第6話回顧 1
女の子のパートナー・デジモンは商品的に売り難く、強いイメージのデジモン(つまりレナモン)を立てたい、という要望から考えたのが留姫という子だった。
序盤はタカトの視点から見ると、最初に見た時(明晰夢)以降は対立する描写が続く。どうしてそこまでデジモンに強さを求めるのか、という事を私はシリーズ構成開始時に明確には決めていなかった。私がキャラクターの履歴書(物語が始まる以前の人生)を最初に決め打ちたくないのは、意外な出来事が今の人物像を作り上げているのに違いなく、安易に《設定だから》と動かしたくないからだった。
テイマーズのライター陣は少数なので、皆まんべんなくキャラクターを描いているが、段々とやはりこのキャラは誰担当的に収まっていく。
留姫とレナモンの出会いを描いて欲しいというオーダーに、吉村元希さんが考えたのは私にも意外な描写だった。
パートナーの意味 レナモン進化!
脚本:吉村元希 演出:梅澤淳稔 作画監督:出口としお 美術:清水哲弘
留姫が通うのは神楽坂女学院。絵柄的には立教のキャンパスに近いかもしれない。
画面は静粛だが、女子生徒達の噂声が聞こえてくる。留姫の母親が珍しく授業参観に来ているという。
モデルとして顔が知られている牧野ルミ子(どうしても名前を思い出せなくて検索しまくってしまった)。
筆箱のミラーで見られている事を察知しているルミ子。
しかし小さく携帯のメロディが鳴って、慌てて廊下へ出て行く。留姫にとって意外ではない。
ちょっと迂闊な性格らしい。仕事のアポイントが入っていたのを忘れていた。
留姫の家も神楽坂なので、かなり近い下校道。決して母親との関係が険悪という訳ではないのだが――、
ここより短い回想。
デジモン・カードの手を考えている留姫――。
アンティラモンが……。
ルミ子も決して無神経な母親ではないのだが、友達関係的な興味の押しつけが留姫の性格には合わない。
そして、いて欲しい時(夜)に、いなくなる。
そういう寂しさではないだろうか。
学校の設定や家庭環境などは、主に関プロデューサーがリードして決まった。
現時制戻ると、デジタル・フィールドが。
テリアモンのリアライズは例外的で、デジモンがリアライズする時は地面から光が立ち上って現れる。
駆け戻ってくる留姫。
素早く着替えて、レナモンに声を掛ける。
行ってくると言い捨てて廊下を走る留姫。
祖母の聖子(これは覚えていた)、ちょっとだけ心配そう。
ルミ子は離婚しているが、牧野姓を維持している。この家は秦という聖子が代々継いできた家。
留姫は靴を履きながら晩ご飯は?と訊く。
砂肝の唐揚げよ、という声に――
ガッツ・ポーズ!
これで牧野家の概要が判った。これはテイマーズ全体の中でも印象的なカットになった。
御存知ではあろうが、留姫のパートナーであるレナモン、家族であるルミ子と聖子、全て演じられたのは今井由香さんだった。エンド・クレジットにないので、声だけだと同一人物とは直感的には思えないだろう。
一方ギルモン・ホームでは――
何やら真剣に見つめ合う四人、いや、二人+二体。
じゃんけんぽい!
あっち向いてホイ!
って四人制は成立するのだろうか?
パーしか出せないギルモンは目を回す。が――、
タカトたちが笑っていると、ギルモンの目が変わった。
デジモンが現れる!
デジタル・フィールドに突入した留姫の前に現れたのは――
アーマー体の――
アロモン(松山鷹志さん・演)。
レナモン先攻、踵落とし。
しかし圧倒的にフィジカルが違い過ぎる。
留姫、ユキアグモンのカードをスラッシュ。
デジモン自体のカードをスラッシュすると、必殺技を借りる事が出来る――というルールとした。だからカードのデジモンはそのシンボルとして描かれており、一瞬現れるのはデジモンそのものではない。
凍てつく風――!
アロモンのディノバーストと拮抗するが――
次第に圧されて――
叩きつけられる。留姫は容赦なく進化する事を促すが――
ファイア・ボール!
続けざまのプチ・ツィスター。この連携がナチュラルに出来ているギルモンとテリアモン。
手を出さないで。デジモンは戦うもの。
カード・スラッシュ。「SLASH!!」はインスト版。
一種のアドレナリン注射の様に、一時的に復活するレナモン。どいていて貰おう、という時代劇台詞が自然に似合う歩き方。
再度凍てつく風を、前よりも強烈に浴びせると――
アロモンは凍り付き、狐葉楔で分解。
データをロードする。アロモンほどのデータが得られたなら、相当のパワーアップが期待出来そうだが……。
よけいな事しないで、と言い捨てて帰っていく留姫。
これを電柱の上から見物していたのが――
ここが初登場。インプモンの台詞のトーンを決めたのも吉村元希さんだった。
ここでAパートが終わるのだが、まだ少し続ける。
夜――、庭の池の前に立っている留姫――。
進化しないレナモンに苛立っている留姫。
レナモンは申し訳なさそうにしている。
留姫の期待に応えられない自分を責めている。
2021年時点での視点だけれど、この不条理な関係性は安寧に解釈出来ないと思った。
デジモンと人間のパートナーとなる難しさを描くべく、構図としてこういう描き方がされているのだが、実はこれについてライター陣とプロデューサーとで、突き詰めた話をした覚えがない。明らかに無印、02のパートナー関係と異質なのだが、02のシリーズ構成の一人だった元希さんは、初担当回にて普通にそういうものとして描いている。
ルミ子がただいま~と帰宅してくる声。流石にここは後で別録音だったかもしれない(オフなので)が、今井さんは大抵、三者のキャラクターを本線(全員が声を入れるテイク)で演技分けしていた。
レナモンはまさに忍びの者ライクに闇に紛れる。
レナモンとの出会いを思いだし始める留姫――
カード・バトルで優勝を重ねていた頃――
授賞式の壇上だが、留姫には居心地が悪い。
体格も顔も声も全く違うけれど、司会はボルケーノ太田さん。いやあくまで、当時こういう事をバンダイに所属していた時に本当にやっていたという。
今は太田さんもすっかり健康的なスリム体型になっていて驚いた2018年。
訂正:2021/04/26
その司会はボルケーノ太田さんではなく当時のデジモンカード担当者の狸小路カネキさんでしたね。 pic.twitter.com/HDyG0J7Ae3
— Ulforce魂 (@Ulforce_Soul) 2021年4月26日