第4話回顧 1
テイマーの試練!ゴリモンをたおせ!
脚本:まさきひろ 演出:川田武範 作画監督:直井正博 美術:飯島由樹子
私が書いた冒頭3話が、言わばテイマーズのパイロットに相当する。
物語開始時点でのキャラクターの関係は提示出来たと思う。そこから、エンディングの「My Tomorrow」のアニメーションに描かれる様に、仲間となった子どもたちとデジモンたちの関係性が進展するまでを、徐々に進めていく。
この後のデーヴァ編、デジタル・ワールド編、そして1クール目執筆時点では“現実世界での最終対決”について、どう発展させていくのかを自分でも確定させていなかった。これは私がシリーズ構成を担当する時の自らに課していたアプローチ方法で、まだ終盤の事情や条件などが明確でないシリーズ構成段階で、全てを最初から完全に決め打つというアプローチは悪手だと考えた点にある。
連続アニメーション、一年間で描くシリーズで、複数のライター、多くの各話演出家、声優の方々の演技で完成されていくものであり、完パケ(放送された完成版)を見た時に得る霊感――、この先に起こる事の可能性に感覚を研ぎ澄まし、その後のシナリオにフィードバックさせていた。
こうしたアプローチを私は《演繹型》構築と呼んでいる。パズル型ミステリでない限りは、《帰納法》型の作劇を私は好まない。
「ウルトラマンガイア」だって、最終的には我夢と藤宮が和解し、共闘して勝利するというエンディングには当然ながら帰結するのだが、そこまでへのプロセスでは、各話脚本、演出で、当初の構想にはなかった要素や情報が蓄積されていくものだ。それらを拾いつつ活かしていく事で、作品世内の描写に深みが加わり、何より「物語」にうねりが生まれる。
勿論、こうした作劇をすれば、最終的に物語をまとめる段階で極めて苦しい心境となる。しかし、少なくとも私の経験では、きちんと論理立てて各話が進められていれば、最終的には美しい形で収まるものなのだ。
「デビルマンレディー」「TEXHNOLYZE」といった作品はこうしたアプローチで作られた。
連続物として、フォローアップして貰わねばならない要素、この後の展開で振っておくべき事柄などは最低限に口頭で説明する程度で、その回の梗概は、各話ライターにシノプシスという形でまず物語化して貰い、それをシナリオにする段階で、関P、馬場AP、2クール目までの貝澤SDと私で意見と要望を述べてから、シナリオに入って貰っていた。
私以外はアドベンチャー/02の主軸ライターであり、誰より私が新参者だった 02のダゴモンを書いてはいたけれど、あれは特例ゲスト・ライターとしてだったので、角銅さんとプロデューサーとしか話していなかった。
ライター陣は同世代で、アドベンチャーとは異なるナラティヴに忌避感を持たれるかと懸念していたが、みんな面白がって積極的にアイディアを惜しみなく提案してくれた。
ただ、超ベテランにして私個人的にファンであった、浦沢義雄さんが無印からローテーションに入られおり、浦沢さんへの発注などには当初、勝手に小難しい(とか自分で書いてしまうのもアレだけれど)作品内ルール(あれでも放映版では相当に簡略化したつもりではあった)を踏まえて執筆して戴く事には畏れを抱いていたのだが――、これについても後でTwitterのまとめや捕捉のエントリを書くつもりでいる。
02のシナリオ作業が終わって、すぐにテイマーズにはいってくれたのはまさきひろ氏。演出はベテランの川田武範氏が担当された。
ガルゴモンに進化して暴走してしまったテリアモン――
新宿中央公園で、夕方までもジェンリャとタカトは帰らないでいる。
ギルモンがさかんに逆立ちの練習をしているが、すぐには出来ない。
しかしガルゴモンは、その巨体に似合わず逆立ちが出来る(木にもたれてはいるが)。
ね~まだ~? とガルゴモンは不満気。
