Digimon Tamers 2021 Blog

デジモンテイマーズ放映20周年記念ブログ

第32話回顧 1

 

タカトとジェン、そしてテリアモンだけの今話。ここで提示される情報は膨大で、大勢の子どもやデジモンのリアクションを描写する余裕がない。従って限定的な登場人物となっている。

第一部から名前と、そしてぼんやりとした姿で描写されてきたSHIBUMIの正体、とまでは言えないのだが、今のデジタル・ワールドの状況と、《神》の在り様、そして《アーク》の本質にまで一挙に言及する。しかし最もタカトにとって重い情報は「ギルモンの出自の秘密」である。

ワイルド・バンチの唯一の日本人にして消息が判らなかったSHIBUMIという愛称は、『アイガー・サンクション』の原作者でもある覆面作家トレヴェニアンの小説『シブミ』から、まさきさんが名づけた存在。今話から、水野悟郎という本名でキャラクターとして登場する。ちなみに小説の『シブミ』は人名ではなく、日本的な流派というか、まあ《フォース》みたいなものだった。

SHIBUMIをどう描くかについてなど、テイマーズの縦軸本線のワイルド・バンチ絡みはまさきさんが主に担当してきた。ブルーカードをカード・トレーディングの現場に紛れ込ませたりと、かなり怪しげな人物という印象を与えていた。
その本体自体はデジタル・ワールドにいる、とは当初から想定していた。
しかし、デジタル・ワールドに憧れて向かった人間像が、前作「デジモンアドベンチャー02」の及川悠紀夫に似てしまうのではないか、という懸念が私の中で起こり、更に17話で生身の姿が描写されてしまったので、さてどうしようかと、今話までにまさきさんと相談をしていた。

テイマーズのデジタル・ワールドで、タカトたちに(視聴者に)ある程度の「説明」を言語化してくれる導師的な存在というのは、ファンタシー的な世界を描写する上では不可欠。しかし、あんまり抹香臭いのもつまらない。
どういう人物がSHIBUMIに相応しいのか話し合う内に、もしこれが実写作品だとしたら、どういう俳優が想定出来るだろう、という思考方法になった。日本映画(特にホラー)に詳しいまさきさんと、互いに納得したのが、諏訪太朗さんだった。

諏訪さんは、デビュウ間もない頃に石井聰亙監督の「狂い咲きサンダーロード」に出演された後、自主映画出身監督の低予算映画に、積極的に出演してくれた俳優だ(故・大杉漣さんもそういう方だった)
私は黒沢清監督作品で親しんでいた。私が脚本を書いた「Door III」(1996) にも出演されている。

ここで暴走してしまうのだが、私はテイマーズのキャスティング担当をされていた東映東京撮影所の小浜匠さんに、SHIBUMI役で諏訪さんに出演願えないかと頼み込んだ(関プロデューサーには仁義は切った筈)。果たして諏訪さんには承諾して貰えて、私は「DoorIII」のビデオを中鶴勝祥さんに送り、諏訪さんをモデルにキャラクターを創って戴いた。

冷静に考えてみれば、普通な声優の方で、こういうテイストの芝居をして貰うというのは全然不可能な事ではないのだが、SHIBUMIのある種の特異性、異質感というものがテイマーズには必要だと、この頃の私は確信していた。

当然ながら諏訪さんはアニメのアフレコなど初体験で、戸惑われていたと思うのだが、テイマーズの録音現場は野沢雅子さんが座長的な存在なので、極めて暖かい感じだった。諏訪さんも次第に慣れていかれたと思う。

今のアニメファンだと、聴き取り難いだとか棒だとか言われそうだが、冗談ではない。これがテイマーズなのだ。リアル・ワールドとデジタル・ワールド、現実と虚構、実写とアニメ、そのクロスオーバーをやっているのだから。

という事でSHIBUMIの再定義もまさきさんが担当。SHIBUMIの喋り口調もまさきさんが創り出す。演出は川田さん。今回は特異な場面ばかりなのだが、楽しんで演出して貰えた筈だ。作監は清山さん。今回のみの場面も多い美術は清水さんが担当された。

 

ギルモン誕生の謎! 神秘なる水の宇宙(ウォータースペース)

脚本:まさきひろ 演出:川田武範 作画監督:清山滋崇 美術:清水哲弘

 

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前話で水中(の様な世界)に飛び込んだタカトとジェン、そして――

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耳で泳いでいるテリアモン。

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やっと水面が見えた――

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タカトの吐く泡が――

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太陽へとO.L.

