第48話回顧 4
48話ラスト4分。濃密な4分間。
疲弊しているベルゼブモン――
どけーっ! ベルゼブモン!
グラニを駆るデュークモン。
グラニが口を開くと――、ユゴスが既に発射準備になった。
へっ――。
離脱するベルゼブモン。
ユゴス――
ブラスター!!
グラニ、一度首を横に振ってから――
膨大なエネルギーを伴う強化ユゴスを放った!
激突!
凄まじい爆発。これはユゴス単体ではなく、グラニのパワーが増大させたのだろう。
ゲートキーパーの外殻が遂に割れる。
樹莉が囚われているスフィアが露出。
おっしゃあああああああ!
樹莉ィィィィ!!
加藤さん!
タカトの声が届いている。
ベルゼブモンは本気だよ! 本気で加藤さんを助けようとしている!
それは本当なんだ!
た、か、と、くん……?
必死に透明の球体を殴っているベルゼブモン。
弾性があって、衝突の波紋は生じるが突き抜けない。
幾度も、幾度も――
殴る。
言葉は要るまい。殴る、という人型の最も根源的な攻撃方法を、ひたすらに、全身全霊を込めて、必死に撃ち続ける映像と、迫真の演技――。
べる、ぜぶ、もんが……。
瞳のシャドウ、消えている。
くそ!
くそ! くそ! くそぉ!
ちくしょう! 砕けやがれぇぇぇ!
私を――、助けようと、している……。
目を見開く樹莉。覚醒。
眼前で、必死に抗っているベルゼブモン――。
遂に、立ち上がる。
拳を止める――
体力に限界がきつつある。肩を大きく揺らして息をしている。
身を震わせて絶叫。
ちきしょおおおおおおおおっ!!
俺に、俺に力をくれえええええええ!!
私は見返していて、ここで最も心を震わせた。ベルゼブモンだって、獣王拳を使えばどういうリアクションを樹莉がするかは想像がついた筈だ。だからこれまで、己の拳だけで撃ち続けたのだ。だが、どうしても、どうしても届かない最後の望みがこれなのだ。
そしてベレンヘーナは使っても、ダークネス・クロウ、レオモンを危めた武器は封印したのだ。
歩みだす樹莉。
助けて……、助けてベルゼブモン――
はっ!
うわあああああああああああっ!
ロードしたレオモンの必殺技――
獣!
王!
拳!
激突! 遂に外殻の一部を破壊!
風が吹き込む。
レオモン……。
やったぁ! 穴あいたクル!
さあ、早くこっちに来い!
あ……。
涙が頬を伝っている。
おい! どうした!? さ、早く!
外殻、自己修復機能で穴が狭まっていく。
じゅーり! 早く! 早くするクル!
じゅーり!
必死に樹莉を動かそうと頑張るクルモン。
どうした!? さ、早く!!
全身が強ばっている。脳と感情が分裂していて、パニックの発作を起こしている。
早くしろ!
懇願する声になっている。
樹莉!
何してんだ!? 樹莉!
れお、もん――
!
加藤さあああああああんん!!
! タカト、くん……?
しかし――
穴は狭まり――
閉じられる。
それでも諦めないベルゼブモン。
絶叫しながら殴り続けるベルゼブモン。
デュークモン、加勢しようと飛来。
ロイヤル・セイバーを掲げ――
樹莉!
んっ!?
後ろだベルゼブモン!!
スレートの大群が――
背中にグサリと何枚も刺さっているスレート。
悶絶するベルゼブモン――
データが分解していく。
愕然。
ベルゼブモン!
うそ……。
転落していくベルゼブモン。
ここで――
終わる訳には――
いかねぇ……!
ストップモーションで、48話は終わる。
悪魔的な姿をしたデジモンが、負い目を持つ少女を助けようと必死に戦う――。
終盤の、復活したベルゼブモンに如何に見せ場を作るかについて、前川さんと相談している時に、前川さんが考え出したのが、獣王拳を使う、という事だった。今でこそ、これの為に布石が打たれていたのかと思われたかもしれないが、これは終盤構成の段階で出たアイディアなのだ。プロットとかに書かれたのではなく、話している時に「で、獣王拳を撃つ!」と口頭で成立した。「おおお、はまったじゃん」と盛り上がったのを今も覚えている。
演繹的に物語を作る事の醍醐味というのは、こういう瞬間があるからだ。
浦沢さんはちょっと特別なポジションだったけれど、シリーズを5人という少数が馴れ合わず、知恵を忌憚なく出し合って一年間のシリーズを通せたのが、テイマーズのライターとしての手応えだった。
今話の樹莉の反応は、年少の視聴者には理解出来なかったかもしれない。ベルゼブモンの真剣さ、タカトの呼びかけで、デ・リーパーによって抑圧されていた自分自身の感情を取り戻しかかったのに、最後の最後で足を踏み出せなかった。
しかし、自分が精神的なショックを受けたりした時、なんと無力で勇気を失ってしまうかを実感する時があるやもしれない。そうした時、樹莉を思い出して欲しいと願った。
テイマーズの物語では、次話以降で樹莉自身でも克服していこうと奮闘する。最後には、タカトに救われるのだとしても、自分自身の心の結着をせねばならないのだ。だが、一人だけでは難しい――。
ADR-09 Gate Keeperは中鶴勝祥さんのデザイン。この見た目からは想像出来ないアグレッシブな攻撃を展開した。
インプモンが企画当初のメイン・デジモンだった。私が否を唱えてギルモンが生み出されたが、その分、物語ではインプモン~ベルゼブモンが主役に匹敵する存在感を、徐々に増していくべきだと考えた。
インプモンは吉村元希さんと前川さんが形作り、ベルゼブモンはほぼ、前川さんが書いたと言える。特に復活してからのベルゼブモンは、普通なら視聴者に嫌われそうな悪役が、その後驚く程にファンを獲得するキャラクターに育った。演出、作画、高橋さんの演技と共に、本気でベルゼブモンを共感得られるキャラクターとして昇華させる原図を書いてくれたのは、前川脚本だった。
お疲れ様でした!
