第39話回顧 1
24話からオープニングで姿は見せていたが、やっとレナモンと留姫の究極進化を描く。シリーズ始まってから、留姫の重要な回は元希さんが書いてきた。当然今話も担当。演出はアンティラモンに続いての今沢さん。作画監督は清山さん。今話の重要なキャラクターとも言える美術は渡辺さんが担当。
放送は2001年12月30日。2001年最後のテイマーズ。
舞い散る究極の花! サクヤモン進化
脚本:吉村元希 演出:今沢哲男 作画監督:清山滋崇 美術:渡辺佳人
前話リプライズ明けのサブタイトル・コールはサクヤモン。
小さく見えるリアル・ワールド球からキャメラを振り下ろす。
四聖獣の領域の中央部。深い縦孔の先に進化種鞘がある。そこから進化の輝きを汲みだして、四つの領域へと供給する施設として作られた様だ。
今そこに、チンロンモンとスーツェーモンが、タカトたちと共にいる。
今話は大型原画に描かれたカットを、縦、横のパン(キャメラを振る)するカットが非常に多く、ここで載せるキャプチャはその全ては繋いでいないが、なるべく繋いだ。四聖獣は巨大な上に、神々しさと、それぞれの色の特徴を際立たせる意図でモヤモヤとしたエフェクトが常に動いている。だから止めの画でも動きがある。で、これをキャプチャして構図を繋いでも段差が目立つが、ここでは何が映っているか、その情報として見て戴きたい。実際の画面は息を飲む程に美しい。
スーツェーモン、デ・リーパーが浮上してくるのを透視。
猛りだすスーツェーモン。珍しく背部の超巨大ターボジェット・エンジンが見えるアングル。
スーツェーモン、どうしたの?
真の敵が現れようとしている。危険が迫っている!
スーツェーモンが睨む先――
敵はこの近くなんだ、とジェン。
早くクルモンを助け出さなきゃ! とタカト。
ねえ! クルモンどこにいるの?
クルモンは、お前たちの助けが必要やもしれぬ。
チンロンモン、超巨大な顔を子どもたちに近づけて――息を吹く。
白いもやに包まれていく。
視界がなくなる。
彼(か)の地へ連れて行く。しばし待て――、と白い雲の弾を掴んで飛翔。
呆然としている一同。
どういう事?
あーっ!
飛んでる――
ギルモンが、ねえタカトと声を掛けるが――
独り背を向けている樹莉。
加藤さん、元気出してよ――とタカトが歩み寄る。
加藤さん、いつもニコニコしていて元気で――、
ぼく――。加藤さん良い子過ぎるから……。
私、良い子なんかじゃない。
ん?
ホントのお母さんが死んだ時だって、私何日かで泣くのを止めちゃったもの……。
新しいお母さん、いい人だし、好きになろうと思ってるけど……、だけど――
やめなよ! とその先を言わせたくないタカト。
だが、そんな事を言える立場にない事も知っている。
暗い顔の樹莉。
タカトは無力感のまま、立ち去っていく。
じゅり、どうしたんだ? とギルモン。するとレナモンが来る。
樹莉の心は悲しみに閉ざされている――。
悲しみ? レオモンがいなくなった悲しみ?
それを止められなかった悲しみ――。
――。
留姫がレナモンに、人の心の読み方を訊ねている。今やレナモンは留姫の姉の様に見える。
全ては運命なのよ、と呟く。
子どもたちのこうした会話は、落ち着いたシチュエーションでなければ描けない。
実のところ、四聖獣ならば一瞬で目的地へ辿り着ける。しかし今話までは激動の状況が繋がっていて、気持ちを言葉にする時間すらもなかった。
詩的な場面描写とドラマ。
このカットは下からのパン・アップ。
バイフーモンの領域。
静まりかえっている、とサイバードラモン。
バイフーモンはどうなったんだ? とリョウ。
と、シェンウーモンがバイフーモンの名を呼んだ。
突如暗い崖下から姿を現す――
巨大なる――
あまりの威容に身構えるリョウ。
唸り声を上げる。
よくぞ戻ったバイフーモン、と労うシェンウーモンだが――
バイフーモン、究極体、聖獣型デジモン、四聖獣――。
見られた喜びを顔に出すリョウだが――
その場に蹲ってしまう。
バイフーモンは辻親八さんがキャスティングされているのだが、今話は呻く声のみ。
愕然とするリョウ。
全ての力を使い尽くしたと見える。――とシェンウーモン。
バイフーモンを以てしても、侵攻を留めるだけで、力を使い果たす相手……。
お前たちは戦いを求めてここまで来た様だが――、
バイフーモンの命を掛けた封印を解くというのなら――、ただではおかん。
シェンウーモンが初めてその恐ろしさを仄めかす。
ここにはもう、敵の気配を感じない。
行こう。――とサイバードラモン。
うん、とサイバードラモンに飛び乗るリョウ。
飛び発っていく。
真の敵が現れたらしい。ぼくたちはそこに向かう!
