第36話回顧 3
(命を)貰った。
銃を突きつけているベルゼブモン。
デュークモンの中でタカト――
恐怖のあまりに叫ぶ。
その声は――
ジェンや留姫らにも聞こえた。
あばよ。
タカトーーーーッ!
助けなくちゃ!
しかしレナモンが、間に合わないと言う。
笛を吹きながら驀進してくる――
ベルゼブモン被弾。
何ッ!?
タカトから離れろおおおお! と叫ぶヒロカズ。
ディストラクション・グレネードォ!!!
ガードロモン、連発で繰り出す。
てっ、てめえ……。
直撃を連続で食らえばベルゼブモンでも怯む。
気合いを入れたデュークモン――
渾身の力で体当たり。
岩に弾き飛ばされて動かないベルゼブモン。
デュークモン、みんなの方を見る。
ありがとうヒロカズ! とタカトの声。
いくぞ、反撃だ! とデュークモン。
うん!
ここから「デジモンテイマーズのテーマ」。
タカトが戦ってる……。と留姫。
デジモンと一体になって戦ってるんだ、とジェン。
ロイヤル・セーバー!
かなりの距離を飛ばされるベルゼブモン。その対岸に樹莉がいる。
くそう、とベルゼブモンがベレンヘーナで遠距離射撃をしてくる。しかしもうデュークモンはシールドで避ける素振りもない。
ついに銃弾が切れる。
覚悟しろ、ベルゼブモン! お前の悪しき魂を――
聖なる光が焼き尽くす!
ファイナル・エリシオン!
盾の三角マークが時計回りに点灯していき――
力が! 力がぁぁぁぁ――
ベルゼブモンの悪のエネルギー、これまでロードしたデジモンのデータが全て焼かれる。
力なく座り込むベルゼブモン。
そこまでだ。
負けたのか……、この俺が……。この俺が負けたのか……。さあこの俺をロードしやがれ。
立ち上がる樹莉。
タカトの声。
ぼくは許せない――。
レオモンを倒した――。お前だけは――、お前だけは絶対に――
許せないんだああああああっ!
一撃で――
地獄に墜ちろォォォォッ!!
必死に叫んでいる樹莉。
はっきりと口パクは「やめてーーっ」と動いている。デュークモンの決め台詞にクロストークさせるよりも、サイレントになった分、余計印象的になっている。
セーバーはベルゼブモンを貫かず、地面を突いていた。
加藤さん……、
もう、やめてタカトくん――。
剣先を抜いて背筋を伸ばす。「なぜだ?」とは問わない。
もう……、これ以上誰かがいなくなるの……、嫌……。
――
樹莉、と小さく名を呼ぶデュークモン。
必死に涙を堪えている樹莉。
タカトは樹莉の気持ちが判った。
何故だ。何故俺を庇う、と樹莉の方を見るベルゼブモン。
俺はレオモンをロードしたんだぞ。
ずっと我慢していたのに、どんどんと涙があふれ出てくる。
あなたを倒したって、レオモンが生き返る訳じゃないもの!
これ以上悲しい思いをするのは嫌なの!!
だからお願い。もう戦うのは止めて、とその場に崩れる樹莉。
デュークモン、光に包まれて――
消失。
樹莉のすぐ脇に現れるタカトとギルモン。
号泣している樹莉に、手を差し出そうとして、引っ込めてしまうタカト。タカトは知る由もないが、レオモンと同じ動作。
ベルゼブモンは、自分の命を人間が救ったのだという事が受け容れられない。
インプモンの声の回想。
人間なんて勝手な生き物に飼われるなんて――、俺は――、真っ平御免ていう事さ。
上等だぜ! おめーら人間に、この俺様がやられると思ってんのかよ!
俺の強さを思い知らせてやる――
ベルゼブモンになってからの回想も。
この回想シーンは丸4分ほどもあって、ちょっと驚いた。その分、今話の作画パートや、特に尋常で無い光線技が多かったデジタル合成に集中させるというバランスをとられたのだと思う。
勿論この回想に意味はあって、悪魔とまで自身に思わせるまでに変化していたインプモンを、もう一度見直す機会にもなっている。
ちっ! 何だってんだよ!
歩き去って行ったベルゼブモン。
はっと我に返ったタカト、自分の手を見て
さっき、ぼくたちどうなったんだろう?
タカト、ぼくたちやったよ!
ぼくたち一緒に戦ったんだよ!
うん――、そうだよね、ぼくも一緒に戦ったんだ!
と――、虚空に浮かぶ――
ゴールド・リムのD-Ark。
もう何があっても、絶対君と一緒だよ! ギルモン!
おーーーーい! タカトーーーー!
だいじょーぶ!
一方、デジタル・ワールドの別の領域で――
リョウ達がいる
一体ここはどこなんだ?
未だかつてない程の強大な力を持った敵が――、この先にいる。
未だかつてない、強大な敵……?
浅い水辺を歩いて行く二人――。
今話はケンタの勘の良さ、そしてヒロカズの勇気が盛り込まれ、デュークモン単独では危うかった戦いをサポートする。
デュークモンという究極体になったのは前話だが、ヒーローになったのは今話である。応援する存在がいてこそ、ヒーローは戦えるのだ。
究極体になっている子どもがなぜ裸なのか。後に些か物議を醸してしまったらしいのだが、当時はどこからもクレームなど来なかった筈。
荒牧さんとコンセプトを考えている時、本当に一体感を感じさせるんなら洋服は着ていないんじゃないか、とどちらかが言い出して、そうだよねという事に。
勿論、貝澤さんが「いやこれは」と思えば変わっていた筈だ。
テイマーズを見てくれた人なら当然判っているだろうが、何らの性的搾取的な意図はなかった。留姫も同様。だから光の要素を多くしてある。普段束ねている髪も解ける。そうして「素」の子ども自身を表現したかった。ゴーグル、洋服、髪型、子どもでも自分自身を装っているのだ。そのコアを表現したかった。
だけど今はこうした表現はもう無理なのだろう。
#36 Credeits
ギルモン~デュークモン:野沢雅子
松田啓人~デュークモン:津村まこと
テリアモン:多田 葵
李 健良:山口眞弓
レナモン:今井由香
牧野留姫:折笠冨美子
加藤樹莉:浅田葉子
ガードロモン:梁田清之
塩田博和:玉木有紀子
北川健太:青山桐子
ロップモン:多田 葵
李 小春:永野 愛
サイバードラモン:世田壱恵
秋山 遼:金丸淳一
ナレーション:野沢雅子
スーツェーモン:森山周一郎
原画:原田節子 藪本陽輔 諏訪可奈惠 兼高里香 浅沼昭弘 野沢 隆
動画:山口幸俊 小林美穂子
背景:鈴木慶太 佐々木友子
デジタル彩色:藤橋清美 関口好子 松森より子 坂入希代美
デジタル合成:三晃プロダクション
広川二三男 則友邦仁 山口博陸 清水正道 緒方美佐子
演出助手:地岡公俊
製作進行:山下紀彦