テイマーズは、ルーティン的展開が少ない。節目節目で、それまでシリーズで描いてきたものとは異質な表現をする、という重要な回を八島さんは多く担当された。
見ている側も力が入る様な迫力ある筆致は、その回、その場面の特別性を際立たせて戴いた。ありがとうございました。
演出助手/助監督が、シリーズ終盤で監督デビュウするというのは特撮でもあって、ウルトラマンガイアでも二人の助監督が監督デビュウをした。地岡氏も、何を最大に見せ場とするかは自明なシナリオを、期待された以上に仕上げられたと思う。
#48 Credits
ギルモン~デュークモン:野沢雅子
松田啓人~デュークモン:津村まこと
テリアモン~セントガルゴモン/ロップモン~アンティラモン:多田 葵
李 健良:山口眞弓
レナモン~サクヤモン/牧野ルミ子:今井由香
牧野留姫~サクヤモン:折笠冨美子
サイバードラモン~ジャスティモン:世田壱恵
秋山 遼~ジャスティモン:金丸淳一
加藤樹莉/デ・リーパー:浅田葉子
クルモン:金田朋子
ベルゼブモン:高橋広樹
ガードロモン:梁田清之
塩田博和:玉木有紀子
マリンエンジェモン:岩村 愛
北川健太:青山桐子
李 小春/鳳 麗花:永野 愛
松田剛弘:金光宣明
李 鎮宇:金子由之
松田美枝/浅沼奈美:松谷彼哉
クラスメイト:魚谷香織
デイジー:百々麻子
ドルフィン:菊池正美
水野悟郎(SHIBUMI):諏訪太朗
原画:八島善孝
動画:馬渡久史 小林美穂子
背景:スタジオロフト 鈴木慶太
デジタル彩色:井上徹雄 阿部とし子 劉 基連
デジタル合成:三晃プロダクション
広川二三男 則友邦仁 吉野和宏 中山照美 福井美智子
演出助手:地岡公俊(!)
製作進行:山下紀彦
第48話回顧 3
ベルゼブモンの接近を阻む。ここ一連ワンカット。
樹莉を返しやがれえええ!!
弾幕の一弾が――
直撃!
うあああああああああっ!
ベルゼブモン!
ワンカットでターン――。すると――
防御板が外れて――
いきなり加速。
デュークモンの接近を阻む。
無数のスレートに分割。
刃の様に――
デュークモンを襲撃!
はっきり記憶していないのだが、デュークモンとベルゼブモンを共闘させない様にデ・リーパーが工作、というのはシナリオ通りなのだけど、ゲートキーパーの防御板が兵器化するというのは、演出とゲートキーパーのデザイナーである中鶴さん、作画の八島さんとで相談されて作った場面ではないだろうか。こういう攻撃をする、という設定画は事前には無かったと思う。
大変でくりゅ!
じゅーり!
みーんな、みんなが大変でクル!
猛烈な弾幕だが――
それでもベルゼブモンは接近。
突如衛星の一つが――
「目」を向ける。この意匠は、次話のマザーの目に近い。
急速に接近するベルゼブモンを凝視され――
加藤樹莉のメモリーのデータ検索。
明らかにデ・リーパーの声なのだが――
樹莉の声で!
ベルゼブモン、インプモンが進化したデジモン。レオモンをロードしたデジモン。
!
くる!
ベルゼブモン、インプモンが進化したデジモン。レオモンをロードしたデジモン。
――繰り返されるフレーズ。このカットから、樹莉の瞳にシャドウが入る。
ベルゼブモン、インプモンが進化したデジモン。レオモンをロードしたデジモン。
窓を叩いて訴える肇。だが――、その場に崩れる。
ベルゼブモン、インプモンが進化したデジモン。レオモンをロードしたデジモン。
うるせーーーーーーっ!! 樹莉の声真似なんかしやがって!
貴様に、なーにが判るってんだよ!!
避けては通れない34話(八島作画)の回想。
今更……、許してくれなんて言うつもりはねんだよ……。
けど、それでもな――
逆五芒星を描くと、魔法円が現出。
それでも俺が! 樹莉を助けるんだよ!
カオス・フレア!
カオス・フレアは、デスストリンガーをブーストさせる。何発も何発も撃ち込む。
ずっとグロウル・ヴォイスで叫び続けているベルゼブモン。
クルモンが必死に樹莉を揺すっている。
ベルゼブモン、必死でクル!
必死で樹莉の事助けようとしてるんでクル!
それでも無傷――。
何ッ!?
突如「目」が、カオス・フレアに近いビームを放つ。ADRは攻撃してくる敵の手法をすぐに学習する。
ブラスターが消失。
激しく口惜しがるベルゼブモン――。
43話の回想。
てめえ……!
よくもマコの光線銃を――
許さなねぇえええっ!!
ワンカット。
弾幕をものとせず突進する。
スフィア際で戦うベルゼブモンと、離れたところでスレートと戦っているデュークモン。
雄叫びを上げるデュークモン。
グラニの機動力を以てしても、スレート群を引き離せない。
サーフィンの様に身をかわすが――
逆方向からもスレート群。
口惜しがっているタカト――
聞こえるか、タカト君!
山木さん???
ビンゴ!♡
ねじり鉢巻きで衛星回線の一つをデュークモンに繋げた。ITワーカーの汗が報われる瞬間。小野寺恵、最高の笑顔。第一部前半では、ゴーグルで素顔すら見せず、冷徹な声で無感情にオペレータを麗花としていた恵だが、前川さんに命名されてから、完全にキャラ変。たちまちIT労務者OLらしさが出て、宮下さんの芝居が丸っきり変わった。
いやこの2フレーム程度しか入っていない星のフレームをWEBMの動画からジャストに切り出すのには手こずった。一度MPEG2とかに変換すれば、フレーム・バイ・フレームでコマ送り出来るのだが、MP4以降の圧縮は前後も圧縮するので難しい。しかしそこまでやる程の意味があるのか、という逡巡を、キャプチャの地味な作業中、いつも繰り返し考えている。
考えたな。衛星回線を使って、タカト君と連絡をとるとは……。
驚くのはまだ早いですよ。
タカト君、ユゴスを撃つんだ。
グラニに、ユゴス・ブラスターを装着した。
ユゴス・ブラスター??
