第43話回顧 4
命懸けのバトルとカットバックされる、幼児と小さいデジモンの日常的な風景。これはかなりシュールだと思う。
おいしい? おいしい?
おいしいよ。
もっと食べて。もっと食べて。
ん~、食べられないよ……。
じゃあテレビ見る? じゃあテレビ見る?
現在西新宿で、デジモンと呼ばれる怪獣と、得体の知れない――
衝撃を受けるインプモン。
俺行かなくちゃ!
えっ!? またどっか行っちゃうの?
やだよ! せっかく会えたのにまたどっか行っちゃうなんて、やーだ!
行かないで、もうどこにも行っちゃいや!
ごめん、アイ、マコ。でも――
俺のダチ(友だち)がピンチなんだよ!
!
帰ってくる? 帰ってくる?
ああ! 必ず帰ってくる! 約束するぜ!
路地に駆け出してくるインプモン――
待ってインプモン!
これあげる。
え……?
これで悪い奴、やっつけて!
マコ……。
――この表情が入るのと入らないのとでは、全然違う。
任せとけ!
インプモン、
がんばってね。
ばっ、バカ! 恥ずかしい事すんじゃねーよ、アイ。
行ってくるぜ!
駆けだして行くインプモン。
帰ってくるよね? と問うマコ。
――帰ってくるよ。アイには確信がある。
「EVO」のイントロが流れ始める。インプモン、ベルゼブモンに使われるのは勿論初めて。静かなパートがエクステンド版。
待ってろ、アイ、マコ――、俺は必ず帰ってくる!
インプモンの走る足が――スローモーションになって――
ベルゼブモンの足になる。その瞬間にフルバンドになる。音楽との相乗効果が最大限。
この戦いが終わったら――
必ず――
玩具の光線銃を持った右手が輝くと――
巨大なブラスターに。
これを――!
うっ! 苦痛に顔を歪める。
背部が異様に蠢く。デジタル・ワールドでラピッドモン、タオモンをロードした時と似た描写だが――
今度は均衡した隆起。
巨大な羽根が生える。
アイ、マコ、ありがとうよ!
ここで赤目から、インプモンの緑色の目に一瞬で変貌。(以前書いた、最後の赤目アップは間違いだった)
ベルゼブモン ブラスト・モードォォ!
気合いで飛翔。ここで歌頭。
苦戦している三体。
小首を傾げるADR-03。
なんだよ、こいつ訳わかんない……。
あれは……、
我々の理解を越えた存在……。今、私は初めて恐怖というものを感じている――。
タカト!
苦悶していた三人だが――
こっ、こうなったら究極体に進化するしかない!
メガログラウモン!
無反応のD-Ark。
どうして!!??
きっと、デジタル・ワールドではぼくたちもデータだったから出来たんだ。
リアル・ワールドでは究極体に進化出来ない、っていう事なの!?
じゃあどうしたら――
どうしたらいいんだよぉぉぉぉ!!!!
その空を猛烈な速度で過る黒い影――
!?
ベルゼブモン!?
激しい嫌悪を見せるメガログラウモン。
お前、何しに来たんだよー、とラピッドモン。
うるせーバーカ! 助けに来たに決まってんだろ!?
えっ!? 助けに??
お前の言う事は信じない!
お前らに信じて貰わなくても構わねーよ。
俺を信じて待ってる――
マコ――
アイ――
俺のパートナーの為に――
俺は戦う!
旋回しながら迫ってくるADR。
直撃コースだが――
いくぜ! アイ、マコ!
デスストリンガー!!
ケーブルが切れる。
! 動きが止まった!
今だ! 梵筆閃!
ゴールデン・トライアングル!
アトミック・ブラスター!
強烈な三種のエネルギーがADRに集中。
ジェル状になって消失。
やったぁ!