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ビルの谷間に立つ男――。手前にはデジモンカードが落ちている。

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カードを踏みつける男の足。

水野さん、ですね? いや――

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SHIBUMIとお呼びした方がいいですか?

黒い服の男たちが遂に探し当てた。

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と、その場から逃げ出すSHIBUMI。

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慌てて追うMIB。

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逃げていくSHIBUMIせ

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金網フェンスにぶつかる。チラと見える目が、非人間的。

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御同行願えますね、と詰め寄るが――

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ドラム缶を駆け上り――

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跳躍。

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逃げていくSHIBUMI――

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その姿がデジタル・フィールドの様に霧散していく。

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何か人間ではない様な影が――。人間に擬体したのはデジモンなのか――?

余談であるが、UFO界隈に於ける「黒服の男たち」ことMIBは、三人組であるというのが一番ポピュラー。しかし私が書く場合は一人だったり、二人組の方が多い。

 

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サブタイトル・バックにはSHIBUMI。

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水から上がったものの、そこは閉ざされた洞窟の中だった。がっくりしているタカト。

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ジェンが元気づけている。ギルモンなら大丈夫さ。留姫たちもついているし。

タカトは力なく、うんと頷く。

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ジェンは水面を見つめている。

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テリアモンが潜水から戻って来た。

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どうだった?

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耳を振り回して水を切る。

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まるで迷路。

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どっか、ここみたいに空気のある場所はあった?

ううん。

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そうかぁ。

ジェン、どうする?

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こらタカト。

は、はい、と立ち上がるタカト。

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ぼくたちがここから出られない事には、ギルモンとも会えないよ。

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そ、そうだね、ごめん。えーと……。

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そうだ、壁に穴を空けるっていうのは?

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やってみよう! カード・スラッシュ!

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「鋼のドリル」――大江戸線でギルモンが使ったカード。テリアモンは自分の角をドリルにして、ががががーと言いながら壁に向かっていく。

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ドリルで穴を穿っていく――。

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見守る二人。その姿が――

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オーバーラップして――

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リアル・ワールド。

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どこかのホテルの屋上階ラウンジ。

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説明はいいから、そのデジタル・ワールドの場所を教えてくれ! と強い語調で詰め寄っているのはヒロカズの父親。私たちが連れ戻しますから!とヒロカズの母。

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デイジーが窘める。簡単に行けるところじゃありません。

デジタル・ワールドに(勝手に)旅に行ってしまった子どもたちの親が集まって、ジャンユーとワイルド・バンチのメンバーから状況説明がされたところ。

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泣き出すケンタの母。

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タカトの母が「北川さん」と慰める。

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ウチは置き手紙を書いてくれたんです。ちゃんと話してくれれば、お別れも言えたのに――。

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落ち着いて紅茶を飲んでいた聖子、聞きとがめる。お別れって、無事に戻ってきますよ。

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根拠はあるのか!?と詰め寄るヒロカズの父。 

あのねぇ、あんたねぇと野太い声。

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ちょっと静かにしてくれないか。 せっかく樹莉たちの事で李さんたちが説明してくださってるのに。と樹莉の父親。

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説明を休んでいたジャンユー、再び両親達の席へ。

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塩田さんのお気持ちは判ります。

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私も親の一人ですから。

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どこまでお話しましたっけ。

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どうして子どもたちでなければいけなかったのか、ってところです。とタカトの父。

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それは私からお話しましょう、とドルフィン(マッコイ教授)。

80年代の初め、デジモンを作ったのは私たち大人でしたが――

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その形や能力のアイディアを出したのは、私の息子だったんです。

という前日譚が「デジモンテイマーズ1984」という短編小説になった。

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だから、デジモンは子どもと親和性が強いのだと思われる。

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つまり、デジモンは子どもが好きなんです。

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私だ! と立ち上がるルミ子。

その時代の子どもって、私だ……。

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聖子がたしなめる。でも、今のあんたはデジモンなんて信じなかったでしょ。

まぁねえ……。

 

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テリアモンが穿った穴から水が迸り出ている。

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カード・スラッシュ!