この衛星通信は、デュークモンと直なのではなく、グラニを介しての通信。なのでサクヤモンなどには使えない。グラニは人間の先端テクノロジのデータで、仮想空間にて作られた。アークもそうだが、本来は操縦者を必要としない自律型ドローンなので、衛星からの通信が必須なのだ。
シリーズの最終到達点の、ぼんやりとしたイメエジは描いていたが、ここまでに蓄積してきた「物語」のディテイルを、この最終章では回収していく。思わぬ事が発展している事も多い。浅沼教諭だってそうだった。
ユゴスの初出は7話。山木が作った、ネットワーク内の異物、ワイルド・ワンを粉砕する仮想攻撃兵器。それをグラニのリアライズに合わせて実装させたのだ。デイジーにアークの改修を強く持ちかけたのは、山木なりの勝算があったからだった。
こうした設定的な事は私が考えていたが、今話が迎えるクライマックスは、前川さんが自ら手繰り寄せた。
そもそもで言うと、テイマーズはデジモンの死を、一回はきちんと描く。命はだから大切なのだ、というメッセージとして。
で、テイマーズのデジモンは倒した相手をロードするという、元のデジモンそのものにはない設定を入れた。しかし、カードバトルの場合だと、勝者がカードを手にするのだから、全く無い設定ではない。
だが、じゃあデジモンのカードをスラッシュして、そのデジモンが生きているかの様に見せるのは、やはりそのデジモンが好きなファンには悪いよね、という事で、オプション・カードでの支援が圧倒的に多い。しかし留姫がスナイモンのカードをスラッシュしたし、32話ではジェンがテリアモンに様々なデジモンのカードでテリアモンを強化させた。カードの新たな使用方法は、まさきさんが最も研究してくれた。
だが、ベルゼブモンはカードではなく、実際にレオモンをロードしたデジモン――。
つまりそれは、今話クライマックスを自ずと導く。これを成立させる為に、カーネル・スフィアの設定を作ったといってもいい。
第48話回顧 2
デ・リーパーは、デュークモンらデジモンを脅威と認識している。だがリアル・ワールドにいるデジモンという存在が処理出来ていない。ベルゼブモンを確保しつつも破壊しようとはしていない。
一斉に飛び出したテイマーズ・デジモンにADR-04 Bubblesが激烈な攻撃を仕掛ける。
華麗に身をかわしながら――
飯綱!
手前のADRを殲滅するも――
すぐに後続が出現。
ジャスティモン――
アクセル――
アーーーム!!
大量消去するも、無限に現れる。
サクヤモンとジャスティモンが構える背後に、セントガルゴモンの足がイン。
バースト・ショット!
そこにグラニが飛来。
タカト! ここはぼくたちに任せて――
早く加藤さんを!
判った!
行くぞグラニ!
カーネル・スフィアへ向かうデュークモン。
締め上げてくるデ・リーパーに――
くっそ! ふざけやがって!
右目から左目へのパン・ショット。
俺があの子を――
助けなきゃだろう!?
渾身の力で――
ケーブルをぶち切る。
右腕も自由に。
だが太いケーブルがどうしても動かない。
うぉりああああああっ!!!
くりゅ!くりゅ! ベルゼブモン、頑張れでクリュ!
ベル、ゼブ、モン……。
突如、太いケーブルが何らかの信号を流した。
なにっ!? ベルゼブモンの像が――
スフィア内から排出されていく。これは怖いカットだ。
くりゅ~~~っ!?
いなくなったでくる。
樹莉ィィィ!!
何とか身体が自由になる。
自分が排除された事を知り、憤るベルゼブモン。そこへ――
ベルゼブモン!
いーまごろ来やがって!
樹莉があそこにいんだよ!!
加藤さん!!
ベルゼブモン! 一点突破だ!
おうよ!
デスストリンガー!
ファイナル・エリシオン!
ベルゼブモンが僅かに早く撃つ。
二つの膨大なエネルギーが――
もつれながら――
一点を集中攻撃。
かなりの規模の爆発。
しかし――
効かない!? と驚いているデュークモン。その背後にADR-02 Searcherの群れが――
デュークモンを凝視。
麗花の悲痛な声。室長!
どうなってる! 誰が撮ってるんだ!? 山木。
デュークモンを至近距離で撮影しているライヴ映像。
デ・リーパーの信号が――、こちらに流れ込んでいます!
デ・リーパーの!?
囲まれ戸惑うデュークモン。
目を細めている。これはデュークモンの深層をスキャンしているとこの後判る。
あのエージェントが見ている映像が、送られてきているというのか!?
デジモンの体躯を形作るコードの内部――
デジタル・ワールドとリアル・ワールドの境界のシンボル的な表現。その更に奥には――
左右を見回しているタカトの姿。
タカト!?
テレビにもプッシュ配信されている。
ゾーンの外側の新宿区だと、中落合、中井辺りだろう。
プレハブが仮設校舎となっている。
昼食時。まだ給食はないらしい。
タカトの姿と
デュークモンの姿が交互に映る。
第一部でよく描かれた生徒たち。
マジかよ……。
突如、教室を出て行く――
奈美先生。どうしてもそれをしなければならないと切迫している。
また上履きのまま走っている。
タカト君 頑張って!!!
5年2組の生徒たちも口々に応援する。
24話の後、初めて描かれた浅沼教諭。24話を節目に、とても変化をした。勿論良い意味で。
音声までは流石に流れてこない。
ジェンリャ!
留姫ちゃん!
子どもたちが、デジモンと一体となって戦っていたのか!
これは凄いカット。ガラスで反射している方に焦点を送ると、激烈な爆発。
山木は完全体を支援する子どもたちは見ていたが、究極体がどう進化していたのかまでは知らなかった。
兄が戦っている姿を見て怖くなっているシウチョン。そっと慰めようとするロップモンだが――
決意の顔に。
ブレージング・アイス!
ロップモンが窓を吹き飛ばした。
ロップモン、窓枠に飛び上がる。
何をする!?
ロップモン?
シウチョン、我は行くなり。シウチョンは――
我のテイマー!
ここで「SLASH!!」が先行して流れ始める。
そうだ、と思い返すシウチョン。
うん!
シウチョンの気持ちに応え、D-Arkが眩く輝く。
ロップモン、助走をつけて虚空へ飛び出す。
ロップモン進化!
アンティラモン!
シウチョン――。
やさしい声で名を呼ぶアンティラモン。促している。
カード・すらっっしゅぅ!
クイーン・でばいしゅ!
リョウが前々話にくれたカード。29話でリョウが使ったのはキング・デヴァイス。
ありがとう、シウチョン――。
アンティラモンの身体が淡いピンクの光に包まれる。
クイーン・デヴァイスの効果は、デ・リーパーに触れずに自在に飛翔出来るという感じだろうか。
おねがい! お兄ちゃんたちを手伝って!
恵!
は、はい。
デ・リーパーに侵されてない衛星回線を探しだせ!
はい!
ディストラクション・グレネード!
ガードロモンの攻撃。
よぉっし!行っけぇガードロモン! 気合い入れまくるヒロカズ。
と、後退ってきたケンタの背中がぶつかる。
何だよケンタぁ?――
囲まれていた。
怯える二人。その上空に影が過ると――
ケンタが気づく。
アシパトラヴァナ!
八島さんの激しいアニメーションで描かれる、アンティラモンの必殺技。腕を宝斧(パオフー)に変化させて暴れる。やはりアンティラモンはこのアップが際立つ。
アンティラモンだ!
サンキュー! 助かったぜ!