とシンプルなリアクションで黒味にフェード・イン。
そしてフェード・アウト。公園の片隅。ゾーンからは離れた場所。
パートナーと会ったんだな、とタオモンが優しく訊く。
まあな。
あのー……、とメガログラウモン。ギルモンの声になって――
信じないなんて言って、ごめんね。――インプモン。
インプモンじゃねえ! 今の俺はベルゼブモン様だ!
それも――
本当の究極体進化! ベルゼブモン・ブラスト・モードだぜ!
よっ! かっちょいー、インプモン、と混ぜっ返すラピッドモン。
コケる。だからインプモンじゃねーっつってんだろ!
永遠にラピッドモンがからかい続ける。
笑っていたタカト――
視界の隅に過ったものを――
視認。
今話は殆ど全く見えないが――
……。
加藤、さん……?
エピローグが若干不穏な雰囲気を生成するも、43話はテイマーズでは珍しく明るい雰囲気でクリフハンガー無く完結する。これも好印象の一つになったとも思う。
ベルゼブモンには当然ながら進化バンクはない。スーツェーモンによって進化させられた時は、溶岩の中に突き落とされ、そこからベヒーモスと共に甦った。
今話は特別な演出ではなく、走るインプモンの足がベルゼブモンに変わる、というカット繋ぎのシンプルこの上ない見せ方ではあったが、そこに至るまでの積み重ねと、高橋さんの気迫のこもった芝居、そして音楽の力が重なり、かくも名シーンとなった。
だが、今話でやっと倒したADR-03はほんの小手調べに過ぎない。既に自衛隊にも犠牲が出ている。テイマーたちは更に過酷な戦いを強いられるが、今話明らかになったのは、リアル・ワールドではそのまま究極進化出来ないという現実だった。
ベルゼブモンのオリジナル・デザインがブラスト・モードの方で、赤目は後から追加されたという説がある様なのだが、そうだったのかもしれない。1話のオープニングから、シルエットで登場しているのはブラスト・モードだったのだから、その方が蓋然性がある。
ベルゼブモンが人気なのは、ハカイダーみたいなものなのかな、と私は思っていた。私に近い世代では「人造人間キカイダー」に登場する宿敵ハカイダーは極めて人気が高かった。ベルゼブモンもハカイダーと同じくバイク(ベヒーモス)に乗っていた。イメージ・ソース的にはあったかもしれない。ダークヒーロー、アンチヒーローの系譜。
多くのファンがベルゼブモンを好きという一方で、当時のリアル子ども視聴者だった人の中には、未だにベルゼブモンがデジタル・ワールドでした事は許せない、と強く思っている人の話も聞いたりして、受け取られ方は様々なのだな、と17年後辺りに考えた記憶がある。
#43 Credits
ギルモン~メガログラウモン:野沢雅子
松田啓人:津村まこと
テリアモン~ラピッドモン:多田 葵
李 健良:山口眞弓
レナモン~タオモン:今井由香
牧野留姫:折笠冨美子
インプモン~ベルゼブモン:高橋広樹
アイ:寺田はるひ
マコト:松本美和
李 鎮宇:金子由之
趙先生:北村弘一
山木満雄:千葉進歩
鳳 麗花:永野 愛
小野寺恵/アイマコの祖母:宮下冨三子
自衛隊指揮官:飯島 肇
デイジー:百々麻子
SHIBUMI(水野悟郎):諏訪太朗
ナレーション:野沢雅子
原画:田辺由憲 山口泰広 芹田明雄 浅沼昭弘 仲條久美 キリュウ
稲田真樹 関 暁子 山岸裕昌
動画:岸 祐弥 吉川真奈美
背景:スタジオロフト 井上徹雄 阿部とし子 劉 基連
デジタル彩色:露木奈美 木村紘子 加藤英恵 藤原辰雄
デジタル合成:三晃プロダクション
広川二三男 則友邦仁 吉野和宏 中山照美 福井道子
演出助手:地岡公俊
製作進行:山下紀彦