デジ・エンテレケイアの許に、敵が迫っているというのか?
縦孔の中へ――
縦孔の頂の銀球。そこから雫が滴っている。
縦孔の内部には、浮石が何層にも浮かんでいる。
チンロンモンが直接降りられる限界まで――
そこで子どもたちを雲の船から出す。
この奥にクルモンがいるの?
すごく深いよ、とテリアモン。
その深淵から浮かび上がってくる――
何だろう――。何かが――
赤黒いブロブ。
浮石に付着したブロブ、包み込んで――消去してしまった。
消えた!
一瞬にして存在そのものを消し去ったって感じだ……、とジェン。
あんな泡が、沢山あるって事……? とヒロカズ。
クルモン、大丈夫かなぁ……、と不安がるケンタ。
ここまで来ていたとは――、とチンロンモンも驚いている。
真の敵よ、我らが聖なるこの地をその闇で穢そうというのか!?
許さん!
スーツェーモン!
急速降下していく。
お前たちが探し求めているクルモンとは、我々デジモンに進化をもたらす者。しかし、敵がその力を求めてこのデジタル・ワールドに侵攻してきた。
じゃあ、クルモンがいるところには――? とジェン。
必ず敵が現れるであろう。
クルモンはずっと、敵に追われて生きてかなきゃいけないって事!? タカトの疑問。
そんなの可哀相だよ!とケンタ。そうだよとヒロカズ。
誰か来る!
サイバードラモン?
リョウさんだ! と喜ぶヒロカズ。
リョウさん! と挨拶するケンタ。
久しぶりです! と迎えるヒロカズ。
君たち、こんなところに来てたんだ!とリョウ。
また会えてうれしいですと、ジェン。
ぼくも!
やあ留姫! 久しぶり! みんなと合流出来たんだね。
うん。あんたも生きてたんだ。
相変わらず口が悪いなー。
あんたのその爽やかさも相変わらずで、
いい加減にして、って感じ。
留姫はすっかり吹っ切れている様だ。
スーツェーモンの咆哮が聞こえる。
浮上してくるスーツェーモンだが――
疲れ果てている。
羽根が!
四枚ある筈の翼が一翼ない。
敵の力を侮ってはならない。我らの真の敵に触れるものは――
全て無に帰すであろう――とチンロンモン。
本当に消えちゃうんだ……、と絶句するジェン。
スーツェーモンでもこんなだったら、デジタル・ワールドの誰もこの敵には敵わないよ……、と不安がるテリアモン。
黙って淵の下を見入るリョウ。
ここからどうするか黙考するチンロンモン。
その深淵では今――
かなり大きな深淵にまで――
頑張って頑張って、自力で登ってきたクルモン。よいしょ、よいしょ――
うりゅりゅりゅりゅ――
こういう台詞は書いてなかったと思う……。
必死に崖にしがみつく。その背後で、ブロブが浮石を一つ消す。
怖いでクル……。
みんな消えちゃうでクル!
浮上するブロブが増える。
その気配に気づいたチンロンモン。
子どもたちが乗っている浮石を、頭で押す。
わあああっ!
浮石が壁面に――
突き刺さる。
激しく揺さぶられる子どもたち。
安定した。
だが周囲の浮石が次々と消去されている。
早くクルモンを助けださなきゃ!
でもあの泡に接触したら、ぼくたちまで消えてしまうんだよ!? ジェンは軽率に動く事を戒める。
運命には逆らえない――。そう口にしてしまう樹莉。
このままじゃダメなんだ。だってクルモンが――
――。
じっとその会話を聞いていた留姫、レナモンと呼び掛ける。
うん、とだけ言って頷く。
あっ、おい留姫どこ行くんだ!?
ちょっと様子を見てくる。
レナモンが続く。
戻れ留姫! 無茶するな!
足が滑り、転落しそうなところをレナモンに救われる。
まったく、勝手なんだから!
サイバードラモン、一緒に行ってくれるのか!?
飛行能力のあるサイバードラモンがサポートに。
留姫ーっ!とタカトが呼ぶが――
リョウさん、気をつけて!
大丈夫かな……。
足場など殆ど無い崖を下っていく。
ずっとその下部を覗き込むと――
デ・リーパーの大きな泡が――
うわああああああっ!
A-Part ここまで。