ぱぴぱぷ~
ヒロカズ、ケンタ、ガードロモン、マリンエンジェモンを囲んでいたADRは一掃されたが――
まだ絶望的に現れてくる――
ここで中CM。このアイキャッチは1年通じて使われた。地岡氏の演出。
第48話回顧 1
今話のサブタイトル、私は普通に「こぶし」と読むべきだろうと思っていたのだが、ここでこの「拳」という文字には「獣王」というものが本来前につくのだ。だから「けん」が正しかった。
インプモン、ベルゼブモンの約1年間の物語のひとつの結着。今話はベルゼブモン・ブラスト・モード状態だけの登場であるが、今話のベルゼブモンの執念、へこたれなさはまさに19話のインプモンだ。
このサーガを書き続けた前川淳さんの最後の担当話。
演出は、中盤よりまつもとただおさんと交代で各話演出助手(前半は門由利子さんだった)を務められた地岡公俊さんが演出デビュウ作となる。シリーズ初期は、アイキャッチを製作されたり、貝澤シリーズ・ディレクターの仕事を見られていたのだろう。
作画は八島さんの一人原画。八島さんもテイマーズは今話がラスト。
美術は清水さん。(前エントリで違う事を書いてしまったが、各話の四役はWikipediaのテーブルを参照していたので、間違えてしまった。Wikiの表が間違っている)
樹莉を守る力 ベルゼブモンの拳!
脚本:前川 淳 演出:地岡公俊 作画監督:八島善孝 美術:清水哲弘
拡大するデ・リーパー・ゾーン。
オペラタワーのすぐ下にまで――
デ・リーパーがそこまで……。
ここも移動しなくてはならない。
心配で顔を見合わせる剛弘と美枝。
あそこに――、加藤さんがいる……。
んんも~~~~!
いつまで寝てるクル!
早く起きるでクル~。
オペラタワーの吹き抜けのパティオに、グラニが駐機している。
デイジーが実機の保守点検を担当している。
各チェックの終了次第、新装備を装着願います、と麗花。
判ったわ。
その背後、SHIBUMIが来て――
ポンポンと叩く。
よく来たなぁ、ここまで……。
アークにとっては長く苦難の旅だった。
つかれた~? とギルモンの声。
お腹すいてない? ギルモンパンもらってこようか?
笑うSHIBUMI。
ギルモンパン? それが君の動力源かい?
ギル。というギルモンの声に――
アークの目が動いた。
!
麗花!!
一同がモニタの周りに集まっている。
これは、グラニのメモリに残っていた、デジタル・ワールドのデータです。
荒んでいるデジタル・ワールド。そこここではまだ戦いが続いている。
デジタル・ワールドが……、
ひどい!
あああ……。
……。
キャメラ前をかすめて飛ぶ――
スーツェーモン!
今尚、「神」を慕っているロップモン。
長くは保たない――。
グラニが記録したデータを信じれば、デジタル・ワールドの約47%がデ・リーパーによって消滅させられた事になる……。
デジタル・ワールドだけじゃない! という山木。
こっちも見てくれ!
軍事通信基地。
レーダーアンテナ――
これは……、と絶句するジャンユー。
軍事通信衛星から傍受した映像です。アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド――。(この五カ国が Five Eyes。最近この名は一般のニュースでも出る様になった。日本も入るとか入れないとか見当違いな意見も見られた)。
世界中の通信施設が、次々にデ・リーパーに襲われました!
私たちの、国も……。デイジーとバベルは合衆国民。
何か打つ手はないんですか!?
このままここでじっとしているなんて! ――俺はもう……、と剛弘。
打てる手がある限り――、いや、それがなくなっても諦めない。
私たちの世界を守る為に。
それを教えてくれたのは、あなたの息子さんたちなんですよ。
子どもたちだけを、戦わせはしません!
やっと気がつくベルゼブモン。
――見回し――
樹莉ぃぃ!
ベルゼブモンが起きたでクル!
すると、巨大な轟音と振動。
なんでクル?
心臓の鼓動の様に、明滅と轟音をたて始めるカーネル。
ええ?
突如――
樹莉が囚われているところから離されていく。
ジュリィイイイイイイイ!!!
突如都庁の最頂部が巨大な球体に包まれ――
周囲に衛星が配置される。
衛星が繋がり――
防御板が張り巡らされていく。
ADR-09 Gate Keeper。シナリオだと「デ・リーパー・ボール」だったが、カーネル・スフィアと区別がつかないので、この名称の方が相応しい。要塞化したのだ。
うわ! うわ!
みんな~~~!
何だ!? 何が現れた!? とドルフィン。
また新手のエージェントか!? とジャンユー。
望遠レンズで見るゲートキーパー。
デ・リーパーの核――
カーネル・スフィアを防御し始めた。
モニタを見ていた留姫――
ここに誰かいる!
ベルゼブモン!
シウチョンは前々話からそう訴えていたのだが……。
無言で互いを見る留姫とジェン。
そしてタカトも。リョウだけ、空気を読まずにサムズ・アップ。
ぼくたち、行きます!
強く頷く剛弘。もう覚悟は出来ている。
駆け出すテイマーズ。
あ、待って!
ロップモン、シウチョンを頼んだよ!
我……、
ぼくにまかせるなり!
カーネル・スフィア、そこに加藤さんがいる!
現れるBubbles。
出たなエージェントども! とリョウ。
どすこーい!
ヒョウ!
サイバードラモンとガードロモンが、テイマーたちの出陣をさせる為に先攻。
行くよ! ギルモン!
うん! タカト!
加藤さんを――
助けにいくんだ!
マトリックス・エヴォリューション!
「One Vison」デュークモンVer.。
町を奪い家を奪い――人の心を奪うデ・リーパー――!
このデュークモンが必ず倒す!
留姫とレナモン――
ジェンとテリアモン――
リョウがサイバードラモンを呼び――
四究極体進化の光。 ややして――
激しい爆発。
ロップモンはね、ここでお母さんたちを守る大事なお仕事があるんですからね。
わかってるなり、あ、わかってる、だ、よ、シウチョン……。
ゼロ・アームズ、新装備装着しました!
発進準備完了! と背後の山木に――
久しぶりのジッポー・ライター登場!
グラニ、お前に新たな力を与えたぞ。
グラニ!
発進!
