第26話回顧 2
今話のサブタイトルに「小世界」と入っているのは、テイマーズのデジタル・ワールドの基本形である物理レイヤーの荒野だけで終始するのではなく、この更に下には色々な小世界を設定出来ると説明していた。小とは小さいという意味ではなく、サブセットというニュアンスで使っていたのだが、今話では字義通りに狭い世界観で終始する。
デジタル・ワールド編では、クルモンの秘密、デーヴァと神、そしてインプモンの進化などイヴェントが多いが、連続性が強かった第一部から少し換気性を入れたい、という意向もあった。つまりヴァラエティ性の導入であり、浦沢さんに本領を発揮して戴く機会ともなった。
留姫とレナモン、ヒロカズとケンタを早期に分離させたのも、その方が話が作り易いだろうという判断で、ここまでは構成会議で決まっていた。
ケンタとヒロカズがこういうキャラクターに育ったのも、キャンプ旅行の回があったからで、浦沢さんに育てられたと言える。
また大分性格的に柔らかくなっていた留姫に、再び活き活きと毒のある台詞を言わせてくれたのも良かった。
さて、ヒロカズとケンタはまるで日本旅館の様な部屋で寝ている。
ケンタ、起きてる? うん。
ヒロカズもそう思う?
ちょっと歳いってるけどな……。ん、
ケンタ、もう寝たのか? 俺たちがテイマーになった時のパートナーにって思ったんだけ――
ぐすー。
他の家にも住人がいるらしい。
夢の中で――
業火を吐くババモン――
ヒロカズとケンタ、同時に目を覚ます。
何かがしゃんという音が聞こえる。
起き上がる二人。もしかしてジジモンとババモンが……、
ぐへへへへ
八つ墓村モードで――
俺たちを襲おうとしている……?
扉の向こうが気になって――
そっと階段を上がり――
ドアを開いて窺う。
暖炉にくべられるダスト・パケット。
ババモンが、もっと静かに火をくべんかいとジジモンに文句を言う。
旅のお方を起こしてしまっては。しかし――
風の日に喧嘩をしないでいられるとは有り難い事だと二人。いや二体。
旅のお方に感謝せねばな。
火に拝む。ありがたやありがたや。
俺たちに手を合わせて拝んだ。
俺たちが疑った事も知らないで。
ジジモンもババモンも俺たちより歳上だけど、俺たちより純粋な心を持っている……。
手を合わせて感謝しなくちゃいけないのは俺たちなのに。
拝もう。拝もう。
まだ拝んでる。
朝になっても強かった風が――
止んできた。
色々とありがとうございました。
もう行ってしまうのか。ゆっくりしていけばいいのにのう。
仲間が待ってますから。
残念じゃのう。
失礼します、と出口に向かう留姫だが、二人が来ないのに気づく。
どうしたの?
あのさ、俺たちジジモンとババモンに話があるから。
あとから追うからさ。
レナモン行こう。
いいのか?
いいのよ。
あの二人、ジジモンとババモンに話があると言っていたが――
それよりクルモンを早く探さなくっちゃ――
俺たちのパートナーになってくれ! と土下座する二人。
俺たち、立派なテイマーになります!
テイマー?
♪デジモンていま~ず~いぇい。
奇岩の上から大声でクルモンを呼ぶ留姫とレナモン。
この世界にはいないようだ。
あ、あの崖を登っていけば、タカトやジェンたちと会えるの?
会える、とレナモン。
しかし、崖は高い。
登るのは無理みたい……。
二人の高さまで吹き上げられてくる、屋根の布地。
風――。登るのは無理でも――、
風があれば……。
風と、あの布を利用して――
カード・スラッシュ!
カード・スラッシュ!
するとわしらは進化して強くなるのか。
面白そうじゃのう。
でしょう!?
いきなり「SLASH!!」かかり、
ジジモンがカード・スラッシュ!
俺がデジモンだったら――
ブラックウォーカズモン。
ヒロカズが夢想したデジモンが見当つかず、デジモン図鑑を全部スクロールしたけど該当するものが見当たらず。Google画像検索してみると、Fandom のDigimon WikiにBlackWarKazmonの項目があった。やはりオリジナルらしい。全くグレイモン系には見えないので不思議だった。
カード・スラッシュ!
ぼくがデジモンだったら……、
メガロケンタモン!
これで画像検索しても、「聖闘士星矢」かガンダムとかの画像しか出て来ない。で、Digimon WikiにはしっかりとMegaMightyKentamonの項目があった。うーむ誰がデザインされたのだろう……?
