第50話回顧 5
グラニの設定と一緒に、クリムゾン・モードの設定を提示されたのはどの時期であったか。そんなに前ではなく、シナリオがデジタル・ワールド編に入ってからだと思う。だからオープニングにも描かれていないし、登場は番組終了間際。番組寿命から見ても、そんなに商品展開は出来ない。それでも入れたい!という熱意を感じて、シリーズの終幕間際での登場となった。
偽樹莉に吐きかけられた毒性で全身が黒くなっているデュークモン、転落していく。
そのデュークモンに声が届く。
飛びたいか、デュークモン。
――誰だ!?
翼を得たいか、デュークモン――。
翼を――、このデュークモンに、翼を!!
遠くに小さく光が――。
やがて姿を現す、グラニ。
グラニ!?
ゆらゆらと、羽根と胴体が離れて動いている。後方から量子分解が起こっている。かつてアークだった時の様に――
ぼくはもう、単独で行動出来る力はない。
ぼくの力の全てを、デュークモンに。
静かに流れ始める「One Vision」イントロ。
いいのか!? グラニ!
ぼくにいっぱい話しかけてくれてありがとう。ギルモン、タカト――。
グラニ!!
グラニよ! デュークモンと共に生きろおおおおおおっ!!
ここで「One Vision」の歌頭。
進化バンクなどとても新規には作れず、モード・チェンジ前、後をデジタルで繋ぐ編集だが、新しい姿になる時の紙吹雪の様な四角のパーティクルは、デュークモンの進化バンクと同じ表現。
6枚の翼を背負い、左手にインビンシブル・ソードを持った姿――。
番組が終わるや、ウィズの方と会う機会もなく(いや、一度あったのだがこれは別に書こう)、確かめた事がないのだけれど、このクリムゾン・モードの羽根は――、
6話で初出の「白い羽」カードによるのだと私は思っている。その後――
8話など何度も何度も、シリーズ初期の未熟なテイマーであったタカトはこのカードをスラッシュした。最初は巧く使えても、徐々に失敗のフラグ・カードになってしまっていた。
このシリーズ序盤の展開から、このデザインが描かれたと勝手に思っている。美しい相互作用の生んだキャラクターだ。だから、クリムゾン・モードはタカトのモードでもあるのだ。
グラニはぼくたちと……。
上を見上げるタカト。
デュークモン・クリムゾン・モード、右腕を差し出すや――
光の神槍グングニルが現出。
圧倒的な力のクォ・ヴァディスが――
凄まじいエネルギーをぶつけられる。
あれが、デュークモン……。
巨大頭を消し去る。
そのまま樹莉を救いに上昇。
突如、樹莉を拘束していたケーブルが外れる。
無重力状態。
雄叫びを上げながら飛翔していくデュークモン・クリムゾン・モード。
おああああああああああっっ!!!
ワンカットで目のアップまで寄って――、50話は終わる。
ゼロ・アームズ・グラニの設定を聞いた時、私は「それじゃ殆どデジモンですよね?」と訊いた。いや、デジモンそのものではない、という答え。そうですか……、と引き取るも、アーク、そしてグラニも、明らかに自我を持っているという描写をしていた。
最後の最後だけ、グラニに喋らせたいと思った。アーク、グラニに一生懸命に話しかけた、ギルモンとタカトに御礼を言って欲しかった。
グラニの声は、ドルフィン役の菊池正美さんが、ドルフィンとは全く異なる発声で演じられた。前話の次回予告で既にネタバレ的に出演されている。
(Cable)Reaper 説明は前エントリで書いた。
徳重さんが美術の回は、背景として徳重さん一人しかクレジットされない、というのも実は本ブログを書いてから知った。テイマーズで担当された回でも、印象的な背景画は幾つも浮かぶ。担当は今話まで。ありがとうございました。
浅沼さんはデジモン・シリーズへの参加はテイマーズが初。この後、クロスウォーズでキャラクターデザイン。現在放送中の「デジモンアドベンチャー」(2020~)も総作画監督と、中鶴勝祥さんと共にキャラクターデザインを担当されており、今のデジモン・アニメを担われている。テイマーズでは、7話で角銅さんと私という組み合わせを担当されていた。印象的だったのは31話ガードロモン回のアクション。お疲れ様でした。
前に記した通り、今話のシナリオは多くの部分をシナリオで具体的には描写せずまま、角銅さんに委ねてしまったところが多い。これまでの数々の伏線を回収していく段では、新たに設定を考える余裕が私にもなかった。
前シリーズ、というよりも、デジモン・アニメそのもののクリエイターであった角銅さんが、テイマーズでも引き続きローテーションで入って貰える事は本当に有り難い事だった。角銅さんと複数話を作れたシリーズは、私のキャリアでもテイマーズだけになってしまった。単発では幾つかあったのだけれど。
テイマーズでの角銅さんは、やっぱり21話「レオモン様」が至高だった。私とは、7話、35話でも組んで戴き、やっぱりこの時も色々甘えてしまっている。
ちょっとしたプロジェクトはこれから予定があるものの、やはり角銅さんと一度は本格的にホラーのアニメを作ってみたいと今でも思う。
お疲れ様でした!
