テイマーズの参照モデル
私が純粋な子ども向け作品にメイン・ライターとして書いたアニメーション・シリーズは、「ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー」と「デジモンテイマーズ」の二作のみ。
前者は私都合ではない大きな設定変更はしつつも、きちんと原作があるものだった。
「デジモンテイマーズ」はオリジナルだけれど、クレジット上では“原作・本郷あきよし”となっている。細かい事は忘れてしまったが、基本的にはデジモンの企画社だったウィズと東映アニメが版権を持つという意味合い。
実質的には、やはり前作「デジモンアドベンチャー」「同02」を、私個人的には原作的に捉えていたのだと思う。
世界観を同一にした二作が二年放送され、設定を一新するという3作目を担う――という形になったのは、「ウルトラマンガイア」(1998)と極めて状況が似ていた。
ともあれ、テイマーズには極めて個人的な思い入れが強く、長年放置してある私の個人サイトには放送中からリソースをアップしていた。
今更ながらだが、当時の記述を読みたい方はこちらからどうぞ(全部読むのは時間が掛かりますが……)。
「デジモンアドベンチャー」のロールモデルの一つに「IT」が挙げられていたが、テイマーズではどうであったか。フランチャイズの3作目なのだから前2作が主(どこを変えるかも含め)なのは言わずもがな。しかしでは、それ以外は何も参照しない事など有り得ない。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
しかしこれまでテイマーズのロールモデル、参照元、手本についてスタッフからも問われた事がないので語る事もなかったのだが、これも良い機会だから書いておきたいと思う。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
まず挙げねばならないのは「快獣ブースカ」(1966)だ。主人公の大作が自分の発明薬によってイグアナから創り出したのがブースカ。「僕の作った快獣」である。今の若い人にはゆるキャラにしか見えないだろうが、このブースカはブラウン菅の中で正に生きていた。 pic.twitter.com/xfI4KGSRAk
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
(主に)中村晴吉さんがスーツで演じ高橋和枝さんが声を演じたブースカはとびっきりのイノセンスを持っており愛おしかった。「ウルトラマン」と放送が被っている時期「オバケのQ太郎」も放送しており、非日常的な存在が普通に居る日常劇が子どもの想像力を広げた。 pic.twitter.com/7FwyvntmcH
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
こんな見た目だがブースカは小学5年生程度の知能を持ち怪力の持ち主で空も飛べるし、一度だけだが巨大快獣イモラ(バニラの改造)も倒している。まあ人間のギャングには簡単に攫われてしまうのだが。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
お判りだろうが、私がギルモンに託した性質はブースカに近しい。勿論相当に違いもある(野沢雅子さんのもたらした個性に代表される様に)。敢えて混同して書くが、快獣=デジモンは居て当たり前の存在ではない、と私は考えている。でも居て欲しい存在だ。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
普通の小学生タカトの極く一部のコアが私であるなら、ギルモンはやはりブースカの何かを継承しているのだという個人的な思い入れがある。日常に現れる非日常にしか関心が無い私が(当時の)リアルな子ども達に語れるものは何か。それが「デジモンテイマーズ」だった。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
「快獣ブースカ」の日常にいる快獣というコンセプトは、実はオリジナルではない。「ウルトラQ」の中にその原形となるエピソードがあり、それが「育てよ!カメ」と「カネゴンの繭」である。どちらも山田正弘:脚本(ブースカの1話も)/中川晴之介:監督作だ。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
特にカネゴンという金にがめつい子どもが変身してしまう、バイオメカニカルな(突出した目は左右に回転し胸にキャッシャーのカウンターがある)等身大怪獣は、ゴジラやバラゴンの様な生物の延長の怪獣とテレビの怪獣に本質的な違いがある事を悟らせる存在だった。 pic.twitter.com/NyzMg79Y8g
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
15年ぶりに改訂した小説「デジモンテイマーズ1984」で、怪獣についての説明をSHIBUMIが語る場面に敢えてカネゴンを引用しているのも、私の怪獣観を象徴的に喩えるなら、カネゴンの説明をすれば事足りると思っているからだ。https://t.co/O7lb56850M pic.twitter.com/ILcPARQxNK
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
デジモンにはクロノデジゾイドという仮想金属の設定がある事はデジモン・ファンには知られているだろう。なぜテリアモンが進化していくとメタリックな質感になっていくのかも、こうした設定で補完される。勿論飛躍はあるにせよ「デジタル」所以な特性だと言えよう。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
ブースカにも「ブー冠」というメタリックな頭頂部パーツがあり(後のウルトラセブンのアイスラッガーの様に)脱着出来るのだが、これが無くなるとブースカは途端に無力になる性質を持つ(まあどこまで大作が『発明』したのか甚だ怪しくなってくるのだが)。 pic.twitter.com/8Lp8Z8TOwI
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
これもタカトとギルモンの関係を考える上では(概ねは無意識に)参照していた筈だ。ギルモンはタカトの思う通りすぐには進化しないし、グラウモンから戻るにも大変な騒ぎを起こしていた。(当然ながらグラウモン以降の展開はブースカとの関係は無い)
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月28日
もう一つ、テイマーズの参照モデルを挙げるなら、「未来少年コナン」(1978)かもしれない。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月29日
私は宮崎アニメは「紅の豚」以降は観ておらず(「風立ちぬ」は観た)忠実なファンではないが、コナンと「カリオストロの城」にはやはり影響を受けた様だ。
ただ、コナンはアメリカ人作家が書いたディストピアSFを原作としていながら、話法はハリウッド的ではなくヨーロッパ映画的だとも感じていた。モチーフは今からすれば手垢に塗れた設定なのだとしても、そこで描かれていく人々の描写・視点に感じた。 pic.twitter.com/RLuRul33JQ
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月29日
テイマーズは前作までより物語開始時のキャラクター数を絞ってはいるが、タカトだけが主人公ではないしそれぞれのドラマがある。しかし第1話から縦軸となっているのはタカトとジュリのストーリーだ。その面に於いてだけ「未来少年コナン」が念頭にあったかなと後で思った。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月29日
「未来少年コナン」で印象的だったのは、高畑勲氏が演出した中盤の2話で、この描写の重さに作り手の資質の違いが見て取れて成程なぁと思った。テイマーズはよく後半が鬱展開と言われる事が多いが、コナンに比べたらとんでもないと私は思うのだが。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月29日
「快獣ブースカ」にせよ「未来少年コナン」にせよ、実際に出来ているテイマーズからはその要素は昇華され見出せないだろう。あくまで初動のアウトラインを構築する上で必要だったものであり、私達スタッフはそこからオリジナルなものを産むべく努力したのだから。
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2017年12月29日