第42話回顧 1
ジュヴナイルであり、リアルな侵略SFバトルであるという事の両立は、絶妙なバランス感覚によって各話で構築されていった。未知なる侵略者は、まず恐ろしく見えなければならない。第三部の初回はまさきさんと角銅さんのコンビで、恐怖感を軸にテイマーたちの責任感を描く。作画監督の信実さんは、21話(レオモン様)、34話(デュークモン)でも角銅さんと組まれてきた。美術は徳重さんの一人背景。
デ・リーパーに襲われた街 テイマーの決意
脚本:まさきひろ 演出:角銅博之 作画監督:信実節子 美術:徳重 賢
今話は登場人物がバラバラ状態からの作話で、端的に説明する為に字幕が入る。この後の話数でもこれは引き継がれていく。
まずはホテルニューグランド、と思しき横浜のホテル。モデルのホテル旧館は江戸川乱歩など多くの小説でも描かれたホテル。なお、関東大震災で焼失したホテルグランドとは無関係なのだそうだ。調べて初めて知った。
テレビのニュースを見ている留姫――
なんでデ・リーパーがリアル・ワールドに……?
撮影の予定が入っていたが、中止になっている。ルミ子は横浜のホテルにいると告げる。
だから言ったでしょう。こんな時に撮影なんてある訳ない、と聖子。
そうは思ったけどさー、もしあったらみんなに迷惑掛けるじゃない。
ルミ子は周囲に配慮が出来る人物なのだ。
でも、もしもの事があったら……、
判ってる。
と留姫を見やる。
レナモンの存在を、ルミ子は受け容れた、のか?
それより今は、家族水入らずの時。
母の言葉に少し驚く留姫。
ルミ子は微笑んでいる。
趙先生の家に、李家は避難させて貰っている。
四人兄妹がワンカットで描かれるのはこれが初めてか。ロップモンもしっかり収まっている。
にしても、あまり現実と対比すべきではないが、9/11の時も、3/11の時も、みなテレビが流すものを見続けてきた。テレビが映しているものが全てではないのは判っているのに、しかし大変な事態が起きるとテレビを見る――というのがこれまでの人々の行動であった。だが、2020年以降はもうそうではなくなりつつある。
麻由美が夫・ジャンユーに携帯電話を掛けているが繋がらない。
と、趙先生の固定電話に着信。
混乱時、携帯電話は繋がらないものだ。
西新宿からやや離れたところに駐車しているヒュプノスのモバイルラボ車。この車はシリーズ初期から、タカトの不安を煽る存在として登場していたが、今話ではこれが頼りになっている――
ヒュプノス・チームとワイルド・バンチ。
このケーブル、どこ繋がってる?とデイジーがパネルを結線中。
えーとぉと、手伝う恵。
19インチ・サーバー・ラックを覗いているバベル。
小さいですがヒュプノスの基本機能はここに備えています。扱えますか? と麗花。
扱える事は扱えるけど……、
ちくしょう、ダメだな……。計測不能。他にネットをワッチする方法は?
困った声で、ええと、と思案する麗花、山木室長!と呼ぶ。
ちょっと待て。
ヒュプノスのログ・ファイルです。よろしくお願いします、とドルフィンに磁気ディスクを渡す。
判った。カーリー、分析を頼む。
あ、趙先生ですか? 家族で転がり込んで申し訳ありません。助かります。
――ところで、ジェンリャは、いますか?
ジェンが呼ばれた。
何?
ジェンリャ、異常現象(デ・リーパー)の事は私たちに任せるんだ。いいね?
――わかってます……。(苦渋)
中央本線上り急行あずさ。
まさきさんは今話を書く為に自腹でシナリオ・ハンティングをしている。
タカト、眠くないの?
大丈夫――。タカトはなるべく感情を表に出さない様にしている。
疎らな車内で、ふと向こうの席の人に気づく。
男が読んでいる新聞の一面――
デ・リーパーがデジモンと混同されている様だ。
タカトと、何よりギルモンが恐ろしい。
……。
視線が合った事に気づき――
新聞を忙しく畳んで――
席を移っていく。
ギルモン、なんか悪いことした?
なんにも。
――車掌に伝えてきます、という男の声が聞こえる。
焦燥するタカト。
タカトぉ、ギルモンなんか……、
なっ、何もしてないって!
それより――
これ着て! 寒いから!
ん?
次は八王子――。横浜線ご利用の方はお乗り換えです――という車内アナウンス。
……。
ポケットをまさぐって――
メモを取り出す。
多分、剛弘が書いてくれた、神奈川県逗子への乗り換え図。
前話の美枝の声がリプライズ。
ちゃんと送ったら、逗子の叔母さんのところに必ず来るのよ? 約束よ、判った?
――。
41話は、普段よりも多く言葉を発していたタカトであったが、今話はじっと考え、声に出すのを躊躇い続けている。一話の、まだ幼いとさえ言えたタカトから、思慮をする人間へと成長しているのだ。
八王子駅で一応、降りるタカトとギルモン。
三鷹方向に発車するあずさ号。
横浜線が向こうのホームに停まっている。
福岡空港。一年ぶりに行方不明の中学生が、デジモンの世界から帰ってきたというニュースが報じられていた。
君が連れているデジモン、新宿に現れたあの泡みたいのとは――
リョウが父の車に乗せられる。報道陣の質問が飛び交うが――
リョウは疲れとっけん、今は遠慮してください!
九州訛りの父。全キャラクターの氏名は旧サイトに記していた、と思ったのだが、リョウの父親の名前は判らなかった。
こいつ、ちゃんと紹介しとらんかったね。
俺、モノドラモン!
きさん(お前)は横道もん(バカ)たい!
横道者は横着とか強情といった意味合いでの九州言葉。「横道」だけであると、邪道といった意味が日本語的には出てくるが、九州での使われ方は独特。ここでは一年も連絡せずにいたリョウを一言で一喝している。面白いのは、~モンという九州の言い方。モノドラモンとオウドウモンである。
洒落のつもりね?と冗談めかすが――
父の深刻な顔つきに、反省の色。ここでは爽やかではない。
御免……。
モノドラモン(声は父親、サイバードラモンと同じ世田壱恵さん)、ウィンド・ウォッシャーをいじる。
なんばしよっと! 勝手に触っちゃいかん!
しかしこのモノドラモンの操作で――
ラジオが西新宿の異変の拡大を伝えているのが聞こえてくる。
――強い顔。
避難区域となっている東新宿駅周辺の住宅街。地名的には大久保。
犬がいない。チャツラモンが見せたのは、過去にインプモンが覗き見た、インプモンが去った後のアイとマコトだった。
伺うインプモン。
無人の家の中で、つまらなそうにテレビをザッピング。
本当に誰もいないのか……?
そっと部屋の中を窺う。
避難は慌ただしかったらしい。乱雑な室内――。
タンスの上に――
アイとマコトの写真。その隣には――
インプモ、までしか今話では読ませない。ともあれ、自分を描いたものだとはインプモンも察知して――
驚愕。自分はパートナーたちに忘れられていなかったのだ。
次話への道筋がついた。