第40話回顧 1

デジタル・ワールドから帰る時が来た。

テイマーズに於けるデジタル・ワールド行きは、アクシデンタルではなく、そこに行く明確な目的が必要だと強く思っていた。テイマーは主体的に動かねばならないからだ。

クルモンが進化の輝きを持っているとすると、ではデジタル・ワールド内の進化は止まっている、と解釈出来る。スーツェーモンがクルモンを奪還するべくデーヴァを作ったのも、進化をしないと滅ぼされる危機があったからだった。

四聖獣はデジタル・ワールドを守護しているとされるが、どう守護していたのか。内部の反抗的な存在はあろうが、守護するには外敵があった筈だ。デ・リーパーという設定は、こういう面でも必要だった。

テイマーたちがクルモンを求めて冒険した成果として、クルモンを取り戻すのは必然としても、クルモンもまたデジタル・ワールドには必要とされている。この二律背反を解決するにはどうしたらいいか――。

前川さんと話している内に、やはりデジノームだよね、となる。

そして、レオモンは失ったものの、皆が集まっている。いや、一人足りない。入るルートは別であったが。

デュークモンに負けたベルゼブモンの顛末がここで描かれねばならなかった。という事で脚本は前川さん。演出は川田さん。作画監督は伊藤さん。美術は清水さんという布陣の40話。2002年1月6日が放送日。

進化の輝き シャイニング・エボリューション

脚本：前川　淳　演出：川田武範　作画監督：伊藤智子　美術：清水哲弘

　

 

奴がまた動き出した、とサイバードラモンが言う。

デ・リーパーたちが、また現れるの？

「たち」ではないのだが。

唸るギルモン。デジモンではないのに、敵となると本能が働く様だ。

警戒していたスーツェーモン、突如沸き上がるデ・リーパーの泡を、すんでで避ける。

上空ではチンロンモンが阻もうと待ち受けている。

柱状に沸き上がっていたデ・リーパー、勢いを失って――

沈下していく。

樹莉は独り、離れたところでソックパペット（ここではオルターエゴ）と対話。

私たちどうしてここにいるの……？

運命なんだワン、と答えるソックパペット。

私たち、何をしているの？

運命に逆らってるんだ――

ワン！

空を過るテレビ局のヘリ。

謎の群発地震により現在避難勧告が出ている西新宿上空です。

震源もマグニチュードも全くコンピュータ機器には全く測定されないこの不思議な地震は――

この都庁はインダラモン回辺りの流用かと思う。夏の空だ。

突如西新宿に現れた謎の巨大生物と、なんらかの関連があるのでしょうか――。

ヴィカラーラモンが出現したのは北新宿だった。

イライラを表す、ジッポーの蓋をカチカチさせる山木。

こちら側だけでこれだけの異変――

向こう側はどうなっているか……。

どうです？　箱舟はまだ完成しませんか!?

