第7話回顧 2
タカトの悲痛な叫び。ギルモーン!
最初から、いなかった……? 違う。ギルモンはぼくの、友達……。
するとD-Arkがアラート音を鳴らす。
ギルモンはこの近くにいるのだ。
このシーンも好きな場面。初めて訪れるので緊張してグダグダ喋っているタカト。シウチョンはそれをあんまり聞いてなくて、ジェン兄を呼んでいる。
そしてタカトの家――。現実問題として、放課後に外で遊べる都会児童はもういまい。この2021年の状況では尚更の事。
今なら神経質な親であると既に警察に捜索依頼を出しているのかもしれない。しかし今までも何度か夕食に遅れて帰ってきていたので、まだ松田夫妻は楽観的でいる。
2001年にもなると、ホームページを設けた人は大概BBS(掲示板)も設置した。konaka.comでは作らなかったが。
秦聖子の年齢は49(!)。お祖母ちゃんと呼ぶには気の毒な歳なのだが。
呼び鈴が鳴り、留姫に出て貰う。
またも、今度は二人で……。
山木の愛機は改造Palm/Pilot。HP200LXが生産中止になった後に爆発的にユーザが増えたPDA(Personal Digital Assistant)。グラフィティというローマ字を簡略化したペン入力しか本体は出来ないが、モデムを装着出来た。この様なキーも改造すればついたかもしれない。私はこれも持っていたし、OEMのハンドスプリングも使っていた。旧MacOSとの連携が便利だった。まあ基本的にはスケジューラとメモ、短めなメールくらいが用途。日本メーカーも似たものを出したが、すぐに携帯電話に統合されていく。
今話から、チーフ・オペレーターに鳳麗花という名前をつけた。山木の行動に懸念を表す演技が必要になり、ゴーグルを外して貰った。となるともう無名のキャラクターではなく、微妙な山木との関係性を表す人格が生まれたからだ。シウチョンの場面のすぐ後での永野愛さんの演技。
永野さんは「みいファぷー」で一年間、同じアフレコスタジオで演技を聞いてきたし、ファーマシィーにもゲスト出演が多々あった。オペレータ1役が拡大したのも、永野さんの演技があったからだと思う。
ネットワーク異常パケット排除プログラムのユゴスとは――、Y-axis, Undesirable, Gamut, Geometrical, Object, Targeted, Hazzardの略で――、嘘です。
ラヴクラフトが名づけた、知られざる太陽系惑星。御大の当時では冥王星が有力視されていたが、その後冥王星は惑星格から降下。しかしいわゆる惑星Xなど今も太陽系内に他の惑星の軌道に影響を与えるものがいる事は有力視されている。
トンネル工事現場に近づく一行。するとレナモンが異常を感じる。
モーマンターイ、というテリアモンも片耳が……。
レナモンに、君たちは近づかない方がいいと進言するジェンリャ。
留姫の命でレナモン、姿を消す。テリアモンも近くで待っていると。
ここに近づかなきゃいいだけじゃないと、留姫は帰ろうとするが、ジェンリャが引き留める。ギルモンが消えたのだ。他人事ではない。
留姫は過度にデジモンに情をかける事を忌避している。デジモンはデジモンなんだからという留姫に、タカトは否を叫ぶ。デジモンは友達だよと。
本シリーズのデジモンは、友だち、という他者。完全に解り合えるとは限らない。しかしそのギャップを、お互いに寄って埋められる――。
留姫を置いてフェンスを越える二人。良い子は真似をしてはいけません。
未承認プログラム・ユゴスを実行すれば、ネットワーク障害を引き起こすと警告する麗花。しかし山木は実行を命ずる。
2020~21年にはリアルのネットでも色々あったなぁ……。
山木が書いたプログラムがロードされる。
二人でトンネルを進もうとした時、ドアが開き振り向く。
留姫ちゃん、来てくれ――
そんなに険しい目で見なくても。
慌てて呼び捨てに切り替えるタカト。
何やら理屈をつけて同行する事にしたらしい。
