第50話回顧 3
ヒロカズとケンタだってテイマーだ。手をこまねいてはいない。マリンエンジェモンとガードロモンの組み合わせは、実は対デ・リーパー・ゾーンに於いては最強なのだが……。
板橋区の住宅街にまで広がっているデ・リーパー・ゾーン。
警戒している所轄のポリス・カー。
ん?
おもむろに現れる――
ADR-07 Paratice Head。
全ては無に。人など最初からこの世界にいなかった様に――。
逃げ出す警官。
破壊されるパトカー。
すべては無に――。
ディストラクション・グレネード!
撃破!
その背後には――
やったぜヒロカズ! とケンタ。
ったりめーだ! とヒロカズとガードロモン。
真似すんな!
そっちこそ真似すんな! もうどっちが先だか判らない。
ぷぷっ、ぴーぴ?
あ、うん、そうだね。
俺たちも急ごうぜ。
お前、いつからマリンエンジェモンの話が判る様になったの?
ん~、判るっていうか、何となくだけどね。
おっしゃあ! 行くぜ俺らも! タカトたちだけがテイマーじゃねーんだよっ!
おう!
突如、頭上に警視庁のヘリ。
拡声器から声。
そこ動かないで! 君たちは手配されている!
うそだろ……?
CM
シナリオの柱は「インフェルノ」。
9/11、或いは戦争の戦場、或いは自然災害、そうした現実から掛け離れた描写を追求して、こうした光景が生み出された。
もう少しだ! デジモンのみんなと、お父さんたち人間の力、みんなを合わせたら必ず勝てる!
これが最後の戦いなんだ!
――これが戦いなんだよね……。ゲームじゃない、本当の……。
私は! デジモン・クィーンと呼ばれた女よ!
するとサクヤモンが、留姫、だけどそれは……、と言いよどむ。
確かに君はクィーン。けど、だったら俺は、キングだな。
うっさいわねー、と留姫。
クスッと笑ってタカト――、みんな変わんないや。
えっ、何が? と留姫。
何が変わらないっていうんだい? タカト、とジェン。
だって――、ぼくたちこれから、加藤さんと、それからこの世界と、デジタル・ワールドを救いに行こうとしてるんだよ? 何かすごい、んだけど……、
ぼくたちは全然変わってないんだもの。
そう、かな……?
簡単に人間って変わんないってば。
微笑むリョウ。
タカト!? 近くだ! とデュークモンの声。
行くぞ!
うん!
いよいよマザーーの近くにまで来る。
東京から離れる高速バス。
ねえ、インプモン大丈夫かな……? とマコ。
しっ。静かに。とアイ。
俺なんか、棄てちゃってくれよ……。
こんなダメな奴なんてよ……。
ダメなんかじゃないよ! インプモンがんばったもの!
そうだよ!私たち見てたもの!
俺、やろうとした事も出来なかった、半端野郎なんだ……。
ううんと首を振る姉弟。
と――、すぐ頭上に光が――
凝縮。
パープル・リムの、D-Arkが現れる。
手を伸ばす二人。
これでアイとマコは、正式なテイマーに。
走り去って行くバス。飛び出して行く――
デジノーム。
くりゅ……。
クルモン、一緒にここを出ようね。私たち、もっともっと仲良くなって、いつもみたいに、笑顔で……。
強い顔になる。
聞いて! 聞こえてるんでしょ!?
あなたは私の声と記憶を盗んだ! それは私が全然良い子じゃなかったから!
私がレオモンの言葉を、運命を自分勝手に受けとめていたから!
けど……、だけど! そんな私だって明日は笑顔で一生懸命生きていける!
良い子にだって頑張ればなれる! 人間てそうなんだと思う!
進化出来るの! 人間だって!