もう少しだ。もう少し時間をくれ。

一心不乱にキーを叩くジャンユー。

ドルフィンが指揮をとっている。

デイジー、もう一度チェックだ。バベル、カーリー、軌道計算を急いでくれ！

強風で流れるダスト・パケット。

凄まじい風の中――

佇立している――

無数のクリサリモンが、ベルゼブモンを取り囲んでいる。かつて多くの仲間を殺された怒りがあるのか。

だがベルゼブモンは視線を遠くに――

狼狽えて退く。

そんな目で、俺を見るな！

だがこれは、ベルゼブモンの目に焼き付いた樹莉の顔なのだ。デュークモンにとどめを差すのを止めさせた、樹莉の顔。

見るな！　見るな！

見るなぁぁぁぁぁ！！！

赤目ベルゼブモン最後のアップ。

活性化するクリサリモンの群れ。

空はノーマルの荒野。つまり樹莉の幻影を見ているのは、ベルゼブモンの心の中の嵐が描かれていた。

クリサリモンがテーザーの様にベルゼブモンを攻撃。

うわああああああっ！

雲霞の如く集まってくる。

もう、もう力なんかいらねえ！

激しく悶絶し――

倒れ込む。

必死に身を起こそうとするが――

遂にはうつ伏せる。

腕に巻いていたバンダナが風にさらわれていく。

力尽きるベルゼブモン、悲痛な叫びを上げる。

だが、今のデジタル・ワールドでは、幾ら敵をロードしてパワーを得ても進化はままならない。

ん――

どうしたの？レナモン。

いや、確かに今――

その時、激しく地鳴りが――

再びデ・リーパーが柱状に吹き上がるものの――

沈下。

デ・リーパーめ！　わざと脅かして楽しんでるみたいだ！　とリョウが憤る。

怖いよぅと耳を覆うシウチョン。

駆け寄ってくるロップモン。

案ずるな。我がついている。

うれしそうなシウチョン。

そこへ現れるシェンウーモン。

今の騒ぎは何じゃ。

また、彼奴（あやつ）らの仕業か。

バイフーモンも現れ、スーツェーモンが出迎える。

そうだ。いよいよ真の敵は本腰を入れて攻めてくると見た。

我らも遂に、覚悟を決めねばならぬ時が来たか。

チンロンモンも降下してくる。やはりチンロンモンのサイズは破格。

進化の輝きを持つ者、デジ・エンテレケイアよ。我は、無秩序な進化はデジモンの進む道ではないと考え――

そなたの光が封じられる事を望んだ。古（いにしえ）の者たち（デジノーム）が我の願いを叶え――

そなたはデジモンの姿になった。しかし――

もう、時の猶予は有らず。

飛び出すクルモン。

クルーｰｰｰｰッ！

上昇していくクルモン。

クルモンどうしたの？

判らないよ、と戸惑うジェン。

四聖獣たちの上空――

一体何が始まるんだ……？

クル。

我らが地を護る為――

我らが種を護る為――

我らに光を返し給え。

デジ・エンテレケイア、いや、クルモンよ。

そなたはデジモンとして心を持った。

今そなたは、何を望むや。

クルモン、出来る事、したいクル……。

くる～

くるくると回転し始める。

額のクリスタルが輝き始める。

ここからAiMさんの「Flagile heart」（作詞：ai　作・編曲：近藤昭雄）が流れ始める。「冒険者たちの戦い」主題歌「Moving On!」のC/W曲。テイマーズ楽曲とは感じの違う楽曲。完全にマッチしているとは言えないのだが、クルモン主体で見ると成立していると思える。

チンロンモンが願う。

古の者たちよ、クルモンの願いを叶え給え！

デジノームだ！

クリオネ的な、女神的な姿が浮かぶ。

光が最も大きく輝くと――

デジ・エンテレケイアが甦る。

クルモンとデジ・エンテレケイアが分離した。

クルモンにも大技があった。

シャイニング・エヴォリューショーーーーーン！

進化の輝きを普くデジタル・ワールドに――

ツチダルモンたちも――

ハグルモン、クロックモンも――

ゲコモンたちも――

クリサリモン群体は三体のディアボロモンに進化。

後に残される――

インプモン。

光が集まってくる。

おお！

一番乗りがディアボロモン。

デジモンがいっぱい現れた！

メタルシードラモン、ムゲンドラモン、グランクワガーモン――

ホウオウモン――

進化の光に導かれている。

レナモンの視線の先――

グリフォモン、究極体、幻獣型デジモン――

ホウオウモン、究極体、聖獣型デジモン――

あれは、ボルトモン！

プレシオモン！　あれは、ええとええと――

グランクワガーモン！　それに、それに……

デジモン好きが主人公たちの物語である。ある意味ではテイマーズの最クライマックスとも言える場面。

うわーっ！

ジジモンとババモンだ……。

いやヒロカズとケンタは見つかるとヤバいのだが。

全部、究極体デジモンだ！

みんな、デ・リーパーと戦う為に――

進化して、駆けつけてきたんだ！

感動しているタカト。

全ての光を放出したクルモン――、

力を失い、降下していく。

留姫が駆け寄って――

抱き留める。

クルモン、がんばったね。

クルモンてすごいデジモンだったんだね！

四聖獣を「神」と呼ぶのは、デーヴァだけである。デーヴァにとってはスーツェーモンが創造神に当たる。

四聖獣はあくまで「デジタル・ワールドを守護する者」。だから四聖獣間での権力闘争などは起こらない。しかし四者にはそれぞれの思想と行動原理があった。あまりに強大な力を持つ者同士だからか、意思疎通に問題が生じる。これがクルモンというデジモンが誕生した背景だった。あ、バイフーモンとシェンウーモンは仲が良いらしい。

私はこの頃、よく最終的な敵を神の様な存在に描いていた。勿論宗教的な神ではない。神話的な存在という意味だが。

「serial experiments lain」の英利がデウスと名乗っていたのは、ワイヤードを普く支配出来る力を持ったと自分で思ったからだった。

「ウルトラマンガイア」「バブルガムクライシス TOKYO 2040」なども最終的には神的な存在と対決する。それを決して意識して選択していなかったのだが。

テイマーズでの「神との対決」はもう終わっている。