Digimon Tamers 2021 Blog

デジモンテイマーズ放映20周年記念ブログ

各話回顧序章

各話回顧をこれから上げていく。

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2017年晩秋に本アカウントを作って、それまでは検索で引っかかったTweetを見る程度でしかなかったTwitterという場へ今更ながらに乗り込んだのは、単に2018年春の「デジモンテイマーズ Blu-Ray Box」の宣伝応援をしようという意図でしかなかった。

長文体質の自分がTwitterに向いていないのは判っていたのだけれど、書き出すとやはり、あれこれ書いておきたくなるものだ。
2021年現在、私のアカウントのフォロワーが今は9000弱というところだが、日本人の割合は37%程度で、完全に海外からのフォローが多い。拙い英文Tweetが多めな理由でもある。


告知的Tweetをした後に、ニコニコ動画で4話ずつ配信があって、流れるコメントも含めて久しぶりに見返すと、やはり自分でも面白いと思った。
テイマーズの現場で嫌な経験など殆どなかったし、今から振り返っても良い作品に巡り逢えたと思っている。

テイマーズについてはこれまでも触れている通り、konaka.comのテイマーズ・コンテンツを放映直後(最中からだったか?)から設けているのだが、視聴者の少年少女というのを意識したのだろう、やけに丁寧な書き方をしている。もうこんな文章は今の私には書けない。

海外在住の方だったか、親切な方が英語訳をしてくれて、このコンテンツはリアルタイム勢の、ネットに接続出来ていた世界のファンにはよく読まれたと思う。


Twitterでのテイマーズ各話回顧は、序盤はざっくりとしか書いていないのだが、次第にキャプチャ画像が増えて、相当長いものになっていく。
バランスを欠くので、特に一話目については、貝澤演出の醍醐味を少しでも文章化したいと思っているのだが、調子に乗ってキャプチャしていたら70枚を越えてしまった。
うーむ……。


ところで、前述した通り、子ども向けのアニメーションは東映アニメの二作だけだったが、勿論それ以前に実写の特撮作品ではやっている。
子ども向けの玩具販売促進を、劇中で的確に反映するというのも、「ウルトラマンティガ」で、アートデッセイ号という新型メカを登場させる前後編を書けた経緯が、その後同作のメイン・ライターとなる契機になった訳であるし、カプセル怪獣的な、ティガのバディ怪獣を出すという企画には、笈田雅人プロデューサーの「新しいタイプのネガティヴなウルトラマンとの対決」という命題と、当時熊本にあったウルトラマンランドでのロケというトリプル要件(GUTS WING EX-Jという新メカの登場も含めれば4つか)を充たすシナリオというのは、やはり難儀させらつつも、その出来には圧倒された。シナリオのイメエジを遥かに凌駕する映像を、村石宏寶監督(特技兼)は超人的なスケジュールで撮り上げられた。

さて、これまでは携帯ゲーム機であったデジタルモンスターのアニメ3作目で、これまでと世界観を一新させるというのはバンダイ側からも、ゲーム/トレーディング・カード(携帯ゲーム機とほぼ同時期から発売はされていた)での展開を大きくしたいという意向があった。
これには実のところ、最初は頭を抱えた。

私は良くも悪くも、リアリティというものに縋って、超自然的なものを驚きを以て見せたいという作家だから、カード・ゲームとデジモンのバトルとをどうやって映像でシンクロさせたら良いかが見えなかったからだ。
勿論、デジモンには不可欠な「進化」には関わるだろう。しかしそれだけではカードを使う意味が無い。
色々とオプション・カードを見せて貰っている内に、こうかなと手探りで書いていたのが実際のところだ。

 

一話目、どこからともなくブルーカードが現れ、タカトがそれをデータスキャナーで読ませると、デヴァイスがD-Arkという“デジヴァイス”になる。
このファンタジー的な展開は、不確かな記憶だけれど、シリーズ・ディレクター貝澤さんの発想からだったと思う。
では誰がブルーカードを紛れ込ませたのか――。
これについて、1クール目のシナリオに脚本家陣で取り組んでいる時、まだ私の中で明確に決めてはいなかった。デジタル・ワールド編の構想をしている中で、SHIBUMIとデジノームという異なる存在に分ける事になる。

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一方、タカトがカードサイズのメモ帳に、念入りに書いているギルモンのデータ・シートが、D-Arkが勝手に読み込んでいく――という流れは私の意思だった。
カードは高額な商品ではないが、視聴者の子ども全員が好きに買えるとも思えなかった。ギルモンという“タカトが考えたデジモン”を具現化させるには、強い願いのこもった手描きのカードこそ相応しい。そういう考えだった。


テイマーズでも、メインのデジモンは四段階の進化をシリーズ内で描く必要があり(1話のオープニングから、三段階進化は示唆されている)、敵側のデジモン十二神将“デーヴァ”が設定されていた。

ここで私はまた頭を悩ませる。
視聴者の子どもだって、早くデジモンの進化を見たい筈だ。デジモンはより強く、概ねは巨大に進化していく。前半と終盤は現実世界、ミッドセクションでデジタル・ワールドを描くという事は早期にコンセンサスがとれていたのだが、当初からどんどんデジモンが進化いけば、すぐにインフレ化してしまう。
簡単に成長期に退化するというのは、ドラマでは御都合主義にも思えた。そして、ゲーム由来の設定である、デジモンが倒されたら、デジタマに戻る――というのを、人間が主人公のドラマで描く事には強い拒否感があった。

ではどういうドラマを子どもに見せるべきなのか。単に「それは有り得ない」と削るだけでは全く膨らまない。
これは後になって気づいたけれど、私は「テイマーズ」で、子どもに対して強いメッセージ性を込めようとしていた。

 

実写ホラーを中心に書いてきたシナリオ・ライターであった私は、昔のシナリオ教本に書かれていた様な「テーマ性」なるものを、ドラマの中に殊更に立てる事を極端に忌み嫌っていた。独創的で面白ければ、それが正解なのだ、と。
しかし、「ウルトラマンティガ」に最終的には身も心も捧げきった後の私にとって、子どもに対して見せるものについては意外に思われるだろうが、慎重になっていたのだ。

 

終盤展開のトラウマティックな描写も、その意味では必要だった。そうした怖さが本気であればある程、それに立ち向かう主人公達の心が伝わるからだ。

では各話解題に入っていく。Tweetでは話題にした順番が前後していたのも直して話数順に述べていくが、これを読んでいる人にはネタバレ的な配慮は不要だと想定している。