巨大な電磁パルスパワーで――
浮上――
吹き抜けから上空へ垂直上昇。
リアルなマジンガーZ、的描写。この場面は大好きだ。
作中で飛行原理は明かしていないが、完全に電力。
「One Vision」はここまで。
グラニの飛行原理は、TR-3Bの様なものだと私は考えていた。
ワイルド・バンチのプロジェクトが打ち切りとなって解散した後、デイジーはアメリカの航空兵器メーカーの開発者になって、先端科学の実験(ブラック・プロジェクト)に携わっていた筈だ。
アークの設計は、この彼女の主導で短期間に作られたのだから、そうしたノウハウを持っていた筈である。ただ、アークのメインOSを働かせるAIには、マッコイ教授がかつて書いたデジコア、デジモンの核と同じプログラムが流用されていた。このデジコアには、プログラムを書いたドルフィンにも想定していないポテンシャルがあったのだろう、というのがデジモンの大進化の理由だと44話で述べていた。
TR-3Bという存在は、余程のUFOマニアでないと知られていなかったのだが、この2、3年の間に都市伝説ジャンルのYouTuberが増え、三角形のUFO画像や動画が山の様に作られた(大半が偽造)。そっち系の興味を持つ人には周知されている。
これを執筆時点(2021年7月)、アメリカは前政権が請求したUFO情報開示が形だけ果たされ、数ページの報告書が開示された。2017年頃からメディアに露出していた、AAITIPという国防総省のUFO調査プロジェクトは、もうプログラムを終了したとアナウンスしていたが、水面下では調査が進んでいた様だ。この時点から、UFOと呼ぶとサブカルチャー的過ぎるのと、エイリアン・クラフトとは断定したくない為か、UAP Unidentified Aerial Phenomenon 未確認空中現象と呼称する様になった。
今現在の私は、2014年にカリフォルニア沖の空母とその艦載機によって記録された、いわゆる「Tic Tac映像」は、何らかのドローン、つまり地球製の可能性が高いと思っている。というか、この開示運動はヒラリー・クリントンが大統領候補だった頃に民主党主導でやっていた事の再来でしかないと思っている。
デ・リーパーが西新宿に続いて、ファイブ・アイズ加盟国を狙ったのは、ヒュプノスの元々の機能、通信傍受施設があるというダークな側面を想定していたからで、これについての設定はResourcesの「クロニクル」で概観出来る。
第47話回顧 4
デュークモンを弄ぶADR-07の背部に回るガードロモンとジャスティモン――。
ディストラクション・グレネードォ!
クリティカル・アーム!
ADR-07、遂に消滅。
助かったデュークモンだが、巨大な影の中へ――
超巨大エージェント、ADR-08 Optimizerが登場。腹部がランダムに光っている。
でかい……。絶句するデュークモン。
基本的には熱気球に近い状態で膨らまされている。ADR-03 Bubblesを無数に配備している。
一斉攻撃。
猛烈な火力にたじろぐ。
ガードロモーン! ヒロカズが発破を掛ける。
うりゃあああああっ! ロケット発射。
機敏に攻撃をかわして――
上昇していくが――
やはり火量が違い過ぎた。
痛って!
大丈夫か!? ガードロモン!
目が回っている。
ジャスティモン、続いてデュークモン飛翔。
Bubblesをぶった切るが――
後から後から湧いて出る。
くっそぉおおおおっ! とリョウ。
あのデカいのを倒さないと! とタカト。
超巨大。
それでも立ち向かう。
だが――
落とされる。
それでも立ち上がる。
デュークモン、強い渇望の叫び。
デジタル・ワールド内で完成されつつあるグラニ、身震いをし始める。
グラニ、姿勢を変えて――
ワイルド・バンチにメッセージ。
グラニからだ!
必死に羽ばたこうとしているグラニ。
リアライズしたがっている!
100% Complete.
させてやろうじゃないの。
どうやるの? とジェン。
いつものアレさ。
ブルーカード! 「SLASH!!」が久々に歌入りで。
カードぉぉぉ――
スラーーッシュ!
SHIBUMIのスラッシュはジェンに似ている。諏訪さん、今話はノリノリだったと思う。
量子テレポーテーションが始まった! とバベル。
巨大なるOptimizerの向こうの空――
デジタル・フィールドが出現。
新宿中央公園上空にデジタル・フィールド発生!
実に久しぶりのオペレータ業をやっている麗花と恵。制服もゴーグルもなく、カオスパッドみたいなパネルではなく、普通のキーボードだが。
しかしリアクションするのは山木ではなくSHIBUMI。
よーし!
リアライズ途中でなぜか虚空に固定されたまま。
どうなってるの!?
判らん……。何かが足りない……。
デュークモン、最高の気合いを入れて――
飛翔!
Bubblesが守る中域は速さで飛び抜け――
Optimizerの頭部近くにまで跳躍したが――
もうちょっとで届かず――
悔しさの声を上げつつ降下せざるを得ない――。
とどかない~~~~!
この声はかなりギルモン。
なんとかしてあそこにぃいいいい!
その強い意志が――
強烈な光のエネルギーとなって――
遂にグラニがリアライズした。ここから「デジモンテイマーズのテーマ」
ジェンがテリアモンを迎えた時も、留姫がレナモンを望んだ時も、そして、タカトはずーっと「実際にデジモンがいてくれたらいいのに」と強く望んだ。だからリアライズが安定して成功した。そこには「意思」が必要だった。
うわあ! と喜ぶテリアモン。
リアライズした! とジェン。
よーし!行けー! と振り下ろしたSHIBUMIの拳、バベルの後頭部に当たる。
バベル……。
高機動な飛翔機グラニ、周り込んで――
デュークモンを乗せる。一瞬戸惑うも、すぐにデュークモン――
うむ! とグラニが何かを悟った。
一旦低空にまで降りてから――
一挙に上昇!
Bubblesなど一閃。
なあに?
えっ――
正式名はゼロアームズ・グラニ。
プロジェクトの提案、推進者であり、仕様をまとめたのは山木。デイジーのアークを自分の好みにアップグレードした。ちなみに山木の趣味というと、「ユゴス」「シャッガイ」とかなのだが、グラニは北欧神話由来の古ノルド語。ワグナーの「ニーベルンゲンの指輪」のジークフリード愛馬はGrane。
お前に相応しい!
ロイヤル・セイバー!
デュークモンは、目はギルモンのまんま。だが顔の角度でギルモン・ヘッドによって凜々しい目になる。
バルーン状態なので安寧に突き抜ける。Optimizerを倒すには――
パワーラインを断ち切るしかない。
消滅。
わーーい、やったぁぁぁと喜ぶテリアモン。
よーし!とまた拳を振り下ろすが、バベルは二度とは食らわない。
デュークモン、グラニの首を撫でる。
よくやったぞ。
デュークモン、これ何だか知ってるの?
アークだ。帰ってきたんだ!
えええっ!? これがアーク??
肇は静江と留姫に支えられて起き上がる。
そしてタカトは――
加藤さああああんん!!
少し目を見開く樹莉。
タカト、くん……?
加藤さん、そこにいるんだよね――?
ぼくが絶対!助けに行くからね!!!
