第49話回顧 1
最後の三話は私が、一年間の総決算、これまでに積み上げられてきた要素――、他のライターや演出によって積み上げられたものを、全てを回収などは不可能にしても、意図的に残す要素以外について、納得して貰える結末に導かねばならない。
演出はシリーズ序盤からローテーションに入られてきた川田さんが務められた。40話「シャイニング・エヴォリューション」に続いて、クルモンを大きな役割として描かれる事になって、これも巡り合わせだなぁと今は思う。02に続いて総作画監督も務められた信実さんが、テイマーズ最後の各話作画監督を担当される。美術はシリーズ美術デザイン(美術監督)の渡辺さんで、次シリーズの立ち上げに既に入られているのに、ギリギリこの回まで担当され、最終話までの新たなステージを構築して戴いた。
首都壊滅! クルモンの願い
脚本:小中千昭 演出:川田武範 作画監督:信実節子 美術:渡辺佳人
前話ラスト、力を使い尽くしたベルゼブモンが、ゲートキーパーの攻撃に直撃されて、ゾーンに転落していくシークェンスがリプライズ。
ここで――、終わる訳には――いかねぇんだ……。
足の方から量子崩壊をしながら転落していくベルゼブモン。
苦痛の声を上げ続けている。
ベルゼブモン! 飛びなさい! 飛んで!!
サクヤモンの声、必死。
ベルゼブモン!!
ちくしょう……。
とことん、カッコ悪かったよな、俺ってよぅ……。
1カットで寄っていく作画。
姿勢を変えるが崩壊は止まらない。
ばかやろおおおおおおおっ!!!
ゲートキーパーがデュークモンに向かってケーブルを伸ばす。
ふざけるな! ここで終わっていいのかよおおおおおおおおっ!!
叫びながらもケーブルに絡め取られていく。
迫るケーブルを金剛錫杖で振り払いながら――
飛びなさい!!
何あきらめてるのよっ!!
テレビに映るベルゼブモンの消滅していく様――。それを見ているアイとマコ。
二人はベルゼブモンが、インプモンの進化した姿だとははっきり知らない。飛び去った姿しか。しかし、感じている。これは――、
都庁タワーの中心――
カーネル・スフィア。その中で――
樹莉は、自分が足を動かせなかった事を悔いている。
私が、あんな酷い事を――
じゅり、違うクル!
恐ろしい事になってしまったと頭を抑える。
観念したかの様に目を閉じながら落ちていくベルゼブモン。
FFからアップ、そして回転しながら落ちていくまでのワンカット。
遂に、ゾーンに落ちてしまった。
ゾーンに異物が入った時の反応。
ベル、ゼブモンっ――!
タカト、無念――。
むせび泣いている樹莉。クルモンも声を掛けられず。
あああ……。呆然のジェン。
ああ…… !? 留姫は少し驚きの声。
あっ!?
ソーンの内部に何か光が――
樹莉、何かを感じる。
ゾーンから突如飛び出すグラニ。
インプモンを乗せている。
グラニ!
グラニ、デュークモンに接近。
翼でデュークモンを拘束していたケーブルを切断。
やっと自由になるデュークモン。
ワンカット。
グラニ、サクヤモンにインプモンを届ける。
そっと抱き上げるサクヤモン。
グラニ、ありがとう……。
今度こそっ! あのデ・リーパーを!!
警報音と共に目が光る。
なっ、何!?
暫く無音だったが――、
山木の無線の声が聞こえる。
タカト君! みんなそこから早く離脱するんだ! 急いでくれ!
どうして!?
どうして!!??
攻撃開始まで、あと40秒を切りました。と恵。
国連防衛軍から再度の警告が来ています!
室長!
シナリオで麗花の問い掛けは「山木さん!」だった。非常時感を出したかったが、永野さんの芝居で充分、意図は伝えられている。
国連防衛軍が、間もなく総攻撃を始めるんだ! タカト君たちは早くそこから待避してくれ! 頼む!
えっ!? ダメ! ダメだよ!
どうしたんだ!? と山木。
あそこには加藤さんが! 加藤さんが都庁のてっぺんに捕まってるんだ!
そうだったのか……。
中止を! 駆け寄るジャンユー。
早く国連防衛軍に攻撃中止を!
もう間に合いません! 攻撃開始まであと、30秒!
ジャンユー、いたたまれず――
頼む! 早くそこから待避してくれ!!
見守るしかない――。
三機の黒い機影を視認。
んっ!
B-2 Spirit三機が低空でアプローチしてくる。
急げ!タカト君! 必死に呼び掛ける山木。
みんな! 早くここから離れるんだ! デュークモンが指示。
散開。
グラニが急速に離脱。
迫るステルス攻撃機。
Aproaching to the target.
Lefting time, 22 seconds.
Clear to fire SAM.
SAM = Surfacial Activator Multinucleation
通常兵器が効かないと知っていて――
何故だ!?
あれが積んでいるのは、ただの爆弾ではないらしい。
そうですね。電波の干渉を受けない様に、ステルス機で来ている。何か策があるというのか……。
早く攻撃を止めさせて!
あそこには子どもが!
必死に訴えるカーリー。
B-2、ジャマー弾の設定は、荒牧さんに「すみませんが描いてくれませんか」と依頼して描いて貰った。シリーズ終幕で新規にメカ設定をいきなり出すのは憚ったからだった。荒牧さんのテイマーズ仕事もこれで全終了。今でも感謝に堪えない。