英語版の26話は「Kazu and Kenta's Excellent Adventure」というサブタイトルになっていて、これは "Bill and Ted's Excellent Adventure" (1989)のもじりらしい。元のサブタイも「風の谷のナウシカ」のもじりなので、これは妥当な変更と言えよう。
私は二作目の「ビルとテッドの地獄旅行」Bill and Ted's Bogus Journey (1991)を偏愛していた。「学校の怪談/妖怪テケテケ」はこの映画を相当意識していた。脚本のクリス・マシスン(勿論、リチャード・マシスンの子息)とエド・ソロモンは、当時の若手ライターの中でも抜きん出ていた。スティーヴン・E・デ・スーザとか、活きが良いライターが多くて、日本でも負けてられないという意識を持っていた。
30年振りの新作「ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!」が2020年に公開されたが、未見。うーん見るのが怖い気が……。キアヌは今でもアホを演じられるのか?
戦え!と命じるジジモンババモン。
戦闘《ごっこ》を始める二人。最初は安全な感じだが――
すぐに白熱化。
こりゃ愉快じゃ!
ぬおおおおお――、って
どうして俺たちが戦わなくちゃいけないんだ?
もっと戦え!と煽り、自分たちの武器を――
持たされる二人……。
ジジモンとババモンが喜んでるから、
ま、いーか!
本気化するバトル。
熊の手?で陶器を叩き壊してしまうが――
ジジババは喜んでいる。
伯仲している的な殺陣に、おひねりが降る。
うーん、視聴者の子どもは大衆演劇の慣習は判らないだろうなぁ……。
どうやらジジモン・ババモンの家の布を拝借するらしい。
と、家の方からヒロカズらの大声が。
!?
ケンタ、高速ほうきで土煙攻撃。
げほげほ
笑いながら登っていく。
カード・スラッシュ! ババモンのミルク!
カード・スラッシュ! ジジモンの臭い息。
留姫の声「あんたたち何してん」
のよ!?
今日からわしたちはテイマーと呼んで貰おう。
どういう事よ?
説明する二人。
帰れ! とっとと新宿へ帰りなさい!
タカトたちんところに帰るわよ。
行こうとする二人だが――
わしたちの楽しみを奪うのは許さーーんと飛びかかってくるジジババ。
しっかと二人の攻撃を受けとめるレナモン。
押し込んで――跳躍
階段下へと降り立つ。そこに襲いかかってくるジジババを当然――
跳躍してかわし――
シンクロナイズド・ローリング
高い崖の上で凧を完成させる。
と、下からジジババの声。
待ってくれーヒロカズー! ケンター!
出発!とレナモンが宣言するが――、凧は落下。
うあああああああああ
しかし地面近くで上昇気流を掴んで上昇に入る。
ジジババ、凧の「足」につかまる。
行かないでくれえええあああああ と千切れて――
落下し――
シンクロナイズド・ローリング。
ジジモーン ババモーン、さようならーーーーっ!
さらばじゃー、と坂を転がって――
反転扉の内部へ。
俺たち、いつになったらテイマーになれるんだろう……。とヒロカズ。
――というと留姫も含めて頷く。
凧はついに崖を越えた――。
退屈じゃのう、とまた喧嘩をしようとしかけ、あれがあった!
「男飛沫」を歌い出す。
スポットライトの中へ――
無伴奏で歌うも――
のど自慢大会の鐘は一つしか鳴らない(アメリカで言えばゴングショーだと通じるのか)。へたくそー! 音痴!
と喧嘩が再開。
エンディングには「男飛沫」のオケが流れる。
哀愁のサウンドが終わって、もうフェードアウトするのかと思いきや
くるくるくるくると言いながらクルモンが縦軸回転しながら画面を通過していくという。
凧での脱出は「飛べ!フェニックス」(1965)的な昂揚感があって好きだった。私はリメイク版の「フライト・オブ・フェニックス」も嫌いではない。
ジジモンの木村雅史さんは、22,23話でヴィカラーラモンを演じられた方。台詞はなく唸りだけで、しかも加工(低音化)されていたが、メガログラウモンとの戦いなど、効果音では得られない演技をして戴いていた。今話ではババモンとイーヴンなメイン・フィーチュア。小浜匠氏のキャスティングの妙に、勝手ながらに安堵した。
#26 Credits
レナモン:今井由香
牧野留姫:折笠富美子
塩田博和:玉木有紀子
北川健太:青山桐子
クルモン:金田朋子
ナレーション:野沢雅子
原画:朝倉温子 大谷房代 大河内忍 池田志乃 西田浩二
動画:佐々木三由紀 水永比呂子
背景:徳重賢
デジタル彩色:村本織子 星川麻美 松山久美子 井田昌代
デジタル合成:三晃プロダクション
広川二三男 則友邦仁 松平高吉 石川晴彦 花見早苗
演助進行:徳本善信