ヒロカズ、留姫、リョウも頷く。
やはり本丸はあそこなのだ。決意を新たにするテイマーズ――。
というところで47話は終わる。
今話登場のADRはどちらも渡辺けんじさんのデザイン。登場回を均等に配分とか配慮した記憶はなく、これは最終、これは群れでとデザインで分けたらそうなった。
ADR-07 Paratice Head。
ADR-08 Optimizer。
中鶴さんデザインのADR-01 Bの羽根の形状はこっちが元だと思う。相互に刺激し合って描かれていった。
佐藤晴男さんは「大人の男性ゲスト」、黒服の男(山木の部下)、監査委員などと共に、加藤肇を演じられてきた。どれも感情を抑えた芝居が多かったのだが、今話ではアニメーションでも感情が爆発している。それをリアルな演技で、娘の愛し方が判らない父親というキャラクターに説得力を増して戴いた。
グラニのリアライズ・プロセスは私主導で細かく話し合ったが、樹莉の父親は流石に出るよね、的な話をしただけで、ここまで深掘りされるとは思っておらず、とかく大味に見せ場を盛り上げがちな終盤で、極めてウェットなドラマとグラニ登場のカタルシスが繋げられた。今話も次話も、私では書けないドラマが描かれた。
お疲れ様でした!
お二人ともシリーズの主力の一翼だった。20年後に改めて感謝。熱量の高いフィルムを今話、作って戴いた。
予告の「君も、テイマーを目指せ!」は3テイマー+ベルゼブモン(ギルモンもか)。
#47 Credits
ギルモン~デュークモン/ナレーション:野沢雅子
松田啓人~デュークモン:津村まこと
テリアモン:多田 葵
李 健良:山口眞弓
レナモン~サクヤモン/牧野ルミ子/秦 聖子:今井由香
牧野留姫~サクヤモン:折笠冨美子
サイバードラモン~ジャスティモン:世田壱恵
秋山 遼~ジャスティモン:金丸淳一
レオモン:平田広明
加藤樹莉/デ・リーパー:浅田葉子
ガードロモン:梁田清之
塩田博和:玉木有紀子
マリンエンジェモン:岩村 愛
北川健太:青山桐子
李 小春/鳳 麗花:永野 愛
小野寺恵/加藤静江:宮下冨三子
山木満雄:千葉進歩
松田剛弘:金光宣明
松田美枝:松谷彼哉
加藤 肇:佐藤晴男
李 鎮宇:金子由之
バベル:乃村健次
デイジー:百々麻子
ドルフィン:菊池正美
カーリー:松岡洋子
水野悟郎(SHIBUMI):諏訪太朗
原画:大谷房代 大河内忍 池田志乃 西田浩二 川口千里
動画:佐藤元昭 中尾美佐
背景:鈴木慶太 佐々木友子 山田美奈子
デジタル彩色:戸塚友子 鳥本佐智子 星川麻美 井浦祥子
デジタル合成:三晃プロダクション
広川二三男 則友邦仁 白鳥友和 佐伯英範 寺尾友絵
演助進行:徳本善信
デジモンテイマーズ 第47話「デュークモンを救え! グラニ緊急発進」【公式アニメch アニメログ】 https://t.co/w6ciYqfka2 @YouTubeより
— まさきひろ(廣真希/広真紀/Masaki Hiro) (@qeIQKOVicj9PIS9) 2021年7月2日
長男がまだ幼かった頃で、子育ての大変さなど、樹莉の父親に反映されていると思います。
ところでその長男に1、2年後かわいいガールフレンドができました。
名前はジュリちゃん!
— まさきひろ(廣真希/広真紀/Masaki Hiro) (@qeIQKOVicj9PIS9) 2021年7月2日
嘘みたいな本当の話。
運命なんだワン?
テイマーズは僕はここまで。
書いてて楽しかったです。
参加できて本当に幸せでした。
第47話回顧 3
ADR-07 Paratice Head、どういう意図でこう命名したのか全く覚えていない。口がいっぱいあるという渡辺けんじさんのデザインを見て、今話の「運命」連呼が言わば最強の武器として使われている。
驀進するヒュプノス車。
ゾーンを封鎖している警察官が制止するも――
突入。
お宅の車でしょう!? 理由を説明してください!とクレームの電話を受けている山木。
車、なくなってました!
俺が鍵、付けっぱなしにしていたせいで……。
御連絡、ありがとうございました、と言って電話を切る山木。
すいません、と謝る剛弘。
一体誰が……?
それは肇であった。樹莉、樹莉と娘の名を呟いている。
寄れる限界で車を止めて――
ゾーンのすぐ前にまで進む肇。
暑くて――
上着を脱ぎ捨てる。
樹莉ーーーっ!
大声で何度も呼び続ける。
超高層ビル群の間で谺する肇の叫び。
!
くりゅ!?
誰かジュリを呼んでるでクル!
しかし樹莉は反応しない。
激しく反省をしている。
――樹莉の母親が亡くなった直後の回想。
俺は不器用だから……、
ここからは41話の時制。麗花が子どもたちがデジタル・ワールドから帰還するという連絡を受けた時の肇。
伝えてください。あんな勝手な娘、帰るんなら一人で帰って来いと。
なんでしたら、私が迎えに……、
そういうのはやめてくれ、って言ったろう。
……。
甘やかすと樹莉の為にならねぇ。それが樹莉の為、お前(静江)の為なんだ。
――なんて言っちゃってよう……。(現時制のモノローグ)
涙を流している肇――。すると――
運命――運命――運命――
樹莉の声が聞こえてくる。
涙を拭う。
樹莉か!?
見回すも、ゾーン内は見えない。
加藤さんのお父さん! タカトたちが駆けつける。
皆が集まった事に驚く肇――。
その時、ゾーンから突出する巨大な――
巨大なるADR-07 Paratice Head。
運命――運命――運命――
4画面分縦長パン。
そ、その声――、どこにいるんだ!? 樹莉ぃいいいいい!
違うんです! デ・リーパーは加藤さんの声を盗んだんです!
驚く肇。
ADRを睨みつける。
運命――運命――運命――
加藤さんの声で言うなぁああああっ!!!
タカトとギルモン、合図もし合わず同時に飛び出そうとする。
待って!
腕を伸ばしてくるADR。
剛弘を狙っていた。
蠕動運動をしながら――
ビデオキャメラと思しきものを突き出す。
これ、設定的には42話の陸自隊員がリーコン任務で向かった時に奪われたキャメラなので、本当はIKEGAMI辺りの業務機なのだけれど、これは家庭用カムコーダーに見える。
右左のアングルから肇の顔を観察している。
デ・リーパーが無機的に言う。樹莉の声をやや低く加工されている。
加藤樹莉のメモリーと照合。
アナログ・ノイズ。
赤黒いものが湧き上がるインサートを抜いて、冒頭の悪夢場面を高速逆転再生。
冷ややかに、亡くなった母を見つめる父の顔――。
検索完了。加藤肇、有機体。
人、お父さん――
テイマーがD-Arkでデジモンをデータベース照合する場面と対比されている。
おとう、さん……?
