テイマーズのOP, ED, 挿入歌について
2018年発売BDボックス特典CDドラマ「Days -情報と非日常-」シナリオ方針決定の経緯についても触れる。
あまりに長いので、一連のTweetからテキストを抜いて整えた。
2017年夏に新規にCDドラマを書いて欲しいと請われ、どういうドラマにしたらいいのか構想を練るべく、久しぶりにテイマーズに限らずデジモンの歌と音楽を延々と聴いた。 テイマーズだけでもどえらい数のCDがリリースされており、改めて驚く。
私はデジモンの音楽には全くの無関与だった。テイマーズ絡みでライヴかイヴェントでもあれば行っていたと思うのだがその経験もない。従って和田光司さんとも面識はないままとなってしまった。訃報を聞いて愕然となったのを覚えている。
The Biggest Dreamer
今回のオープニングはこれです、とデモの「The Biggest Dreamer」を聴かされた時、正直落胆を覚えた。というのも、無印、02のロックさが私は好きだったのに、16ビートの打ち込みオケだったからだ。
しかし、こうした第一印象などすぐに打ち消されるという経験は幾度もしてきた。聴き込んでいくと、何より和田光司さんの歌は一層自信を深めた確信も聴き取れる程にパワフルなばかりでなく、切なさもあった。
デジモンを見てきた人にとって不動のデジモンソング一位曲は「Butter-fly」で揺るがないだろう。私は半音下げでギターのみ(キーボードレスのハード・アレンジ)の「Strong Version」が好きなのだけれど、一番震わされたのはやはり「劇場Version」のアカペラから入るものだ。
当事者的思い入れを抜くと、私が音楽的に一番好みなのは02の「ターゲット~赤い衝撃~」で、オールディーズなR&Rだった「Butter-fly」よりロックしている。しかも間奏では変拍子のプログレ展開まである。
「The Biggest Dreamer」は「ターゲット」と同じく太田美知彦さんの作・編曲で、これまでよりも緩急がついてドラマティックだ。当然ながら聴いていく内に、毎日聴かないではいられなくなった。
ところで普通脚本家が音楽に触れるなら作詞から入るものとは思うのだが、私は自分が音楽を演奏する側でもあったので、どうしても曲からになってしまう。
山田ひろしさんという作詞家の方とも面識ないままなのだが、「The Biggest Dreamer」という子ども番組にあるまじき字面のタイトルからして、本気度が伝わる。歌詞も極めてリアルな言葉で少年期を語ろうとしていた。
最終話のサブタイトル「夢見る力こそ僕たちの未来」は、私なりの「The Biggest Dreamer」の翻訳の様なもので、きっちりと歌を本編に繋いだつもりだ。しかしこの曲が劇中に流れるのは角銅さん演出の50話のみ。ここは流石だった。
ちょっとオープニングの映像にも触れておくと、角銅さんによると「10年に1本の傑作。いや15年か」
2Dのモーションや背景画自体も自分で加工するなど、貝澤さんは自分がやった事を忘れつつあるので(関Pに言われて「あ、そうだっけ?」とか……)メディアの人は早く貝澤さんの演出術を聞き出しておいて欲しい。
Slash!!
私が歌詞に驚いたのは挿入歌「Slash!!」で、どの辺りまでのシナリオを読んでから書かれたのか判らないが、「勇気をリアライズしろ」という歌詞にはドキリとさせられ、随分ライターの心の支えにもなってくれた。
「Slash!!」は太田美知彦さんが自分で歌っており、決め場面に切り込むカッコいいイントロはこの曲が掛かる度「来た来た」と昂揚させる。で、CDドラマでこの曲が流れるか流れないかという最初の選択肢が先ず私の前にあった。
緩い雰囲気の後日談にまとめた方が色々楽なのは判っていながら、テイマーズは違うよな、と思ったのが分水嶺だったと思う。つまり、自分では語るまいとした「続編」をドラマティックに再構築する事になるからだ。
心の中で最終回の後を想像していた人も、二次創作をした人もいただろう。でもCDドラマという「音」という点から発想すると、どうしても本編的な続編しか考えられなかった。どうか理解をして欲しいと願う。
やはり聴いている人の鳥肌を立てる様なものでなければ、テイマーズのテンションは甦らせられない。という事で「Slash!!」(TVサイズ)は収録される。ここまで書いても、鳥肌を立てられるだけの自信がある。
テイマーズの挿入歌は続いて進化曲「EVO」作詞は大森祥子さん、歌唱のWILD CHILD BOUNDが誰なのか私は知らない。ともあれ渡部チェルさんの楽曲なのでテクニカルさはあるものの基本はパワーメタルだ。
※2018年のライヴイヴェントで、WILD CHILD BOUNDの中の人が 藤重正孝さんであると明かされた。
究極進化曲「One Vision」で山田・太田コンビに戻る。歌は谷本貴義さん。この曲については歌詞が実に本編の狙いそのものを言葉にしてくれて有り難いと思った。どうしたらデジモンと子どもが一緒に戦えるのかを企画初期からつらつら考え、荒牧伸志さんを巻き込んでコンセプト画を描いて貰い、やっと各方面を説得出来たのがMatrix Evolutionだった。ネーミングは私ではなくWIZの方だと思うが。
※私の悪い文章癖なのだが、ここでデジモン企画社であったWIZとバンダイ・ボーイズトイ事業部担当との出会いに話がズレてしまう。
でもあれを最高にしてくれたのは、グラニの声を演じた菊池正美さんの、ギリギリ感情のある静謐な低音トーンのダイアローグだった。
「翼を得たいか、デュークモン」
渡辺けんじさんにはエージェント・デ・リーパーのデザインも描いて貰えたし、何より最後に登場するリーパー(けんじさんのラフを中鶴さんがクリンナップ)にはシナリオを書く上で大いに触発された。
※デ・リーパーの構築については後ほど別途な記述をする。
話があっちこっち行って恐縮だが、この一連は「テイマーズの歌と音楽を振り返る」趣旨の投稿です。取り敢えず今日はここまで。ブログでやれ?(略)。
