第11話回顧 2
最低限話が判る程度にとキャプチャをしているのだが、これをやって初めて認識出来る事は多い。特に演出の方々個別の特徴。川田さんの演出はロング・ショットが多い。バストの切り返しだけではなく、全身の演技が必要になる。
そしてパン・ショットが多い事は前にも触れた。
ギルモンとテイマーである自分のステップ・アップをする為に、また新たなデジモンの出現を待っているというタカト。
君は変わったね、と寂しそうにジェンリャ。
ヒロカズはリベンジ・ファイトへ強引に誘う。
へーいどうせ子どもですよー。マジ男子。樹莉に笑われて顔を赤らめるタカト。
ついてくるな、と言うジェンリャに、テリアモンはここでも、あーんな事やこーんな事という抗弁。結局シウチョンを庇っている。
あっさりヒロカズに負けるタカト。負け惜しみに、本物のデジモンバトルなら勝っていると言ってしまう。
本物のデジモンなんている訳ない、と笑うケンタ。
言い合う内に、じゃあ見せてあげるからついてきて、と言ってしまうタカト。
で、ギルモン・ホームに――
いる訳がない、とは思いつつ、中の様子がどうも変。
覗き込んでも真っ暗なので、何もいないじゃん、と言っていたが、土が崩れる音。
ギラリ。ギルモンの眼球にはタペタムがあるらしい。
凄まじい、くしゃみ。
怪物の咆哮に聞こえて逃げ出す二人。
タカトよんだ? と出てくるギルモン――、すぐに臭いを嗅ぐ。
デジモンだ!
再びワイルドワンがリアライズを図っている。山木はユゴスを放つが――
巨大な黒い刃がユゴスを粉砕。あっ、作画のユゴス!
デジモンのシルエットが仮想スクリーンに浮かぶ。
ユゴスが破壊されたと聞き、ジッポー・ライターを落とす山木。そして不気味な声が。
人間共に復讐してやる――。
ふざけやがって!
つまり――、A-Partでユゴスによって消滅させられたのは、ムシャモン当人ではない様だ。同族かもしれない。
大ガードに濃霧発生。
ボンネットにいきなり乗られる。
切り捨て御免! それが必殺技にしてムシャモンの刀、車を真っ二つに。
ちなみにこういう車の破砕を描写したのが「大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス」(1967)だった。あれはモーターショー展示用に切られた車体があったから表現出来たのだが、それを見つけたのが脚本担当の高橋二三だった。
表現したいものがあるけれど、普通の予算では作れないものを自分で見つけてくるという精神を、私は継いでいたのかもしれない。
乗っていた運転手が逃げ出してバイクのライダーに飛びつく向こう側を走る、タカトとギルモンという凄いショット。
デジタル・フィールド突入。
殺気立っている。
ムシャモン。海外のサムライゲームのデータが糧となって生まれたデジモンらしい。今なら「ゴースト・オブ・ツシマ」か。
タカトは無謀だ。
辛うじて刃から逃れるも――
カード・スラッシュ!
これはアイスデビモン戦と同じ手だ。
真正面から突進するギルモン。
すれ違い様にジャンプし、脚爪で攻撃! これをロングでワンショット。
攻撃プラグインA。ファイア・ボールだ!
若干威力を増したファイア・ボールだが、手前に落ちる。
人間に組みする愚か者が! 蹴り飛ばされるギルモン。
リアライズしたポイントが大ガード西交差点だと判明。向かう山木。
テリアモンは逸っている。しかしジェンリャは――
と、風船を放してしまった幼い少女が横断歩道に出てしまう。
少女はデジタル・フィールドに。
慌てて止めようと走るジェンリャ。
長いロングのパン・ショット。霧のエフェクトが動いていて段差があるが、構図を見る為に繋いでみた。
タカトはまた冷静さを失い、高速プラグイン、更に白い羽をスラッシュ。
ギルモン、戸惑う。ちょっと待ってよ! ギルモンはふわふわと浮かんでいく。
コンボだよ! しかし全く状況に合わない選択だった。
ジェンリャは煩悶している。僕たちがやるしかないのかと。
ぼくとテリアモンしか出来ない事を――
それが幼い少女でもムシャモンは――
切り捨て御免を容赦なく振り上げ――
テリアモン! まかして!
カード・スラッシュ!(スラッシュの方にイントネーション)
「SLASH!!」ヴォーカル入りが初めて流れる。
猛烈に走るテリアモン――
直撃!
これはダメージが大きかろう。
その後、ふわりと着地。全身を描写。
テリアモン!
ジェン!
この時期の《進化》は、心のシンクロがトリガーとなっている。しかし――
自覚なきクルモン――
テリアモン進化!
進化バンクは、いずれもデジタマを思わせるインターメディエイトの3Dが入る。
肉感溢れる――
テリアモンの進化を、ジェンリャは期待していなかった。何故発現したのか――
今回からガルゴモンは、「あははははは」ではなく「だーだだだだだだだ」と銃撃音をオノマトペとして発する様になる。これはアドリブではなくシナリオから。
ガルゴモンのガトリング・アームは刃に遮られるが――、
その間にガルゴモンは距離を詰めていた。こうなるともう一つの必殺技が――
ダムダムアッパー! これは勝った!
ムシャモン、データに粉砕。
ロードするガルゴモン。
空中でギルモンは風船を掴んでいた。
幼い子に返してあげる。と、デジタル・フィールドが晴れていく。
既に信号が見える様になって、クラクションを鳴らされる。
慌てて歩道に走る子どもとデジモン(しかも一体は大きい)。
ほい、と幼い子をママの近くに降ろす。
デジモンが助けてくれたの。
離れたところで凝視している――
ジェンはこれで良かったの? と訊くガルゴモン。今は暫定的にではあるが、戦う事に意味があるのだと納得する。
タカトは率直に今回の不始末を反省。ギルモンは、モータンマイと慰める。
ガルゴモンが訂正。
その後タカトが、パンツ痛い、というギャグを言うのだけれど、20年経っても私には判らないという……。
だが、無邪気なデジモンとテイマーを――
観察していた山木――、ライターを鳴らしてハーモニー(じゃなくてフィルタかな)+ストップ・モーションでエンド。
オチ的なジョークはさておくと、このエピソードは脚本も演出も、子ども達が極めてリアルに活写された回だったと思う。惜しみなく描かれるアニメーションは改めて感銘を受ける。
各話で解決がつかないイシューを持ち越し、少しずつ展開させるという連続ドラマの作りを、私は「L.A. LAW」という90年代のドラマから学んだ。これはそれまでにない連続物の話法で、作家陣の連携がとれなくては成立しない。
実写、ウルトラマンだともっと各話完結性が高く、連続性も絞らざるを得なかったが、アニメーションはその点では作劇し易いと思う。
と言っても、現代でこの話法が受けるかどうかは私には判らない。
#11 Credits
泰三:魚谷香織
通行人の男:小嶋一成
車の男:小栗雄介
ムシャモン:松山鷹志
原画:朝倉温子 大谷房代 大河内忍 池田志乃 西田浩二
動画:高田洋子 川口千里
背景:伊藤信治 鈴木慶太 佐々木友子 花松裕吾
デジタル彩色:審良幸司 徳永ゆき子 山内正子 佐藤道代
デジタル合成:三晃プロダクション 広川二三男 則友邦仁 峰岸智子 大西弘悟
演助進行:徳本善信
角銅博之さんから、5,11話の伊藤智子さん作監回は外注だったのでこういうクレジットだったと教えて戴いた。