第43話回顧 2
2020年春以来、私はテレビのニュースを見ることは一切止めた。それまでも、テレビや新聞の報道の劣化は酷いものだった。この10年程の間に調査報道というものに予算が割かれなくなり、かつては辛うじて見られた、主流報道とは相対する観点の報道というものが無くなった。「現場からの中継」はスマホに置き換えられ、今やリモートでの取材ばかりだ。だが、誰がどう見てもおかしい事態を、何ら疑問も持たずに垂れ流し続けるテレビにはつくづく愛想が尽きた。最低なのは我が国の公共放送である。テレビだけではない。通信社の配信文を垂れ流す新聞も然り。
私は1980年代末から脚本家をしており、デビュウ作からしてテレビ報道を作話では重要視してきた。90年代末~00年代初頭までの特撮、アニメに於いて、テレビが人々の共有認識を可視化しているかの様に描いてきた事には、今や悔いる気持ちすら抱いてしまう。
2020年の事態について、YouTubeで見られる真摯な報道をしていたのはイギリスのTalk Radio(大臣クラスの役人に容赦なく電話質問を浴びせていた)、小規模なUK Column(内部通報者の声をよく拾っていた)くらいのものだった。前者は切り抜き動画のアップを抑制され、後者はアカウントが消されている。
テイマーズでも、テレビの全てを肯定的に描いてはいないのだが、しかし事態の客観的な状況説明と、子どもたちとデジモンが戦っている事を知らしめるフレームとしては最大限に利用した。
今ならSNSのLIVEなどに置き換えられるのかもしれない。しかし客観性というものが失われてしまう。大手SNSは単なるプラットフォームではなく、「真実の裁定者」を気取っている。
この20年で、大規模な事象を描く事の困難さがこれほどに増すとは想像だにしなかった。
余談的に書くべき事ではあるが、今話の作劇を2021年時点で語る上では、前提として書いておきたかった。終盤でもテレビが重要な役割を果たすのだし。
では本篇に戻ろう。
どうもお疲れっした!
テレビの中継チームが引き上げていく。
一人で責任を抱え込もうとしてる? と優しい声で訊く麗花。
コーヒーの紙カップを渡す。
いずれネットワークは自由な世界じゃなくなる――。誰かが監視システムで支配しようとする――。
あなt――、室長は最初の一人だっただけです。
あちっ。コーヒーが熱かった。
間抜け野郎の一人目になるつもりは、ない。
私、そういう意味で――
一人だけで何かが出来るなんて、もう思っていないさ。
それに……、
ネットワークが支配されるべき世界だとも思っていない。
と、揺らされるカップ。
おい! デ・リーパーの最も初期のデータを
入手したよ!
こんな笑顔の山木は初めてだ。
どこでですか!?
ドイツの仲間が保存してくれていた。 これから解析する。山木君――、
我々にはまだ出来る事が、ある。
力強く言うジャンユー。
おーいタオ~。
早くしてくれよー。とSHIBUMIが催促。
ああ! 今サーバに上げる!
留姫の家――。
ああ……!
ジェンの母、留姫の母と祖母、タカトの父母が並んで待っていた。
お帰り! と剛弘が言うが――
って、ここは留姫ちゃん家だっか。
久しぶりにイントロから、BGM「行き交う人々」という楽しげな日常風景の音楽が流れる。
ごちそーだーーーーー!
アガるテリアモン。両親たちの後ろを走り――
わーいわーいと走り回り始める。
わーい
もう一週しようとしたところを、ジェンに耳を掴まれる。
これが本物の――
ん~~~~、これギルモンパン??
ああ! やっと食べられるな? 段ボール!
ギルモンパン! ギルモンパン!
お父さん……。お母さん……。
これ、みんなで作ったんだから、全部食べてよね、と聖子。
お祖母ちゃん……。
ママ……。
ん?
私だってたまには作るって、とルミ子。
さ、早くおあがんなさいな。と美枝。
いただきまーす!
シウチョンは?
趙先生のところで、お留守番してるわ。
そう……。
わあああ、このおまんじゅう、おいし~~~~。
にっこりする麻由美。
あの、ぼくたち――とタカトが言いかけるが――
ああ! 下着とか持って来たから、後で お風呂いただいて着替えなさいよ。と美枝に先手を打たれる。
ギルモンとテリアモンが旺盛な食欲を発揮しているが、子どもたちは居心地が悪そう。
校庭にまた変な模様を描いている――
ん~ん……。
みーんなどこ行ったでーすか……?
くるくるどーーーん!