動きが鈍くなった。
どうしちゃったの?とギルモンが訊く。
レナモンが答える。
学習している。デ・リーパーにもデジモンにも、親子の概念はないから。
学習って!
別のメモリーから検索。
24話「旅立ちの日」
頼むよ、おい――、樹莉を返してくれ!
土下座をしている肇。
大切な娘なんだ! 俺が身代わりになるから! なあッ!?
処理を中断。
採取した加藤樹莉のメモリーと、著しく矛盾――
激しくブレだすキャメラ・アーム。このカットだけ画像加工した。
なぜ――なぜ――なぜ――なぜ――
留姫が叫ぶ。
判るわけない! お前なんかに樹莉の気持ち、判るわけない!
なぜ――なぜ――なぜ――なぜ――
デ・リーパーの本体であるゾーンが激しく反応。
キャメラを収納し――
腕を引き上げていくADR。
待て!! 娘を返せ!!
肇、ADRのアームに飛びつく。
愕然とするテイマーズ。
激しく揺さぶられている。
レナモン!
うん!
マトリックス・エヴォリューション! 「One Vision」サクヤモン・イントロ版。
進化バンクは略。
振り落とされる肇。
サクヤモン飛翔。
肇を助け出す。
くりゅ! じゅりのお父さんでクリュ!
クルモンは肇を知っている。
チックの様に目蓋を震わせ――
見ようとする樹莉。
おとう、さん……?
ADRのキャメラ映像は、カーネル内でも同時にワッチされていた。
お父さん……。
加藤樹莉の思考、アクティヴ・モードに移行したのを検知。
メモリー採取開始。
やめろぉぉ! それ以上加藤さんの心を覗くなぁああああっ!!!
タカトの渾身の叫びはメギドラモンの時以来のテンション。
マトリックス・エヴォリューション!
進化したデュークモンに腕を差し出すADR。
ロイヤル・セイバー!
一旦は消失する腕だが――
すぐに新たに再生。
全身を掴まれてしまう。
「口」の器官だった黄色いボールが次々と落ちてくる。前半でジャスティモンを襲ったのはこれだった。
次々と落ちてくるボールに殴られるデュークモン。
一連の出来事はワイルド・バンチもモニタしていた。
どうして親子の情などを、デ・リーパーが知りたがるの? 全てを無にしたいんじゃなかったの? とカーリー。
怖いのさ、とSHIBUMIの声。
意外な答えに山木も反応。
ぼくたちもそうだろう? 未知なるものの恐怖だよ。
――そうかも、しれない、と言うタオ。
まぁだあ??? 猛烈に焦れているテリアモン。ジェンのD-Arkがまだ返されてない。
みんな戦ってるのに~。早く行かないとぉ~。
どれどれ? とモニタを注視。
From::Digital World To:Real World Progress:70%
ジャスティース・
キーック! デュークモンが救われる。
ジャスティモン!
こいつ手強いぞ!
判ってる!
サクヤモンが加わり、人型3究極体が並ぶ。
行きましょう! とサクヤモン。
うん!と答えるデュークモン、ジャスティモン。
跳躍! (無加工)
尋常でない数のボールが落ちて――
三体とも掴まれてしまう。ここで「One Vision」がなくなる。
デュークモンたちが!
クルモンが叫んでいる。カーネル内にも映っている。
呼吸が荒くなるも――
がんばるでクル! でゅくもん、サクヤモン、ガードロモン!
無理。
くりゅ?
だって――、運命だから。
運命――運命――運命――運命――
運命は変えられるんだってば!
しかし――
四肢を裂かれそうになるサクヤモン。
怪物と思っていたデジモンが、娘の為に戦っている――。それをやっと理解した肇。
ヒロカズが駄目!やめて!と制止するのを振り切り――
最後のヒュプノス・モバイルラボ車、全損。
どうだ!化け物!
しかし、そもそもADRは接地すらしていなかった。
悔しがる肇。
三体を急に放り出すADR。ADRのターゲットは肇に切り替わった。
肇に襲いかかるボール。
一瞬で起き上がって――
あああ、と声を上げる肇。その目の前で――
デュークモン、ボールの集中攻撃を受ける。
あやとりをする様に揺さぶるADR。
第47話回顧 2
早朝の初台近く。
走ってくるヒュプノスのモバイルラボ車。
ガードロモンとレナモンが併走している。
運転しているのはタカトの父・剛弘。
場所によっては一日に1~1.5km、
すごい拡大している……。
ゾーンは東側に拡大した。
私の家……。
神楽坂ももう呑まれた。
今いるところも安全とは言えなくなったんで、李さん、山木さんたちの所に合流しようとう事になったんだ。
――首都機能もぼちぼち余所に移しているらしい。ところで秋山リョウ君は?
朝起きたら、いなかった……。多分……、
疾走してくるジャスティモン。
うりゃあああああっ!(ジャスティモン)
ジャスティス・キーック!
初台。BGM「ブルーカード」が久々に流れる。どちらかというとヒュプノス周りで選曲されていた。
はい、おにぎり、ここに、とタカトの母、美枝。
聖子、ケンタの母、あ、ヒロカズママもいる。
聖子らがアドリブで、非常時の炊き出しの空気感を出す。
ワイルド・バンチはそれぞれのタスクに取り掛かっている。
アークの画像が開かれる。
いい? とデイジー。見てくれる?
デイジーはマウス派。
デジタル・ワールドにて、アークの修復は終わった様だ。
新規に追加する装備を表示。
カッコいいじゃない。とバベル。
デザインだけじゃありません。クロンデジゾイド、即ちデジタル・ワールド内の仮想金属で出来てるんです。
これでアークをパワーアップするの。
3Dパーツをアークに合体させていく。
デイジーが送った「情報」でアークが変身していく。
ほほう? おにぎりを頬張りながら、モニタを見るSHIBUMI。
ゼロアームズ・グラニと命名しました、と山木。今話は披露しないが、数々の改造を山木は仕掛けている。
グラニね……。とSHIBUMI。
テイマーズが走ってくる。
お、来た来た。
アークを貸してくれないかい?
えっ?
どうしても必要なんだ。
は、はい。
ボタンを操作すると――
USBポートっぽいI/Oが開く。そこにケーブルを接続。やはりシリアル・ポートの一種だろう。
何に使うのぉ? とテリアモン。
それはね、グラニのリアライズに使うんだ。リアライズの原理は判るかな?