ちなみに、一時活動を休止し、その後復帰した和田さんは「この曲は原曲キーのままでも比較的無理なく歌えるんですよ」的なことをおっしゃっていて、ライブとかでも“The Biggest~”をよく歌われていた…気がします(^_^;)
— ボルケーノ太田 (@volcano_ota) 2017年12月12日
あ、ご無沙汰してます……。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月12日
あ、Strong Ver.の半音下げっていうのは、ギターの音が太くなる意図の奴で、この時の和田さんのコンディションは最高でした。。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月12日
このやりとりの後、デジモン・ストーリー(PSゲーム)のイヴェントというかトークショウで、渡辺けんじさん、今や声優のボルケーノ太田さんと久々に会って語る事が出来た。イヴェント後の控え室でもずっと、太田さんの和田さんとの思い出を教えて貰えた。あれは良い日だった。
「The Biggest Dreamer」には別ヴァージョンがあり、「デジモンオープニングベストスピリット」に収められている「アレンジヴァージョン」がそれ。アコギのみのアンプラグド版で、和田光司さんの声が最もリアルに聴かれる。https://t.co/hLTnqb1PWh
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月13日
「The Biggest Dreamer」のc/w「風」は、デジモン・ソング数ある中で最も普遍性の高い「良い曲」だった。23話「デジモン総出撃!風に向かって進め!」というサブタイトルは、この曲を流すので後半をつけたのかもしれない。https://t.co/AG8YVpwlTV
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月13日
デジモン総出撃は当然ながら「怪獣総進撃」(1968)から来ており、いよいよ巨大な怪獣となったデジモン達が西新宿にて決戦するのだという、私自身の昂揚感の現れからのもの。私にとってデジモンはやはり怪獣なのである。 pic.twitter.com/wYWNFeq0Da
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月13日
私は無関係な(とあながち言えない事が昨晩判明したのだが……)「フロンティア」のオープニング「Fire!!」はR&Rに回帰したが、そのc/w「Will The Will」にはのけぞった。Dream Theaterばりのプログレ・メタルだった。当然渡部チェル氏による。攻めてる…… pic.twitter.com/UwmJXMGAHo
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月13日
この“昨晩”というのが、デジモン・ストーリーのトークショウの事で、渡辺けんじさんにチャックモンのくまマークが私(と弟)のシンボルマーク「くまちゃん」由来だと確認したのだった。当時「はれー、次番組のメイン・デジモンの中には他人とは思えないのがいるなぁ」と感じた原因であった。
Ending Themes
テイマーズのエンディングは前作まで同様AiMこと前田愛さんの歌。「My Tomorrow」は爽やかな歌に中村哲治さんによる演出で、序盤のぎこちない関係の子ども達がちゃんと後では仲間になるのだよと、特に初期話数で年少の視聴者を安堵させたと思う。
後期からのエンディングが「Days-愛情と日常-」。The Beatles的サウンドの「激しい恋愛歌」であるのに当初は面食らった。それは確かに、テイマーズはタカトにフォーカスするとビルドゥングス・ロマンだし恋愛要素も無くはない。だが枠としても恋愛物としてそこまでの描写が出来る筈がない。音楽プロデューサーには意図を今でも訊いてみたいと思っている。ただ、楽曲が魅力的なのは紛れもなく事実で、更に前田愛さんの歌唱がここまで生々しい曲は他例がないのでは。「Days」の前田さんの歌声はEQ以外ほぼ無加工で、息づかいまで生々しい。気持ちの入った歌は当然ながら説得力を持つ。最終回でついにジュリがタカトに救われた時、感謝の気持ちで抱きしめる。歌をドラマに反映させるのはこれが限界だった。
「My Tomorrow」も豊潤だった80年代歌謡曲的オーガニックなサウンドであり、前作まではモダンなエレポップで歌う事が多かったと思うが、意図的だったのかは知らねど、テイマーズEDは生演奏にこだわったトラックが作られて、私は個人的に嬉しかった。
「Days」はシングル版以外に「シングルベストパレード」に収録されているThanks Version 1というヴァージョンがあって、コーダのコーラスが更に長く分厚くなりながらフェード・アウトしていく。異様な昂揚感を得られて好きだ。https://t.co/16CuoaDjLW pic.twitter.com/rVJ5DS0vq5
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月13日
今回のCDドラマのサブタイトルがこの曲のもじりであるのには、色々思惑はあるが今は伏せておく。タカトとジュリがその後どうなったのかもここには書かない。という事でやっとオープン・エンド、メイン挿入歌までの言及が出来た(長)。
まあ既に発売されていて、CDドラマは聴きたい人には聴かれているのだが、ではどういう「思惑」なのかというと、いや、すごく良い曲ですから皆さん聴き続けましょう、というところだろうか。
音楽については更に、キャラクター・ソングの数々、サウンド・トラックについても膨大なTweetをしているのだが……。