第28話回顧 1
今話から秋山遼とサイバードラモンをキャラクターに迎える。
ワンダースワンという携帯ゲーム機のソフトで、オリジナル・キャラクター秋山遼を主人公とするゲームが、デジモンアドベンチャーと02の放送時とパラレルに展開されていた。たまごっち由来の携帯育成ゲームではなくRPGで、アニメの主人公たちとも交流があるとされている。このゲームのみの人間キャラクターは中鶴勝祥さんがデザインを依頼されたのだと思う。
テイマーズがメタ・アドベンチャー的な設定だという事で、関プロデューサーが、デジタル・ワールド編で秋山遼を登場させる事を決めた。そもそもメディア・ミックスな企画がデジモンなのだし、大まかな話を聞いた段階では何ら問題ないと思って、そういう構成を立てていたのだけれど、我々ライター陣はゲーム設定の詳細を知るに従って、安寧に双方の世界観を直結出来ないと考えざるを得なくなる。
キャラクターはスワン版を基本とするものの、テイマーズに登場させるなら、既に登場しているキャラクターとの明確な対比が出来るべく特徴付けをしなくてはならない。
無印、02のキャラクター達とのドラマがあった、というヒストリーはテイマーズでは触れない事にした。だから関プロデューサーが、「同一人物だけれど、一度記憶を失っている」という、やや苦しい説明をする。
デジモンが後々に様々な後付け設定を重ねていくのとは違って(設定全てを完全に破綻なく同時成立させるのは無理だと思う)、アニメ・シリーズとパラレルに進行していたゲームの人間キャラクターなのだから、可能な限りの整合性はとって然るべきだった。不満を持った視聴者もいたかもしれないが、テイマーズのシリーズとしては、年齢からしても、テイマーとしても、そしてデジタル・ワールドに来た人間の「先輩」という、実に美味しい設定だった。私は「未来世紀ブラジル」の終盤で突如登場するタトル(ロバート・デ・ニーロ)みたいなイメエジも持っていたかもしれない。テイマーズの架空官庁の名前、情報省は「serial experiments lain」から用いていたが、「ブラジル」からの引用だった。
遼がどうやってデジタル・ワールドに来ていたのかについては、本篇で触れる余地がなかったが、放送終了後ややして録音されたCDドラマ「メッセージ・イン・ザ・パケット」の中で、言及する機会を得た。
リアル・ワールドでもゲームの常勝者だった、となれば、当然留姫とは接点がある。という事で遼のキャラクターづけも込みで、吉村元希さんが2話持ちで書いた、その前編。素直に留姫と仲良くなりはしないだろうな、と思っていたら「さわやか光線」。
そ、そうなんですね……、とシナリオを読んだ気がする。「敵か味方か!?」というのは、リョウが敵な訳ないのに、と思っていたのだが……、本篇を見ると微妙に正しい。
リョウとカタカナ表記なのはタカトたちと同じなので、漢字が遼である事は変わらない。
演出は今村さん。作画監督は信実さん。美術は清水さん。
敵か味方か!? 伝説のテイマー秋山リョウ
脚本:吉村元希 演出:今村隆寛 作画監督:信実節子 美術:清水哲弘
強い風にはためくテイマーズ旗。
留姫たちは風の谷から物理レイヤーの荒野にまで上がる事に成功。テイマーズ旗の立てたところ(前話とはかなり背景が違うのだが)に戻ってきた。
タカトたち、どこにいっちゃったんだろう……。
わかんねーよとヒロカズ。
ここで待っていれば会えるって言ったの、ヒロカズじゃんか。
絶対とは言ってねーよ。
風の向きが反転。
ずっと黙っていたレナモンが、留姫、と呼ぶ。
待ってた、とジャンプして立つ留姫。
何? 頼むから目で語るなよ。
ちょっとこの辺りの様子見てくるから。
ここで待って。
二人はここから動かないで。タカトたちが来るかもしれないから。
ああ……、と見送る。
砂塵の中に消えていく姿。
一方タカトのパーティ。樹莉がレオモンの肩に乗るという構図はこれが初出か。
早く見つかるといいね。
何か手掛かりがあるといいんだけど――
モーマンタイ
片手倒立回転するテリアモン。縁があればまた会えるよ、ねー。
留姫ちゃんたち、大丈夫なのかな……。
光の柱に捉えられる者の飛ばされた先は、常に変化する。とレオモン。
そんなぁ……。
ここはリアル・ワールド球が近くに見える。
元気でいてくれればいいんだけど……。
ねー、あそこはー?
