャラクターを魅力的に進化させて戴いた野沢さんには感謝してもしきれない。「んお?」みたいな表情は野沢さんの演技が各話の演出家にフィードバックされて描かれた筈だ。

レナモンの歌「Flaming Ice」は津軽三味線がフィーチュアされたトラックで、今井由香さん(テイマーズ俳優陣中最強)の歌に聞き惚れる。こういうオープニングのスピン・オフがあってもいいなとすら思う。ちょっと90年代OVA的かもしれないが。
レナモンは「七人の侍」で言えば宮口精二の役回りで(テイマーズがかの作品を畏敬していた事はテイマーズ旗にも現れている)、ダイアローグは最小限だった。その分、本心を吐露した時の迫真性を今井さんの演技はもたらしてくれた。
関Pの発案で、留姫の家族(母、祖母)も今井さん一人に演じて貰ったのだが、母と祖母同士の会話も私の記憶の限り別録りではなく本線で同時に録音された。アニメのアフレコ現場ではこうした極めてプロフェッショナルな仕事が事も無げに行われる時がある。

テリアモンの事を嫌いな人など存在するだろうか。テイマーズは……な人であってもテリアモンは別な筈だ。アニメーターに愛されこれでもかと可愛らしい動きを見せたテリアモンの、ほんわか+トリガーハッピーなキャラクターも、多田葵さんの演技が根源なのだ。
多田さんも本来シンガーであり、最初の「エニータイム モーマンタイ」から楽曲チームとの抜群の連携で何曲も吹き込まれているが、私が一番好きで聴き返したのは小春(永野愛さん)との「おっかけっこデュエット」である。
※上記リンク「デジモンソング・カーニバル」EPには他にヒロカズ&ケンタ「男飛沫」、ベルゼブモン「Black Intruder」、クルモン「あそぼクルクル」も収録されている。

元は中鶴さんが、発注もしてないのに何枚も何枚も描いてきた「小春がテリアモンを弄ぶ図」集が始まりで、ライター側もそういう場面を書き、果てはこんなデュエット曲まで作られた。二人の掛け合いからのハーモニーは本当に甘い。
でも私見では、
多田葵さんのテイマーズに於けるベスト・トラックを選ぶとロップモンの「ひとりにさせない」である。伸びやかな声を活かすスローテンポ曲だが、コーラス部のメロはゾクッとする程にユニークだ。漢文調の台詞を活かした歌詞とマッチしており名曲だ。

 歌については「3 Primary Colors」(色の三原色)でひとまず終わろう。タカト、リー君、留姫という3人の出逢った頃の心情を「君はどう思う?」と問いかけ合いながらしっとりと歌っていくが、過剰に感傷的ではなくテイマーズの空気感にも合っていた。

※上記リンクはシングルだが、アルバム「 シングル・ベストパレード」がお得。

性格的には全く異なる3人を、これ程までに的確にはドラマでも対比していないだろう。声質もバラバラな3人がユニゾンになるコーラスで溶け合う。紛う事なき「テイマーズ」の歌である。
ただ歌詞には依然疑問というか、え、留姫にサングラスをするという主張をさせたかな。でもそう言えばオープニングではジェンもサングラスを外している。あれ、何か私は重大な事でも忘れているのか……? にわかに不安になってきた。
※シリーズ前半、リアル・ワールドにデジモンリアライズする時には、デジタル・フィールドというナノ粒子の霧が出現して、デジモンの姿を一般人にはすぐに見られない様なSF設定を考えていたら、もう忘れてしまったが中鶴さんがサングラスを掛けるデザインを描かれたんじゃなかったか。なのでオープニングでサングラスを留姫もジェンも外すアクションが描かれる。つまり、サングラスは斜に構えた主張なのではなく、至って物理的な眼球保護目的(タカトのゴーグルも同じなのだが滅多にかけない)だった。

この曲が作られていて良かったと思ったのは、やはり最終回だ。初期設定時に書かれた歌詞はともかくも、あの場面で「3 Primary Colors」が流れないとは、今や到底想像もつかない。過剰に哀切を謳わず、そこで起こっている事をキャラクターと一緒に受け容れていく、そういう音楽となっていた。

「3 Primary Colors」は、やはり太田美知彦さんがセルフカヴァー集にて、和田光司さん、前田愛さんとのトリオで歌っている。こちらはしっとりとした大人の歌となっていた。

※残念ながら太田さんのセルフカバー集は今はAmazonには中古CDしかない様だ。是非MP3も置いて欲しい。

キャラクターソングはケンタ&マリンエンジェモン、ヒロカズ&ガードロモン、リョウ&サイバードラモンもそれぞれリリースされ、樹莉はレオモンとのEPの他、留姫、小春と共に「02」のガールズと「デジモン・ガールズフェスティバル」というコンピレーションに参加していた。