第23話回顧 1
デジモンテイマーズというシリーズのメルクマールにすべく腐心したエピソード。個人的にも印象的な話数だったが、別の意味でも重いエピソードとなった。
サブタイトルの由来は、私が好きな怪獣映画「怪獣総進撃」を援用したのが前半。後半は、プロット段階でこのエピソードの終幕に、和田光司さんの「KAZE」を使って欲しいという希望があった。これは有り難い申し出だった。音楽の昂揚感がドラマを盛り上げてくれる。しかし今話は私が要素を詰め込み過ぎた為、予定していたSHIBUMI追跡のフォローアップが入れられなくなってしまった。
演出の吉沢さんはすまなそうに、エピローグを削って音楽だけにしたいと申し出られて、勿論私がどうこう言える立場でもないので、後の展開でフォローしますから存分にお願いしますと答えた。
「KAZE」は特別な曲だ。主題歌「The Biggest Dreamer」のC/W曲なのだが、和田光司さん自身が作詞された(作曲:大久保薫 編曲:渡辺チェル)。
「風」というフレーズをサブタイトルに入れておいて良かったと思う。そして同時に、この回の事を考える度に、和田さんの歌声が頭の中で再生される。
作画監督は浅沼昭弘さん。美術はテイマーズ初参加となる須和田真さん。
デジモン総出撃! 風に向かって進め
脚本:小中千昭 演出:吉沢孝男 作画監督:浅沼昭弘 美術:須和田真
前話リプライズから明けると、都庁からシャッガイが発動されている場面。
地下階層のプールも光を放ち始める。
莫大なパワーのイオン化電荷が放出される。
デジタル生命体排除プログラムが、リアル・ワールドとデジタル・ワールドに障壁(ICE ウォール)を虚空に浮かび上がらせる。
尚も進むヴィカラーラモン。
障害物を全て薙ぎ倒す。
空撮画面。
空自の攻撃ヘリが増えている。
三完全体、ヴィカラーラモン前へと降着。前話と重なるが新作カット。
メガログラウモン――
両腕を拡げ、ここが最終防衛ラインだと示す。
タオモン――
上空ではラピッドモンが待機。
パンショットを繋いでみると、シネスコまではいかないがワイドな画面になる。
日清食品ビルの脇から出てくる三人のテイマー。当時はパワーステーションというライヴ・スペースがあった。
テレビ・アナウンサーがヘリから中継。巨大生物は明治通りを南へ侵攻中です。現在新宿区域には避難勧告がだされており――
生々しい話になってしまうが、つい先月、2021年4月に、これまで災害対策基本法に基づいて市町村区判断で出されていたものが、国会で改正されて「避難指示」という呼称へと変わった。
頭上に多くのヘリが飛んでいる。
2001年9月初頭の日本では、これはまだフィクショナルな場面であった。
避難用品をかくも手際よく用意されているのは驚く。
ほんの少し前までは日本ではまだ用いられていたファクシミリ。アナログ/ISDNの有線電話も2024年にはなくなりIP電話化される。
電話も通じない。タカトはどこよ!? と苛立っているタカトの母。
荷物、少しはまとまった?
ああ、お前先に避難してろ。タカトが戻ったら必ず連れてくから、と父親。
何言ってんのよ、と憤る。
警邏の警察官が早く避難して欲しいと急く。
子どもを待ってます。帰ってきたらすぐ避難します。
危ないですから気をつけて、と足早に次の家へ。
腹くくったわよ、と母。待ってたって同じかと、父。
探しに行こう。
ラピッドモーン!
ラピッド・ファイアー!
かなりの攻撃力。
するとタール状のゲルを吐かれる。
ラピッドモン、それに襲われる。
あれれ、動けないよぅ。
タオモンが救うべく――
梵筆閃――
梵字が粘性の闇を破る。
タオモンありがとー。
このデーヴァ、我々だけの力では……。
確かに体格差が違い過ぎるのだ。
それでも止める、とメガログラウモンが唸る。
再び粘性の闇を吐くヴィカラーラモン。
メガログラウモン!
闇が襲うが――
ダブル・エッジで――
斬り裂く。
雄叫びを上げて――
バーニア噴射
ヴィカラーラモンに向かっていく!
目を赤く光らせる。
両腕のダブルエッジをプラズマ化。
突っ込もうとすると――、マグマの塊が吐き出される。
凄まじい重圧に――
メガログラウモンはもんどりを打って――
地面に押し潰されてしまう。
駆け寄ってくるタカト――
メガログラウモン! 立って! 立ってよ!
必死に抗おうとするも、身動きが出来ない。
ド迫力で進み始めるヴィカラーラモン。
勢いづいて粘性の闇(墨絵の様なテクスチュア)を吐く。
今度はタオモンも浴びてしまう。
呆然となるテイマー。
何とか上半身を出すも、動けないタオモン。
ヴィカラーラモンの通った上空はデジタル・ワールドとの境界が斬り裂かれている。
海外ファンに向けて補足すると、平安時代の陰陽師・安倍晴明が幼少時に遭遇したという妖怪の行列。
ターゲット上空に異常気象!
接近出来ない!
何で――
何でこんな事になっちゃうんだ!?
地下タンクが激しく反応。
ヒュプノスのフロアに設置されたシャッガイのサーバが全力で出力している。
シャッガイのネットワーク制圧レイヤー、4まで進行中――と報告する恵。
こんな事をしていいの?と呟く麗花。
山木はジャンユーに、人が命を作ろうなんておこがましいとは思わなかったんですか?と皮肉を言う。
いや、ワイルド・バンチが望んだのは決してこういうものではなかったのだが――。
地上からのモニタ映像を映す。
愕然――
これがあんたたちがした事なんだ!
マグマ塊は動かない。
必死にもがいてはいるのだが――
メガロ、グラウモン……。
止まらないヴィカラーラモン。
どのカード使えばいいの!?
カードは、ぼくたち信じる力――。
ぼくたちが信じられなければ、カードはただのカード……。そうさ、進化のカードだってぼくたちが信じられたから――
このデジヴァイスが力を、伝えてくれる!
そう、そうだよね!
サイド・バイ・サイドのカード・スラッシュ。「SLASH!!」ヴォーカル入り。
運命の煌めき!!
ヒュプノスでも二つの輝点が観察される。
山木は知っている。誰がそこにいるのかを。
子どもの遊びは終わりだ。
ジェンリャ!
ヴィカラーラモン侵攻図。明治通りが分岐するところは新宿追分と呼ばれている。
これは放映後に作った合成画像。実写ならこうなるというイメエジ。多分Photoshopで描いたと思う。
完全体の玩具が出た時に作った合成画像。
劇中にも背後の歩道橋は描かれるのだが、現在は撤去されている。