写真を撮ったところー。
ああ、旗のところ?
そうか! 行ってみよう!
砂塵。
風、止まないね。
時々、風が強い時があるんだ。
ここは……。行こう。
はっ!
やっぱり、誰もいないね……。
ここには戻ってなかったか……。
必死に堪えているテリアモン。
どうしよう……。
遂にテリアモン、風に負ける。
留姫たちが心配だ。探したい。
しかし手掛かりが――、
風で飛ばされるギルモン。と――
地面近くで、匂いを検出。
どうしたのギルモン?
レナモンの匂いがする。
本当!?
最初に来た時のじゃ?
違う。最近の匂い。
あっち。
ギルモンの任せて行ってみようか。
テリアモン、風上に向かって必死に歩こうとしても進まない――という遊びか。飛ばされる。
留姫らは巨石遺跡的な場所へ。ギョベクリ・テペに似ているかもしれない。しかしここはデジタル・ワールド。デジタル・データが、リアル・ワールドの古代遺物をデータ化して置き去られた場所。
砂漠の蜃気楼の様な――
今、なんか聞こえた?
ヒロカズの声。
待っててって言ったのに。
声も聞こえる。
実に微妙な顔。
使えないわねー。
おーい……。
あ、いたいた。
……。
私、待っててって言わなかったっけ?
そうなんだけど、二人の姿が見えなくなったら、急に不安になっちゃって……。
そんな事だろうと思った。帰るよ、と留姫。
え、もう?
旗のところにタカトたちが来るかもしれない、と留姫。
あっ、そうか。そうだよね。
来る!
光の柱が遠くに――
また変なところに飛ばされたら大変。
急ごう!
大丈夫。遠いから余裕だよ。
留姫、振り向いて確認。
極めて速く接近してくる光の柱。遠いのではない。細いのだ。
あっという間に四人の方へ――
ここから――
ここまで1カットのアニメーション。
あっという間に過ぎ去っていく光の柱――。
ここまでの砂漠シーンは、実にエキゾチックな辺境感のある演出がされている。
またもリアル・ワールド球が小さく見えるところ――。
眼鏡を拾うケンタ。
歯車の世界――
また飛ばされちゃった、とケンタ。
ここどこ?とヒロカズ。
判らない。簡単には出られない、とレナモン。
ヒロカズ、見上げる。
無数の歯車が回転している。
歯車の回転はシルエットで動かし、質感のあるブックは大型の歯車一枚で描写しきる。
まいったなぁ、というヒロカズの声にわななく留姫の背中。
これからどうするー?とケンタ。
更に溜めていく怒りの衝動。
あああああもう!
あ?
!
何が大丈夫遠いからよ! また訳の判らないところに
飛ばされちゃったじゃない!
あ、御免……。
超ロングなのに、いや超ロングだからか、プンスカ怒る留姫の全身ボディランゲージ。
だいたいなんで私がよりによってあんたたちと一緒に
光で飛ばされちゃうわけ!?
納得いかないわよ!!!
前話ですらも、留姫は自分の感情をそんなに表出させなかったのだが、今話ばかりは爆発している。
確かにそうかもしれないけどさぁ、あんまり言うなよ。それ言ったら身も蓋も無い じゃん。
……。
ふん。
レナモン、見上げる。
音がする――。
時計の音……?
ここ、時計の中なの?
何言ってるの? ここはデジタル・ワールドじゃない。
判ってるよ、それくらい……。
行ってみようか、というレナモンに頷く留姫。
雪が降った様な白い地面。
ぽつんと立っている時計。
短針がぐるぐる回っているが、秒針が引っかかっているかの様に進まない。
近づく。
壊れてるぜ。
壊れてるっていうか、こういう時計なんじゃない? と――
留姫が指で秒針に触れようと――
触るな!
急に大声で言われ、驚いた留姫――
つい秒針に触れてしまう。すると――
全ての針が12時を指し、時計として動き始める。
動いたよ。
うあーっ! 動いちゃった!
つーか、あんたたち、誰?