成熟期に進化し、バトルが終わったらすぐに成長期に戻る、という描写をテイマーズはやめる。現実世界にデジモンが現れたら、リアルに考えたらもっと色々な問題も出てくるだろうが、見ている視聴者の子どもにも実感出来る様な、強くなる事についての是非について、一考して貰いたかったからだ。
しかし、ではどうやったら戻れるのか? これはライター陣に私から意見を求めた。
取り敢えず、逆立ちして辛抱する――。これがまさきさんのアイディア。
テリアモンが進化する事に反対しているジェンリャ。これには深い理由がある。それが明らかになるのは後半。
じゃあ僕は帰ると言うタカト。ガルゴモンはもう暫くは帰れない。
夜になっても、ジェンリャは辛抱強く待つ。頭に去来する思い出。
グレースケールのドット・グラフィック――
テリアモン。
ゴリモンと戦っている。
ブレージング・ファイアで応戦――
やっと元に戻れたテリアモン、嬉しそうにジェンリャに駆けていく。
今話のテリアモンは、ともかくジェンリャの頭に乗りたがる。
進化しちゃダメだって言っただろう? と言うジェン。
言ったけどさぁ……。困り顔のテリアモン――。
タカトは、ギルモンが更に強く進化する計画に夢中。
強力な武装も、今はただ「カッコいい」と憧れるばかり。
初出となる牧野留姫宅。流石に敷地面積はかなり誇張されているが、神楽坂の辺りにはこうした旧家が若干残っている。
カードを並べて必勝パターンをシミュレーション。しかし、やはりレナモンが進化しなければ意味がない――。
今話の留姫はこれまで。
クルモンの出番もここのみ。
土曜日の午後なのか、駄菓子店でカードを買っているヒロカズ。ダブりの、あまり強さには貢献しなそうなカードをタカトに譲る。
デジモン・カードは脚本陣誰も明るくなく、会議の時にカードを拡げて「これはどういう時に使うのか?」と悩みながら、ドラマに使えそうなものを見出していった。
余談だが、デジモン・カードは当時でもホビー店などの店頭にあるカードダス(カード自販機)などが主な入手先だった。駄菓子店にはなかったのではないか。私が子どもの時分には、今は絶滅しつつある町の玩具店に、「怪獣写真」という最も安い商品があった。袋に入ってブラインドの束から抜いて購入する。一枚5円だった気がする。大体は円谷プロ怪獣のスチル写真だった。これが廃れそうな頃に、仮面ライダー・スナックのライダー・カードが登場して、子どもがカードを本格的に集め出す土壌が出来た。
なぜか、通りかかったジェンリャにタカトは目を向けない。まだヒロカズらには、ジェンリャと友だちになった事を話していないからか。
ヒュプノス・シークェンスの“外観”は、この都庁のキノコ様レーダーが定番となる。遠目からはあまり見えないが、近くの高層ビルから都庁最頂部を見ると、異様なレーダー群にギョッとさせられる。
強力なワイルドワンがリアライズしようとしているのを発見。
町を歩いていたところ、デジモンが来る事を察知。
タカトも合流。白い雲状のデジタル・フィールドが後を追ってくる。
タカト君、陸橋を渡ろう、というジェンリャ。
それに従うタカト。しかしジェンリャは直進して行ってしまう。
やはり狙いはテリアモンなのだ。タカトはギルモンを呼びに行った。
建設中のビルへ飛び込むと、デジタル・フィールドに覆われ――
現れるゴリモン。
ギルモンの視点を通して――
アナライズ。
なーんだゴリモンか、とテリアモンは動じていない。
ジェンリャはゴリモンに、自分を覚えているだろうと呼び掛ける。
テリアモンには手を出すなと叫ぶのだが、言語が通じないのだ。
初手はギルモン。しかしパワーでは敵わない。
巴投げであっさりギルモンは飛ばされる。
なぜか逆立ちに成功。
よし僕も、とテリアモンが戦おうとするのをジェンリャが止める。
そんなに野性に戻りたいのか、というジェンリャ。タカトは理解出来ない。
ゴリモンがジェンリャらにエネルギーカノンの銃口を向ける。
あぶなーい!とテリアモンが立ち向かう。
ブレージング・ファイヤで攻撃。
やめるんだテリアモン!
ジェンだって前はぼくに戦いを望んだじゃない!