ほぼ完成している治水トンネル。
松田夫妻、徐々に心配が募り、外に出て探そうという気に――。
ぶーたれる(死語?)留姫。
遂に、なのか、やっと、なのかの3ショット。7話目にして……。
D-Arkの示唆する位置まで来ると――
デジタル・フィールドが結晶化して半物質状態にある。これをどう描写するか悩んだのだが、角銅さんは3Dで的確に映像化してくれた。外観的には直径数m程度の外観だが、内部は広大になっている。どうやって中に入るのか――
それはD-Arkが教えてくれる。ビームを照射を三人が合わせると――
“ゾーン”の色が変わる部位が現れる。そこが入り口だ。
ここで流れるBGM「ゾーン・デジタル」、フレットレス・ベースがリードという珍しい曲で、個人的に大好きだ。
タカトはゴーグルをして中へ――
先走るタカト――しかし内部の重力は――
このカット、「デジモンアドベンチャー」オープニングの冒頭に似ていると気づいたのは割と後だった。角銅さん演出印。
これを書いている時期、私は3クール目の《デジタル・ワールド編》をどう描こうか悩んでいた。現実のネット世界に準えたのがテイマーズのデジタル・ワールドだが、リアリティに縛られたら面白い表現が出来ない。かと言ってあまりに自由過ぎると収拾がつかなくなる。一番突拍子もない描写というのが、この7話の“ゾーン”でやっているもので、これを1クール分も出来る訳がないと改めて思った。
ゾーン内の移動は、泳ぐ真似しかなかった。留姫はかっこ悪いと文句を言う。
ギルモンが捕縛されている。
この“ゾーン”が何で、誰が送ったのか――、それは後の展開でも判らない。しかしリアル・ワールドにリアライズしているデジモンをデータとして取り込もうという存在であるなら、類推は可能な筈だ。
タカトの強い呼び掛けのお陰で、ギルモンは意識を取り戻す。
君はデジモンなんだ! 強いんだ!
しかしその直後、三人の後方からゾーンへの攻撃が。
ゾーンの内部に極めて特殊なデータがある事を検知。人間とデジモンがいるのだから当然だ。しかし山木は無慈悲に、焼き尽くせと命じる。
再度放たれるユゴス! ユゴスの映像化は史上初なのでは……?
直撃されるゾーン。留姫がギルモンを捕縛している糸状の消滅を発見。
このままではゾーンもろともギルモンも消滅させられてしまう。
ジェンリャと留姫の手を借りて――
タカトはギルモンに向かって飛ぶ!
タカトの気迫に応えるかの様に、ギルモンも己のパワーを取り戻して捕縛から脱する。
今回はタカトがギルモンを助ける側だったが――、
三人の退路はギルモンが開いた。
消滅しつつあるゾーンから駆け出て行く一行。
ゾーン消滅の報告を受けても、山木はジッポ・ライターを閉じるだけ。
もう小学生的に拙い時間帯。
モーマンタイというテリアモンに、レナモンが君は何もしていないと突っ込む。
留姫は白けて立ち去る。と――、松田夫妻がタカトを呼ぶ声が聞こえ始める。
明日学校で!
おやすみ、タカト
……。永遠には一緒に居られない事を悟っているのだ。いつかは……、
両親は画面には映らない。タカトから両親の方へ走っていくという幕切れ。
このシリーズが今後スケールをどれだけ大きく発展させ、スペクタクルになっても、そしてその時、どんな人間関係、デジモン関係のドラマが織り上がっていても――、この7話で描いた、友だちが永遠に側にいる訳ではないという、このストーリーの最終的な帰結点を導いたエピソードだった。
この7話は私にとって、可愛くて、楽しくて、哀しいエピソードでもある。
#07 Credits
監査委員:佐藤晴男
原画:永木龍博 田辺由憲 原田節子 小谷田順久 兼高里香
動画:富田美穂子 小林美穂子
背景:スタジオMAO 岩本文美 遠山麻理子 松田三千代
デジタル彩色:福田直征 金森真紀 村田邦子 鏡沼孝子
デジタル合成:三晃プロダクション 松平高吉 中山照美 大西弘悟 金子直広
演出助手:まつもとただお
製作進行:山下紀彦