困った顔になるジェン。確かにその理屈は知らなかった。
デジタル・ワールドからリアル・ワールドへ――
量子テレポーテーション。つまり情報を転送する。この時元の情報は壊され、転移先の情報のみ生き残る――。
English Version
と言っても転送先の情報は、情報エネルギーとして大気中にあるだけで、それを物体化する必要がある。
English Version
その鍵を握るのが、アークって訳さ。
判るぅ? とテリアモン。
何となく、とジェン。要するに、デジヴァイスのプログラムをコピーする訳ですよね?
そういう事、とにっこりするSHIBUMI。
諏訪太朗さんの今話の演技は、まさに我々のイメエジ通り。最初はやはり不慣れな印象があったが、この頃になると、台詞の調子を変化させたり工夫されている。
ん?
樹莉の両親が来ていた。
タカト。
留姫、誰?と訊く。
加藤さんのお父さんとお母さん……。
心配で、松本から出て来られたのよ。
……。
そうなんだ……と漏らすタカト。松本に送った時の肇の態度は、とても娘を心配していた様には見えなかったので、やや意外に感じている。
これ、なあに?とケンタ。
ぱ~ぴ~? とマリンエンジェモン。
ゲーム?
デ・リーパーの原形よ。と恵が答える。
これが一体どうして……、
ああなっちゃうの?
ぱ~ぺ~?
ジャンユーが答える。進化してるんだ。デジモン同様に……。
ねえねえ聞いて? あのまん丸の中に、クルモンとベルゼブモンが入っていったの――とシウチョンが父親の服をぐいぐいしながら訴える。
きっと中に何かあるんだよ!
そこにカーリーが来て
そうね。実はおばさんたちも、何かあるって思ってたとこなの。
どう? と自慢げなシウチョン。
どうやらここに情報が集約してる様ね。とドルフィンに言うカーリー。
すると……、
ここがデ・リーパーの頭脳、カーネルという事なのか。
可能性は高いわね。
だったら、ここを叩く事で全てのデ・リーパーを消滅させる事が出来るのかも――
駄目だよ!そんな事したら! というタカトの声。
だってそこには――!
その中には……。
樹莉の両親の方を見るが――、父親がいない。
エレベータを待っていた肇のところに駆け込んでくるタカト。
はぁ、はぁ――。
加藤さんのこと、怒らないでください!
……。
加藤さんのせいじゃないんです! 本当です! 信じてください!
エレベータが来てしまった。
とにかく加藤さんは、全然悪くないんです!
俯くタカト。
哀しい場面で流れるピアノソロの「The Biggest Dreamer」は度々使われてきた。オープニングの原曲は疾走感のあるサウンドだが、メロディはマイナーなのだ。ピアノで奏でるとかくも哀愁を醸し出す。デジモンテイマーズというシリーズも、本質的にはそうだったのかもしれない。
俺はまだ戦える! とジャスティモン。
無理だってば!
突如 巨大なボールが――
ジャスティモンを背部から襲う!
樹莉の継母の相手を、ルミ子がしている。
申し訳なくて……。樹莉ちゃんの、亡くなった本当のお母さんに、なんとお詫びしたらいいか……。(泣いている)
あ……、お気持ちは、判ります……。
自分の娘の事で、心配で頭が占拠された経験はルミ子も痛い程判るのだが――、如何せん、こういう時の処し方など、ルミ子には経験がない。
涙を堪えている。
ていうか――、あの……、
何と声を掛けて良いか考えあぐねていると――
あ……。
留姫が話を聞いていた。
黙って階段を登っていく留姫。小さいサイズの留姫、階段をちゃんと登るアニメーション。
以下留姫のモノローグ。
意外……。いつもニコニコ笑ってて――
21話「レオモン様」
なに不自由ない、幸せな生活送ってるんだろうな、って思ってた……。
でも……、シリアスじゃん……。私より、全然シリアスじゃん……。
ウチは離婚しててもお父さんは生きてる。 会おうと思えば会えない事ない……。
でも樹莉は……。
ふぅっと息を吐いて――
がんばるしかないじゃない!
勢いをつけて降りる。留姫の決意。
く~~~……。困り顔のクルモン。樹莉は半覚醒状態のまま。
デ・リーパーの解析と対策担当はカーリーの様だ。登場人物が終盤はどうしても多くなって、全員に台詞を配分するのは難しいのだが、今話はカーリーの台詞が多くなった。
ところで、本エントリを書いている時点で、1997年に放送された「ゲゲゲの鬼太郎」第四期89話「髪の毛地獄!ラクシャサ」が、期間限定でYouTubeで配信されている。角銅博之さんが演出され、私が書いたエピソード。本ブログでもここで一度触れた。作画監督は木下和栄さん。美術が徳重賢さん。
この四期の鬼太郎を演じられていたのが、カーリー役の松岡洋子さん。残念ながらギルモンとカーリーが絡む場面はなかったのだが、もしあれば1,2期の鬼太郎も演じられていた野沢雅子さんと4期の松岡さんの競演が出来たのに、と思うと惜しい事をした。
本ブログに書いたのは2017年のTweet採録なのだが、ここに記していなかった事を補足。このエピソードは原作にはなく私のオリジナル。水木しげるさんはマンガだけではなく、多くの妖怪画、世界の妖怪を御自身のタッチで描かれたものが膨大にあった。その中にラクシャサがいた。この名前に覚えがあったのは、1970年代のアメリカのテレビ・シリーズ「事件記者コルチャック」に出てきたからだ。このシリーズは、リチャード・マシスンも脚本を書いており、後の「Xファイル」に多大な影響を与えた。オカルト/ホラーのエピソードが居並ぶが、主人公は特殊能力など持たない事件記者。日本では大塚周夫さんが声を演じられていた。
なので、話はオリジナルなのだが、ラクシャサが化身をして人を危めるという部分はコルチャックの描写を踏襲している。結着にインドの行者が登場するのもコルチャックにあったと思う(ああいう方言は使わなかったし、ああいう消え方もしなかったが)。だから鬼太郎のラクシャサは、ある面ではコルチャック・オマージュだった。
ただ、主題はねこ娘の話なのであって、私としては原作のテイスト、昭和な感じを醸す事に専心していた。
3年ぶりくらいに見直すと、音楽の凄さを改めて感じる。鬼太郎の反撃時の音楽は無条件に燃える。
>RT
— 井上雅彦 (@phantasticnight) 2021年7月4日
ちなみに、あのころ、小中さんに事件記者コルチャックの「ラクシャサ」ビデオを観せたのが私。
(……と日本アニメ史に自分の影を落とそうと試みてみる (^o^))
そうでした……。井上さんからビデオを借りたんだった……。24年前、よりもっと前の話。感謝。