#50 Credits
ギルモン~デュークモン:野沢雅子
松田啓人~デュークモン:津村まこと
テリアモン~セントガルゴモン/ロップモン:多田 葵
李 健良~セントガルゴモン:山口眞弓
レナモン~サクヤモン:今井由香
牧野留姫~サクヤモン:折笠冨美子
サイバードラモン~ジャスティモン/ヘリ・パイロット:世田壱恵
秋山 遼~ジャスティモン:金丸淳一
インプモン:高橋広樹
アイ:寺田はるひ ※デジモン、テイマーの順表記でのクレジットは初。
マコ:松本美和
ガードロモン:梁田清之
塩田博和:玉木有紀子
マリンエンジェモン:岩村 愛
北川健太:青山桐子
クルモン:金田朋子
加藤樹莉/デ・リーパー:浅田葉子
李 小春/鳳 麗花:永野 愛
松田剛弘:金光宣明
松田美枝:松谷彼哉
李 鎮宇:金子由之
山木満雄:千葉進歩
小野寺恵:宮下冨三子
ドルフィン/グラニ:菊池正美
バベル:乃村健次
カーリー:松岡洋子
SHIBUMI(水野悟郎):諏訪太朗
ナレーション:野沢雅子
原画:芹田明雄 永木龍博 野沢 隆 八島善孝 浅沼昭弘
作楽クリエイト 伊藤秀樹 山口裕昌 関 暁子
動画:佐藤恭子 篠原悦子
背景:徳重 賢
デジタル彩色:村田邦子 鏡沼孝子 加藤英惠 藤原辰雄
色指定:板坂泰江 大谷和也
デジタル合成:三晃プロダクション
広川二三男 則友邦仁 峰岸智子 大西弘悟 金子直広
演出助手:地岡公俊
製作進行:山下紀彦
次回予告の深刻なネタバレ問題……。
「The Biggest Dreamer」も、使うのはここ!なんで今まで使われてたなかったんだと。これで決着できないのが残念なくらいではありましたが。
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年7月14日
このパートでは地獄の穴とケーブル群をつくり、穴は確か次回でも梅沢さんから言われて作ったような気がします。
VRの渦も角銅さんですよね?
— 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) 2021年7月14日
そうかぁ、最終話の引きずり込まれるゾーンの孔まで……。知らなかった20年前のあれこれ……。ありがとうございましたああああああッ!(なんか台詞を筆記してるとこういう文体に)
「金剛界曼荼羅」も新作したの覚えてなくて、自分でびっくりしたくらいなんですが、ほかに爆発いくつかとかグラニと融合する際の光芒とか、シャッガイのパソコン画面とかも作った気がします。当時だからできたやり方でしたね。大変楽しかったです。ありがとうございました。
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年7月14日
このパートではとにかくグラニがいいキャラで。後にクロスウォーズで歴代主人公勢揃いの回でも確か脚本にしてなかったのに出した気が。(ちょうど菊池さんが出演されるのもあり)その時の作画も浅沼さんでお世話になりました。
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年7月14日
美術の徳重さんは地方で一人で作業されてる方で、ラクシャサでもお世話に
振り返ってみるとこの回だけでも随分と振り幅が大きいですが、初期の日常世界編からデーヴァ編デジタルワールド編デ・リーパー編とすごい振幅でしたね。21話は演出としてはデジモンシリーズ中で一番良くできたかも。とはいえ小中脚本はどれもコンテにする際悩むところがなく、大変楽しい仕事でした。
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年7月14日
絵コンテのみの仕事でも良ければ別作品では4本小中脚本と組ませてもらったこともありましたが、その後ないですよね。ホラーは是非ともどこかで実現しますように。
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年7月14日