それをクルモンやタカト君、
レオモンが教えてくれた……。
私、レオモンの言葉を間違って聞いていた……。
運命は逃げられないもの――。そうじゃないんでしょう? レオモン。
D-Arkにレオモンの姿が浮かび、そうだ、と頷いて、消える。
これはD-Arkが本当にそう見せたのか、樹莉の想いが見せたのかは判らない。
――ありがと……。レオモン……。
消えていいものなんてない! みんなみんなとっても大事なの!
お願いだから!それを消さないで!
しかし樹莉の背後のケーブルが蠢き出す。
! クル!
ケーブルが樹莉を捕らえ――
引っ張り上げる。
苦しむ樹莉。
デ・リーパーは、樹莉を人質として利用する事にしたらしい。
この樹莉を拘束する形が、宗教的にタブーに触れると判断(誤解)されて、サバーン配給の海外版では違う絵柄に変更されている。
歯を食いしばる。
デ・リーパーの声。
もう判っている事。人間という存在は加藤樹莉と同じく、そのの思考ロジックの中に、破滅を望んでいる。
嘘よーっ!! そんなの嘘だよーーーーっ!!
もう判っている事――。人間という存在は――
他者を傷つけたいという願望を、無意識に持っている。
ちがーーーう!!
もう判っている事――
予め予定された進化をするだけの存在。
――デ・リーパーの声は外にも響いていた。
違う! それは間違っている! とサクヤモン。
そうだよ! ぼくたちはもう違うんだ! とセントガルゴモン。
タカトと一緒になっているこの究極体の姿! お前如きが見切れるものではない!
人もデジモンも、より高みに進化出来る!
だああっ!!
デュークモン、飛翔。
加藤さーーーーーん!!
サクヤモンも上昇。ワンカットで。
樹莉ぃいいいいいいッ!!
このセグメントにメッセージは集約されていた。39話(吉村脚本)でレナモンが言った。過去は変えられなくても、今は変えられる。今が変われば、未来が変わる――と。
34話で「これが私の運命だったらしい」とレオモンが樹莉に言い遺したのは、決して樹莉を「運命」という呪縛に絡める意図はなく、寧ろ樹莉の事を慮って言った事だった。デジタル・ワールドで戦いを勝ち抜いてきたレオモンは、いつかは自分も倒され、ロードされる時の事を覚悟していた筈だ。しかし「運命的」にリアル・ワールドに現れ、樹莉と出会い、テイマーとパートナーになった事で、それまでの自分の宿命から脱する事が出来たと喜んでいただろう。だが、やはり自分が消える時が来た。樹莉の心を少しでも軽くしようと告げた言葉が、樹莉を縛ってしまった。
人とデジモンが一緒に進化をする――。スーツェーモンが最初に示した通り、それは人にとってもデジモンにとってもアブノーマルなもので、それが普遍化する筈はない。これはテイマーズという物語に限っての、奇跡だった。それによってでしか、デジタル・ワールドとリアル・ワールドを襲う災厄が避けられなかったからだ。
でも、サクヤモンもセントガルゴモンも、自分達はデジモンの「進化ルート」の軛から逃れたと考えていた。そもそも進化ルートは、例外が多くあるものなのだ。
人だって進化出来る――。自分をより向上させる意思さえあれば、それが人としての進化なのだ、と、我々スタッフは子どもに伝えたかった。それは、今話の浅田さんの演技と、角銅さんの演出、浅沼さんの作画監督の仕事を経て、アイやマコの年齢の視聴者にだって届いただろうと信じている。
ただ、テイマーズの物語構造やディテイル、SF概念等については、小学生が初見で判る様にも作ってはいなかった。これについてはいずれまた述べよう。
当時のヒロカズ、ケンタのいたあたり pic.twitter.com/5aTOTfIsU3
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年7月14日
海外では樹莉がどんな違うポーズにされてるのかちょっと気になりますが、その前の一人で強い意志を示すあたりのBGMをああいうものにしたのが浅田さんの演技で、メッセージ性を強めるいい効果になったかと思います。
— 角銅博之 (@kakudou) 2021年7月14日