Digimon Tamers 2021 Blog

デジモンテイマーズ放映20周年記念ブログ

第35話回顧 4

 

さていよいよタカトとギルモンのターンに。

シナリオでは相当無茶な事を書いている。誰も見た事がないような体験を、タカト、そして視聴者にどう伝えたらいいのか、禁じ手までも使っている。

 

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ベルゼブモンが復活して呆然と見ているケンタとヒロカズ。

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神なんて俺にはもう関係ねえが、契約は契約だ。

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なあ?

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お前たち人間も喰ってやる。

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俺はもう、悪魔になったんだ。

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ゆっくりとケンタらの方に近づこうと歩み出す。

人間をデジモンが喰えるのか。人間の子どもたちは、デジタイズ(データ化)してこの世界にいるのだ。不可能ではない。ただそのデータはデジモンとは完全に異なるのだが……。

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怯える二人。

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肩を悠然と揺らして歩き――

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ベレンヘーナを構える。

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泣き続けているシウチョン。

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くそう!

留姫、ハッとタカトを見探す。

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呆然と立ち尽くす樹莉。その先にメギドラモン。そのすぐ傍らで蹲っているタカト。

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タカト!? タカト何してんの!? と叫ぶ留姫だが――

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逃げて! 樹莉ぃ!

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タカト、ゆっくりと首を左右に振る。

こんなの――、こんなの間違ってるよ――。だって、いくら元がデータだからって――、ぼくが考えたデジモンだって――

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ギルモンは、ギルモンだもの! ぼくたち、ずっと友だちだった!

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ずっと一緒に話して、遊んで、戦ってきた――!

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ああ? と脇を見やる。

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倒れているメギドラモン。

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胸くそ悪い奴だ。まだそこにいやがったか。

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まずは貴様からだ!

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ギルモーーン!!

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低い呼吸の唸りが聞こえ始める。

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目を開くメギドラモン。

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消えちまえ!!

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銃口を向け――

 

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タカト!

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何してんの!?

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早く!

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このみんなのタカトへの呼びかけは、全部口々に別の台詞を叫ぶ声が重なっている。放送業界では「クロストーク」というのは御法度。同時に違う人が喋ると視聴者が聞こえないからだ。トーク番組などでは当然遵守されるが、ドラマでもこれは普通やらない。やってはいけないという不文律がある。

ここでは敢えてそれを描写した。子どもたちの焦りがこうさせている。こういう事があったら、そうするだろう事を描写している。

そして、ここから映像内時間が強烈に遅くなっていく。

子どもたちの声が、テープレコーダーの回転を強制的に止める様に低下していき――

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ベレンヘーナの銃口が火を噴いた。

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趙スローモーション。こうした表現は、2010年代のCGIを用いた実写では普遍的になった。

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更に遅くなっていく子どもたちの叫び声――

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しかしタカトの「時間」はノーマル。

ギルモン――、ぼくの友だち――

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タ――カ――ト――

ギルモンにタカトの声が届いた。

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ギルモーーーーン!!

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嗤うベルゼブモンの声も遅くなり――

 

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タカトは呆然と立っている。そこは――、タカトの部屋の中――

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回転するキャメラと逆に身体を反転させるタカト――

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長い時間見つめている――

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アグモンのフィギュア(多分、超進化シリーズ)。

タカトが「デジモンが好き」というのをどう映像表現したらいいのか。カードを持っているだけでは伝わらない。ここで言う「デジモン」には、当然「デジモンアドベンチャー」というアニメの存在が大きいのは、視聴者がそうだからだ。しかし、あまりにメタ過ぎるのも混乱を招く。角銅さんと話し合って、これが最も適切だろうと考えたのが、アグモンというデジモンの代表に、フィギュアとして登場させる事だった。

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タカトはアグモンのフィギュアを見て思わず笑む。好きで好きでしょうがなかった頃の自分。そして――

自分のデジモンを考えようと――

ゴーグルをしていないタカト。つまり「過去のタカト」なのだが、靴を履いている。だから「今のタカト」でもある。

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ギルモンの絵に――

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涙が落ちる。

ぼくだって、データなんだ。だって、デジタル・ワールドにいるんだよ、ぼく。

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だけど、ぼくがギルモンと過ごしてきた時間は、絶対にリアルだった。ぼくたちが感じた気持ちは本物だった――。

すると、急にギルモンの声が。

そうだよタカト。ぼくたちはずっと友だち。

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はっ!?