きゃーーーーっ! インプモンに蹴飛ばされるクルモン。
へへーん、なーに黄昏てんだよ!(13話のリプライズ)
ひどいっじゃないでーすか! またーむー! と猛然と抗議する。
くるくるくるくる、どーこ行ってたんだよ?
クルモン、じゅりと一緒にいたんです。でもじゅり、いなくなっちゃったでクル……。
樹莉、という言葉に顔を曇らせるインプモン。
おいら、あいつのパートナー(レオモン)を……。
――決意の顔で
歩き出すインプモン。
どこ行くんでーすかクルル?
俺がここに戻ってこられたのは、仲間のお陰だ――。
俺が何とかしなきゃいけねーんだよ! とインプモンは言い捨てて行く。
ネット管理局監査委員が記者会見。
ネット管理局は一般国民の私的な通信内容まで傍受していた訳ではありません。
記者が質問。
しかし、ヒュプノスは単に情報を傍受するだけでなく、情報を逆にプッシュする、ネットワークを用いた情報操作まで可能ではないか、という告発がありますが?
2021年現在では、何ら隠す事無く大手SNSや検索エンジンはこれをやっている。ついでに「ファクト・チェッカー」という嘘の上塗り業まで横行。
いえ、その様な――
では! 西新宿で起きている事の対策は!?
混乱する会見場。
記者会見の途中ですが、
西新宿で再び動きがあった様です。
逃げるドーベルモンとアリス。
襲いかかるADR-04 Bubbles。
アリスは息を切らしている。そろそろ走る限界か。
ADR、腕を膨らませ――
ドーベルモン、立ち向かおうと振り向いて威嚇。
だめえええええっっ!!!
ADR、波動ガンを放つ。
デッキの床板がめくれていく――
ごちそうさま~~~~~~
ギルモン、もう食べられない~~~~
食べ過ぎだって~、と美枝。
ギルモン、パンがいちばんおいしかった!
ぼくはおまんじゅうがいーちばん! というのは勿論テリアモン。
いつも食べてたんじゃないの? と含み笑いながら麻由美。
あれ……?
バレてた?
ジェンリャが時々、変にいっぱい持ってくから、おかしいなぁ~って思ってた。
うん……。
箸を置くレナモン。質素な和食の一人卓。
レナモン?
ご馳走になりました。
あなたもこちらに来ればいいのに、と聖子。
いえ。
レナモンは何か異変に気づいている。
あ、あの~~、とタカトが、ここに呼ばれた理由を聞こうとモジモジしながら問い掛けようと――
ほうお? と見入るSHIBUMI。
ビットマップで描画されるデ・リーパー。
こりゃ確かに原始的な人工知性だ。
SHIBUMI、君がデジタル・ワールドで見たものとあれとは同じなのか?
猛烈に速い人差し指タイピング。昔のハッカーはこういうイメエジだった。昔の映画に描かれる新聞記者なんかもこういうタイピングをしていた。
違う。いや基本的にはおんなじなんだが……、
ビットマップからベクター画像に。
デジタル・ワールドではあれは他のデータに触れただけで消し去っていた……。
だが、あそこにいるのは……。
通知音がした。
新宿地帯の衛星写真が送られてきた、とバベル。
デ・リーパー・ゾーン。
侵食は公園、緑の多いところを避けている様だな。
代々木公園と新宿御苑か……、とタオ。
そう言えば――
中央公園からこちら側にも広がってはきていない。
単に有機物、生物を避けているだけなのかな……。
BGM「デジタル・ジャングル」が珍しく使用された場面。
衛星写真が出たついでという訳ではないが、Act.3の舞台になる場所を先に説明しておこう。
再開発された新宿駅の南側は、新宿サザンテラスという、桟橋の様な空中(線路面上)の遊歩道になっている。
13話(今村演出)で、インプモンがクルモンを襲っていたのもここだった。向こうに見えるエンパイヤ・ステートビルもどきの建物は、ビルの格好をしたNTTの無線タワー。で、この線路をまたぐ橋も、私はサザンデッキの一部だと思い込んでシナリオにはそう書いていたが――、
これはイーストデッキ、というのだそうだ。東側が高島屋+東急ハンズなどのビル。
かなり広い橋。テイマーズを書いていた頃はよくこの橋を通ってハンズや、高島屋の上にあったタワーレコード(今はHMVになったか)にCDを買いに行っていた。
※画像 Google Mapより
ここですネ。😁 インプモン悪い顔してるな〜…まだ…。😅 pic.twitter.com/MgwqLkAgGJ
— 信実節子 (@S_NOBUZANE) 2021年6月29日