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ユキダルモン「絶対零度パンチ」!

たたたたたー、と言いながらテリアモン――

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絶対零度パンチ! で、たちまち水が凍る。

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あー、びっくりしたー……。

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うん、しかし、壁の向こうも水だったなんて……。一体どうしたらいいんだ。ジェンも心細くなっている。

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何かいいカードは……、あ、

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ねえ、これは?

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無理だよ。

どうして? あの時みたいにまた動くかもしれない。

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水に濡れたんだよ。壊れてるさ、とジェン。

うん、でも……、タカト、操作すると――、信号が走る。

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動いた!

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うそ! メールが来てる!

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無事で何よりだ。健闘を祈る。・・・山木

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これは嬉しい!

 

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バベルの声が流れる。

我々の方でも、昔の研究仲間と連絡をとって――

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――山木が上ってきた。

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新しいフォーラムを立ち上げる計画です。そちらの方で進展があれば――

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タオ、じゃない、ジャンユーから皆さんに――

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山木、深々と礼。

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山木、どういうつもりだ(こんな所に来て)。

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皆さんにお見せしたいものがあります。と、PowerBookを提示。

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都庁の上に起きたあれは、シャッガイだな?

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あれだけの事を起こして、まだ懲りないのか君は!

あれは事故です、といなす山木。

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剛弘の前にPowerBookを開いて見せる。

タカト!?

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ぼくたちは元気です……、

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元気です?

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あのバカ。

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どうして君に?とジャンユーに問われ、出発前に通信機器を渡しておいたと答える山木。

他にメールは?と他の家族から問われる。

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山木、タカトが持っている端末との接続を試みる。

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すると、物騒な文言が。

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SOSだって!?

 

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うえええまずい! 

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みんないるよ! ウチもジェンちも、

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留姫んちも、ヒロカズ、ケンタ……、ああああ加藤さんちまで……。

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まずいよ、みんな心配してる。

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ええと、そんなに早く書けないよ……。

SOSだけど、危険なわけでは、ありません……。

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 みんな全然大丈夫です……。

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じっと見つめ――

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水辺に立つ。

どうしたの?ジェン。

どうして水に濡れた通信機が動いたんだろう――。

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ええええ? みんなに替われって? 無理だよぅ。でもしょうがないから……、

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心配しないでね、留姫。みんな大丈夫よ、樹莉。ええと、ヒロカズ、ケンタは……。

 

 

 

タカトがスタイラス・ペンで入力しているのは、前にも記した様に当時流行ったデヴァイス、Palm/Pilot。液晶の下側が入力エリアで、左のスペースがアルファベット、右のやや小さいスペースが数字を入力するエリア。

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 グラフィティという簡易な一筆書き文字の入力は意外に簡単に覚えられた。後のiOSAndroidフリック入力が全く出来ない私でも、グラフィティは簡単だった。尚、私はあまりスマホで文字は入力したくないが、どうしてもする場合はQWERTYキーでチマチマと打つ。

IBMがWorkPadという互換機を出すまでは、日本人ユーザは山田達司さんという方が作られた日本語化キット J-OSのお陰で日本語入力が出来た。このキットには日本語フォントも含まれており、かなりの長文でなければ文字入力は簡単だった。しかもフリーウエアだったと思う。

タカトがこれを習得する描写はしていないが、グラフィティのインストラクションは簡単に表示が出来たから、不可能ではなかったのだ。

 

問題は山木で、当時のPowerBookで無線通信は無理だった。Wi-Fiなるものがない。本体にSIMを差せるノートPCは近年まで一般的ではなかった。今は私もThinkPad CarbonにSIMを入れているが。うーん、山木……。