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回転する真っ赤な玉が(シナリオではクエーサー球)――

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部屋の中に入って――

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急速に拡大してタカトを飲み込む。

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ギルモーーーン!!

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どこにいるか判らないギルモンに最大級の声で呼ぶタカト。その周囲には――、無数の――

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ギ、ギルモンがいっぱい――

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3Dのギルモンが無数に回転している。魂のないギルモンの形をしたものたち。

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ちがーう! ぼくのギルモンたった一人! どんなにデータで増えたって、ギルモンは! ぼくと一緒にいたギルモンはたった一人しか――

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いないんだぁぁぁっ!!

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タカトから赤い道が急速に伸びていく。

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赤い道の先に、クエーサー球の上にぐったりとしているギルモンの姿。

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ギルモン!

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ギルモーン!

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タカトが走って行く度に、ギルモンのデュープ(複製)が分解していく。

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ギルモン! ギルモーン!

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目を開くギルモン。

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ギルモーーーーン!!

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タカト……。

 

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ギルモーーーーン!

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ギルモン……。

ギルモンが優しい声で答える。

ぼくはここにいるよ?

うん、うんと頷くタカト。

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いてくれてありがとう、ギルモン――。

ここで、ベレンヘーナの銃弾が迫っている事に気づく。

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留姫の涼やかな声が聞こえる(ノーマル)

タカトォオオオオ!!!

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ギルモンの目が一瞬、赤くなり――

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未だ持っているメギドラモンのパワー、尾を現出させてベレンヘーナの銃弾を払う!

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ああっ!? 愕然となるベルゼブモン。

ここから流れ始めるのは勿論「デジモンテイマーズのテーマ」――。

 

タカトがインナー・ワールドの中でギルモンと再び絆を取り戻す過程は、シナリオ以上に幻想的に演出された。

弾丸が発射されてからの時間の強烈な遅延描写は、海外のファンには伝わらないかもしれないが、70年代のスポ根(スポーツ根性)アニメの話法が発想の元にあった。スポーツをモチーフにする映像作品ならば、多少はスローモーションにして要素を入れ込むという事は普遍的だが、かつてのスポ根アニメはピッチャーが一球を投げる前から投げた時、そしてそれが打たれるまでの間に延々とモノローグやダイアローグが流れるといった極端な演出があった――という印象を抱いてた。「巨人の星」や「侍ジャイアンツ」といった辺りだとは思うのだが、私はスポ根物は子どもの頃は好きでは無かったので、どれが元型であったかは思い出せない。ただ、話法として面白いと思っていただけである。

ここで起こった現象をデジタル・ワールド内の現象として理解するなら、こういう事になる。時間とは総体的なものだ。タカトとギルモンが再び交感し始めてから(タカトの呼び掛けにメギドラモンのコアにあるギルモンの心が反応してから)の二人の情報のやりとりは、スーパーコンピュータ並みの超高速演算で情報が処理されていた。戦いで荒れ果てているが、そこはネットワーク最深部。メギドラモンにまで進化したギルモンと、デジモンに極めて高い感応性を持ったタカトだから成し得たものだったのだ。

 

「タカト、ぼくはここにいるよ」

この野沢さんのダイアローグに、いつも私は泣かされる。

 

 タカトが、「ギルモンはデータ」と戸惑っていたのは、データであるなら幾らでもコピーが作れる、唯一無二の存在ではない、と思ってしまったからだった。そうではない。タカトの許に現れたギルモンは唯一の存在なのだ。それを表現する為に、「無数のギルモンのデュープ」が現れるが、タカトがそれらを全て拒否する、という無茶苦茶なシナリオを、角銅さんは3Dで自らギルモンをモデリングして実際に描いてくれた。

前に角銅さんから、頭部だけのデータがまだありましたと、送って戴いたもの。

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