クロックモン、データ種成熟期、マシン型デジモン。必殺技はクロノブレイカー。
ハグルモン、成長期ウイルス種、マシン型デジモン、必殺技はダークネスギア。
クロックモン? ハグルモン?
なんてことしてくれたんだー。
もうおしまいだー。
これに触ると何が起こるのか?
見てれば判るさ。
時間が来たと仕掛けの鳥が知らせる。
そして起こる地鳴り。
ギアの回転が速まったかと思うと――
止まる。
止まっちゃった……。
歯車が回ってる間はここは平和なんだ。歯車が止まると――
地の下より姿を現していく巨大な――
爪――
それが開いて――
上半身を露出させる。
デジモン……。
咆哮。
メガドラモン、ウイルス種完全体 暗黒型デジモン。必殺技はアルティメットスライサーとジェノサイドアタック――
完全体?
メガドラモンが留姫を見つけた。
な、何!?
メガドラモンは留姫を狙っている様だ。
レナモン、力を入れる。
留姫は私の――
テイマーだ!
なんだって!? テイマー!?
ということは、お前はリアル・ワールドに行ったことがあるのか!?
そういう事になる、と答えるレナモン。
あんなに凄く遠くて高いところに――!?
メガドラモンはお前を倒してロードしようとするだろう、とクロックモン。
何故だ?
テイマーを持つデジモンをロードすれば、リアル・ワールドに行く力を得られるって言われてる!
あのリアル・ワールドに行けるなら、何でもするというデジモンは多い――
くだらない。本気でそんな事信じているのか、と吐き捨てるレナモン。
ロードなんかされる訳ないじゃない! 逆にこっちがロードしてやる! レナモン!
判ってる!
レナモンのまま向かっていく。
ふんっ!
襲い来る腕をすり抜け――
メガドラモンの眼前まで一挙に駆け上り――
既に「EVO」のイントロは流れ始めている。
うあっ!
頭部で痛打される――
失神した――
レナモーン!!!
カード・スラッシュ!
キュウビモン!
奔るキュウビモン。
久しぶりに見る進化だ。進化なんかもう、無いと思っていたのに。
これが話に聞いていた、テイマーとデジモンがタッグを組んだ進化なんだ!
凄い! ぼくも進化したい、とハグルモン。
鬼火玉! しかし――
メガドラモンに跳ね返される。
着弾する鬼火玉。
うわっ! ハグルモンから飛び出る――
歯車。
ハグルモン、しっかりしろ!
メガドラモンはキュウビモンをスルーしてこちらへ向かってくる!
うえ~
弧炎龍!
メガドラモンの爪が開き――
フレアを発したのかと思いきや――
全弾がホーミング・ミサイルだった。弧炎龍めがけて着弾。
キュウビモン!!!
落下していくキュウビモンに向かって疾走する留姫。これは凄いカット。
悠々と横を飛ぶメガドラモン――。
だが――
眼光を光らせる者――
メガドラモンの翼の付け根に着弾。
あ!
メガドラモンの眼球のすぐ横に迫っている――
爪で顔面を攻撃。
すごい! なんだあのデジモン!?
サイバードラモン、ワクチン種完全体、サイボーグ型デジモン、必殺技はイレイズクロウ――
先に着地し――
地上にてメガドラモンを睨んで問う。「お前、俺の敵か!?」
襲いかかるメガドラモンだが、その頭を――
サイバードラモンは地面に押しつけ、停止させる。
これほどまでに体躯が違うのに、圧倒されているメガドラモン――
サイバードラモンのイレイズクロウ!
何発も無慈悲に撃ち込む。
メガドラモンの身体にボコボコと黒い孔が――
サイバードラモンは暴走状態。
遂に崩れるメガドラモン。それでも攻撃を続けるサイバードラモンだが――
もうやめろ!サイバードラモン! もういい!
誰?
姿を現す――
サイバードラモンの、テイマー。
衝撃を受ける留姫!
A-Partここまで。
公式のデジモン進化ルートは決して単一ではないのだが、アニメのメイン・デジモンは当然ながら決まったルートで進化する。
前話登場したチョロモンは、クロックモンになるというルートもある様だ。そしてハグルモンは、ガードロモン→アンドロモンというルートがある、と知ったが、当時の私達がそれを知っていたのか……? 思い出せず。